「打って出るか、具体的にはどうするんだ?」
攻勢宣言に相澤は真面目な表情でレイミィに問い掛ける。根津もまた言葉にはしないが続きを促すようにレイミィを見つめ、彼女はそれを受けて話を続ける。
「とある情報筋から赤霧たちが現在潜伏している組織が判明したのよ」
「……もう驚くまい」
「驚きはしない、だがそれは信頼できる相手なのかは聞いておきたいかな」
「そこは信頼してもらって大丈夫よ」
などと言っているがレイミィの情報筋とは血からの記憶なので信頼もへったくれもないのだが彼女が正直に話すことはないのでこの場ではバレないので問題ないだろう。
また、それよりも潜伏先の方を聞いておきたいというのもありとくに追求もなくレイミィは続きを話すことに。
「今、赤霧たちが潜伏してるのは【異能解放軍】、聞き覚えは?」
「あるとも、実は解体されて無くて水面下で活動してるということもね」
「噂程度でしたが事実だったのか。だが何故、奴らがそこに?」
「単純に戦力としてでしょうね。潜伏先を提供するからって条件で下ったらしいけど……ま、形だけよね」
ただ単に潜伏して休息を取りたいだけで利用しただけであり、別に異能解放軍に従っているわけでもない。何だったら彼らの思想に感化されてるわけでもなければ、死柄木に至っては面倒な連中だなと思っているとか。
しかし、それを差し引いたとしても異能解放軍が相手となれば考えなければならないことは山のように生まれている。まず一つとして圧倒的組織力、どう少なく見積もったとしても数でこちらが勝ることはほぼ不可能だと断言できるレベルである。
「下手に動けば潰されるのはこちらだ。その辺りはどうする?」
「何も真正面からやり合おうとは流石に思わないわよ。まぁ、やろうと思えば出来なくはないけどその場合は国土が徹底的に荒れることは覚悟してほしいけど」
「是非とも止めてもらいたいねそれは。冗談はさておき、実際問題どうやって崩していくつもりなのかな?」
「……崩していくって言ってる時点で私がやろうとしてること分かってるでしょ、校長」
HAHAHAと笑う根津を見てレイミィははぁとため息を吐き出すが、相澤は何のことかまるで分からないと一人蚊帳の外の状態になっているのを見て彼女は気を引き締め直して詳細を語りだす。
「正面からじゃ面倒な相手だって言うなら搦手を使うわって話よ。幸い、向こうは組織力が大きいって言うなら付け入る隙はいくらでもあるわ、例えばそうね……ざっくり言っちゃえば組織力を削る方面かしら」
「と、言うと?」
「異能解放軍って企業や政府、マスコミからジャーナリストまで様々な方面に組織員を送り込んで時間を掛け、上層部に潜り込ませているらしいのよ」
この手腕は素晴らしいとしか言えないわねとレイミィは言いつつ、だとしても彼らの全ては真っ白な手段で伸し上がったわけではないと続ける。
どうやったとしてもグレー或いは黒な部分が出ており、それを隠しているだけ。最も今日まで発覚も何もないのだから上手いこと隠しているのだろう、だが彼女にはそれは通用しない。
「私たち便利屋なら徹底的に炙り出せる。異能解放軍相手に真正面から取り合わずとも組織力を確実に削り取れる」
「だがこちらも時間はないと言ってただろ。それだけの相手にどれくらい掛かるか……」
「えぇ、私たちだけだったらまぁそれなりに時間は掛かるでしょうね。だからこそ今回はヒーローにも公安にも警察にも、つまりは公的機関全部に協力してもらうわ」
とは言っても最後の詰めの部分だけだけどと彼女が提案したのは至極単純な作戦。異能解放軍の組織員が潜り込んでいる企業や政府等など全てから黒に近いグレーや真っ黒な事案を証拠を収集し秘密裏に公安などに流す。
それを元に彼らが異能解放軍に押し入る準備を行いつつ時が来たと同時に全ての証拠を使い一気呵成に各地に潜伏している上層部の組織員を取り押さえ、異能解放軍の弱体化させるというプラン。
「奴らに立て直す暇を与えずに組織力を削り取って、赤霧たちが動かざるを得ない状況にするわ」
「ついでに異能解放軍と言う爆弾も解体してしまおうってことさって、どうかしたのかな相澤くん」
「……いえ、俺がこれを言うのも変だとは思うのですが恐ろしく合理的すぎて若干の畏怖を覚えますね」
相澤自身も日頃から超合理的主義である自覚はあるが、ここまで大規模となると流石に怯むらしい。同時に彼は思い出す、この二人の悪巧みの波長はほぼ似たりよったりの悪い顔同盟だったなと……
とどのつまり、今二人はそんな顔をしているのだ。どうやら根津としても異能解放軍は気に掛かる存在だったらしく、このチャンスを逃すわけには行かないと考えているらしい。
「それで個々からがちょっと本題なんだけど、数日、いや、もしかしたら一週間以上かもしれないけど学校を離れることにするわ」
「情報収集の為か、頷いてやりたいがあまり長い期間だと単位が本格的に怪しくなるぞ」
「こちらとしてもどうにかしてあげたいけどね、出席日数となるとそれは難しいからね」
「あっ……あぁ、まぁ、そうよね」
鋭く、そして手痛すぎる言葉にはレイミィも困ったと言う表情をするしかない、己が今は学生という身分だという子を忘れていたわけではないしその辺りのシステムも理解しているが故に思わず面倒だなと口に出そうになるのを堪えておく。
言った所で解決する内容でもないというのも関係しているのもある、だがこちらも大事なこと、出来ることならば1日中でも情報収集をしたいのもあるので学校に縛られるのは彼女的には避けたいが、さてどうするかと考えそして
「午前中だけってあり?」
凄まじい妥協案を出してみることにした。一日は無理だから半日で許してくれと、言った本人も通るかこれという感じだったが意外なことに相澤はそれならばと頷いてから
「なら午後からは郊外活動としておいてやる、その方が面倒がないだろ」
「私からもそれで許可を下ろしておこう、バートリーくんもこれなら気兼ねすることなく動けるだろ?」
「ありがたいわ、まさかすんなり通るとは思ってなかったけど」
「異能解放軍の件はそれくらいには無視できない話というだけだ。でも無ければ許可は出さん、だがバートリー、気をつけろよ。お前が得意な諜報活動とは言え、向こうも決して油断して勝てるような奴らじゃないだろうからな」」
相澤の言葉にレイミィは言われずともと頷く、今回の相手は規模が規模、少なく見積もっても構成員だけでも11万人は予想され思想に共感した市民なども含めたら更に増えるとなれば何処に奴らの目があるから分からないが本音でもある。
普通ならば長期間にかけて諜報活動するような相手に短期間で攻めるというのだから相澤の心配は決して杞憂なものとは言えないしレイミィもまた今回ばかりは神経をすり減らしそうだと思ってもいる。
「ともすれば明日からにでも動き出すのかい?」
「えぇ、そのつもりだわ。今回ばかりは便利屋も総動員しないといけないし、情報を共有する時間が欲しいから明日からのつもりよ」
さぁて忙しくなるわよとその日の放課後、壊理はA組の寮に預けてから便利屋を事務所に招集し根津たちとの会話を共有、そこから今後の動きについてもレイミィから話されれば
「随分とデカい所が今回の相手、か」
「私も話には聴いたことあるなこの異能解放軍ってのは。てか一度解散してなかったか?」
「その息子が跡を継いで活動を再開したって話らしいよ」
「話を聞いてる限りだとトンデモナイ組織だな、11万ってなんだよその人数」
「てか11万人も思想に共感してるってちょっとヤバくないですか? つまりその数だけ今の社会に不満を抱いてるってことになりますし」
「まぁ、耳障りはいいっちゃ良いんだろうな。んでお嬢、何処から攻めるつもりなんだ?」
規模がデカすぎて諜報活動だってかなり的を絞らないとですしと仁が聞くのだがレイミィは既に手始めのターゲットを決めていた。より正確に言うとすればここを放置しておくと後々絶対に面倒だなという部分というのが正しいかも知れない。
なんたって、異能解放軍のシンパは市民や企業、政府にマスコミからジャーナリストと言ったがプロヒーローの中にも居ないとは言ってないのだから……
「先ずは獅子身中の虫を駆除するわよ。折角の機会だもの、ヒーロー内部も浄化しちゃいましょうか」
「それは良い、とても良い、粛清するのに丁度いいな確かに」
「おい、副所長が急にエンジン掛かり出したぞ」
「あ、気にしないでください。血染くんは元々今のヒーローの在り方に嫌気が差してるだけですか」
「オールマイト至上主義って言えば分かりやすいな」
「ヒーローが職業にして給料貰ってんじゃねぇよってことか」
「相変わらずだねぇ、副所長は」
これより便利屋によるヒーロー大粛清が幕を開くことになった。
多分、ここから学校描写が一気に消え失せるかもしれん