追伸
サブタイが決勝になってましたが準決勝の間違いです、すみません
なんというべきだろうか、凄く清々しい殴り合いの末の敗北に彼女は一種の高揚感のようなものを覚えていた。例えるならばそう、物語だけは聞いていた夕焼けをバックに殴り合った末のあの場面だろうかと思いながらリカバリーガール所から観客席に戻ると
「お、男子顔負けの殴り合いをした吸血姫じゃん」
「あの決戦を帰ってきた人間への言葉かしらそれ?」
いや、決戦ていうか後半はただの殴り合い楽しんでただけじゃんと言う割と容赦ない耳郎の言葉に分かってないわねぇと呆れながらレイミィは答える。あれは、弟子の成長が嬉しかったからこそ、彼の得意距離で打ち負かせそうとしただけなのだと。
それで負けてたら師匠の面子丸潰れではと返されれば、ふぅと息を吐き出しニコリと笑みを浮かべて
「良いじゃない、それはつまり私を超えたってことよ」
「本音は?」
「すっごく悔しいわ、今度からの特訓はもっとハードにしてあげるから感謝しなさい緑谷」
「八つ当たりって言わないかなそれ!!??」
それはそれとして準決勝まで来て負けたのは悔しいのでとそう告げれば、出久の叫びが観客席に木霊す。因みに二人の勝敗を見ていた中で焦凍は若干残念がりつつも出久と戦えるかもしれないということで気合を入れ直し、勝己はそれはもう盛大に舌打ちをしたらしい、彼としてはレイミィを決勝で叩き潰すという予定があったのかもしれない。
なんてことを聞かされたレイミィだが、聞かされて私にどうしろと思うしかない。そもそもにして全員して自分を買い被るが、
「バートリーさんって前に
「えぇ、だからこう本来の戦い方をしてもいいけどその場合はセメントスからのストップが掛かる可能性が上がっちゃうし、だから真っ向からもしくはブラッドチェーンでとかになるけど、まぁ結果あれよね」
ブラッドチェーンもこのタイプの戦いだと巻き付けて投げるくらいしか彼女的には使い方が浮かばず、結局持て余してしまっていた。血染に言わせればもっとやりよう合っただろお前と言われること間違いない事実に彼と顔を合わせたくないとぼやいてしまう。
どうしよう、それを思い出したらあの戦いで素直にヴァンパイアプリンセスを発動するべきだったのではと口から漏れ出そうになるのを堪えた所でプレゼント・マイクのコールとともに現れる焦凍と勝己、方や澄まし顔、方や攻撃的な笑みと言う名の堅気の顔じゃない言われそうな表情という構図に思わず
「なんかもう、
「それ本人の前で言ったら、レイミィが欲しい感情よりも先に爆破が飛んでくると思うから流石に止めなよ」
ありありと浮かぶその光景に、流石にそれをやられたら相澤先生に本気で説教されるし帰ったら追加で血染に説教される自分まで浮かび、物凄く掠れる声でイヤね、それはと呟き、耳郎の巧いレイミィのコントロール方法に麗日が勉強になるわと目を輝かすことになる。
「……」
「おい、半分野郎」
一方ステージ上では開始の合図を待っていた焦凍に対して勝己が声を掛ける。何かと視線を向ける形で答えれば、相手はその態度が癪に障ったのだろうか、舌打ちをしてから
「本気で来やがれ、徹底的にそれを上から叩きのめしてやる。手加減なんてしたらぶっ殺すからな」
「あぁ、母さんが見てるからな。手を抜くつもりはないから安心してくれ」
なお、エンデヴァーはカウントされない模様でありその事に一人背中を煤けさせる大男が居たらしいが誰も知られないので語らなくてもよいだろう。ともかく、その返答に勝己は満足したらしく更に笑みを凶悪の物に変えいつでも動ける体勢に、焦凍もまた直ぐに個性が使えるようにと意識を集中させる。
《テンポよく行くぜ準決!! 轟
「ふっ!!!!」
《いきなりかましたぁ!! 爆豪との接戦を嫌がったか!! 早速決勝進出が決まるか!?》
開幕と同時に彼の正面の観客席にまで届くんじゃなかろうかというレベルの大規模な凍結攻撃にプレゼント・マイクが叫ぶが、間を置かずにステージに響いたのはその氷が砕ける音と叫びと爆破、それが示すのは先の一撃で決着というわけではないということ。
ガシャン!! と氷を砕き現れた勝己に観客席から言うように彼は初手の凍結を爆破で防いだあとモグラのように掘り、突き抜けてきた。無論、焦凍もこれで決まるとは思ってもおらず、寧ろこの結果にだろうな程度にしか思っていないし出てきた直後に凍結を重ねるように打ち込むが、それを勝己は爆破で回避。
そのまま、焦凍に掴み掛かるように飛び掛かるが左腕を振るい、空中に炎の幕を形成、触れて無事ではいられないという温度に舌打ちをしながら勝己は炎の幕を回避するように移動するのに合わせて連続で凍結を乱射し彼との距離を空けさせ、更に追い立てる。
「自分の得意距離で戦おうにもそうすると凍結が飛んでくる、近づいてのインファイト持ち込もうとしたら炎で拒否される。かっちゃんがあそこまで攻めづらそうにしてるのなんて初めて見た」
「一応、爆破と氷の撃ち合いだったら相殺し続けることは出来るから全く攻めることが出来ないってわけじゃなさそうだけどね」
だが今までと比べれば間違いなくやり辛いのは確かだろう。しかも的確に回避が面倒、もしくは爆破で相殺しなければ詰みにされるように撃ち出される攻撃に勝己は苦い顔をしながらどうにかしようと頭を回転させる。
対して焦凍も見た感じでは順調に思えるが彼もまた、時間をかければ掛けるほどに勝己の個性は段々と強力になっていくのは分かっているからこそ早く勝負を決めたいと思いつつも焦れば、逆に追い込まれると冷静を装って勝負を運んでいる。
爆発音と凍結の音、時たま燃える音が常時響き渡るステージ、まさに一進一退の個性社会らしい試合に観客のボルテージは上がっていくが二人の耳には不思議と入っていない。
(くっそ、攻められねぇ!! 大雑把だったらどうにかなりそうだが、コントロールもしっかりしてるってかおい!! それになにか企んでるような動きもしてやがる!!)
(どれも紙一重か爆破で防いできて当たらないように動いてやがる。策なしだったら相当きつかっただろうが、爆豪もそれに気付き始めてる気がするな……間に合うか?)
互いが互いに攻め切れないが、切っ掛けが一つでも生まれれば勝負が傾く戦い。ステージは既に無傷な部分は存在せず、なんだったらスタジアムにも彼らの戦いの余波が届くんじゃなかろうかと言う光景を見てレイミィがボヤいた。
「大怪獣バトル過ぎる、妬ましい」
「妬ましいって感想なんだ」
「だって私じゃどうやっても出来ないし、ああやって派手にぶちかましたいなぁとか思わないわけじゃないのよ?」
良いなぁと呟くその姿に彼女らしいとは思いつつも、レイミィがそんな力を持ってた場合、まず間違いないのは便利屋として依頼に出て派手にやらかして説教されそうと思ったりするが、指摘したら拗ねるとかされそうだと口には出さないが……
「バートリーがそんな技使えたら、面倒とか楽しくなったとかでぶっ放して怒られそうだよな」
「ケロ、確かにありありとそれが浮かぶわ。レイミィちゃんは今ぐらいが丁度いいのよ」
「きっとぶっ放してから、後で後悔するよね!」
「もしかして貴方たち、私が嫌いなのかしらねぇ!?」
などと生温いことは言わないのが彼らA組であり、ザクザクと容赦なく来た鋭い指摘にさしものレイミィも若干涙目になりながら抗議するが、悲しいかな彼女を援護してくれる人物はこの場には居ないのである。
A組が試合と微妙に関係ない事で盛り上がる中、試合はと言うと少しずつだが焦凍に傾き始めていた。その主な要因として勝己の爆破の威力が下がり始め、彼自身の動きも開幕よりも鈍くなり始めているからだ。
《爆豪、爆破も動きにも勢いが無くなってきてるぞ、なんだバテたか!?》
《いや、息は上がってないのを見るにバテてはいない。轟の仕込みの効果が出始めてると見るべきだな》
「爆豪の個性は汗を媒体に発動する、だからこそ彼が動けば動くほどに体が火照り、汗腺が広がって爆破も強力になるわ。なら、汗腺が広がるのを何らかの手段で抑えてしまえばどうなるかしら?」
答えは言うまでもない、今ステージ上の勝己が示している。開幕、もしくは準決勝前までの試合とは比べると明らかに爆破の勢いが弱まって居るのが見て取れる、だがどうやったのかと考えようとした八百万はふと、気付いた。
なんだか少しだけ肌寒いような気がすると。そして気付いた、ステージ上に霜が広がっていることを、二人の周辺を何かが光っているように漂っていることに、コレを見て彼女は答えに辿り着く思わず叫ぶ。
「まさかステージを周辺を、いえ、スタジアムを冷やしている!!??」
「そうか、軽く冷やした程度じゃなくて、ここでも肌寒く感じるくらいにステージ上を寒くすれば汗腺は広がりにくくなる! 完全には無理だろうけど、それでもかっちゃんには確かに有効な手段だよ!」
「でもそれじゃ轟くんも寒いんじゃってそうか、炎が扱えるから自分は暖まれるから関係ないのか!!」
恐らくは開幕のあの凍結から仕込み続け、それがこのタイミングで実ったのだろう。勝己が爆破で焦凍からの凍結を防ぐことで氷は周囲に散布され、同時に回避のために氷を地面に張ることで地上から空中へと冷やしていき、自身が冷え始めたなという所で迎撃の形で炎を出して暖を取る、それをひたすら相手に悟られないように繰り返していくことで……
《ステージ上の冷凍庫に変えた。これによって個性を抑制するってのもあるが同時に寒さでの動きの阻害も同時にやってのけてる、爆豪と当たるのを想定してないと考えられない策だ》
《ナイス解説だ、イレイザー!!》
「狡いマネしやがるじゃねぇか、半分野郎……!!」
「負けるわけには行かねぇからな。爆豪、お前と同じブロックだと分かった時から考えておいたんだ」
真っ向から戦って勝てる相手ではないと認めているからこそ焦凍は対勝己の策を考え、コレを思いついてからは敢えて大雑把な凍結で試合を勝つ進めてきた。全てはこの時のためにと、勝己ならば準決勝まで駒を進めてくると確信してたからこその小細工とも言える手段を。
それを理解しているからだろうか、勝己も口ではああ言っているが内心は己の見極めの甘さに怒り狂いそうになっていた。強力な個性を持っているのだから大雑把な使い方をして勝ってきてるのだと侮っていたと、その結果が今のザマであり激しく動いているにも関わらず身体は段々と冷え、掌の汗腺も思ったよりも広がらないがゆえに爆破の威力がまるで上がらない。
「おおおおおお!!!!」
「くっ!?(これだけ冷やして、この威力か!!)」
だからと言って勝ちを諦めるつもりはないとばかりの雄叫びと爆破を咄嗟に右で氷の盾を展開して防いだ焦凍だが、想定以上の威力に驚き後ろに下がってしまう。勝利への執念、たとえ自分に不利なステージにされようとも勝己の目は全く死んでおらず、寧ろ更に輝かせているという姿に焦凍は生半可で行けるとは思ってなかったがと彼への感想を抱きつつ
「一気に行く」
「なっめんなよ、轟!!!」
自身に放たれた瞬間冷凍と言わんばかりの速度の凍結を両手の爆破で上空へと回避し、両手を左右逆方向に向け、そのまま連続爆破し反動で回転をしながら地上の焦凍へと己の最大の技を叫ぶ。
「
対する焦凍もそれを見て今まで以上の力を込めて凍結を発動、勝己の進行方向を防ぐ形で3の壁のような氷柱を生やし防御態勢を整え、迎え撃つ形を取り、直後、人間ミサイルと化した勝己が突撃し
「
《特大火力、人間榴弾となった爆豪が分厚い氷柱に突っ込んでいく!! ぶち抜けるのか! 防ぎ切るのか! 大一番だぞ、気張れ二人とも!!!》
「おおおおおああああ!!!」
ガシャン! 一本目が砕ける音と勢いが衰えてない連続した爆発の音が焦凍の耳に届く、直後に二本目に。
《一本目を突破ぁ!!! 続けて二本目だ、行けるか爆豪!!》
「行けるに、決まってんだろぉ!!」
《二本目も粉砕!! だが轟は焦ってもいない、何か考えがあるのか!?》
二本目の氷柱も粉砕し尚も勢いそのままに突っ込んでいく勝己、その音を聞いても冷静に前を見据えている焦凍の姿にレイミィが何かに気付く、そう言えばまだ調整中の技が合ったような気がすると。
確か、炎と氷を使うことで瞬間的に爆発を起こして相手を気絶させるような技だったようなと、思い出した所で彼が左手を握りしめているのが見えた。
「……あっ」
「どうしたん、レイミィちゃん」
「そうね、強いて言うなら対ショック防御?」
なんか急に物騒なこと言い出したなこの娘と誰もが思うがその言葉の意味は直後に全員が理解することになる。それは勝己が3本目に突撃、彼が思ったような威力こそ出てないがそれでも三本目も砕けると確信し、実際に砕いた直後だった。
《三本目も粉砕ー!! だが轟は分かってたとばかりに迎撃体勢、いよいよ決着が決まるか!?》
「ぶっ飛べやぁあああ!!!」
「突破してくるよなお前なら!」
「っ、これはマズイ!!」
焦凍の左手の炎が全力で砕かれた氷柱ごと勝己に向けて放たれ、勝己も自身の最大火力の爆破を彼に向けて放たれた刹那、これから起こることに気付いたセメントスが動き出したのと同時に、大爆発がスタジアム中を揺らし、ステージは煙に包まれた。
「た、対ショック防御ってこ、こういうことか……」
「だから言ったじゃないの、それで試合はどうなったのかしら」
爆発の瞬間、咄嗟にしゃがむことで爆発の余波をやり過ごしたレイミィがヒョコッと顔を出しステージを見れば丁度、煙が晴れ映し出されたのは場外ラインギリギリ内側の所で氷の壁を背にして立っている焦凍、そして彼が見つめるその先、大爆発を受けようとも最期の最期まで足掻いたのだろう、場外ラインのギリギリ、僅か一歩分『外』の所で辛うじて立っている勝己の姿。
「くっそ、が……」
「はぁ、はぁ、紙一重、だったな」
「爆豪くん、場外!! この勝負、轟くんの決勝進出です!!」
悔しさを滲ませた声を出したと同時に倒れる勝己に、肩で息をしつつ勝てたことを噛み締める焦凍。こうして準決勝は終わり、遂に決勝が始まる、緑谷出久対轟焦凍と言う形で、本来とは違う形でありながら同じ組み合わせの戦いが。
一つ言うとすれば、別段、爆豪が嫌いとかじゃないですよ。ただこう、メンタル万全の轟が相手だとこの時点の彼ではギリギリ勝てないかなくらいの認識で、でも圧勝とかじゃないだろうなぁと。
あと、今後の更新についてなのですが予約投稿分が尽きてしまったので基本的に書けたら上げると言う形で19時固定ではなくなります。もし上がらなかったら書けなかったんだなこいつってことで笑って下さい。
便利屋メモ
最後に焦凍が見せたあの技をレイミィは過去に食らって吹っ飛んでいる。