便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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速い相手に対する対処法。


No.35『スピードトレーニングinレイミィ』

 二週間後の雄英体育祭に向けた特訓二日目、今日も昨日と同じ公園に来た緑谷出久は困惑していた。

 

 話では自分の特訓に合わせて、もう一人連れてくるというのは聞いてたし、その人物がレイミィの秘書である被身子だというのも知っている。件の人物は襲撃事件の際に窮地に陥った百、耳郎、上鳴を救出してくれた人物であり実力も確かだということも。

 

 上鳴曰くヤバいくらいに美少女だというのも今日、彼は学校で聞いた。彼としてどんな感じで戦ってたのかを聞きたかったがそこは無情にも返って来なくて困ったのは秘密だが。

 

「被身子、ステイ」

 

「犬みたいな扱い止めてくれますかレイミィちゃん!」

 

 とりあえず会えば分かるだろうと来た彼を出迎えたのはキラキラした瞳で出久を見る被身子と彼女の首根っこを呆れながら押さえるレイミィ、それを見て盛大に溜息を吐き出している血染の三人であり、それを見せられた出久は困惑していた。

 

 けれど自分の特訓に付き合ってくれるということは聞いているので先ずは被見子に挨拶をとまだ首根っこを押さえられている彼女に向け

 

「えっと、は、はじめまして緑谷出久です」

 

「はい、はじめまして渡我被身子です!! ハグしても良いですか!?」

 

「ステイだって言ってるでしょ!!!」

 

 グワッと距離を詰めようとするのを止めるレイミィに幻覚なのは間違いないはずだと言うのにハッキリとリードが見えてしまい出久は目を瞑って頭を振る。

 

「はぁ、良いから特訓を始めるぞ。緑谷、先に準備運動をしておけ」

 

「あ、はい、えっと昨日みたいに個性を纏わせてランニングからで良いんですよね」

 

「それでいい」

 

 確認を終えてから意識を集中させOFAを発動、戦闘訓練での場面を入れればまだ三回目のはずだが彼の中で感覚を大体掴んだのか、今回の発動は約1秒半まで短縮に成功。ただ血染としては呼吸するのと同じ速度で発動できるのが好ましいのでここからさらに詰めておきたいと考える。

 

 戦闘となれば1秒でも隙ありと言われかねない、コンマ秒が理想なんだが二週間で行けるかと考えつつまだじゃれ合っている二人に

 

「いい加減に切り替えろ、何時まで戯れてるつもりだ」

 

「悪いのはこの娘よ、全く」

 

「うぅ、良いですし、今日はたくさん組手で出久くんと触れ合えますし!」

 

 ニコニコハイテンションでそんな事を宣っている被身子にレイミィは呆れた表情をしたまま、クルッと絶対に選択を間違えたと思うと言う感じの表情を血染に向ける。

 

 一つ言っておくと彼女は基本的に真面目ではある、あるのだが今回の依頼は毛色が違い、そこに彼女の好みど真ん中の少年が相手ですとなってることでちょっと真面目の心配なるレベルの被身子が完成されてしまっている。

 

 確かに昨日、血染が言ったように様々な戦闘スタイルを見せ、理解させてとなると彼女は非常に適任であるのは間違いないのだがと積もる不安に思わず

 

「被身子、これでも依頼主のオールマイトからは即日50万って言う大金貰ってる依頼だからね? 趣味に走るのは良いけど程々にして頂戴」

 

「む~、なんだか今日のレイミィちゃんは意地悪ですね。私が依頼でおふざけしたことないって知ってるじゃないですか」

 

「だったらその我慢出来ないという感じの表情と雰囲気を抑え込みなさい」

 

「ブーメランって言葉知ってますか?」

 

「あ?」

 

 急に挑発してくるじゃないのと言う声と表情を被身子に向けるが、向こうは向こうでなにか間違ったこと言いました私? という表情を返してくる。

 

 因みに言うまでもないが仲が悪いとか今朝喧嘩したとかではないので安心して欲しい、ただちょっと珍しく戯れ着いてくるので楽しんでいると言うだけである。がそれはそれとしてまたじゃれ合いで時間を取られるのは非常に面倒だと思った血染が警告なしので拳骨を二人に振り下ろし、鈍い打撃音と遅れて二人の少女の悲鳴が公園に木霊する。

 

「いったーい!!!! わた、私悪くないでしょ今回!!!」

 

「うぅ……痛い、痛いです!!! 暴力反対です!!」

 

「もう一発行くか、あぁ?」

 

 なんか便利屋内のヒエラルキーっていうのがよく分かる光景だなぁと個性の調整に集中しつつランニングしている緑谷はそんな事思う。普段の学校での彼女しか知らない彼からすれば、レイミィ・バートリーと言う少女は大人びており、頼りになるという事しか分からないのだが、あれがもしかしたら本来の彼女なのかもしれないと。

 

 ともあれ、あの拳骨が効いたのは確かなようでそれからは出久のランニングが終わり、柔軟運動も完了するまでは(比較的)大人しくそれを見学、そしていよいよとなるが先ず相手になったのはレイミィだった。

 

「え、私じゃないんです?」

 

「そんな敵を見るような目で見ないでよ。私の戦い方は変身してない貴方じゃ出来ないでしょうが」

 

「緑谷、一度は見てると思うがこいつとの組手では反撃や撃破は考えるな。自身の目で負えない相手がどのように動き、何処の隙を狙い自分を襲ってくるかということを理解することに重視してくれれば良い」

 

 なので今回の組手で彼女の一撃の威力は極限まで抑えるようにと言うことになっている。それでも塵も積もれば山となる理論で受け続ければ無視できないものになるのでと出久はその指示の意図に気づく、入学初日の個性把握テスト、それに襲撃事件の時にも見ていたので分かるがどう足掻いても今の自分に彼女の動きを捉えるのは不可能に近い、ならば。

 

「つまり、目で追うのではなくて気配と経験からの勘を補うという訓練ってことですか赤黒さん」

 

「理解できたのならば心配ないな。早速始めよう、バートリー」

 

「はいはい、んじゃ先ずは流しで行くわよ」

 

「レイミィちゃんの流しって、一般的な流しじゃないですよね」

 

 恐らくは被身子のアドバイスだろうと出久は受け取り、分かりましたと頷くのだがそれが彼女にクリーンヒットしたらしくニコニコハイテンションからニコニコキラキラハイテンションにランクアップする被見子に血染はこいつの組手の前にバートリーに血に変換したコウモリを配置させるかと考え始める。

 

 と、ここで彼の意識がブレーキが壊れかけている被身子から動き出したレイミィと出久の組手に向かう。昨日の血染との訓練と同じように先手を打ったのは出久ではなく相手側のレイミィ、だが流しだと言ってた踏み込みだけでも血染とは段違いな速さに反応が一手遅れてしまう。

 

「しまっ、あいたっ!?」

 

「先ず一撃。今の覚えておきなさい、行くわよ」

 

 グンッと彼の目からは消えたようにレイミィが動くに出久は今の一撃と速さを即座に頭に叩き込み脳内で思考をフル回転させる。確かに早い、でも襲撃事件の時に見せたアレではない、まだ辛うじて音が分かる、影が見える、何よりこの訓練は目だけを頼るものではない。

 

 集中する、気配という曖昧なものを明確に感じようとするがそれよりも前にレイミィの猛攻に晒されて集中が途切れてしまう。そんな流れが数分と続く、目の前、背後、両側面にフェイントや音だけで翻弄とあの手この手で攻め手を変えてくるレイミィに出久は碌な反応すら出来ずに思わず焦りそうになる心を押し止める。

 

 其の為の訓練だと、また額に掌底を当たられて怯みながら直ぐに立て直して彼は考え、【理解】しようと思考を巡らす。

 

「うっ!?(駄目だ、曖昧なものを感じようなんて僕にはまだ出来ない。何か、何か形が分かりやすいものじゃないと!)」

 

「流石に昨日とは勝手が違うからすぐに、とはいかんか」

 

「寧ろ速さで圧倒されてる相手に直ぐに適応したらびっくりなんですけど」

 

 が、実をいうとレイミィは内心では舌を巻いていた。流しからギアは上げていないのは彼がなにか取っ掛かりを直ぐにでも掴めるようにという配慮ではあるのだがそれとは関係なしに彼女の動きに反応する場面が見え始めているからだ。

 

 無論、それがすぐに開花するようなものではなく、偶然という部分も多々見受けられるがそれでも確実にこちらの動きに対して何かを掴み始めているの確かだとレイミィは攻撃をしながら考える。

 

(【視えてる】わけじゃない。もしそうなら目や顔が動くはず、開始直後はそうだったもの)

 

「うわっとと(避けれた! いや、落ち着け、落ち着け、今のは当てずっぽうの勘が当たっただけに過ぎない、もっと根本的な何かを感じるんだ!)」

 

「へぇ! やるじゃないの!!」

 

 目の前に現れ、フェイントを掛けてから、右側面に移動からの蹴りを繰り出すが見栄えは良くないが転がるようにして回避されたことに思わずとう声がレイミィから漏れる。同時に観戦組も避けられたという事実に驚く、先程までは避けるどころか反応すら出来なかったそれを偶然ではあるとは言え避けた。

 

「あ、笑ってますよレイミィちゃん」

 

「アイツもアイツで、テンション上がってくるとブレーキが壊れるのは本当に被見子の事は言えないよな」

 

 血染くんも人の事言えませんよ。と被身子が言わなかったのは決して良心からとかではなく言ったら間違いなく面倒なことになるというのが分かっているからである。なお、被身子も人の事は決して言えない模様、便利屋で好戦的な笑みを浮かべずに居られるのは今のところ、圧紘と仁だけである。

 

 便利屋の笑顔事情は置いておき、この事でレイミィの中でギアが一つ上がってしまったのか例の笑みのまま動き出すがその速さが明らかに先程までのとは違うことに出久は気付き迎撃しようとするが

 

「ぐぎゃ!?」

 

「あっ」

 

「阿呆が……」

 

「出久くぅぅぅん!!!???」

 

 速度が上がるということはそれに相乗して攻撃の勢いと威力が増すということ、なので出久が迎撃体制を取ったとしても上がった速度に反応できるわけもなくもろに直撃、彼は地面を転がることになる。

 

 襲撃事件の時は脳無と言う特殊な個体だったがゆえに目立たなかったが、速度を最大まで開放した彼女の攻撃力は決して侮れるものではないのだ。今回はまだ全開ではなかったがそれでも素人の出久を吹っ飛ばすには十分である。

 

 上記の反応を解説するならば出久はなんとか堪らえようとするがどうにもならず吹っ飛び、それを見てレイミィはテンション上がりすぎてやらかしたという声を上げ、血染が軽く血管を浮かばせキレかけ、被身子は吹っ飛んだ彼を介抱しに走っていく。

 

「はぁ、バートリーとの組み手は此処までにしておくか。おい、何か言い訳があるか?」

 

「な、無いです。ちょっと、緑谷の飲み込みの速さにテンションが上っちゃいました」

 

「何のために手を抜けと言ったのか分かってるんだろうな、まぁいい明日からは気をつけろ」

 

 慣れた感じに正座に移行している彼女をもう暫くそのままで居ろと告げてから出久の方を見て、血染はまた溜息を吐き出すことになる。なぜ、被身子は当たり前のように膝枕を提供しているのか、いや、彼からということは絶対にないので被身子の暴走だろうというのは聞くまでもなく理解できる。

 

「あ、あの、いや、その、だだだだだ、だい、大丈夫ですからぁ!?」

 

「本当にですか? あれだけ勢いよく転がったんですよ? 痛いところとかあるとも思うんです、だからもう少しこのままでも良いんですよ?」

 

「おい、何やってる被身子」

 

「何って、見ての通りレイミィちゃんに虐められた出久くんの介抱ですけど?」

 

 頭痛が血染を襲った。見れば出久は完璧に状況が飲み込めずにフリーズし始めており、それを見てやっと大人しくなりましたねとかのたうち回る被身子、肝心のブレーキ役のレイミィはまだ正座しているので止めることも出来ないと言う状況を上手く使ったのだろう。

 

 このままじゃ特訓どころじゃなくなる。ただでさえ雄英体育祭までの時間で彼を仕上げるのだって厳しいのだから無駄は省くに限ると血染は

 

「休憩は終わりだ、被見子準備しろ」

 

「むぅ、もう少し、ほら、まだちょっと……はぁい」

 

「た、助かった……」

 

 しれっと彼の身体を抑え込んでた手を離せば、即座に立ち上がり息を整える出久。ここまで積極的に接触してくる異性というのは彼にとって初めてであり、顔を真赤にさせてしまっている姿を見て被身子は例の特徴的な笑みを浮かべたまま

 

「カアイイですねぇ! もう本当に、好きになっちゃいます!!」

 

「へぇ!!!???」

 

「ヨイショっと、鳴き声みたいなものよ気にしないであげて」

 

「鳴き声!?」

 

 正座の状態から立ち上がりながらレイミィが言うが、あながち間違いでもない。被身子自身言っているが自分が惚れやすいとのことで何かに付けて好きだとかなんとかよく言うので鳴き声と彼女は題している。

 

 それよりもと被身子が準備運動をしてる間に彼女は聞きたいと思ったことを聞くことに。あの組手の最後の最後、思わずギアを上げてしまったレイミィの一撃をどうして間に合いこそしなかったが攻撃が来る方向に防御態勢を取れたのかと聞けば

 

「えっと、何ていうのかな。空気の流れというか、こう、あっ、そうだ、視線! 視線を感じてその方向から来るのかなって」

 

「視線……?」

 

「オールマイトから聞いたが元は無個性だったらしいな。つまり譲渡されるまでは周りの目が気になってたとかあるか?」

 

 どうして視線がと考えているレイミィの隣から血染がそんな質問を飛ばす。それが一体何の関係がと思いそうなるが、とりあえず黙って聞くことに。

 

「は、はい、無いと言えば嘘になり、ます」

 

「恐らくはそれだろう。お前自身の飲み込みの速さと【理解】することへの高い適性、この二つが噛み合った結果、他人の視線というものに過剰なまでに敏感になっている」

 

「そうか、だから私の姿を目視できなくても視線というものには反応できる。できるから、防御が取れるってこと?」

 

 だろうなと頷く。無個性が故に虐められ、常に他人の視線を気にして過ごしていた彼だからこそのやり方、もしこれを更に磨き上げれば出久は戦闘中に常に他人の視線から動きの予測が可能になるのではと血染は考える。

 

「よっし、準備運動完了です!」

 

「とりあえず今の話は頭の隅に入れておけ、被身子にも使えるかもしれんが始めは昨日の俺との組手と同じ感じでいい」

 

「視て理解する、ですよね」

 

「ま、初見のあの娘を楽しみなさい。被身子も出し惜しみしなくていいからね!」

 

 察しの良い弟子を持つと楽しいな。気合の入っている出久の姿に血染はそんな事を思いながら二人が相対するのを見つめ、そして

 

「行きますよ! 出久くん!」

 

「は、はい、よろしくお願いします!」

 

 コレが後に緑谷出久の戦闘スタイルの柔軟さに繋がる組手が今始まった。




渡我ちゃんまで行かなかったの笑うんですよね(ワラエナイヨ!)どう考えても前半部分のやり取りが長すぎるんだよなぁ

便利屋メモ
被身子の鳴き声は【好き!】【カアイイ!】【惚れました!】などが存在する。君は清姫(FGO)か?
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