私信
三話付近から最新話まで被身子が被『見』子になってることが感想で教えられて発覚しました、今後は気を付けます、はい……。
また、昨日の誤字脱字修正ありがとうございます、チェック漏れしてましたね、はい……
「エンデヴァー!!! こんな人混みのスタジアムに連れ出すとかどんな神経してるの!!???」
聞こえてきた声と視線の先に居た女性、その二つだけでレイミィの感情がエンデヴァーへと爆発した。この人混みが凄い場所に彼女を連れ出すのはどれほどの負担になると思っているのかと、それを行った下手人はお前だろと凄まじい剣幕で身長差を気にしないで一気に噛み付く。
「ま、待て! 違う、私も無理はするなと言った、だが大丈夫だと言ってきたから連れてきただけだ!」
「言い訳と演技は随分と上達したものね! それで通用すると思ったら笑えないわ!」
誰が見ても本気で狼狽えていると分かる筈なのだが、今のレイミィは冷静ではなく、先入観も相まってそれが演技だと脳内で処理されてしまい、掴み掛かり更に問い詰めようとした時、フワッと先ほどと同じかそれよりも強い冷気が彼女を包む。
包まれ、ヒートアップしてしまった頭が冷やされたことでやっと落ち着きを取り戻した彼女が改めてその方向を見れば、穏やかな笑みを浮かべている女性【轟 冷】がレイミィに近づいて頭を優しくなでつつ。
「息子の晴れ舞台をテレビ越しじゃなく、この目で見たいと思ってこの人に私が頼んだの。お医者様からも許可は貰っているし、この人の強制とかではないから安心して」
「そういうことだ。要件は冷がお前にも会いたいと言う話だ」
撫でながら恐らくは個性だろう、ヒンヤリとした感覚に気持ちよさを覚えると同時に自身の先程までの取り乱しっぷりを思い出し顔が赤くなる。どうしても彼女を前にすると緊張したり、冷静じゃいられなくなる自分に嫌気を感じつつ、距離を少し開けてから冷に【のみ】深々と頭を下げる。
「ごめんなさい、取り乱したわ」
「大丈夫よ。それほど思ってくれているのだと分かってるから」
「私に謝罪はなしか」
「ちっ、悪かったわよ」
随分な態度だなと悪態をつくエンデヴァーに謝罪があるだけマシだと思いなさいと返すレイミィによって、また少し前と同じようにピリついた空気が生まれ始めてしまうが、冷の『二人とも?』とまた圧が掛かった言葉で黙ることに。
そんな二人を見て彼女は小さく息を吐きだしてから
「もう、炎司さんはどうしてこの娘と会うと決まってそうなるのですか?」
「先に仕掛けてくるのは……あぁ、分かった、分かっている」
「バートリーさんもあまり炎司さんに強く当たらないで下さい。彼もどうにかしようとはしていますから」
「……分かったわよ」
エンデヴァーは色々と当たり前なのだがどういうわけか、レイミィも彼女には強く出れず、こうして何かを言われてしまえば頷くことしか出来なくなる。
とりあえず、どうして自分に何の用なのかと聞いてみれば、彼女は母親らしい優しい微笑みでレイミィを見つめてから
「久し振りに顔を見たくなって。それに安定してからはお礼も言えてなかったのもあるわ、ありがとう、貴女のお陰で今の私があります」
「礼を言われるほどじゃないわ。ただの自己満足よ、話を聞いて、どうにか出来る手段を持ってるのにやらないってのはどうかなって思っただけ」
「それでも毎日のように来てくれて、私の治療を施してくれなければ回復はもっと遅かったとお医者様も言ってるわ」
治療。焦凍から彼の母親についての話を聞いたレイミィは自身の魅了の能力を利用すれば、何とかなるかもしれないと入院している病院まで出向き、当時はまだ精神を酷く病んでた頃の冷に軽い魅了を施してから数分、長いと数十分ほど会話を挟み、それから家族のお見舞いを行うという所謂カウンセリングに近いことを実行。
しかもそれを初めてからほぼ毎日のように行い、結果として今日の彼女がある。だからと改めて深々とお辞儀をする冷にレイミィは頭を上げてくれと伝えようとした口は彼女から出た次の言葉で戸惑いに変わることになる。
「それに【燈矢】の事も貴女は追ってくれてると炎司さんから聞きました」
「っ!? そ、それは、それこそただの自己満足よ、それよりもエンデヴァー、どうして!」
震えた声でエンデヴァーに問い詰めれば、彼曰く自分たちが内密に行っていたはずの行動が彼女にバレたらしく、問い質され答えてしまったのだと。少し前のエンデヴァーであれば絶対に有り得ないと言える流れにレイミィとしてもどう答えていいか迷い、出てきたのは
「何時から轟家はかかあ天下になったのよ……」
「バートリーさん、貴女は燈矢が【生きている】と思っているの?」
その質問にレイミィは静かに頷いた。【轟 燈矢】は轟家の長男であり、過去のいざこざ、もっと言えばエンデヴァーがほぼ主原因で個性を暴走させてしまい、山火事によって下顎部の骨が一部だけを残して亡くなったとされていた。
しかし、その話を聞いたレイミィはふと疑問をエンデヴァーに漏らす。母親の体質が強く自身の炎に耐えられないのならば下顎部の一部すら残らないはずではと、更に言えばエンデヴァー、つまり父親の遺伝も表に出ないだけで存在するはずであり、だとすれば山火事からは生き延びたのではと。
無論、これが科学的根拠の全く無い希望的観測とも言える言葉ではあったが燈矢のことを語った冷の仄暗く重い表情が脳裏にこびり付いて離れなかったレイミィはエンデヴァーと共に出来る範囲で、轟家には内密に情報収集をしていたと答えれば冷はそうですかと小さく呟いてから
「あの、この事を便利屋への依頼としてと言う形に今から……」
「良いのよ。それに報酬って言うなら
ひたすらに空振り、顔写真と名前まで使って、モスキートも使って空振り。確かに彼女には便利屋業務があるので広範囲に広げることは出来ないが、それでも山火事があった付近でも尽く空振りという現実に、ちょっともう手詰まりだという感じを出せば、エンデヴァーから一つの情報が入ってきたと提示される。
「山火事から3年後なのだが、とある孤児院で全焼するほどの火災があったらしい。しかも目撃者の中で微かに【蒼い炎】を見たという話もある」
「蒼い炎って、それが確かなら……」
「……」
蒼い炎、それは燈矢が最終的に到達した炎の色であり、コレが事実だとしたら孤児院の火災は彼が引き起こしたということになる。その事実に辿り着いたからこそ冷は言葉を失い沈痛な面持ちになってしまう。
だからこそエンデヴァーにレイミィは聞く、これが燈矢のものであり、仮に今も生きており出会えたらどうするのかと。
「先ずは謝りたいと思う。冷や家族にしたように地面に頭を擦り付けてアイツにしてしまった事を謝りたい、決して許されるとは思っていないが、それでも」
「私もよ、守ってあげられなくてごめんなさい、と」
だがその後は二人とも迷っているのがよく分かった。エンデヴァーはヒーローとしての答えと、親としての答えの狭間で、冷も同じように親としては彼を迎えてあげたい、けれどもしコレが本当に燈矢自身が引き起こしたものだとしたら罪を償わさなければならないのではないかと。
轟夫妻のそんな姿を見てしまったレイミィは頭を軽く掻きながら頭の中で今日までの情報を徹底的に組み上げ始める。先ず第一としてエンデヴァーでも、レイミィでも【轟燈矢】の情報はまるで出てきておらず、今しがた出てきたエンデヴァーの情報も蒼い炎と言う部分で引っかかったのだろうと推測を立ててから、確認するためにエンデヴァーに燈矢の名前と顔写真で情報を集めてたのかと聞いてみれば
「あぁ、勿論そうだが」
「それで空振りとなれば、彼はその名前で活動してないのは確実と考えるべきでしょう」
「名前を捨てている、ということですか?」
「いえ、不都合だから使ってないのかもしれないわ」
ともかく、燈矢としての名前を表立って使ってないのならば、便利屋としてならば何とかなるかも。そんな事を伝えればエンデヴァーはどうするのかと食い付いてくる、もしこれが黒な行為ならばこの場で焼き殺されるのかしら私とかそんな事を思いながら
「恐らくは偽名を使って裏で活動してるのかもしれない。それなら白としては難しいけど灰色、つまり私たちの立ち位置程度でなら誤魔化しが効くかもって話よ」
「だがその……」
途中で言葉を区切りチラッと冷を見るエンデヴァー、何が言いたいかは理解できているのでレイミィはその辺りは所員の個性を利用して世間的にも上手く誤魔化すと答えておく。もっとも、これが黒ではないかと言われればものすごく微妙なラインになってしまうが、そこは彼女、しっかりと考えており。
「ということだからエンデヴァー、その時になったらフォローを頼むわ。それで借りはチャラにしてあげる」
「つくづく抜け目のない子供だなお前は。だが、それで燈矢と再会できるのならば任せる、どうかよろしく頼む」
スッと自然に頭を下げてきたエンデヴァーを思わずあり得ないものを見る目と表情を向けてしまう。今日まで、なんだったらテレビとかでもこの大男が頭を下げているという場面を見た記憶がなく、そんな彼がこうして自分にそれをしているという事実に脳がフリーズを引き起こしそうになってしまった。
「私からもよろしくお願いいたします。それと、ごめんなさい、貴女に私たちの問題をまた押し付けてしまうようで」
「気にしないで冷さん、私は好きで首を突っ込んでるだけだから。それに、家族が生きてるのにバラバラで冷たいままなのは、悲しいじゃない」
儚げに微笑みながらレイミィは答える。彼女は家族というものに幻想を抱いている少女だ。二歳で母親を殺してしまい、母からの愛情というものを何一つ知らずに個性によって知識を得て、精神も成熟してしまい子供らしさというものも同時に捨て去り今日まで生きてきたが故に、家族という物は何よりも尊く暖かいものだと思い込んでいる。
勿論、便利屋も家族だと思っているがそれはそれ。それに加えて、上記の母親を殺してしまい愛情を知らないという部分が強く作用しているのかもしれない、冷が悲しむということは何が何でも避けてあげたいという心が燈矢関連の事柄に首を突っ込む要因となっている。
「でもその、絶対とは言えないわ。向こうが拒否したらそれまでだし、そもそも確実に生きてる保証もない、だからあまり多大な期待はしないで頂戴」
「分かっているわ。フフッ、本当に優しいのですねバートリーさんは、良くも悪くも子供らしくないという感じで」
「ふん、かなり生意気が過ぎるがな」
「良い話で締めることくらい覚えなさいよ、だから万年二位で留まることになってるんじゃないの?……あと」
そろそろ出てきたらどうなのかしら? 背後へ振り向きながら廊下の入り口辺りに声をかければ、ガタッ! という音がし少ししてから現れたのは焦凍と出久の姿。
だが焦凍はまだしも出久が居るというのは彼女としては予想外であり目を見開きながら、どうして居るのかと聞けば
「えっと、その、ちょっと前に渡我さんと迫さんに会って、それでバートリーさんがエンデヴァーに呼び出されたって聞いたら轟くんが様子を見に行くって、それでうん」
「まぁ、そういうことだ。親父に何もされてねぇよな?」
「どういう意味だ、焦凍よ」
確かに口止めとかはしてないけどさぁとレイミィは頭を抱える。同時に焦凍の心配っぷりにも軽く頭痛を感じそうになるがエンデヴァーの今日までを考えたら無理もないし自分も同じこと考えるなとそこは適当に納得させておく。
見ればエンデヴァーはレイミィを睨むような目で彼女を見て、冷はあらあらという感じを出しつつ焦凍の隣りにいる出久を見て何やら安心したという感じの笑みを浮かべている。どうやら、彼に友達という存在が出来たということに素直に感動しているらしいとレイミィは気付いたのでエンデヴァーの視線は徹底的に無視をして
「轟、緑谷の事を冷さんに紹介したら? 友人なんだし」
「友人、そうだな。母さん、友達の緑谷出久だ」
「はは、はじめまして、み、みみみ、緑谷出久です!!」
「はじめまして焦凍の母の轟冷です。焦凍と仲良くしてくれてありがとう」
ペコペコと両者で深々としたお辞儀をしている光景に思わず笑い出しそうになるのを堪えつつ、焦凍に何処から聞いてたということを問いかければ、どうやら来たのはついさっきとのことで今までの会話を殆ど聞かれてないということが分かり、とりあえず一安心する。
いや、一安心する演技をした。悪いと思いつつもつい癖でモスキートからの記憶を覗いたレイミィは分かっていた、焦凍と出久が自分たちが内密にしている事を始めから聞いていたということを。
『燈矢兄さんが、生きてる……?』
『轟くん?』
どうしたものか、冷に今日までのことを焦凍と共に話しながら彼女は考える。知られてはいけなかったかもしれない人物にコレを知られたということを。
結局答えは出ないまま、昼休みが終わるギリギリまで会話を楽しむことになる。なお、エンデヴァーはオールマイトの弟子だという出久に焦凍はお前を超える的なことを言い、レイミィと焦凍から
「緑谷にちょっかい出してんじゃねぇぞ、親父」
「ウチの弟子でもあるんだけど? てか、何時までそれに拘ってんのよ、また崩壊させたいのあんた?」
などと突っ込まれて、冷にクスクスと笑われ狼狽えるエンデヴァーが居たとかいないとか、ついでにそんなNo.2の姿を見てフリーズする出久も居たらしい。
(あれ、この時点でエンデヴァーって彼の炎が蒼いって知ってたっけという顔)
因みにレイミィから冷への感情は割と母親を相手にしているのと近いものです。母親系キャラに弱々レイミィちゃん
便利屋メモ
実は冒頭のエンデヴァーへの問い詰めた際の声は割と響いていて、何事かと騒ぎになりそうになってた。