さて、何処で話を振るべきか。レイミィ・バートリーはそんな事を考えながら残りの委員を決めているクラスメイトを眺める。
紆余曲折あり、委員長は出久が天哉に譲り彼が今進行しているが、そこはさして問題ではない。寧ろイメージ通りになるし良いんじゃないなんて感想すら浮かんでくるほどだ。
(相澤先生は……まだ、寝てるのね。まぁやっぱりHRの時間が一番か)
確認ついでにと窓際に寝袋姿で体を預けている相澤に視線を向けるが、当の本人はこの短時間で、しかも喧騒の中でも気にせずに寝ていることがよく分かる態度を取っており、つまりはまだ振るなと態度だけで彼女に伝えている姿。
(暇だし状況整理でもしてようかしら)
どうせ、私は委員とかやらないしと話を聞きながら今日起きた例のマスコミ侵入事件について聞いたことを下に整理を行う。
確かに警報自体はどうやら門を超えたマスコミ集団に発令されていたらしく、同時に職員室への侵入にも発令されてはいたのだが【不幸】にもマスコミ集団の方に職員も気を取られたがゆえに気付かず結果として【偶々】机の上に重なってた書類の束に紛れていた改変後のカリキュラムが盗まれてしまった。
そこまでは良いとレイミィは次に入る。この流れは根津が想定していた流れに沿っているので問題ではない、あとはこの今日中にクラスメイトの前で必要な情報を流すだけで準備の一部分を終わらせるだけなのだから。今ここで彼女は考えるのはマスコミ集団の侵入を許した雄英バリアーの破壊を誰が成したかということ。
コウモリで破壊された一部分を見たのだが壊され方が力任せの一撃でぶち抜いたとかのそれではなかった。直接触れたわけではないので彼女も断言は出来ないが後片付けをしていた教師陣が触ったのを見た感じ、ただ破壊したという破片ではない、まるでそれは
(物体を粒子状にしたもの、言うとすれば【崩壊】かしら……?)
仮にそうだとすれば凶悪の一言の尽きる個性だと悟られないように眉間あたりを指で揉み。発動条件が不明ではあるがあれほど強固な壁を容易くあの状態にしてしまう個性持ちが
しかも相手側には分かってるだけでも雄英高校のプロヒーローに気付かせないで職員室にまで侵入できる個性持ちも居るとなれば、眉間に皺が寄ってしまい、どうやらそれが丁度、彼女の視界に入ってしまったのだろう。
「あ、あの、バートリーさん、どうかなさいましたか?」
「へ?」
唐突に百に声を掛けられ、どうしたのかと視線を向ければ何故か不安げな表情の彼女、そこから黒板を見れば既に全ての委員決めが終わってることが分かり、そこから百の表情であぁと納得。
どうやら今回の決定に不満があると勘違いされたらしい、話を聞きながらとしていた筈なのに見事に終わりまで気付いてなかったことに自分は思ったよりも考え込んでいたらしいとやっちゃったと思いながら
「あ~、大丈夫よ。寧ろ私は関われないから気にしないで頂戴」
「ならば宜しいのですが……」
「そうは言ってもバートリー君もクラスメイトの一人、意見があれば遠慮なく言っても構わないんだぞ?」
「余程だったら口は出すわ。けど今回は大丈夫、まぁあれよ、ちょっと考え事をしてただけよ」
誤魔化すように笑みを浮かべ弁解すれば一応の納得はしたようでそれ以上は何も言わずに委員決めの締めをした所で眠っていたはずの相澤がゆっくりと動き出す。
タイミングから考えて寝てはいたけど音は聞いてたということだろう、彼は寝袋から出てきて天哉と百を席に戻してから
「それじゃ、パパっとHRして解散とする。それとバートリー、今日は集中が欠けてる事が多い、明日からは気を引き締め直せ」
唐突に飛ばされた注意にレイミィも分かってると返そうとした時、ふと違和感に気付いた。見れば若干、本当に僅かながら個性を使った時のように相澤の髪が浮かび上がっており、あぁと苦笑しながら立ち上がり
「ごめんなさい、ただちょっと気になった話を聞いちゃったもので」
「……手短に」
「今週のヒーロー基礎学で校外学習があって、それの同行者にオールマイトが居るって聞いたのだけれど本当なのかしらって」
心底、それこそ違うと言ってくれ先生と思っていると分かるくらいに嫌な表情をした彼女からの質問に相澤はほんの僅かに固まってからそれはもう大きなため息を吐き出す。
クラスメイト全員がそれを見て、間違いなく聞いちゃいけない話をレイミィが拾ってきたんだろうなぁと心が一つになる。自分たち仮に聞いてもこの場では話さないだろう、仮にするにしても放課後で友人ともしかしてって言う感じに留めておく、誰だって怒られたくはない。
「誰から聞いた」
「オールマイト本人。あまりに軽い感じに話してたからてっきり皆知ってると思ったのだけれど……違うっぽい?」
「あの人は……俺からは何も言えん、ただそれを口外はするな」
「分かりました。ごめんなさい、それだけよ」
マジかぁと言う感情を隠さないまま席に座り直して残りのHRを聞き流す。無論、流してはいるが重要なことだけは聞き流さないというのは中学からやってたことなので他愛もない。
他愛もないが先程のように偶にやらかすこともあるのでやっぱり油断はしちゃいけないと今回の反省をするが今日は多少は考え込んでも仕方がないと自己弁護をしてしまう。
相手が動いたということはここから先は生徒としての自分はあまり出せない、依頼を敢行するとなれば便利屋としての自分がメインとなってくるのだから、思考がそっちよりになってしまっているというのが原因ではあるのだから。
「本日は以上だ。下校時間を過ぎる前に帰るように、では解散」
(終わりっと、学生生活も大事だけど、本業を疎かには出来ないからね。まぁ、最悪中学時代の感覚に戻る感じだから良いけど)
「レイミィ、今日は朝から散々だったね」
「言わないでくれると嬉しいわ、耳郎。午後は午後であんな騒ぎがあったのだからどうしても思考がこんがらがるのよ」
あれもこれも考えたくなっちゃうのは完璧に職業病よねぇと笑えば、所長もやるって本当に大変なんだねと耳郎もつられ笑う。本当ならばこの後も彼女たちと放課後に学生らしく雑談を楽しみたいが、今回もそうは行かないので鞄を持ち、昨日と同じように
「じゃ、悪いけど私は帰るわ。また明日」
「ケロ、気を付けてねレイミィちゃん」
「帰ってる途中で今朝みたいにならないでね?」
この気を付けてはレイミィは事故などに遭わないようにと言う意味で受け取るが、どうやら他の女子組はそうではなかったらしく、先ず芦戸から始まり。
「フラフラだったもんね、今はもう平気そうだけど」
「そう考えると不安ですわね。途中まで同行したしましょうか?」
「あ、それ良いかもな。レイミィちゃんが迷惑じゃないならどう?」
続くように葉隠、百、麗日が上記のようには提案してくるのを大丈夫だからと断る。嬉しい話ではあるのだが今回ばかりはちょっと困るものがあるので是非とも引いてもらいたいとすら思っている。
この後は帰宅するふりをしつつ校長室に向かわなければならないのだ。そしてそれを正直に話せるわけもないので、適当に自身の体調は基本的に午前を超えてしまえば治るということ、それはそれとして週に二~三回はこうなるからその時はよろしくと付け足しておく。
「うわ、個性故の体質ってやつ? 結構、難儀なもの抱えてんだね」
「慣れればなんとかなるけどね。じゃあ、そういう事だから本当にごめんなさいね。それじゃ」
クラスメイトからのじゃあねを背にレイミィはパタパタと走り出し、階段を降りた所で一息、周囲の気配を探り誰も付いてきてないことを確認してから、ゆっくりとした足取りで階段を降りれば相澤の姿。
「来たな」
「やれやれ、毎回手を変え品を変えをしなくちゃならないのは苦労するわね」
「仕方がないことだ。毎度、あいつらの前で呼び出すわけにも行かないだろ」
それはご尤もでと彼の後をついていき校長室へと向かうのだが、そのルートも可能な限り他生徒などの目につかない物を選ぶので若干の遠回りになっており、その点も仕方ないとはいえ面倒だなと彼女は思わざるを得ない。
けれどコレを怠って、自分たちの行動が誰かにバレるほうがもっと面倒なのでその言葉は飲み込み、校長室。前回と同じように相澤が特定のノックをすれば根津から入ってくれと言う言葉が来てから扉を開けて入室、鍵を締めてから
「さて、最終確認としようか」
「するのは良いけど、私達だけでいいの? オールマイトとか聞いてないけど校外学習にはもう一人居るのでしょ?」
「二人には当日になったら伝える手筈にしてある。特に俺達が考える作戦はオールマイトが聞けば拗れることは間違いないだろうからな」
襲撃が確実だというのを分かっていながら生徒達を敢えてそこに飛び込ませ
そんなの許されるはずがないと。だがとレイミィは言う、これは今後の布石として必ず必要な作戦なのだと、彼らがどの程度の内通者の情報を信じているのか、それを吟味しなくてはならないがゆえに。
「私はクラスメイトだって利用する。ヒーローほど優しくないのよ私は」
「バートリーくん、それは私たちも背負うものだ。君だけの責任ではない、たとえ君から出した案だとしても、ね」
根津の気遣う優しい声が響く。15歳の少女がする必要のない覚悟を強いているがからこそ、コレ以上彼女だけに背負わせるわけには行かないと。
そして同じく今の彼女の言葉を聞いていた相澤だって、そう思っている。粗暴で言い方は厳しい彼ではあるが根本はプロヒーロー、レイミィのそれを見過ごせるはずがない。
「何でもかんでも一人で背負い込もうとするな。この場で聞いてた俺達も共犯だからな」
「そうね、なら折角だから共犯を増やしましょうか」
昼頃に見せた悪い顔で少女は告げる。今回の情報で相手はオールマイトをどうにかするための精鋭と数を用意するはずで、その手札は全く見えない。
対してこちらは向こうに手札を見せてしまっている、ならばと彼女は言う、山札から手札を引いてみないかと。
「相手が知らない戦力をってことか?」
「そうよ、今のままじゃ間違いなくこちらが不利になる。私だってクラスメイトを怪我させたいわけじゃないし、必要以上に怖い思いをさせたいわけでもないのよ」
「……便利屋、だね?」
「校長と話してるとあっさり私の考え見抜かれるから少し苦手になりそうね」
HAHAHA、済まない私の悪い癖でね。と本当に悪いと思ってるのかという声にやれやれと呆れながらも彼ならば当然思い付くかとも諦めて、詳細を話す。
それはなんてことのない単純な作戦、ただちょっと戦力を増やすだけのこと。話してみれば相澤もあまりに普通なことに逆になんで思いつかなかったんだとなるくらいには極々単純な話し。
作戦を詰め終え、便利屋に戻ったレイミィは総括をする前に全員に話があると注目させる。昨日までのとは違う、所長としての声と表情に所員たちも真剣な面持ちで彼女に視線を向けたの確認してから。
「近々、雄英高校の授業で校外学習があるのよ。そして間違いなく
「まぁ、本拠地から離れてプロヒーローが居ると言えど生徒の人数に対して少数、孤立とも言える状況ならば襲わない理由がねぇな」
「でもそれは雄英高校だって分かってるんじゃないんです?」
被身子の真っ当な質問に、分かってて襲わせるのよと簡単に告げてから単刀直入に彼らに告げる、あの校長室でレイミィが二人に提示したなんてことのない単純な手札の増やし方を。
「ねぇ、ちょっと便利屋全員、校外学習先の施設でスタッフのアルバイトしてみない?」
「アルバイト……ははーん、そういう事だね、所長」
「ん? 分かったか被身子」
「いえ全く、えっと、その校外学習の施設でアルバイトってことは働くってことですか?」
「はぁ、もう少し考えろ。数合わせだろ、どう考えてもヒーロー側の手札が少なく、向こうに露呈しているのならば増やすのが合理的だからな」
しかもスタッフの臨時アルバイトとすれば向こうには自分たちが便利屋だということも露呈しにくく、話に聞くだけにかなり大きめの施設に一人ずつとはいえ伏兵として待機できる。
自惚れかもしれないがそれでも便利屋をやれるくらいには個々の戦力は整っているので、仮に相手が数で攻めてこようとも質で押しつぶすことだって可能になる。
「そういう事、詳細はこれから話すわ。ただ言えるのはどういう形であれ、
この言葉に全員が頷く、いよいよ便利屋チェイテが動き出し本来の世界線とは勢い良く変わっていく話が幕を開ける。
次回からいよいよUSJです。多分ここから結構変えていくと思うような気がするとオリジナル展開のタグ必要じゃねぇかなぁコレ!!
便利屋メモ
所長含めた便利屋面々は依頼の他にアルバイトもしてた時期もある、貧乏辛いでしょう……