状況は私が思った通りであり、同時に思った以上に悪くなりつつあるということが白霧の言葉から理解させられた。
そもそも私がAFOの影響によって周囲にも精神的作用を施していたと考えれば、そのものを取り込んだ赤霧と死柄木達がどうなっているかなんて考えるまでもない。
「そっち、今どうなってるの」
「一応ってレベルで赤霧は抑えられているけどAFOの意識が出始めてるのも否定はできないって感じ。なんだろ、赤霧じゃなくて奴が赤霧を演じてるって言えばいいかな」
「死柄木達は? アイツラだったら察しは良いから気付けない?」
「多分、【吸血姫】の魅了が悪さしてるんじゃないかな。誰も違和感すら覚えてない、でも死柄木はほんの少しだけ何かに気付いてるってのは確かだけど……」
影響化を抜け出せるほどじゃないってことか。死柄木が微かに抵抗できてるだけでも御の字って言えるレベルだわそれは、こっちだってホークスが居なかったら誰も気付けなかったんだし。
だとしたら白霧はどうしてって思ったけど、黒霧が表に出てたから影響を防げたって認識で良いのかしら?
「だと思うよ、あと殻木も意外でもないけど影響下には入ってない」
「そうじゃのぉ、儂としては既に考えているものだと思っておった程じゃ」
「悪かったわね、思いっきり影響受けて何も考えて無くて」
こっちだって好きで影響を受けてたことに気付かなかったわけじゃないんだっての。けどこうしてみると影響外の人間は割りと多いわね、もしかして〝個性〟由来の奴だとすれば相澤先生も?
しまったわね、彼にも話をしてみるべきだったかもしれない。ってどうしたの白霧……あ、あぁ、そうよね、えぇ、気にはなるわよねそりゃ。
「まぁねぇ、いや、こんな形で記憶と自我が戻るとは考えてなかったからどうしたもんかなぁとは思ってる」
「会いたきゃ話くらいは付けてあげるけど?」
「……いや、今はやめておこう、下手に接触して要らぬ疑いをショータに掛けたくないし」
そうね、このタイミングで黒霧とそっくりなやつが接触したなんてなったら面倒なのが騒ぎそうなのは確かだわ。でも落ち着いたら考えてみるのも良いんじゃない? こんな奇跡、願っても起きることはないものなんだから。
さてしんみりとした話は此処までにして対策を聞きたいんだけど、何か案はあるのかしら?
「正直、こっちはどうしようもないが本音ではある。皆が皆影響を受けちゃってるから……、今後できることは死柄木を起点になんとか出来ればって感じ、そっちは?」
「幸いホークスが勘付いてくれて、彼を起点にどうにかしようとはしてる、ただ私や便利屋、それと関わりが深い人間は難しいわね。明日になってこのことを覚えているかどうか」
「ふむ、ともすればアナログな方法じゃがこの会話を議事録のように残すのはどうじゃ? お主ならばそれを読めば答えに繋がるじゃろうて」
メモってことか、それを必ず見る場所に置いておけば確かに古典的だけど確実な対策にはなるかもしれない。白霧の方でも試してみるのは?
「良いかもしれないけど、赤霧の中のAFOに勘付かれることを考えたら止めておいたほうが良いかもね」
「あぁそっか、気付かれてるとバレればどう動くか分からなくなるものね」
私が動いてもAFOの意思がないから大丈夫なだけだってのを忘れてた、なら動けるのは実質こっちだけってことか。
何があれって、赤霧が現在進行系で〝個性〟を集めまわってるってことよ。この行動の目的って自身というかAFOが関与して強化しようとしてるって認識でいいの?
「多分? 本人はゴミの片付けみたいな感覚なんだろうけど国内外で性急とも言える感じだったから間違ってないと思う」
「じゃがそんなに溜め込んでどうするつもりじゃ。幾ら吸血姫とAFOが強力だと言えど〝個性〟が多くなればなるほど制御が厳しくなるものじゃぞ」
「そういうものなの?」
「当然じゃろ、己の体の部位を無限に増やすようなものじゃぞ。しかも〝個性〟同士で相性の善し悪しだって存在する、仮にそういうのが一箇所に固まってしまえばどうなることか」
言われれば確かにそうだと私と白霧が頷く、ていうかその発想はまるで出てこなかったわ。ムカつくし相変わらず嫌いだけど、この辺りは流石第一人者ってことはあるらしい。
だとすれば目的は何かって話に繋がる。まさか制御できると思い込んで集めてるわけじゃないでしょうし、無いわよね?
「流石に無いんじゃないかなぁ。これでそうでしたってなったら流石にその、拍子抜けと言うか間抜けすぎるでしょってなるよ?」
「そうよね、ごめんなさい、言ってみただけだから」
「AFOのヤツが意味のないことをするとは思えん、集めることにも必ず目的があるはずじゃ」
なんか自分でやっておいてこんな事言うのはあまりにもあんまりだとは自覚してるんだけど、殻木がAFOを〝ヤツ〟って呼ぶの凄い光景よね。
「所で聞こうと思って聞けなかったんだけど、殻木って何時からそっち側に?」
「確か保須市の騒ぎあったじゃない、あのあとすぐ」
「……そりゃ林間学校でボコボコにやられる訳だわ」
戦力全然集まらないんだもんと言われてもそうするために引き込んだしとしか言えないのよね。それよりも今後よ今後、まぁ対策が取れる案件ってわけじゃないけど……
「赤霧の行動を俺もどうこう言って止めれるってわけじゃないから、そこは無理だよって言っておくね」
「でしょうね、はぁ……とりあえず白霧、貴女と知り合えたってだけでも収穫と思っておくわ」
「俺もそこは同意、所長さんが俺って存在を知っててくれれば動きやすいし。あ、でもあまり存在を広めては欲しくないかな」
「分かってるわよ、ジョーカーは最後まで伏せておくべきものだもの」
でも赤霧は貴方の存在知ってるのよね? それってもう既にこうして動いてるってバレてるんじゃと危惧が過ったが彼いわく、それは折り込み済みだとのこと。
とりあえず殻木の事と私との同盟関係を結んだってことだけは言わないでおけばまだ誤魔化せるとかなんとか、本当に?
「まぁでもほら、最悪バレてもなんとかなるかもだし……」
「そこを行き当たりばったりにされると非常に不安なんだけど」
「そもそもじゃ、バレているならば儂は既に消され、この病院は廃墟になっとるじょろうて。それよりもほれ、とりあえず纏めといたぞ」
「まぁ、そうよね」
議事録……で良いのかしら、それを受け取り流し見してみる。内容はさっきまでのやり取りと彼なりの考察が読みやすく纏められている。
私も書類製作はするけど、ここまで綺麗なのを短時間では難しいわよ、ねぇ白霧。
「俺はそもそも、書類製作が駄目だから聞かないで」
「あ〜、イメージ通りだわ。あんた、白雲の頃は相澤先生に丸投げしてたでしょ」
「黙秘で」
「沈黙は肯定とみなすわ」
あと反応が露骨すぎるから探らなくても分かるわよ。……まぁ、こんな雑談をしてるから察せると思うんだけどあえてはっきり言うわ。
「対抗策をここで考えても意味ないわよね。議事録があるから全くの無意味じゃないとは思うけど」
「いやほら、俺と君の顔合わせってのも大事だから……」
「おぉそうじゃった、ほれ注文の品が出来上がっとるから受け取っといてくれ」
差し出されたのは投薬用の注射器、最も中身は薬じゃなくて〝個性〟だけど。これで手札がまた増える、増えても赤霧の方が圧倒的に早く増えるから枚数負けは確実なんだけど、それでも十分なのよ。
と言うか殻木の言葉を思い出せば、これ以上増やすのはよろしくないかもしれない。劣化してるとは言え相性問題で暴走しましたとか目も当てられないし。
「打つなら帰ってからにするんじゃぞ、調整して前回よりは反応が抑えられてるとは思うが完璧にではないからな」
「はいはい、それじゃ今日は解散ってことでいい?」
「でいいと思うよ。俺もそろそろ戻らないとヤバいし」
「そうか、二人とも気をつけて帰るんじゃぞ」
なんでコイツ保護者面してんのという言葉を飲み込んで白霧と共に病院から出る。そこで腕時計を見れば日付変更線はとっくの昔、今から帰って早朝という感じの時間にはぁとため息を吐いていると。
「あぁそうだ、便利屋ちゃん。ちょっとその……依頼、良いかな?」
「内容と報酬次第よ。まぁ報酬は後払いでもいいわ、アンタと同盟でも飲み込めるし」
「難しい話じゃない、簡単とも言えないけど君たちなら楽勝な依頼、内容は……」
彼からの依頼、それは確かに私たちには楽勝だし何度かやったことのある内容、だから私はポーズで面倒だという感じを出しつつも受けることにした。
折角だ、アイツラにも恩を吹っ掛けるのも悪くはないだろうと思いながら、こうして私と白霧のファーストコンタクトとなった。
あとがきで書くことあんまりないなという顔