私信
多分、二十日頃に一度ミスって投稿されましたが見なかったことにして下さい
「させませんよ」
『!!』
前回の場面から時間を少し巻き戻し、13号とA組の前にレイミィとイレイザーヘッドを突破した黒霧が現れた辺り。唯一のゲートの前に陣取った彼は丁寧な、されど無機質のような気味悪さを感じさせる声で自分たちの目的を告げる。
「初めまして、我々は
態とらしく間を置く、13号は警戒し何時でも個性を発動できる体勢にA組の面々も全員がという訳ではないが何時でも戦える心構えで黒霧を睨む。
「平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
告げられた敵連合の目的に出久の思考が一瞬だけ固まる。あのオールマイトを殺すとか何を言っているのだと普通ならば言えるだろう、けれど彼だけは違う。
彼だけは知っている。今のオールマイトは酷く弱体化しているということを、ならばもしかしたら出来てしまうかもしれないということを。
「オールマイトを? 冗談って感じじゃねぇな、ここまで用意周到に襲撃してきたとなりゃ本気でやれると踏んでるってことか」
「な、なにいってんだよ轟……お、オールマイトが殺されるはずねぇだろ!」
「こいつらはバカだがアホじゃねぇ。手段があるから奇襲を仕掛けてきてんだ」
目の前の黒霧に警戒しつつ焦凍が思い出すのは食堂でのレイミィの姿。あの時、不自然なほどに箸を持つ手に力が加わってたのをその時はどうしてかは気付かなかったが今なら分かる。
彼女はこの襲撃を何らかの手段で知っていて、その上で緊張してたのだと。チラッと広場の方角を見れば絶えず聴こえる戦闘音、少なくとも有象無象にレイミィがやられるとは全く思っていない。
けれど、オールマイトを殺す手段と思われるあの大男が相手になったら彼女も無事では済まないハズ、なら自分に今できるのはと考え両手に氷と【炎】を纏わせ戦闘態勢に入る。
「(さっさと目の前のあいつを突破して学校に救援を頼むのが一番か)って!?」
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
驚く焦凍の視線の先には先手必勝とばかりに飛び掛かる勝己と切島の姿。合わせればいいだろうに慌て過ぎだと思うが
「危ない危ない、生徒と言えど優秀な金の卵……」
「ダメだ、どきなさい二人とも!」
それでも奇襲に近い形での攻撃は何らかのダメージは与えられるはずと追撃の構えを取った焦凍が見たのは無傷で佇む黒霧、まるでダメージが入ってない姿と声に13号が叫ぶが一歩遅く、向こうが動く。
散らして、嫐り、殺す。重圧すら感じられる言葉と同時に黒霧は己の身体を黒い靄としてA組全員を飲み込まんとする勢いで拡散、A組は一部を除いてほぼ全員が黒霧によって飛ばされる。
その光景を遠巻きで眺めている影が一つ。スーツに丈の長いトレンチコートを着た男性もとい圧紘は今のを見て、焦りすぎたねぇと呑気に感想を述べていた。
(とりあえず、皆散っちゃったようだけど、まぁ所長が言うには優秀みたいだしチンピラに負けたりはしないかな。危なくなったら手助けが入るだろうし)
それよりもここが一番やばいかなと何時でも個性が使える体勢で黒霧と対峙する13号と残りのA組の動向を見守る。どうやら天哉に学校へ救援を頼むという旨を彼に伝え、自身は黒霧を足止めする雰囲気に圧紘はそろそろ動くかなと未だに通信が途絶え使えない通信機に一言。
「こちら圧紘、行動を開始するよ」
正直に言えばレイミィは13号を警戒しているが圧紘からすると仮に敵対しても問題ないよという存在である。と言うのも【彼女】はあくまで救助活動をメインとしているプロヒーロー、戦闘はできなくはないけどレベルであり、この状況下ともなればプロヒーローといえど焦りというものは生まれてしまう。
だからこそ転移系の個性持ち相手に真正面からブラックホールを撃ち出そうとしてしまっているのだろうし、黒霧もそれを理解しているから慌てず個性が放たれる瞬間を待っている。圧紘はその一瞬の隙を突く形で黒霧に個性【圧縮】を使おうとするが靄全てが彼だとすると既に拡散している状況では無力化は難しいと判断。
ならばと対象を13号の背後の空間に変更、僅かな集中でブラックホールが出る直前の靄ごと圧縮を行えば、コロンコロンと圧縮されビー玉のような物体に変わり転がる音と誰かが歩いてくる革靴の小気味良い足音が場を支配しA組の前に立った圧紘はボウ・アンド・スクレープと呼ばれる礼を一つ。
生徒達は突如現れた圧紘に誰? っという視線が集まり天哉もあまりに唐突なことに困惑の色を隠せない声色で呟く。
「な、何が起きたんだ……?」
「ご無事で何よりです、13号さん」
「すみません、迂闊でした……」
「いえいえ、礼には及びませんよ。それにほら、もし万が一があったら私も怒られますから」
余程では仕事のミスでも怒らないレイミィだが、怒るとそれはもう怖いとは被身子の言葉。実際、それを見ていた圧紘も伊達や酔狂で所長やってる子じゃないんだなぁと感心するほどだったがそれはそれとしてあれは自分も受けたいわけではないのでと仕事には決して手を抜かない。
もっとも、それがなくても彼が手を抜くということはありえないのだが。今でも思い出せる、ある日唐突に自分の前に現れ、キラキラとした瞳で便利屋に来ないかと誘われた日を。
『貴方、祖父が義賊だったのでしょ? だったら便利屋に来なさいよ。え、指名手配されてる? ヘーキヘーキ、なんとかするから』
子供の気まぐれ、もしどうにもならなくてもシレッと消えればいいかと思っていたというのに気付けば、どのような手段を用いたか、自身にあった指名手配は消え、今日まで便利屋で働いている。
業務内容は偶に義賊として力をフルに使える依頼も来るが殆どは関係ない、それでも嫌にならずに寧ろ今の日常を大切に思っている。故に今回の依頼も便利屋を守るための一つとして、それと所長にやっとできた被見子以外の友達を守るために気張ろうかと思ってもいる。
「何者ですか、貴方のような者が居るとは聞いてない」
「私ですか? 今日雇われた臨時のスタッフですよ。災害救助の際の被災者役ってことでここの校長に誘われまして」
「校長……? 例のハイスペックと呼ばれる存在、まさか、この襲撃も見透かされていたと?」
さぁそれは一スタッフには分かりかねます。態とらしく、それでいてはぐらかす感じでもないよう黒霧の独り言に答え、チラッと13号にアイコンタクトを送る。
とりあえず、生徒達の身の安全が最優先となれば黒霧をこの場からレイミィ達の戦場に戻すのが一番早いし、彼らは所長の仕込みを知らないので救援を頼みに行きたいというのならば隙は自分が作ってみせようと。
「まぁ良いでしょう。一人増えた所で状況は変わらない、その個性も厄介ですが対処法がないわけでもないですから」
「その割には警戒しているように見えますけどね。ところで、ここに先ほど圧縮した物がここにあります」
スッと指に挟む形で取り出したのはビー玉状の物体。圧紘が個性で圧縮した物は例外なくこの物体に変化し、彼の意思一つで開放も可能、欠点として射程距離が短く、ビー玉状の物体になってしまうと中身が確認できなくなってしまい、確認するには一々開放しなければならない。
だが逆を言えば、相手からもコレの中身が何なのかわからないという利点にもなり、だからこそ今回の手品が使える。
「私の個性は【圧縮】、物体でも人でも空間でも、射程距離内であればこのように球体状に圧縮できるというものでしてね。しかも意思一つで中身は解放も出来る」
さて、コレの中身、なんだか分かるでしょうか? 指に挟んでそれを器用に移動させながら圧紘は黒霧に問う。問われた方は何が言いたいとばかりの態度を示すがその様子を見て彼は態とらしく溜息を吐き出してから、例えばそうと仕掛けに入る。
「先ほど圧縮したと言いましたよね? 貴方の靄とそこから出ていた【ブラックホール】……なぁ、コレをもし開放したらどうなるかって考えたりしないか?」
急に口調を変えた圧紘の言葉に黒霧があからさまに警戒したのが分かり笑みを深める。因みに口調自体はこちらのほうが彼の素に近い、事務所内でも滅多に見せないが
これで黒霧は彼を無視できない。真偽の程は分からずとも、もし真実であり目を離した、もしくはこちらが動きを見せた所で開放されしまえば、中身のワープホールから出てくる直前だったブラックホールが直撃、流石の彼も無事では済まない。
「さぁ、どうするよ。なんて、俺は甘くないんだなコレが、ほれ!!」
「今です、行きなさい委員長!!!」
「っ、待っててくれすぐに呼んでくる!!」
圧紘が黒霧に向けて圧縮した球体を投げつけ、同時に13号の合図を聞いて個性【エンジン】を全力で吹かせ走り出す天哉。無論、黒霧もそれを妨害しようと動きだすが、それよりも早く圧紘がフィンガースナップを鳴らして球体を解放、直ぐに靄を出して防御体勢を取ることを強要されるのだがブラックホールの吸い込まれる感覚は一向に来ず、代わりに聴こえるのは軽石が地面に落ちる音のみ。
まさかと靄を解除した彼が見たのはそこらから拾ってきたと思われる小石、そして再び一礼をしている圧紘の姿。後ろを見れば既に天哉の姿はなく、こじ開けたのだろうゲートだけが残っているという光景を見て彼は悟った。
「ブラフだったという訳か……!!」
「おいおい、ミスディレクションって言ってくれよ。手品の基本技だぜ?」
それよりもさぁと彼は広場の方に親指を指す。見れば多数のコウモリに囲まれる死柄木と真紅の鎖に拘束されている脳無の姿に黒霧はもし表情があるのならば悔しさを滲ませていただろう声で
「応援を呼ばれるのは確実、ゲームオーバーだ。いや、それよりも!」
ブワッと黒い靄の状態で広場の方向に飛んでいったのを確認してから圧紘はふぅと息を吐き出す。彼は逃げ足と欺くことだけが取り柄と言うくらいにはレイミィや血染たちみたいに真正面からの戦闘は非常に苦手であり、もし黒霧と戦闘になったらと考えると中々にキツイものがあった。
けれど、それはなんとか突破、とりあえずこの辺りの安全は確保できたと安堵の表情をしていると13号が改めてと礼を一つされ、次に麗日が実はと続ける。
「飛ばされたA組のみんな、大丈夫かな……」
「あー、それなら平気だと思うよ」
「へ?」
「校長が雇った臨時スタッフは彼だけじゃない、ということです」
13号の言葉にその通りと頷く。そう、この演習場には各エリアに便利屋の面々が臨時スタッフとして配置されており、一応レイミィの方針でA組の生徒に経験値を積ませるからと危機に陥らない限りは手を出さないようにとはなっているが、彼らのことだから援護に既に入っているだろうと圧紘は思う。
「この程度の有象無象なら貴様でもやれる、フォローはしてやるが常に周囲に気を配り囲まれないように立ち回ってみろ」
「は、はい!!」
一人は火災ゾーンにて孤立する形で飛ばされてきた尾白を流石に数の差が激しいとそれっぽい理由で参戦した血染。
「お嬢のご友人たちに怪我一つ負わせるなよ俺達!」
「勿論だ俺達、てめぇらチンピラに指一本も触れさせねぇからな!!」
「いや、待て俺達、学友にも経験値は積ませるべきだ!」
「……」
「分身、まさか実物をこの目で見れるとは!」
「スゲーゼ、ゼンブオナジニシカミエネェ!」
一人(?)は暴風・大雨ゾーンで慣れない環境と奇襲で危うく窮地に陥りそうになった常闇と口田のために自分自身を合計10人ほど個性【二倍】で増やし戦闘開始する仁。
「ふっふーん、人質取ったりは流石ですが背後に気を配り忘れたのは未熟ってやつですね!」
「あ、ありがとうございます。えっと……あら、そのエンブレムは」
「確か、レイミィの
「う、ウェーイ……」
上鳴の無差別雷撃で殲滅したと思われていたが地面に潜っていたチンピラに個性の反動でアホになった上鳴を人質に取られ窮地に陥った百と耳郎を救出するために【レイミィ】の姿で背後から強襲してから個性を解除して胸を張る被身子。
こうして各ゾーンに散らばってしまったA組は自分たちで、もしくは上記のように便利屋の援護が入ってなど経緯は違うがチンピラを制圧、あとは広場を残すのみとなるのだが
「レイミィちゃん!!!!」
〚今のはマズいぞ!〛
場面はレイミィに脳無からの一撃が直撃し倒壊ゾーンの外壁に突っ込んだところ、麗日が悲鳴を上げ、障子が直ぐにでも助けに向かわんと身体に力を入れたのを圧紘が大丈夫大丈夫と肩を叩き落ち着かせ、好き勝手言っている死柄木と黒霧に向けて
「いやいや、あの娘を舐めないでもらえるかな?」
かくして時間は前回に戻る。だが彼は余裕そうな言動とは裏腹にレイミィが切り札を切ったことに内心ではヤバいと焦り始める。
(オールマイトが先行して到着するとしてあとどのくらいだ? あまり長引かないことを祈りたいな)
レイミィ・バートリーの切り札は余程でなければ切られない。そして切ったということは今自分が向かっても何の助けにもならない、残されたのは早く到着してほしいなという祈りだけだった。
この世界線の圧紘さん、基本的に敬語で紳士的な口調だけど敵相手にすると素が出てくる感じです。
それと彼の個性って空間はダメだった気がするけどまぁ、ほら、成長したんだよ、うん
え、しれっと仁がトラウマ乗り越えてるって? まぁそういう時もあるんだよ
便利屋メモ
ブラックホール入りのは後日、13号監修の元、安全に処理されたとのこと