便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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ちょっと轟家と便利屋のあれこれの開示編


No.43『昼休みと言えど所長は休めない』

 雄英体育祭臨時スタジオの食堂には勿論ながら出張という形でランチラッシュが来ており、しかも体育祭ということが割と豪華なお昼が食べれるようになっている。

 

 ということで本日のレイミィのお昼は天丼と鰯のつみれ汁、なのだがその天丼が彼女らしいことになっている。

 

「ば、バートリーさん、それ鰯の天ぷらしか無いように見えるんだけど気の所為だよね」

 

「鰯の天ぷらだけよ?」

 

「鰯好きもここまで来ると凄いな」

 

 天哉の呆れとも取れそうな声にレイミィは反論した。何も鰯だからというわけではないと、鰯の【天ぷら】と言うのが重要なのだと。実際に作ってみると分かることだが天ぷらと言うものは本当に手間がかかり、その後の処理も割と面倒な料理であると。

 

「分かる」

 

「しかもそれを人数分よ、意外と大変なのよ」

 

「分かるわ」

 

 うんうんと頷く麗日と蛙吹にレイミィは分かってくれて嬉しいわとサクサクの天ぷらを食べる。過去に事務所の夕飯で天ぷらを作った際は鰯以外も作ることになり、下準備やら何やらで相当な時間を掛かり、ついでにお金も掛かった。

 

 なので彼女は気付いた、天ぷらは高級料理なのだと。それがワンコイン以下で自分が作るよりも美味しい天ぷらが食べれるとなればこれだけを注文しても不思議じゃないだろうと。

 

「でもそっか、レイミィちゃんが作るってなると人数分だから沢山になるんか」

 

「便利屋での夕飯だからね。だからオムライスだって気軽に作れないのよ」

 

 オムライスの場合はただでさえお高い卵を湯水の如く使用するので天ぷら以上に一食に掛かる金額が跳ね上がってしまうので基本的に彼女たちの夕食は野菜炒めや、近所のスーパーや商店街での安かったものからの献立と食費を押さえることには結構な苦労している。

 

 なので轟家の夕食に何度か誘われた際は結構、感謝していたりする。とは言っても正面切ってそれは言えないので、何らかのお礼はしたいと考えているのだがと此処で折角近くに居るんだから聞けばいいじゃないと気付いたレイミィが焦凍へ、それについて聞いてみれば

 

「お礼って、寧ろ姉さんはバートリー達に感謝してるから逆にお礼として夕飯を誘ってるらしいから」

 

「大袈裟な、ちょっとこう、そっちの問題に首突っ込んでかき乱しただけじゃないの」

 

「それが返しきれないほどの感謝なんだよ」

 

 曰く、まだ完全にではないけど便利屋の介入によって家族がまた一つになり始め、母親も快方に向かっており、焦凍も思い詰めなくなった。これだけのことをしてもらったったのだから夕飯くらいなら何時でも来てくれて構わないと。

 

 ここで家庭内問題を改善させたという新たな情報が出てきて驚くのは聞いてた麗日たちだろう、まさかここまで深いことだったとは思ってもなかったという風な声を出せばレイミィは気恥ずかしさを隠すようにつみれ汁を飲んでから。

 

「いや、あれよ、気に食わなかったから首突っ込んだってだけだし」

 

「バートリーくんが便利屋として向かいながら感情的にとなると相当なことなのではないのか?」

 

「……当時の私は未熟だったのよ」

 

 そう未熟だった。だからただ一言『弟を助けて』と言う依頼だったはずが、エンデヴァーの家族への態度を見て、聞いて、己の中の何かを抑えきれずに感情的にぶち当たり徹底的にかき乱しただけ。

 

 結果的にそれが上手く噛み合って改善しただけ、だから褒められたことではないと伝えるが返ってくるのは全員の優しい笑みと焦凍からの

 

「素直じゃねぇな、お前」

 

「じゃかしいわよ。っとご馳走様でした、ごめん、ちょっと席を外すわ」

 

「構わないけど、どうかしたの?」

 

 空の食器が乗ったお盆を持ち、そう告げたレイミィに蛙吹が聞けば彼女はこれから臨時警備スタッフとして依頼を受けている圧紘と被見子に一度状況確認などの話し合いをしに行かなければならないとのこと。

 

 更にこの後の流れや、別の依頼でこの場に居ない血染と仁とも確認の連絡などを取らなくてはならないと、昼休みではあるがやることが多く、なので

 

「一応、午後のレクリエーションが始まる前には戻るつもりだけど、昼休み中は居ないものとして扱って頂戴、じゃ!」

 

「いってらっしゃ~い、うぅん、やっぱ忙しいんだねレイミィちゃん」

 

「生徒ではあるが、所長でもある。本人も分かっているだろうけど、なかなか出来ることではないよ」

 

 食器を返却してから人混みの隙間をすり抜けるように居なくなったレイミィを見送り麗日と天哉が呟けば、焦凍と出久も同意するように頷く。同時にただの一生徒として居られない、だからこそ彼女のあの選手宣誓なのだろう、楽しめる時には楽しむ、青春の1ページを一枚でも多く自分の中に残したいがゆえの叫び。

 

 なお、クラスメイトたちはそう思っているが本人的にはそこまで深刻なものではなく、ただ楽しめない祭りに意味はないわよねというノリでしか無いがレイミィがそれを口にすることはないので知られることはないだろう。とそこへ上鳴と峰田のコンビがふらっと現れて、誰かを探すように視線を動かしてから

 

「あれ、なぁ、バートリーはどうしたんだ?」

 

「へ、あぁ、さっき席を外したけど、用があったの?」

 

「え、まぁ用と言えばそうなんだが居ないのか……」

 

 妙に言い淀むその姿に蛙吹が怪訝な表情を晒し、もしかしてなにか企んでいるのではないのかと直球に聞いてみれば上鳴曰くそういうのではなく、ただちょっと聞きたいことがあっただけだとのこと。

 

 聞きたいことが、と言う部分に引っ掛かりを覚えるが結局、レイミィはこの場に居ないし、帰って来るのも午後の部が始まる前にはとのことなので、昼休み中は難しいんじゃないかと伝えれば

 

「うげ、マジかぁ。じゃあ、仕方ねぇな」

 

「ここはプランBだ上鳴、じゃあな!」

 

 プランBという言葉にやっぱりなにか企んでたのではと問い詰めようには本人たちは既に居ないので、警戒だけはしておくかという結論に収まる。一方、レイミィはと言うとスマホで二人の位置を聞き出してからその場に向かえば、ブンブンと片手を降る被身子と、その隣で穏やかな笑みを浮かべる圧紘が彼女を迎える。

 

「あ、こっちですよレイミィちゃん! っていったい!? な、何でおでこ叩いたんですか!?」

 

「警備の仕事をほっぽって人を応援してたのは誰だったかしら?」

 

 この指摘にぐぬっと一瞬怯むも即座に、状況的にも応援してて大丈夫だったと反論、本当かと圧紘の方を見れば彼も一つ頷いてから、やはりと言うべきか今年はちょっとしたいざこざもあまり起きず、仮に発生したとしてもプロヒーローが直ぐに介入してしまうので自分たち外部スタッフは割りかし暇とのこと。

 

「変な言い方をすれば、今年は不漁だね」

 

「うぅ、所謂ボウズってやつです~」

 

「ま、例年よりも五倍警備を増やしてるってことらしいし、仕方のないことでしょうよ」

 

 もしこれで根津からの依頼の件がなかった場合は思わず頭を抱えてくなる事態だが今年はそうではないので彼女たちも余裕がある、いよいよ雄英高校に足を向けて寝れないわねとはレイミィの言葉。

 

「ともすればテロなどは一応の警戒程度でいいとして、何かそっちからあったりする?」

 

「例の彼はなにか動きがありそうかな?」

 

 例の彼、もとい青山について聞かれたレイミィは彼は予選敗退と言う事実に多少落ち込みはしている程度であり、今はもう普段通りのテンションに戻っていると素直に答える。一応、情報漏洩などの警戒で定期的にモスキートを飛ばしては回収しているが特にそのようなこともなく、問題はないとし

 

「そもそもテレビ中継されてるんだから、変なリスクを負う必要もないのよね。血染と仁からはなにかある?」

 

「さっき定期連絡がありましたけど、特に異常はなし、またターゲットも発見できずとのことです」

 

 空振りかしらと思わず呟くが血染と仁は現在、別の依頼で【保須市】にて仕事中。その依頼内容は保須市にて脱獄した死刑囚【ムーンフィッシュ】が潜伏している可能性があり、また付近のプロヒーローも今回の雄英体育祭の警備に出払ってしまうので人手が欲しいというもの。

 

 始まりは四日前、身元不明のバラバラに切断された遺体の身元を判明させて欲しいというレイミィ宛の警察からの依頼から。その遺体の記憶を血から読み取った所、身元の判明と同時に犯人がムーンフィッシュだということが分かり上記の依頼に発展した。

 

「ムーンフィッシュの性格を考えればプロヒーローが出払ってるこのタイミングなら動き出すと思うんだけど……」

 

「まだ昼間、というのもあるかもしれないね。とりあえず、二人には気をつけるようには伝えてあるよ」

 

「ありがと。それと被身子、私の血のコウモリを渡しておくから血染か仁から緊急の連絡があって、私がすぐに動けない場合は変身して飛んでって頂戴」

 

「了解です!」

 

 向こうから何かがなければ、こちらから出来るのはこの程度かと呟き。他になにか確認や連絡事項はないかと改めて聞いてみれば、どうやらまだあったようなのだがそれを言う前に圧紘から気を悪くしないでねと前置きがされる。

 

「気を悪くって、何よ?」

 

「うん、さっきエンデヴァー本人から君に話があるから、指定した場所に来てくれって直接言われてね」

 

「あーうん、分かってましたけど、すっごい嫌な顔しますね」

 

 なんでエンデヴァーが私に用があるのよとまるで隠す気のない不機嫌な声に圧紘も被身子も苦笑いしか出来ない。言うまでもなく彼女はエンデヴァーが嫌いだ、初対面が最悪すぎるが故に出来れば仕事の時以外では、なんだったら仕事中でも話し掛けてこないでほしいとすら思っているほどだ。

 

 彼女にとってエンデヴァーは不倶戴天の敵であり、親としてどころか人として最悪で、よくそれでNo.2ヒーロー名乗ること出来るわね貴方と真正面から言うくらいには嫌いだ。もっとも、向こうも便利屋としてならまだしも、レイミィ個人となると割と言葉が強めになり、数秒としないで煽り合いに発展、最悪止めないと表に出ろお前になる。

 

「呼び出される心当たりがまるで無いんだけど……他に何か言ってなかったの? もしくは様子が変だったとか」

 

「うーん、ちょっと落ち着きがなかった感じはあるかな」

 

「え、そうでしたか?」

 

 圧紘の目がそう捉えたのならば間違いはないだろう。彼の目はそれだけ優秀であり、レイミィも信頼しているほどだ、つまり落ち着きがないくらいには何かを聞こうとしている、或いは誰かを会わせたがっている? と思考がぐるぐるとし始めた所で圧紘から

 

「とりあえず、向かってみたら?」

 

「それもそうね、えっと場所は……絶妙に人通りが少ない場所ね、人目に付きたくはないってところかしら」

 

「うーんこれは怪しいですね、私も着いていったほうが良いんじゃあいた!?」

 

「要らないっての、二人はこのまま警備を継続、遊ぶのは良いけど仕事を疎かにしないでちょうだいよ」

 

「了解、ほら、行こうか被身子ちゃん」

 

「うぅ、レイミィちゃんが厳しいです……」

 

 心配のあまり変なことをしでかそうとした被身子にチョップを叩き込んでから、二人にそう告げて彼女はエンデヴァーが指定した場所へと歩き出す。その途中で時計を見れば昼休み終了まであとまだ40分ということを確認しつつ、向こうが呼び出してきた理由を考えてみることに。

 

(呼び出し場所は人目の付きにくい場所で、落ち着きがなかった。もしかして【例の件】?)

 

 確かにここ最近は報告をしてなかったなと歩きながら自分のミスを思い出して息を吐き出す。彼女が言う例の件とは、轟家のとある事でレイミィが引っ掛かりを覚え個人的に情報を集めている事案。

 

 とは言っても空振り続きであり、便利屋もあるので範囲を広げることも出来ずで碌な情報は今日まで集まったことがない。なので態々、呼び出してまで聞きたいことかと言われると彼女自身も首を傾げてしまう。

 

(ちっ、どうしてエンデヴァーのことで私がこんなに頭を回さなきゃいけないのって話よ……)

 

 思わずという愚痴を脳内でしつつ歩き続けて、相手の指定場所に到着。そこには探さずとも分かるほどの巨体と炎を体現するようなコスチューム姿、彼こそがNo.2ヒーローのエンデヴァーであり、向こうもレイミィを見付けると彼女に歩いていき

 

「やっと来たか、便利屋」

 

「相変わらずの態度ね、エンデヴァー」

 

 人を勝手に呼んだくせに悪いの一言もないのかと言外に伝えるが、向こうは態度を何一つ変えずに、貴様こそ年上に対する態度ではないなと言う言葉に、ここで彼女の中で火蓋を切られたと判断し笑みを浮かべたまま。

 

「親どころか人として落第点の奴が慕われるような言葉で話されると思ってるとしたら随分と素敵なお花畑の頭ね。炎の出し過ぎで頭が熱でやられたかしら?」

 

「ふん、貴様のように人で態度をまさにコウモリのように変える子供にそこまで言われる筋合いが無いと思うが?」

 

「あ?」

 

 こいつやっぱりオールマイト以上に嫌いだわ。バチバチと何故か火花を散らす二人、タダでさえ通りが少ないエリアだと言うのに、急に生み出された一発即発な空気から逃げるように人は居なくなったそこへ、冷たい空気と同時に声が響いた。

 

「二人とも、何をやっているのですか?」

 

 それは、この場で聞くことは絶対にないとレイミィは思っていた声、思わずその方向を視線を動かせば居たのはどこか浮世離れした白い髪と黒い瞳の女性の姿だった。




なんか知らんけど、段々とレイミィちゃんを轟家が囲い始めてるのなんなの……

便利屋メモ
エンデヴァーとレイミィは本編でも書いたが性格での相性も悪ければ、戦闘での相性も最悪、なんだったらチーム相性も最悪。
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