文化祭も無事に終わり、同日の深夜に白霧と同盟を組むことになったレイミィ。無論、帰ってから血染に詰められたがそれに対して彼女は様々なリスクを孕んでいることを前提に報告することにした。
ある種の信頼でもあり、ことこれに関してはとりあえずでも副所長の耳に入れておくべきだろうという判断なのは言うまでもないだろう。
「お前また……いや、今回は叱るのは間違いか。寧ろよくやったというべきかもしれんな」
「これで怒られたら流石に拗ねるわよ私。と言うか不可抗力に近いでしょ今回は」
「だから叱らねぇって言ってるだろ。それで話は本当という認識で良いんだな」
「えぇ、証拠にって言っていいか分からないけど、今朝の時点で議事録を見る前の状態で記憶が若干薄れてたから」
此処で重要なのは即刻消去ではなかったという点、だがこれも意識してたから気付けたことであり昨日にホークスからの言葉がなければ気付けなかっただろう。
そのくらいには無意識な介入、この事実を知れたことにレイミィは良かったという感情とだとしてもこのままだと膠着状態に過ぎないのでもう一歩が欲しいというのも同時にある。
「そう言えば、そっちはどう血染」
「どうと言われてもな。ついさっきお前から教えられたからまだ何も分からんが本音だが、言われると貴様の行動に違和感を感じないというわけではない」
「でしょうね」
血染からしてみれば急に発覚した事実であり、昨日今日で違和感を完璧に感じろというのは無理だろというのが本音。だが言われれば確かにと言う部分もまた存在しており、レイミィの一点賭けに近い計画もその一つである。
コイツは間違っても計画を一つだけで済ませる奴じゃない、幾通りも用意して初めて行動に起こすやつだと。長年の付き合いから分かっていたというのに気付けなかった、だからこそAFOの影響下だと気付けた。
「やってくれる、だが原因は何だ? まさか近くに居るだけとか言うんじゃないよな」
「私の【吸血姫】による魅了が原因なのは確か。だとすれば貴方たちが影響下に入ってしまった理由というか手段も見当がつくわ」
そしてそれを防ぐ手段もねと取り出したそれを見て血染は呟く、確かに防げるかも知れないが力技がすぎるだろそれと。対してレイミィも分かっていると思いつつもこれしか思い付かなかったんだから仕方がないでしょうがと反論しつつも正論に苦笑するしか無かった。
さて、レイミィがどのような手段を用いたのか、それは彼らA組の反応をまず見てもらうことにしよう。因みに便利屋と壊理からの反応は曖昧だったとだけ書いておく。
「えっと……どしたん?」
「イメチェン? 何かあったん?」
「イメチェンにしても昨日の今日でいきなり過ぎるでしょ」
「それは見えているのでしょうか、バートリーさん」
「なんかもうヒーローらしさがなくなっちゃったね!」
女子からのまるで容赦がないコメントの数々にレイミィは分かってるとばかりの表情で返す。何だったら少し前に便利屋と壊理からも全く同じことを言われたので2度目だからこその反応とも言えるのだが。
対して男子が選んだのは沈黙、しかも誰かがアイコンタクトなどをしたわけでもないのに全員が同じ選択を取った。取ったと言うか、今までの経験から考えて突くほうが絶対に面倒になると確信したとも言うのだが。
さて、そろそろレイミィがどのような手段を持ち入り、そして彼らにこんな反応をされているかの種明かしをすることにしよう。まぁ、勿体振った割りにはあまりにも単純で分かりやすい方法なのだが。
「やっぱサングラスは無いと思うんですよね、トガは」
「昨日知った事実で直ぐにできることがあれしか無かったってのは分かるんだがなぁ」
「と言うか、あんな如何にもなサングラスどうして所長ちゃんは持ってたんだ?」
「確か依頼で変装する必要があったとかだったと思うんだけど、記憶にあまりないんだよね」
「圧紘、多分だがお嬢は買っただけで使ってないと思うぞ」
そう、サングラスである、しかも擬似的に盲目の人の体験ができるというレベルのそれを彼女が選んだ対策、レイミィ曰く自身の魅了が原因だとすれば感染源は視線及び目だろうと考えた。
なのでA組や便利屋は彼女と会話する機会が多かったが故に影響が強くでたと。ともすれば対策は簡単、合わせる目を隠せばいい、と恐ろしく単純な結論だった。
「詳しい話は後でするけど。まぁその、ちょっと今の私と目線とかを合わせるとマズイってのは先に言っておくわ」
「お姉ちゃんのサングラス、ちょっと前を思い出すね」
「……あ、これマジの話し?」
壊理はただあの屋敷でたくさん居たなというのを口に出しただけである。あるのだが聞かされる方としては反応に困る事を言い出す辺りレイミィの影響が明らかに出ている、よろしくない。
まぁそれは置いておくとして、掻い摘んでの説明をされればA組の面々もなるほどと納得は一応される。自分たちにはあまり自覚はないのだが彼女が言うのならばそうなのだろうと。
(随分とあっさり納得してくれたけど、これも影響の可能性って考えなくちゃならないのはちょっと嫌な気持ちね)
恐らくはそんなこと無いんでしょうけどと思いつつ、とりあえず今回の件は教師陣、更には校長にも伝えなくてはならないと彼らに告げて相澤に連絡しておくことに。
彼女の中には推測があった。もし自身との接触時間が影響を受ける度合いだとすれば、そしてこれが自身の〝個性〟【吸血姫】の魅了が原因だとすればこの二人は影響はほぼ受けてないはずだと。
端的に言えば狙い通りだった。連絡後、直ぐに相澤から校長室に来てくれと言われ向かってから事情を話してみれば、根津はなるほどどと呟いてから
「奇妙だとは思っていたよ。あのAFOがただやられるだけかって、まさかそんな手段を使ってきてるとは思わなかったけど、確かに納得できる話だ」
「自覚そのものはないが俺が影響外なのは〝個性〟のお陰か」
「恐らくはそうだと思うわ。私と接触する機会が少なかった根津校長も同じ理由、逆に言えば……」
「毎日のように会って、会話までしてた奴らは影響をモロに受けているってことか」
逆を言えば、今日までで接触が少なければ少ないほど、この影響を受けてないということになるが絶対でもなければ時間が過ぎれば影響を受けないという保証もない。
つまり時間が経てば立つほどにこちらはジリ貧、いや、それ以上に詰みと言う状況になりかねないしそれだけは絶対に避けなければならないのは言うまでもないだろう。
「で、まさか何も考えてないというわけではないだろ、バートリー」
「私もそう思ってるよ、相澤くん、さて是非とも聞かせてもらえないかな?」
妙にプレッシャーを掛けてくる二人にレイミィは苦笑しつつ、もちろんと答える。昨日の今日ではあるが白霧からの情報、そしてついでとばかりに会話中に採取した血から得た記憶の情報から彼女は策は考えている。
詳細を言えば、褒められたものでは決してないし相澤はお前はという表情と頭痛を抑える仕草をするだろうし根津は間違いなくHAHAHA! と笑うに決まっている。
「なんてことはないわ、今まで私たちは受け身の姿勢だった。でももう時間もないし、これ以上掛ける必要性もないと私は判断したわ」
寧ろ今までが好き勝手やられすぎたと言えるかも知れない、だからこそレイミィは決断を下した。
「こっちから打って出ることにするわ、守りのターンは終わりってことよ」
ここからどうにか話を畳もうという努力