急展開により急遽開幕することになった赤霧組会議だが、早々に暗礁に乗り上げることになる。
そもそもにして自分たちの立場があくまで彼らに雇われているだけという身であり、何かを口出せるというわけではない、なので彼らが議題にしたのは。
「何食わぬ顔で異能解放軍から逃げるか、それとも仕方ないから奴らと協力して迎え撃つか、だな」
「逃げるのはどうなんだ? つか逃げる先がなくないか死柄木」
「だよなぁ、流石にこれ以上の逃亡もきっついのが本音だし」
「それに急に異能解放軍を崩し始めたのって私たち、もっと言えば赤霧が居るからでしょうからね」
マグネの言葉がその通りであり、じゃあ異能解放軍から抜け出したとしても事態が変わるわけじゃない。寧ろ行く先々が壊滅するということでそのうち疫病神的な扱いをされる可能性も出ている。
とは言え、ここで迎え撃つにしても状況は圧倒的に不利なのは考えるまでもないし負け戦とか言う話じゃないので出来れば回避したい。
「回避方法があるならの話だがな。わりぃが俺は浮かばねぇぞ」
「同じく、てか回避できるなら異能解放軍側がやってるでしょ、なんか凄い組織なんだし」
「それを指揮する頭連中が軒並み動けなくなったんだ、今ごろ会議は紛糾してるだろうさ」
「紛糾こそしてないけど、進展もしない会議をしてる私たちと同じってことね」
「なんとも耳が痛い話ですが事実なのがなんとも」
困ったことに進行しないのが彼らの会議である。しかし、一人だけは結論を出し終え、まるで進展のない話し合いの最中、赤霧だけは立ち上がり4人に向け告げる。
「私は奴らに手を貸す。どうであれこの流れは悪いわけじゃないからな」
「……便利屋の所長と決着か」
「あぁ、未来に私たちは必要ない」
言い切る姿に死柄木は今日までに何度目か分からない違和感を覚える。彼女の言動や行動もだが、何よりも相手の言葉に何一つ疑問なども挟まずに納得してしまう事に。
まるで思考を固定ないし操作されてるのではと疑いに疑いをかけて漸く死柄木が考えることが出来るレベルで。
(やっぱり前々から可笑しいとは思ったが、秀一もマグ姐も黒霧も何も思ってないと考えると俺だけか?)
それとも俺がおかしくなったか? 判断するにしても証拠になり得るものが少なすぎるがゆえに彼の中に迷いが生じるが死柄木はだからこそ、これは異常だと判断を下す。
赤霧の行動に疑問を持てば持つほど、思考に介入が割り込んでくるということに気付けたからだ。どうして自分だけが気付けたかの新たな疑問が生まれたが
(今それを気にしても仕方がないな。それよりも状況をどうにかしねぇと)
この機を逃せば間違いなく手遅れの何かが起きる。勘でしかないが死柄木はその漠然としたなにかを感じつつも妙案も何も浮かばないことに焦りを覚える。
だが思考を回すことを止めるわけにも行かない。ここで止めてしまえば次はないという確信もあるが故に死柄木の焦りは募っていくが一度そこで深呼吸を挟んだ。
唐突な深呼吸に伊口たちがどうしたのかと彼を見るがそれを気にせずに死柄木は呼吸を整えてから赤霧に問い掛けることにした、先ずは確認をするべきだと。
「おい、赤霧、一つ聞きたいんだが良いか?」
「なんだ」
「あの吸血姫と決着をつけるだ、共倒れになるとかそこは良い。けれどよ、異能解放軍はどうするつもりだ?」
「どうするも何もない、要らないだろこんな組織なんて」
冷たい声が部屋に響く、まるでゴミ掃除程度の感覚で出された言葉だが不思議と誰も驚きもしなかった。無論それは死柄木自身もだ、だがそれは分かっていたというのもあれば本命の質問ではなかったというのもある。
「つまり壊滅させるってことでいいんだな? この町の連中も含めて」
「そのつもりだ、どうした急に」
なんてこと無く答えられた内容に死柄木は確信した。今の赤霧は〝普通〟ではないと、もっと直接的に言えば赤霧じゃない可能性すらあると。
この町は確かに異能解放軍のシンパしか居ない、それは老若男女問わずだ。下手に残し残党となれば面倒でしか無いのは彼にも分かる、だが。
(今の言い方じゃ、子供も関係無しとしか思えねぇ)
赤霧ならば有り得ない、彼女は子供には決して手を出さないのは知っているから。だと言うのに今の答えと赤霧の声から分かるのは無慈悲に全てを壊すという感情……いや、と死柄木は感情と言う答えを訂正する。
感情ですら無い、決められたことをやろうとするだけのシステム的なものだと。こんな事をするやつは一人しか居ないと彼は確信する、なんだったら自身も少し前までは似たようなものだったのだから気付け無いわけがない。
「話はそれだけか? なら……」
「いや待て待て、俺も行く。リーダーが居ないんじゃカッコつかねぇだろ、ただ今日じゃなくて明日だ、どうせ今言った所で面倒な会議に巻き込まれるだけだろうしな」
「それも、そうか。分かったそうしよう」
「んじゃ、今日はこのまま待機ってことでいいのか?」
「そのようね。ま、呼ばれるでもないのならゆっくりしてましょ」
「では私はお茶でも淹れてきますので」
必要なのは時間だと判断した死柄木のもっともらしい理由に赤霧が同意したことに息を吐き出す。同時に赤霧の言葉によって伊口たちも気を緩めたのを見れば死柄木はゾッとしたものを感じ取ることになる。
思った以上に状況が最悪すぎんだろと。ついさっきまで自分のそうだったとは言えこうして端から見るといい気分ではないとばかりに死柄木は考え込むように椅子に座り目を閉じる。
(つってもどうするよ。下手なこと出来ねぇし、かと言って明日になってまた思考操作されちまえば今度こそ詰みだぞ)
秀一やマグ姐か黒霧に相談? んなことしたら赤霧の中のアイツにバレて終わりだってのと詰みに詰んでる状況に死柄木はしてやられたと顔には出さないようにするが屈辱だと感じていた。
もっと早くに気付けたはずだと言うのに完璧に油断していたと。結局、何も浮かばずに時間が過ぎ去り深夜、寝ることも出来ず、かと言って諦めることも出来ずに悩んでいる死柄木だったがここで状況が動き出す。
「死柄木、少し良いでしょうか?」
「ん? どうした黒……」
振り向いた先に居たのは白い霧、思わず誰だお前という言葉すら失うほどに驚く死柄木を見て向こうはカラカラという感じに笑ってから
「まぁ、そういう反応になるわな。安心してくれ俺は白霧、お前の味方だって言ってもまぁすぐに信用しろってのは難しいのは分かるけど」
頼む信用してくれと白い霧こと白霧が思いっきり頭を下げる光景に死柄木は正直に言えば面を食らっていた。黒霧とはまるで違うキャラになったことの情報処理が追いついてないとも。
だが伊達に赤霧からリーダーとしてのイロハを教わったわけではなく、数十秒程度で処理を落ち着かせそこから少し悩んでから
「分かった、とりあえず信用してやる。今は味方が欲しいしな」
「あんがと、さてそれじゃ時間もないからちゃっちゃと話すことを話しちゃおうか」
「なんか調子狂うな、はぁけどそうだな、話すだけ話してくれ」
新しい情報の一つでも出てくれればそれで良いんだがというノリだった死柄木は数十分後、そこにはお前マジかよという表情でテーブルに突っ伏している青年の姿がそこに。
端的に言ってしまえば情報の波で死んでた。白霧もそれを見て気持ちは分かるよと言う感じに側に佇んでいた、だが今のタイミングじゃないと情報全部渡せなかったからと謝るしか出来ないのだが。
「つーことはなんだ、お前思いっきり裏切ってたっていうか裏で色々と動いてたってことか」
「まぁ、そうだね。その流れで赤霧や君たちの異変に気づいて便利屋とも同盟を結んであるよ」
「……すぅ、色々と言いたいが状況を打破出来る盤面を作ってくれたのは事実だしなぁ」
詰みから脱しただけでも死柄木としては儲けものだと言うのに、更にひっくり返す火種も用意してくれたとなれば感謝こそすれど文句とかをあれこれ言うのは憚れるというものだろう。
寧ろ話してくれたお陰で策を練る余裕も生まれたのだろう、死柄木は突っ伏してた間に脳内で組み上げたそれを白霧に話してみれば向こうは分かったと頷きつつも
「俺は構わないけど、君は良いのか? 赤霧とともに行動しAFOとして動き出したら時間稼ぎをするなんて危険でしか無いと思うんだけど」
「んなことは分かってる。けれどやるしかないんだ」
何も彼は誰かを守るためだとかいう理由で行うのではない、もっと単純な理由でしか無い。赤霧には世話になった恩があるというだけだ。
そんな彼女がAFOの手で自身が望まないことをやらされようとしている、なら借りを返すついでに死柄木は足止めを行う。
「……ん、分かった。それじゃそう動こう」
「任せた、つかしくじるなよマジで?」
「大丈夫大丈夫、任せてよ」
それだけを言うと白霧は外へと出ていき、死柄木はそれを見送るついでに夜空を見上げ、我ながら性に合わないことを言ったしやろうとしてることにはぁとため息を吐き出した。
夜が更けていく、また明日が始まる。白霧と会話したお陰で或いは自覚を持てたからなのか、意識に違和感が生じてないことを確認しつつ死柄木のその日が来るまで神経をすり減らす日々が始まった。
先週はまるで筆が動かなくて更新できませんでしたすみません。
来週はシーヴの翼になって戦場の空を飛び回るので更新できないと思いますのでご了承下さい(エースコンバット