便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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彼がついに表で動き出す


No.197『白と紅の邂逅』

 深夜、文化祭の打ち上げもそれと付属して耳郎たちを騙してお化け屋敷に突っ込ました件で被身子から小言を貰う事になりつつも楽しい思い出だったとレイミィが自室で思いを馳せている時間。

 

 壊理も流石に疲れたようで打ち上げが終わり入浴も終えた頃には船を漕ぎ、自室に戻るや直ぐに寝付いてしまっている。

 

「……ふふっ」

 

 穏やかな表情で寝息を立てる壊理を見てレイミィは思わず微笑みを零す。今日一日だけでこの娘にとってはとても良い刺激だらけで、たった一日で心に巣食っていたトラウマを払拭し前向きな表情を出すことも容易にできるようになった。

 

 夕食の時も笑顔を見せた彼女にレイミィは本当に心から嬉しく思い、クラスメイト達もまた自分のことのように喜んでいた。もっとも、それが壊理に取っては初めて過ぎてどう反応して良いのか分からないという表情になったのも記憶に新しい。

 

「本当に、良いクラスメイトに巡り会えたわねって……?」

 

 唐突に震えたスマホに何だと画面を見てレイミィは怪訝な表情を浮かべた。そこに表示されていた電話番号は殻木のもの、一体こんな深夜に何事だコイツと思いつつも連絡を寄越したということは何かしらがあったということなので出てみれば

 

《おぉ、すまんなこんな遅くに》

 

「さっさと用件を話して」

 

《相変わらずせっかちじゃのう。今からこちらに来れぬか? すまん、詳細はちと話せん》

 

「はぁ?」

 

 詳細は語れないが来てくれ、しかもこの時間に。そりゃレイミィはそんな声を上げたくもなる、だが向こうは真面目にそう言ってるようで彼女の声にも本当に申し訳ないと言葉を続ける。

 

 それを聞き思考を巡らせる、少なくとも変な用事ではない、そして裏切りの罠というわけでもない、電話越しじゃ言えないような内容だということだろうか。そこまで考えてから時計を改めて確認し、それから深い溜息を吐き出してから。

 

「分かった、すぐに向かう、これで大した用事じゃなかったら覚悟なさい」

 

《儂とてその程度のことで電話はせぬよ、ともかく待っておるからな》

 

 コイツ最後の最後までムカつくな。若干の苛立ちを覚えつつ電話を切ってから、はぁと改めてため息を一つ、この時間から寮を出て学校を飛び出して殻木の病院へとなればどうあがいても時間が掛かる。

 

 とは言え向かうと伝えた以上は動かなくてはならない、なので仕方がないとばかりにスマホで連絡をしたのは血染、数コールの後に

 

《なんだ、こんな時間に》

 

「悪いわね、ちょっと急用で殻木の所に行かなくちゃならなくなったのよ」

 

 殻木、その単語に電話先の血染の気配が変わったのをレイミィは感じた。この気配は罠じゃないのかとかそういう類のものであり、これにはちょっと過保護が過ぎるんじゃと思っていると血染の方から口火を切る。

 

《急だな、大丈夫なのか》

 

「問題ないと断言したいんだけど、詳細は語れないとかフザケたことを抜かしてるのよね」

 

《俺も付いていくか?》

 

 流石にレイミィ一人というのはリスキー過ぎると血染からの提案にレイミィは暫し思案を巡らせる。はっきり言えば彼の提案は間違ってないし素直に受け入れるべきかもしれない、だが誰かと動くというのはそれだけで足がつきやすいという別のデメリットが存在する。

 

「いえ、私一人でいいわ。下手に人数を増やして足が付くほうが面倒だし」

 

《むぅ……》

 

 どうするかの天秤が傾いたのは単独で向かうだった。彼女とて危険は百の承知であり、呼び出しが罠の可能性も否定しているわけではない、だが単独なら単独でいざとなれば即座に逃げれるだけの能力を持っている。

 

 それにとレイミィは続ける。時間が時間なので自分一人のほうが手早く行って帰ってこれるんだけどと言う内容に血染は失念してたという感じの声を上げた。

 

《それもそうか、分かった。イレイザーヘッド達には俺から話しておく、壊理はどうするんだ》

 

「一応、私のコピーを置いておくけどバレた場合は素直に話すように指示しておく。一応、あまり遅くと言うか日の出より前には戻ってくるつもりだけど」

 

《万が一、朝まで帰れない戻ってこない感じだったらそこも話しておこう、気をつけろよ、バートリー》

 

「勿論よ、じゃあ頼んだわ」

 

 通話が切れると同時に劣化二倍を発動、生み出した己の分身に後は任せたと告げてから光学迷彩マントと護身用のスタンナイフを装備し壊理を起こさないように自室から出る。

 

 出てからも警戒は怠らない、A組の誰かにバレるとそれはそれで面倒なのでと足音も気配も殺して寮から出てから直ぐに光学迷彩マントを纏って上昇し殻木の病院へと全速力で向かう。

 

 向かうこと約一時間、音もなく着地し即座に病院の裏口へと周ってから固定の周波数で通信機を作動させロックを解除、霊安室の隠しエレベーターに乗り込んだところでふぅと息を吐き出す。

 

(とりあえずバレてはないと思う。血染からの通信もないって事は向こうでトラブルとかもなし、とりあえず第一段落は乗り越えたと考えていいわね)

 

 けれど本番は此処からよねと気を引き締める。殻木が裏切ったとは考えたくないがそれでも可能性としては存在する以上、エレベーター降りた直後にというのもあり得る、なのでレイミィは警戒しつついつでもスタンナイフが取り出せるように準備をしておく。

 

 そしてエレベーターが目的の階層に到着を告げるチャイムと同時に扉が開き、警戒しつつ慎重にエレベーターから出て殻木が居るであろう部屋まで向かう。

 

(気配は、ない? 脳無とかは全部処理させたから隠れる場所もあまり無いはずだし、やっぱり考えすぎか?)

 

 いや、だとしても呼び出した理由は語れないというのは怪しすぎると緩みそうになった意識を再度引き締め、殻木が居る部屋の扉の前で息を整えてからゆっくりと開ければ

 

「おぉ、来たようじゃな。なんじゃ、怖い雰囲気を纏わせおってからに」

 

「誰のせいだと、それよりも話ってのは」

 

「や、こんな時間に来てもらっちゃって本当にごめんね」

 

 気配も何もなかったはずなのに背後から聞こえた黒霧の声に、ハメられたと己の油断に毒づきながらスタンナイフを即座に抜きながら振り向くと同時に距離を離すように飛び退く。

 

 だが振り向き彼女が視界に収めた先で驚きと困惑と疑問が一気に浮かび上がることになる。確かに服装などは黒霧なのだがそこに居たのは白い靄、自身の記憶には一切ない存在に警戒が若干だが緩む。

 

 対して相手側も急に向けられた殺意とスタンナイフに本気で焦っているのだろう、手をブンブンと振りながら必死の釈明を始めた。

 

「待て待て待てって、敵じゃない、マジで!」

 

「黒霧? いえ、誰アンタ」

 

「まぁ待て、驚かしたのはすまないとわしも思っているが話があるというのはコイツからなのじゃよ」

 

 宥めるような殻木の言葉に続く形で白い靄もそうそうと頷くのを見せられたレイミィは警戒は解かないがとりあえず聞くだけ聞いてみるかと適当な壁に体を預ける。

 

 座らないのは単純にすぐに動けるようにと言うと少しでも変な素振りを見せたら速攻で殺しにかかるからなという脅しも込めている。

 

「あ~、もしかしなくてもめっちゃ警戒されてる俺?」

 

「寧ろされない理由があると思ってるのかしら? 改めて聞くけど、誰アンタ」

 

「まぁうん、挨拶からは大事だよねっと。俺はそうだな……白霧って呼んでよ」

 

 白霧、黒霧の反対だからという意味合いも込められているだろう。だがレイミィは黒霧の正体諸々も把握しているがゆえにまさかという推測に至ることが出来た。

 

 コイツもしかして、そんな事を思いながら殻木に視線を向ければ彼もまた白霧の正体には気付いておりだからこそ驚いたという表情で

 

「うむ、コヤツ『白雲 朧』の記憶と人格が完全に蘇っておる、はっきり言うが本来であればあり得ん話じゃ」

 

「赤霧か」

 

「そ、初対面の時に記憶を蘇らせられてと言うか封じ込んでたのを解放されたって言うべきか? まぁともかくそれから暫くは黒霧だったんだけど今はこうして俺も出てこれるようになったってわけ」

 

 ケラケラと明らかに黒霧ではありませんよという感じの反応をしていく白霧に内心では調子が外れるわと思いつつ本題はこれじゃないとレイミィ、このまま事情を聞きたいがそうも行かない、こちとら時間がないんだよと。

 

「それで聞くけど、話ってのは?」

 

「おっとそうそう、話は赤霧についてだ。単刀直入に言うけど、もう……」

 

 あまり時間が残されてないっぽいんだよね。それを聞かされたレイミィはでしょうねと同時にだとすると己もあまり残ってないかもしれないと悟るしか無かった。




今回いつも以上に短めです、このまま書くと多分、5千文字どころの騒ぎじゃなくなる。

あと先週はすみません、プロット整理やら何やらしたら話が浮かばなくなったのとグラブルやってました。
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