便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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搦め手上手の吸血姫さんってサブタイと悩んでました


No.25『完璧で究極のアウトロー(自称)』

 開幕、射撃隊を壊滅させたレイミィとイレイザーヘッドはそのままの勢いで展開するチンピラ達の群れへと突撃を敢行、今の一瞬でどちらが前衛、後衛を決めており二人しかいないので臨機応変と言う部分は非常に強いが基本的にイレイザーヘッドが抹消で支援しレイミィが速度に物を言わせた攻撃でなぎ倒す形になっている。

 

「ブラッドチェーン! ほらほら、行くわよ!!」

 

「おい、なんだこれって、バカバカバカやめおおおおおおおお!!!!???」

 

 真紅の鎖がチンピラの一人に巻き付けば力任せに振り回され、哀れ彼は人型モーニングスターへと早変わり、悲鳴を上げながらボコボコと他人を巻き込む台風に近寄ることが出来ず無視も出来ずに己の個性でなんとか助けようとするが

 

「あれ? ってしまぐふっ!?」

 

「全く、好きに暴れ過ぎだバートリーのやつ」

 

 知らぬ間にイレイザーヘッドの抹消の視界に入ってしまったがゆえに発動が出来ずに混乱してる間に意識を飛ばされ、しかも乱戦中でゴーグルの所為で目線が見えない、つまり誰を見て、誰が個性を消されているのか分からないという状況が噛み合い連携が大きく乱れ始める。

 

 そして乱れ始めればそこを貫くようにレイミィが真紅の影となって彼らを襲いかかり着実に数を減らされていく、今日が初めてとは思えない完璧に近い二人の連携で有象無象の集団を蹂躙する様子に主犯格の男は感心と苛立ちを混ぜた声で、出久がそれを見ながら感嘆な声で、それぞれ評価する。

 

「イレイザーヘッドは肉弾戦が強く、ゴーグルで目線が分からないから誰が個性を消されているかが把握できずに連携に遅れが発生、あの子供はその隙を的確に突き、かと言えばイレイザーヘッドの援護のために大立ち回りも見せる。はぁプロヒーローだけじゃなくて生徒にすら有象無象は役に立たないとか笑えないっての」

 

「す、すごい……たった二人で圧倒してる。イレイザーヘッドもそうだけど、バートリーさんも多対少数の戦い方に慣れてるんだ!」

 

「分析してる場合じゃない、早く避難を!」

 

「させませんよ」

 

(しまった、一瞬のまばたきの隙に!)

 

 不思議と場に響いた声にレイミィとイレイザーヘッドはしまったという表情を晒す。見れば主犯格の隣りに居たはずの人型の黒い靄は居らず、声の方向からして13号たちの方へと向かったのだと悟るのだが乱戦中の今、抜け出せる暇のなく、ここで背後を見せれば間違いなく、主犯格の男が確実に仕留めに来るだろうと考えればイレイザーヘッドは苦虫を噛み潰したような顔でこの場で戦う選択肢を選ぶ。

 

 けれどレイミィは違った。確かに抜かれたことには驚きこそしたが、かと言って焦りは無い、それは勿論、便利屋が伏兵として待機しているから何となるでしょという部分もあるのだがそれ以上に便利屋所長としての冷酷な部分が冷静に彼女に示した。

 

 黒い靄は明らかに転移系の個性、それが主犯格の男の側を離れたということは防御の一枚が剥がれたと同意義だと、大男の存在は確かにあるがあれよりは転移による防御よりは楽だと近くのチンピラを足場に蹴り飛び、半回転しつつ両腕を構え

 

「ブラッド……」

 

「脳無」

 

「チェーン!」

 

 両腕から合計で十本の先端が鋭く尖った真紅の鎖が勢い良く射出、主犯格の男へと全て貫かんと飛ぶがレイミィが技を叫ぶよりも前に男の指示で動き出していた大男によって全て防がれるがあれほどの筋肉があろうとも鎖そのものは貫通とまでは行かずとも深く突き刺さり、それを見ていた男は手の下で口角を上げ嗤いながら煽るように彼女に告げる。

 

「おいおい、ヒーローが敵を殺しかねない勢いで攻撃しちゃ駄目なんじゃない?」

 

「別に殺すつもりはないわ。ただ手足は貰うけど、投降しろったって聞かないでしょ貴方っとと(貫けない、ハリボテの筋肉ってわけじゃなさそうだし、痛みに反応がないのを見るに痛覚もなし、か)」

 

 ただイレイザーヘッドが大男、もとい主犯格の男に脳無と呼ばれた存在を目視していないのでこれが個性によるものなのかは未だに不明と推測しつつ地上からの対空攻撃を避け、脳無に突き刺さった鎖を『血』ごとコウモリに変換し一度地上に降り立つ。

 

 その際に二人ほど蹴り飛ばしたが彼女が気にすることもなく、寧ろ今思ってるのはここまで戦っててこの戦闘服(コスチューム)戦いやすいなという場違いな感想。気を緩めているとかではないのだが、見た目以上に動きやすいということに感動したらしい、普段遣いできないかなこれと思うくらいには。

 

「にしてもヒーローねぇ、この姿込みでそう言えるのはセンス無いわよ貴方」

 

「おいおい、だったらなんで雄英高校に居るんだよ。しかもヒーロー科に」

 

 ごもっともな指摘に対してさぁ? と答えつつ隙ありと叫びながら襲い掛かってきたチンピラに右で一発入れてから左足で主犯格の男へと蹴り飛ばす。もっとも、脳無にチンピラは弾かれてしまったがその動きが彼女には微かにしか見えなかったことに渋い顔になる。

 

 ここまで見ると彼女は戦える方ではあるのだが、基本的に仲間が居たり、場を整えてのセットプレイだったりと搦め手やサポートに回った上での強襲が主な戦闘スタイルであり、一対一の形は相手によるが苦手な部類になっている。

 

 故に自身よりも基礎スペックが上回るような存在との一対一は正直に行って相性が悪い。レイミィは異形型にしては身体能力は速度以外は並以下、速度以外だけなら戦い様があるが、速度すら上回るような存在と対峙しようものならば劣勢を強いられるのは想像にかたくなく、故にあの鎖での攻撃時に一つの策をバラ撒いておいた。

 

「それよりも私はヒーローと言うよりアウトローよ? 冷酷無慈悲なアウトロー、それが私」

 

「は?……っ!?」

 

 男が何を感じたかはわからない、分からないが転がるように右に飛んだ瞬間、その箇所に真紅の鎖が突き刺さる。一体何がと空を見上げれば数にして20にもなるコウモリ、それらが弾け、先程よりも細くはあるが真紅の鎖が弾幕となって襲い掛かる。

 

「脳無!!!」

 

 避けきれないと判断した男は即座に脳無を呼び出して盾に、続けて上空を見渡せば囲むように存在するコウモリにレイミィを睨みつける。もっとも彼女からすればアクセサリーのような手が邪魔でその視線は見えないのだがそれでも睨まれているということは分かるようでニタリとした笑みで

 

「おかわりはまだまだあるわ、たくさん食べて頂戴?」

 

「おいおい、シューティングはあまりやったこと無いんだけどな……」

 

 殺すつもりはないとは言え、これほどのモノを喰らえば間違いなくお縄には出来るだろうという鎖の弾幕に男は諦めたような声ではなく、まだどうにでもなると言う感じの気怠い声にレイミィは怪訝な表情に変わり、ふと気付いた。

 

 20ほどの鎖で固定したはずの脳無は何処に行ったのだと、見れば居たはずの場所には血溜まりが出来ているだけであり……彼女が結論を出すよりも前にイレイザーヘッドの叫びがレイミィを死から逃した。

 

「叩き潰せ、脳無」

 

「バートリー、後ろだ!!」

 

「つっ!!!! 助かったわイレイザーヘッド!!」

 

 横っ飛びと同時に爆弾でも爆発したのかという轟音、転がりつつ即座に起き上がれば先程まで自分が居た場所は軽くクレーターが出来上がり、それを作り上げた脳無が拳を振り下ろした姿勢のまま存在していた。

 

 その姿には鎖から無理やり抜け出したはずなのに傷は一切なく、イレイザーヘッドが反応したということは抹消は食らっているというのにあのクレーター、思わず彼女は聞いてしまう。

 

「聞くけどイレイザーヘッド、【視た】のよね?」

 

「あぁ、【視た】筈だ。つまりあれは素の能力ってことになる」

 

 冗談キツイわよ。出来れば認めたくない事実に冷や汗が再び彼女の頬を伝い、乱暴に拭いながら体勢を戻す脳無を視界に収めつつ、男の方はどうなったと思えば最悪の声が聴こえた。

 

「間一髪でしたね、【死柄木 弔】」

 

「【黒霧】13号はやったのか?」

 

 包囲射撃の鎖は全て黒い靄、黒霧の転移によって死柄木弔と呼んだ男を退避させる形で全てを回避、とは言え間一髪だったという言葉は嘘では無いようで見ればかすり傷程度は付いている死柄木の姿。

 

 かすり傷程度、これが何の慰めにもならないが黒霧の転移には少々ラグが発生するらしいと言うのが発見できただけでも良しとするべきかとレイミィは笑う。

 

「それが、子供を散らすことには成功しました。ですが、13号は邪魔が入り健在、更に生徒を一人逃がしました」

 

(邪魔? あぁ、位置的に圧紘が上手くやってくれたようね!)

 

「……は? はぁ───」

 

 落胆を一切隠さない声とガリガリガリと首を掻きむしる音が響き、レイミィは伏せ札の一枚が上手く噛み合ったことに内心で喜ぶ。13号が健在で生徒が一人逃げた、つまり救援を頼みに行ったのだろう。

 

 もっとも、それは少しばかり無駄足になってしまうが彼らにはその辺りは伝えていないので仕方がないこと、寧ろこの状況で抜け出せたことに驚きを隠せない。

 

「黒霧おまえ、おまえがワープゲートじゃなかったら粉々に殺してたよ」

 

「申し訳ございません」

 

「あ───、ゲームオーバーだ、ゲームオーバー。何十人ものプロヒーローは流石に勝てないや、現状でも負けてるってのにさ……いいや、帰ろっか」

 

 ゲームオーバー、その単語に彼の精神性がよく現れているとレイミィは死柄木を出来る範囲で分析し始める。彼は何処となく子供っぽい部分が強い、物事をゲームに例えると言う部分は大人もやるので除外しておき、順調に言ってるときと何かしらの妨害を受けた時の情緒の落差が彼女には子供っぽいと感じさせる一因になっている。

 

 それにしてもとレイミィは思う。ここまで用意周到出来たというのに帰るという選択肢が出てきたのはどういう了見だと、引き際をしっかりと見極めていると言えばその通りなのだが、どこか不気味なものを感じざるを得ない。

 

 などと推測してしまったのは彼の『帰ろっか』の一言で油断、とまでは行かなくとも気を緩めてしまっていたのが原因であり、今回に限れば悪手と言わざるを得なかった。

 

「あぁ、でも……俺も脳無もあの子供に傷つけられてるんだよな、そのまま逃げ帰るのも癪だし」

 

「えっ?」

 

「全力であの子供を殺せ、見せしめってやつにしよう」

 

 思わず呆けた声が出るレイミィ、死柄木が何か言っているがそれを聞くよりも前に目の前に現れた脳無の拳に彼女の思考が追いつかなかった。見えなかった、さっきの脱出も、背後からの一撃も単純に視界の外だからと思っていたし、蹴り飛ばしたチンピラを弾く動きは辛うじて見えたつもりでいたが実際はまるで違った。

 

 なるほど対オールマイトと断言するだけの能力はあったらしい、この状況だと言うのに脳天気な感想を抱いてしまうのは現実逃避か、或いは……

 

「バートリーさん!!!」

 

「レイミィちゃん!!!」

 

「バートリー!!!」

 

 いつの間にかそこに居たのだろう、水難ゾーンの水辺から隠れるように居た出久、梅雨、峰田が叫ぶと同時に彼女の顔、正確には防御のために挟み込まれた両腕に脳無の拳が叩きつけられ倒壊ゾーンの外壁まで吹き飛び、轟音と土煙を立てて姿が見えなくなる。

 

 致命的な一撃、誰がどう見てもそうとしか思えない光景に絶句する三人。いや、近くで戦っていたイレイザーヘッドも、ゲートから広場を見ていた黒霧に散らされなかった13号と一部のA組の面々も同じ感情で居る。

 

「ははっ、決まったってやつだろありゃ」

 

「咄嗟に両腕でガードし後ろに飛んだようですが、あの程度では衝撃が殺せるはずもありません、死にましたね」

 

 淡々と告げられた言葉に誰も何も言えない。否定しようにも先程の光景を思い出してしまい、口が動かない。何よりも外壁が崩れるほどの威力で叩きつけられていくら異形型とは言え無事で済むはずがないと思ってしまい、誰もが彼女の生存を絶望視してしまう。

 

「いやいや、あの娘を舐めないでもらえるかな?」

 

 ただ一人、13号の隣りに居たスーツに丈の長いトレンチコートを着た男性が静まり返った場に異を唱えた。正体は圧紘、13号達の危機に介入し【彼女】を救っていたのだ、ともかく彼からすればあの程度で殺せたと思っている(ヴィラン)に対して笑えるよそれと言えるくらいには彼女の生存を信じていた。

 

 信じていた、否、あの程度で死ぬようならもっと昔に彼女は死んでいたのだから、死ぬはずがない。そんな無茶苦茶な根拠に死柄木は何だよそれとあとアイツ誰だよと同時に思うが、それが彼の口から質問で飛び出ることはなかった。

 

「痛いわね全く……」

 

「おいおいマジで生きてるのか……」

 

「あら心配でもしてくれてたのかしら? それとどうしたのかしら化け物でも見るような目をして、まぁ手が邪魔で目どころか表情すら分からないんだけど貴方」

 

 バサッ! と力強い羽撃く音がすれば瓦礫が消し飛び、現れたのは先程よりも大きな羽根を生やし紅い霧のようなものが身体中から漏れ出ているレイミィの姿、見ただけで彼らは分かった何かが大きく変わっていると。

 

 例えるならば彼女が言ったように化け物と対面してしまったかのような寒気を死柄木は感じ取り、言葉を失う。

 

「さて、まだ時間はあるわよね? さっきの下手くそで野蛮なダンスで構わないわ。合わせてあげるから掛かってきなさいよ」

 

 吸血姫の降臨、傲慢とも言える態度で(ヴィラン)を挑発する彼女にはその言葉が似合うだろう。




戦闘シーンは難しい、はっきり分かんだね。

便利屋メモ
ブラッドチェーンは腕から飛ばす場合は数は出せないけど威力や貫通力は高かったり、絡ませて振り回すとかが出来て便利。
コウモリからの遠隔射撃の場合は数は出せるけど威力とかが弱かったり、突き刺すしか出来ないという差別化がある。
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