便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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今回の襲撃の事後処理とか手伝うので便利屋の臨時報酬になりませんかと交渉する吸血姫は居る


No.29『後始末が一番面倒』

 都心のとあるビル内のあるBAR。無人だったそこに黒い靄が現れてズズッと男、死柄木弔が抜け出してくる。

 

 続けて赤霧が姿を表し、最後に黒霧が靄状態から戻ったタイミングで死柄木が電源が入っているモニターに向けて

 

「先生、話とまるで違うぞ。オールマイトは弱体化してないし、何よりあんなフザけたほど強いガキが居るなんて聞いてない」

 

《違わない、と言いたいけど。子どもの方はすまない、私の調査不足だったね》

 

《うむ、お主等が舐めていたというのもあるがあれは想定外も良いところじゃな。して、脳無はどうした?》

 

 モニターからは機械音声ではあるが口調から男と推測できる声と老人の声の二つが流れ、老人の質問に黒霧が頭を下げながら回収には失敗したと言う旨を伝える。

 

 吹き飛ばされとかではないがアレ以上撤退に時間を掛けた場合、回収以前よりも死柄木の身が危うかったので撤退を優先したが故に回収できなかったと。

 

「調整中だという赤霧まで向かわせてもらいながらこの体たらくを晒してしまい、申し訳ございません」

 

《せっかくオールマイト並のパワーにしたというのに勿体ない。じゃがまぁ赤霧が無事ならばそれで良い》

 

 老人の声と言葉から本当に対して残念とは思ってない様子に黒霧は息を吐き出す。それから死柄木が赤霧の話で思い出したのだろう、自分たちを徹底して邪魔してきた子供に特徴的な部分について話し出す。

 

 曰く、赤霧と同じような個性を持ってるように見えたと、羽根を指さしながら告げれば機械音声の方が興味深いとばかりに声を漏らす。

 

《もしや……? ハハハッ、だとしたらこれは滑稽だ。ドクター、赤霧の調整を急いでもらえるかな?》

 

《なるほど、よもやあの時のか。分かった、可能な限り早く調整を終わらせてみせよう」

 

「先生、もしかしてそのガキ知ってるのか?」

 

 寧ろ今の会話で知らないとは思ってないけどと死柄木が聞いてみれば、機械音声はまたその彼女を軽蔑するように嗤いながら

 

《あぁ、よく知ってるとも。あんなことをしておいてヒーローを目指そうなんて、滑稽も良いところじゃないか。でも折角入学してるというのならば、祝いを送ってあげないといけないね》

 

 嗤いがBARに木霊す。それはそれとして急に話題の置いてけぼりにされた死柄木と黒霧は隅で静かに佇んでいる赤霧に目を向ける。今回の作戦の際に彼らが危機的状況になった時の保険として聞いていたがまさかあそこまで圧倒的だとは思ってなかったというのが本音だ。

 

 それもまだ調整中と言う段階で、もしこれが完成したのならばどうなるのだろうかと思いつつ、死柄木は上機嫌に笑う【先生】へ

 

「これからどうすれば良い、また手駒を集めて襲撃?」

 

《そうだね、時間を掛けて精鋭を集めよう。我々は自由には動けない! だから君のようなシンボルが必要なんだ、次こそは君という恐怖を世に知らしめよう、死柄木弔!》

 

 一度は退けはした悪は息を潜め力を蓄える。次に相見える時は必ずあのヒーロー達を、平和の象徴(オールマイト)を殺すために……

 

 一方その頃、襲撃を退けた雄英高校もといA組と教師陣はUSJにまだ待機していた。と言うよりも警察が来るのを待ってただけでありちょうど今到着したところという場面になっている。

 

 現在は警察による安否確認も終了し校舎に戻る準備をしており、レイミィ達便利屋は彼らの手伝いに入っていた。

 

「久しぶりね、塚内警部」

 

「やぁバートリー所長。雄英高校入学早々に大変なことに巻き込まれたね」

 

 言ってくれるわねと笑うレイミィ。彼とは便利屋を設立してからの仲であり色々と猜疑的だったりなんだりしていた警察に対して彼女は信頼できると断言し、それから彼女たちに依頼をちょくちょく回してくれているという割と頭が上がらない人物の一人。

 

 ただ、こうして分かるように上下があるとかはなく互いに気安く会話する仲ではあるのでレイミィ的にも好意的に見ている人間の一人でもある。

 

「とりあえず、聴取は学園に戻ってからで大丈夫かな?」

 

「えぇ、それで構わないわ。分かってる範囲は洗い浚い話すつもりよ」

 

「ありがたい。さて、ちょっと校長と話してくるから失礼するよ」

 

 ふぅと塚内が根津の下へ向かったのを見送ってからクラスメイトの方を見れば何やら雑談で盛り上がっている様子。中にしれっと被見子が混ざっている事に頬を引き攣りそうになるが抑えて、彼らの輪に加わることに。

 

 加われば、先ず身体は大丈夫かと聞かれる。流石に反動からの激痛を耐えている姿はほぼ全員に見られていたようで、本人も隠せるわけ無いかと思いながら

 

「平気よ。ただまぁ驚かせて悪かったわね」

 

「驚いたと言うか、急に苦しみ始めるから(ヴィラン)からなにか受けたんか思って……」

 

「つか、広場で見てた連中は皆そう思って駆け寄ろうとしてたもんな。いや、俺もだけど」

 

 瀬呂の言葉に思ったよりも心配させてしまったらしいことに改めて頭を下げるレイミィ、それを見て思わず、はえぇ~と感心するのが耳郎、百、上鳴達と会話していた被身子である。少なくとも中学の時はああやって同級生とかに頭を下げるってことはやってなかった彼女が素直に下げていることに驚いてるのである。

 

 無論、悪いと思えば謝罪とかはしていたがそれだけだし、寧ろそういった致命的なミスなどはしてなかったのもある、もっと言えば友達居なかったからこういう場面がそもそも無かったとも言える。

 

「レイミィちゃん、成長してるんですね~」

 

「なんていうか、レイミィの便利屋での立ち位置って所長だけど末っ子みたいな感じなん?」

 

「の、ノーコメントでお願いします」

 

 思いっきり目が泳いでんだがという上鳴の指摘が全てである。勿論、被身子は所長としてレイミィを慕っているからこそ秘書を務めているし、中学の時に自身の愛着を持ったものへ対する執着を彼女が見抜き、認め、受け入れ、両親からも異常だと言われた笑顔もレイミィは見た上で

 

『素敵じゃないの、それを普通じゃないだ何だで否定するほうが普通じゃないっての』

 

『血? いいわよほら、ん? 気にしないで頂戴。でもそうね、今の環境が苦しいって言うなら便利屋をやってるのだけれど私のところへ来ない? 歓迎するわよ』

 

 全てを受け入れてくれた彼女に被身子は心から感謝をして慕うことにした。だからこそ、住み込みで働きだしてから、数日後に電話にて両親が色々と反対してきた挙げ句、レイミィのことを異常者でお前を狂わせる悪人だと言われた際にそれはもう激怒した。

 

『そっちの言う普通って何!? それにレイミィちゃんを悪人だ異常者なんだって言って、私のことだって何一つ認めないそっちの方が異常者で悪人です!!!! もう良いです、知りません、絶交です!!!!』

 

 以降は何も関わってこなくなるほどの剣幕だったとレイミィは語る、ついでにその時に叩きつけるように受話器を戻したので電話は壊れてその修理代を被身子の小遣いから天引きされたのは今でも思い出せるし申し訳ないと彼女自身思っている。

 

 なお、被身子の両親にはレイミィが説得に説得を重ねて二十歳までは仕送りをするということにしてある。一応、親だし育ててもらった恩は返すべきだという彼女の考えであるが余談なのでここまでにしておこう。

 

「でも本当はレイミィちゃんにはあの技は使ってほしくないのです……」

 

「まぁ使う度に激痛に苦しめられる技なんて、見てる側も辛いよね」

 

「ですが、彼女の口ぶりだと何度も使ったことがあるのですよね? 何か身体に害が出たりは?」

 

 あまりに鋭い百の質問にうーんと考え込みそうになる被身子。あるかないかで言えば『ある』、あるけどこれは自分の口からは勝手に言えない内容になってしまうので考えに考えて秘書は結論を出した、丸投げしてしまおうと。

 

「レイミィちゃんから聞くほうが良いと思うのです。私も、その、あまり喋るなって怒られてて」

 

「……なぁ、それって口外できないくらいにヤバいって話ないか?」

 

 あぁもう鋭い子が多いですね雄英高校って!! などと思う被身子だがコレに関しては彼女の言い方があまりに迂闊だったと言うだけである、これがもし圧紘や血染だったらもう少し誤魔化しようのある言い方をしていただろう、彼女はかなりうっかり屋なのである。

 

 どうしよう、とは思うが言えないのも事実なので上鳴の言葉には曖昧な表情でお茶を濁す選択を取る。それが彼女たちに更に確信を持たせてしまうが下手に喋るよりはマシだろうという判断だ、そんな所から彼女の秘密の一つが漏れそうになってるとは知らないレイミィは一通り謝罪をしてから

 

「ただ今回使ったあの技は相手は選ぶつもりだけど、今後も使うのは間違いないし、あまり心配しないで頂戴」

 

「……なら、お前にだけ負担をかけることのないように俺達が強くなれば良いんだな?」

 

「おぉ、確かにそうだな!! 今回の(ヴィラン)が相手でも戦えるくらいになればあれを使わなくて済むってことだもんな!」

 

 焦凍が彼女を見据えそう告げれば、切島が続き、気付けばクラスメイト全員が頷いてからワイワイと盛り上がり始める。決して彼女だけに戦わせない、あの(ヴィラン)の襲撃を受けて、本物の悪意を真正面からぶつけられて尚もそう言える彼らの強さに、その煌めきに思わず目を細めてしまう。

 

 とても眩しい。今日までに何度思ったのだろうか、そんな想いがまた胸の内に広がる、だからだろうか、彼らを弱いとも足手まといとも思ってはいないがそれでもこう思うのはおそらく彼女の人間性が原因なのだろう。

 

(ありがとう、そしてごめんなさい、私は私のために、それと貴方たちのために、無茶を重ねるつもりだから)

 

「バートリー少女。もう、大丈夫そうだね?」

 

「そっちこそ、まだ余裕あるようで何よりだわ」

 

 折角、いい気分になってたというのにどん底に落とされましたという表情を隠さずに背後に立ってきたオールマイトにそう返す。確かここに来る時点で残り時間が二時間ちょっとだと聞いていたが、あの戦闘でそれを消耗してないかという確認ついでの言葉に向こうはHAHAHAと笑い。

 

「君たち便利屋のお陰でまだまだ動けるよ、感謝する」

 

 別にと言ったタイミングで生徒達の引き上げが決定、流石にコレじゃもう授業って訳には行かないかと思いつつ彼女もその指示に従い一度学園へと戻ることに。

 

 他の便利屋メンバーも今日の襲撃で聴取があるので同行、因みに脳無は無力化と言うより指示者が居なくなったので行動不能になったらしくそのまま捕縛されたとのこと。とその話はおいておき、戻りのバス車内にて出久からレイミィに聞きたいことがあると珍しく話し掛けてくる。

 

「あの、赤霧だっけ。凄い強かったなって」

 

「少なくともあの状態の私じゃ手も足も出ずにオールマイトですら動きが完璧に捉えられない、間違いなく向こうの最高戦力でしょうね」

 

「んだよそれ、てめぇはまだしもオールマイトもだと?」

 

 流石にこれは勝己も衝撃を隠せない様子で言葉を挟む。誰もが認める最強のヒーローですら捉えきれない速さ、ヒーロー界で最速とも言えるホークスであろうともそこまでじゃないとなれば赤霧の異常性が浮かび上がる。

 

 あの返り討ちにあった時も周りから見れば一撃でふたりとも倒されたように見えただろうが実際はレイミィには蹴りを三発、殴りを二発、被身子には蹴り4発をあの一瞬で叩き込んできている。その至近距離の攻撃だって彼女には見えなかった、気付けば吹き飛ばされたことでやっと攻撃されたと認識したレベルである。

 

「正直に言えばまだ目の前で見たことが信じられなかった。けど、うん、バートリーさんと渡我さんが吹っ飛ばされたのを見たけど本当に一瞬だった」

 

「ケロ、私も驚いちゃった。誰も動けてなかったんだもの」

 

「あんなの誰も勝てねぇよって本気で思っちまった……」

 

 撤退途中だったが出久、蛙吹、峰田はしっかりとその場面を見ていた。だからこそ信じるしか無く、同時に信じたくもなかった。相澤の抹消も位置的には効果内なのも出久は気付けていたのでその気持ちは大きいだろう。

 

「ケッ、何が誰も勝てねぇだ。寧ろぶっ殺しがいがある!!」

 

「頼もしい限りだわ本当に」

 

「んだよ、言いてぇことがあるならハッキリ言いやがれ」

 

 ギロリとした勝己の視線がレイミィに突き付けられるが彼女的には非常に心地よい視線なので微笑みながら、いや、それ受けて微笑むのかよお前と周りが妙な空気になっているが気にせずに、そうねと一つ付け足すことに。

 

「あの赤霧は私が相手することになるでしょうね……それに、こう、何でか分からないけど『懐かしい』って思ったのよね」

 

 本当になんだか分からないのだけれどと言って窓から外を眺める彼女の目は、何処か悲しい目をしていた。




人数が一気に増えると相変わらず何どう書いていいか混乱して駄目になるな君は!!(自虐)

便利屋メモ
塚内警部と仲が良いのは勿論だが、その部下の三茶ともよく会話をしたりする。

警察組織から便利屋の評価は利用できる時に利用しておこうの精神。
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