便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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なお、午前全ては体調不良で死んでた模様

私信
気付けば評価バーが赤くなってました。この場を借りて感謝を。

今後も便利屋をよろしくお願いいたします


No.21『網に掛かる悪意、笑うハイスペックと吸血姫』

 朝のHRでは委員長決めの騒ぎで頭痛が治まらず、午前の授業は何故か妙に当てられることが多かったがために気分を落ち着かせることが出来ずと言う苦行を乗り越えたレイミィ・バートリーは現在、麗日に引き摺られるように連れてきてもらった食堂で一息ついていた。

 

 本日のメニューはざる蕎麦一枚とイワシのつみれ汁のみ、殆ど回復したとはいえ今日一日は食欲という面では快調に向かうにはまだ時間が掛かるのでフラッシュバックに襲われた日の食事は軽めであっさりしたものばかりになる。

 

「……やっぱり、こういう時はあっさりしたのが楽だわ」

 

「大丈夫、そうだね。うん、良かったぁ」

 

 やはり午前中の彼女の姿を見ていたからだろう、今こうして昼食を食べているレイミィの姿に麗日は心からの安堵の息を吐き出す。その姿にいくらなんでも心配しすぎでしょとレイミィは呟くが、普通に考えれば青い顔してる同級生が居たら誰でもこうなるものである。

 

 事実、それを聞いた天哉もいやいやと彼女の的外れな感想に対して真面目な表情を崩さずに答える。

 

「あの姿を見せられて、心配にならない方がどうかしてると言える。君はそれくらいに周りに心配をかけたことを自覚するべきだ」

 

「そういうものなの? どう、轟、緑谷」

 

 彼からのその答えに今日も一緒に来ていた出久と焦凍にも話を振ってみれば、ともに一つ頷いてから。

 

「凄く青い顔してたし、僕もかなり心配にはなったよ」

 

「まぁ、俺も少しはそうは思ったには思ったな、見慣れてねぇってのもあるかもしれないが」

 

 二人からもそう言われてしまえば、疑う余地もなく自分がずれていると分かり、そういうものらしいと納得しておく。同時にならこれも言っておいたほうが良いかとズズッとつみれ汁を一口飲んでから

 

「なら、慣れておいて頂戴。最低でも週に二回、多いと三回はあの状態で登校してくると思うから」

 

「それって何か体に異常があるってことじゃないのか?」

 

「あ~、その、あれよあれ。また話してもいいけど昨日と同じ空間が出来そうなあれ」

 

 『あれ』、前回の反省からあの手の話題は学友との雑談にはならないと学んだ彼女は言葉を暈しに暈し、これで伝わらないかしらと試してみれば効果は絶大だったようで全員が理解したとばかりに真面目な表情で頷く。

 

 それは嬉しいのだがどうしてそこまで真面目な表情をする必要があるのだろうかと疑問には思う、見れば周りの生徒も顔は見えないが安心したという空気を醸し出しているのも彼女の疑問を加速させる要因だ。とは言っても考えた所で答えが出ないので疑問に思うだけに留め、それよりもと鰯のつみれを一口頬張る。

 

 一口噛むだけでジュワッと広がる新鮮なものをすぐに調理したと分かる鰯の味に頬を綻ばせていると、それを見ていた焦凍から彼女へ投げた一つの問いかけが食堂を激震させることになる。

 

「バートリー、もしかしてイワシが好きなのか?」

 

『!!??』

 

 刹那、レイミィ達の周りの生徒達に緊張が走る。中には『やめとけやめとけ、彼女の地雷原は隙間がないんだ』などと言ってる生徒も居るが幸いにも五人の耳には届かなかったようで反応はない。

 

 より正確に言うならば、緊張しすぎて声が拾えなかったが正しいかもしれないが。そんな空気に急に変わったことにレイミィは怪訝な表情になりつつ

 

「えぇ好きよ。美味しいし、色々と料理にも使えるから、一週間でも一ヶ月でも飽きない自信だってあるわ」

 

「そうだったのか」

 

「……そ、それだけ?」

 

 嫌に警戒した声の麗日の問いかけに今度は困惑の表情を浮かべながら、それだけだと伝えれば何故か安堵の息を吐き出され、いよいよ何が起きてるのかと思い

 

「で、さっきからこの空気はなんのかしらね、委員長さん?」

 

「へ!!?? あ、いや、その、き、昨日のことがあるから皆、け、警戒してるんじゃないかなぁって……」

 

 委員長もとい出久から返ってきた答えにレイミィが真顔になってしまったのも無理はないし、勢いで周りを見渡せばサッと目を逸らす生徒がちらほら見えたことでこの食堂での自分の立ち位置というものを理解してしまった。

 

 どうやら、かなりの腫れ物扱いに近いことになっているらしいと。失礼な話だと思いながらも原因は完璧に自業自得のそれなので、この言葉はつみれ汁と共に飲み込むことに。

 

「ったく、まぁいいわ」

 

「レイミィちゃんって時々こう、素が出るよね。でも鰯かぁ、最後に食べたの何時だったかな」

 

「僕は昨日……あっ」

 

 気が緩んだからだろう、天哉が一人称を『俺』ではなく『僕』と出たことに出久と麗日が思わずという感じに彼に視線を送ってしまい、クツクツとレイミィが口を手元で隠しながら笑ってから

 

「やっぱり、貴方って一人称を無理に変えてたのね」

 

「坊っちゃんと言われるのが嫌で変えてたのだが……」

 

 恥ずかしさを消すためだろう、カレーライスを一口だけ食べて心を落ち着かせた天哉は自身の家系について話し始める。

 

「あぁ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」

 

「ヒーロー一家、か……家族とは仲は良いのか?」

 

 ヒーロー一家ということは父親もそうなのだろう。だからこそ焦凍は自身の家庭を思い出し、無表情は変わらないが纏うものが若干重めのそれになりながらそんな事を聞いてしまうが天哉は気付く様子もなく、そして心からそうだという風に答える。

 

「勿論、特に兄さん、えっとターボヒーロー【インゲニウム】は知っているかい?」

 

「もちろんだよ!! 東京の事務所に65人もの相棒(サイドキック)を雇ってる大人気ヒーローじゃないか!! まさか……!」

 

(めっちゃ詳しいし喋るじゃない。あぁ、なんか中学にもそんな感じの子が居たっけか)

 

「詳しい。うん、それが俺の兄さ!」

 

 胸を張りながらそう言い切る天哉の姿、その後も自分の兄がどのようなヒーローでだからこそ自分もヒーローを志したということ。

 

 それでいて、自分はまだ誰かを導く立場には早いからこそ、上手の出久が委員長をするほうが良いから彼に投票したのだと話す彼の顔はここに入学してから初めて見せる穏やかな笑みに変わっていた。

 

「彼は余程、好きなのねお兄さんが」

 

「……少し、羨ましいと思う」

 

「貴方は家庭がねぇ。でもお姉さんとかお兄さんは嫌いじゃないでしょ?」

 

「あとは母さんも、好きだな」

 

 それは羨ましいわと残りのつみれ汁を飲み干し、ふぅと息を吐き出した瞬間。けたたましい警報が食堂に、学園中に響き彼女の中でスイッチが入る。

 

「警報!?」

 

《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難して下さい》

 

「(セキュリティ3ってあの壁を超えて校舎内に誰かが!?)轟、私ちょっと目を飛ばすから身体預けるわよ!」

 

「何をって、そういうことか、任せろ!」

 

 慣れた動作で焦凍に身体を預けて訓練のときと同じように目をコウモリに変換し飛ばす。

 

 先ず見たのは急な警報により食堂の非常口に向けて生徒がパニック状態で押し寄せている光景に避難訓練っていざって時に頭からすっぽ抜けるものなのねと思いながら次に窓から校庭の方を見れば、居るのは人の固まり、今朝から張り込んでいた集団に窓義に押し込まれた天哉も見えたらしく驚く。

 

「報道陣!?」

 

「そのようね。見た感じ(ヴィラン)じゃないわ(あれを報道陣が? いえ、彼らにリスクをそこまで背負ってまで取材を強行する理由はないわ。ともすれば便乗?)」

 

 便乗とすれば雄英バリアーと呼ばれているあの強固な壁を壊した下手人が居るはずだし、このセキュリティ3は校舎【内】への侵入に対する警報、彼らが居るのは門を越えてはいるが校舎内とは言い難い。

 

 ならそいつが報道陣に紛れ入ってくることを想定したがコウモリから見える範囲にそれらしい存在は見えないし、だったら今対処に出ている相澤とプレゼント・マイクが見過ごすとは思えない。

 

 壁だけを壊して去っていった? それは楽観視が過ぎると切り捨て、あり得るとすればと考え更に深める。

 

「(確実なのは報道陣を囮にして、対処と混乱を利用したいという点。でも報道陣の中には居ない、ならどこから……?)おっと、轟、もう目は戻したから離してくれて大丈夫よ」

 

「そうか。だがパニックになりすぎてる、このままじゃマズいぞ」

 

 まぁそこは子どもだからと苦笑していると麗日の個性で無重力状態になった天哉が人の波を抜けてそのまま非常口の丁度扉の上に個性【エンジン】ですっ飛んでいく光景を見て笑いそうになるも閃きが走った。

 

 人混みを避けて、天哉は空中という陸路からではなく空路で彼らの混乱を収めに行った。通常の手段ではなく……

 

「(個性を使う別ルート? っ!?)まさか!!!」

 

 警報の原因はマスコミの侵入によるものだと分かり混乱が収まった食堂をレイミィが駆け出す。後ろから出久達がどうしたのかと驚きの声で呼び止めようとするがその頃には彼女の姿は真紅の影程度にしかなく、その影も落ち着き隙間ができているとは言え人の波をするりと抜け消え去っていく。

 

「か、彼女は急にどうしたんだい?」

 

「分からない、けどあれだけ慌ててるバートリーさんは初めて見た」

 

「何かに気付いたって感じだったな」

 

「てか、すっごい速いなレイミィちゃん」

 

 彼女らしからぬ急な行動に驚く面々の心配の先、レイミィは自身が出せる最高速で目的の部屋の前に辿り着いてみれば、やぁと声を掛けられ跳ねるように反対の方向へと距離を離しつつ向き合えば

 

「はぁ、相澤先生と校長だったのね」

 

「HAHAHA、驚かしてしまったようだね。いや、それよりもだ、ここに来たってことは君も気付いたということかな?」

 

「確証は無いわ。でもあれだけのことを起こしたのがマスコミとは思えない。なら、裏に(ヴィラン)が居て、そいつらは私達が知らない個性を利用した校舎内に入ったと考えただけよ」

 

「俺達が知らない個性、気付かれずにここまで来れるやつだと思うと相当厄介だな」

 

 居たのは根津と彼を肩に乗せた相澤。彼らはレイミィの言葉に自分も同じ事を思いここ、【職員室】に来たと言いつつレイミィを後ろに下げて相澤が慎重に扉を開き、職員室の中を見てみる。

 

 パッと見た感じでは荒らされた痕跡もなく、気配も感じられない。続けてレイミィが目を変化させたコウモリで内部を事細かに見ていくが

 

「何も、居ないわね。撤退したあとか、はたまた見当違いだったか」

 

「……いや、当たりのようだぞ」

 

「はっはーん、彼らはコレが狙いだったと」

 

 納得だとばかりの声にレイミィも向かえば、そこは教員の机。見ればここだけ何かを探したと言う感じに書類が散らばっており、その中で無くなったものが確かにあった。

 

 たった一枚、されど【ハイスペック】の個性を持つ根津の記憶にはその一枚がなんだったのかしっかりと分かった。

 

「カリキュラム、(ヴィラン)の狙いはこれだったわけだ」

 

「校長、聞くけど中身は?」

 

「いやはや困ったね。【改編後】のだよ、バートリーくん」

 

 動物だと言うのにはっきりと分かるニヤリとした笑みにレイミィも悪い笑みで答え、それを見てしまった相澤は軽い頭痛に襲われる幻覚に襲われる。

 

 なんだこの悪い顔連合は。しかもどちらも組織のトップだと言うのが彼の頭痛をまた少しだけ強くしてしまうが気を取り直し

 

「つまり、例の名前が記入されてないのがって事ですよね校長」

 

「その通り、まんまと釣りエサに掛かってくれて何よりだよ」

 

 彼らが捕っていったのはカリキュラムに書かれているのは今後の授業の予定、校外学習であればそれに同行する教師の人数【のみ】、肝心の誰が等の記載は一切無く、向こうからすれば使えなくはないが重要な情報が抜けていると困った代物。

 

 ならば情報が欲しくなる。特にここは雄英高校、教師は大体がプロヒーローであり誰が来るのかの情報は喉から手が出る程に欲しい筈。

 

「バートリー、今日の帰り前のHRでアドリブを振れ」

 

「了解、分かるように振るからお願いするわ」

 

「それと放課後にまた校長室に頼むよ。本格的に作戦を練ろうじゃないか」

 

 締めの根津の言葉に二人は頷いてからレイミィは教室に戻れば、先程の四人がどうしたのかと聞きに来る。

 

「ちょっと、ね? まぁあれよ、マスコミだけとは思えなくて動いたのだけれど、相澤先生に怒られちゃったわ」

 

「はへ~、私なんか人の波でも目を回してたのに凄いなぁ」

 

「そうだったのか、流石にそこまでは考えなかったな……」

 

 不覚とも言い出しかねない天哉に、私のは職業病みたいなものよと肩を竦める。

 

 事実、依頼云々が無くともあの場面ならば動いていたと続ければ、偶々食堂に居り見ていた切島と上鳴も会話に参加しに来るが、その内容は彼女が慌ててた理由ではなく、あの時見せたさも当たり前のように人混みを高速ですり抜けていく技術の方。

 

 彼らからすると通れる隙間あったのかあれと当時は本気で思ったらしく。

 

「てかさ、あの状況で他人にぶつからずにすり抜けてくの見たけど、開いた口が塞がらなかったわ」

 

「あら、慣れればやれるものよ?」

 

「慣れって、慣れでなんとかなるレベルだったかあれ……?」

 

 切島の言葉に慣れよと再度断言、レイミィとしてはあれは幾重にも積み重なった浮気調査の尾行の賜物なので慣れなのである。




悪い顔が似合う校長と所長が居るらしい

便利屋メモ
人混みのすり抜けは圧紘が一番上手く、次点で被見子、三番手にレイミィと血染が来る。因みに仁は大柄が故に苦手としている
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