便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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原作でもあった組み合わせの戦いだな、ヨシ!


No.54『ギリギリバトルな決勝戦!』

 大盛り上がりのまま準決勝は無事に終わり、残るは決勝戦となった雄英体育祭。とは言っても焦凍の回復、またあの大爆発(相澤曰く冷やされた空気が急激に温められたことによる熱膨張の産物)でほぼ消し飛び掛けたステージの修復などで小休憩を挟んで決勝を行うらしく今はその小休憩の時間。

 

 焦凍はあのまま控え室で待機してるらしく戻っては来ず、出久も少し緊張した面持ちで控え室へと消え、この場には居ないが話題はその二人となり、上鳴はグッと伸びをし身体を解しつつ思ったことをそのまま口にする。

 

「にしても緑谷と轟が決勝か。なんかこう、言っちゃ悪いんだが緑谷がそこまで行くのはちょっと予想してなかったな」

 

「だよなぁ、少し前までは個性使ったら自爆しちまうって感じだったのに。これもあれか、バートリーの特訓の成果ってやつか?」

 

「それもあるでしょうけど、あとは彼本人の努力よ。恐ろしいくらいに筋があるもの」

 

 具体的には少し教えて実践を挟むだけで、あとは自主練だけで自分の形にしてしまうと言うくらいに。あれをレイミィが見せられた時は思わず頬が引き攣ったとか何とか。

 

 また筋トレもオールマイトが考案したものをベースに彼なりに続けている成果も着実に出ている。だからこそこの雄英体育祭までにフルカウル10%を発動することが出来るまでに身体が出来上がっていたのだ、あれには流石に驚かされたとはレイミィの談である。

 

「そんな二人の決勝戦、互いに万全でもない状態での戦い。ふふっ、どうなるか楽しみね、貴方もそう思うでしょ爆豪?」

 

「知るか」

 

「お、戻ってたのか。大丈夫か、かなり派手に倒れたけど」

 

「うるせぇ」

 

 あぁ、大丈夫そうですねと思わせるくらいの眼光で心配の声を掛けてきた切島を睨んでから勝己はドカッとレイミィの隣の席に腰を落とす。見れば所々に怪我の処置が施された箇所はあるものの、大怪我に至ってないのは互いの爆発で威力がそれなりに相殺されたのもあれば、最後のあの場面で咄嗟にセメントスが間にコンクリートの壁を生成し衝撃を殺したというのもある。あの一瞬の動きはレイミィや、血染、圧紘も流石は雄英高校で働くプロだわと思わざるを得なかった。

 

 暫しの無言、無言だと言うのに重量を直で感じることが出来るほどの空気の重さに誰も声をかけることも出来ずに、自然と二人の周りに空間ができ始めた頃に

 

「何と言うか、もっと負けたことに対して不機嫌になると思ってたのだけれど。結構、落ち着いてるわね貴方」

 

「ちっ、俺もアイツも全力を出して、その全力に俺が届かなかった。ただそれだけだ」

 

 苦虫を噛み潰したような表情になりながらもはっきりとそう答えを出した勝己に視線を向け、微笑む。確かに敗北したことに対しての悔しさはあるだろう、だがその悔しさは相手に向けられていない、それを超えることが出来なかった己に対して向けられていることが分かったから。

 

 爆豪勝己と言う人間の根底、とまでは言わないが深い部分が見れたのが彼女的には少しだけ嬉しかったのかもしれない。なので次の話題にも遠慮なく踏み込むことにした、丁度ステージの修復が終わり、決勝の開始を告げるプレゼント・マイクのコールを聞き流しながら

 

「じゃあ、緑谷が決勝に駒を進めたことについて聞いていいかしら」

 

「あぁ?」

 

《さぁいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!!》

 

 うわ、それ聞くのと誰かの声が聴こえた気がするがプレゼント・マイクの声にかき消され二人の耳には届かない。更に言えば聞かれた本人は胸中に爆発するように逆巻く感情を抑えるのに必死なため、もしプレゼント・マイクの声がなくとも聴こえてないだろう。

 

「何が言いてぇ」

 

「まるでウサギとカメよねって話、あぁ言うまでもなくウサギが貴方よ?」

 

 聞く人が聞けば、いや、誰がどう聞いても煽ってるとしか思えないセリフをすらすらと並べるレイミィに対し、周りからの予想とは反して爆豪はこれから始まる試合から目を逸らさず、しかして見える横顔には確かな激情を浮かべたまま

 

「関係ねぇ。デクの野郎が俺を抜こうが、抜き返してぶっちぎりゃいいだけだ……!」

 

《盛り上げてけ決勝!! 緑谷出久(バーサス)轟焦凍!!!》

 

 やはり彼は見てて面白い。彼の様に自尊心が強いを通り越し、横暴とすら言える程にまであり、それをここまでプライドを根本から揺らがれようが、それを己の向上へ向けられる人間はそう居ない。大体は折れるか腐るか、良くても無難な人間へと変わってしまう、黒に落ちないだけ良いかもしれないとはレイミィも思うが勝己がその手の人間ではなくて良かったと言うのも本音ではある。

 

 だからこそ分からない。彼がどうして無個性だった頃から出久を目の敵にしてたのか、まるで威嚇するかのように彼を避けるように苛めていたのか、レイミィにはそれが不可解であり理由が皆目見当もつかない事柄だった、STARTと同時に焦凍の凍結に向けて放たれた出久の一撃で彼女もその答えに行き当たるまでは

 

《破ったあああ!!》

 

「凍結に対して制御可能な5%じゃ防げないって判断は良いけど、迷いなく指を捨てるか」

 

 モニター越しでなくとも黒く変色しているのがよく分かる出久の人差し指。あの瞬間、迫ってくる凍結攻撃に対しての迎撃としてOFA100%をデコピンの要領で発動、これにより衝撃を伴った風圧で迎撃には成功するも代償として治療するまでは人差し指が使い物にならなくなる。

 

 本来であれば1:1ですらないダメージレース、だがこの場面においてはそうではない。ここまでの戦い、そして準決勝で出久も、そして焦凍も身体には無視できないダメージが蓄積されており、結果として今の応酬の衝撃に互いが苦しい表情でたたらを踏むようにふらつく様子にプレゼント・マイクの実況が光る。

 

《おおっと!? 両者、今の攻防でたたらを踏んでいる!! 脚に踏ん張りが効いてねぇぞ、どうしたぁ??!!》

 

《此処までのダメージがいよいよ無視できないレベルに達してるんだろうな。だが、緑谷はいつそんなダメージを受けた……?》

 

「確かにそうじゃん、轟はさっきの戦いってのは分かるけどよ。緑谷の奴ってここまでそんなにダメージらしいダメージは受けてないよな、それこそ準決勝のバートリーとの殴り合いくらいか?」

 

 そうだとしてもあんなになるくらいに軟じゃないだろうし。この光景に上鳴も小首を傾げながらそんな事を呟く、焦凍は誰に聞いてもわかるだろう、準決勝ラストの大爆発をモロに食らっているのだからと、けれど出久はそうではない。

 

 初戦は洗脳を解除するために指を二本ほど自壊させたがそれ以外は無し、二回戦目も全てではないとは言え受け流しているため、あそこまでたたらを踏むようなダメージは貰っていない。そして準決勝、確かに前の二戦と比べればクリーンヒットも貰うくらいには殴り合いが発生していたのでコレかなと思わなくはないが、じゃあ確定なのかと言われると首を傾げたくなる。

 

「うーん、駄目だ俺も浮かばねぇな。バートリーなにか心当たり分かるか? バートリー?」

 

「え、あぁ、あれよ。準決勝の最後に見せた緑谷の技あるじゃない? あれの反動」

 

「すげー緑色のプラズマがバチバチ走ってたやつか、あれやっぱりそんなにキツイ技だったんかよ」

 

 砂藤も考えては見るが答えに行き当たらずにレイミィに聞くのだが彼女は出久の戦い方を見て、何か気付いてはいけないことに気付いてしまったという感じに絶句してたのだが直ぐに我に返り、彼の質問に答える。

 

 答えられれば、瀬呂があぁと納得したように周りも確かに今までと違ったなと頷くのを見て更に補足を加えることに。曰くリカバリーガールが言うには彼のあの技【フルカウル10%】はまだ彼自身の身体が出来上がっていないというのに使用したがために、身体の内部の筋肉などが許容ギリギリのダメージを受けてたとのこと。

 

 それを流石にあの短い時間で回復し切るわけもなく、その結果があのたたらを踏む姿に繋がったのだと。

 

「じゃあ、もしかして二人とも結構ギリギリってことか。あっ、だからさっき万全でもない状態での戦いって言ってたのか!」

 

「そういうことよ。この決勝は間違いなく短期決戦になるわ」

 

 寧ろそうして欲しいものだわ。彼女が呟いた言葉は二回目の凍結を迎撃する出久のデコピン、後に【DELAWARE SMASH】と名付けられる攻撃の音でかき消されてしまう。

 

 レイミィは分かってしまったのだ、勝己がどうして出久に対してあそこまでの言動と態度を取って避けようとしていたのかを。彼はあまりに『自分を入れてない』、今だって焦凍に勝って優勝し、オールマイトに託された自分が来たと知らしめるという目的のために自身の指を残弾として見ているような戦い方をしている。

 

 確かにそうしないと焦凍と戦いにならないというのは理解できる。だが(ヴィラン)との戦闘中ならまだしも、この雄英体育祭という競技の範疇の戦いで迷いなく指を犠牲に、あまつさえそれを残弾として迷い無く使用できるかと言われれば大体の人間は首を横に振るだろう。だが彼はそれが出来てしまう、その在り方が勝己には異質に見えてしまっているのかもしれないと。

 

「(マズい、コレ以上のデコピンでの迎撃も身体に響いてきてる!? どうする、どうする! 10%は使えて5秒、5%も1分が限界、まだ粘るってみるか? いや、ここは!)ぐぅっ、フルカウル、5%!!!」

 

「(突っ込んできやがった、だったらいっそ!)かっは、うおおおお!!!」

 

《二度のやり取りで埒が明かないかと判断したか両者同時に突っ込む! 殴り合いか! 決勝でも青臭い殴り合いが始まるかぁ!?》

 

 身体の諸々のダメージからリカバリーガールによって制限が掛けられたフルカウル5%を発動し駆け出す出久と、迎え撃つように同じタイミングで走り出す焦凍。先ず先手を取ったのはやはり焦凍であり、遠距離からでは出せない速度での凍結を彼とその地面に向けて展開、脚を凍らせることを狙うが。

 

「(脚部10%!!)てりゃ!!」

 

《緑谷、至近距離での凍結を右の踏み込みだけで粉砕、まるで震脚だあああ!!!》

 

 出久は凍結する地面ごと脚で砕くという荒業で回避、がその反動がないわけではなく右脚から嫌な音が彼の耳に届くも2度は出来ないが問題ないとして踏み込み、そこでフルカウル10%を発動からの右腕を振り抜くが

 

《轟、緑谷の強烈な一撃を辛うじて氷で防御!! 砕かれはしたが逆に反撃のチャンス!!》

 

《いや、敢えて砕かせたなありゃ》

 

「これで……!!」

 

「まだ、だ!!!」

 

 即席の氷の盾で攻撃を防ぎ、敢えて砕くことで冷気を周囲に撒き散らし、左手から炎の玉を生み出し撃ち出すと同時に出久もそれを撃ち落とさんと右薬指でデコピンを構えて撃ち出すが、準決勝のラスト同じ原理で、あの時よりも小規模ながら爆発が発生。

 

 分かっていた焦凍は即座に氷の壁を背後に作ることで踏み止まるが、ガクッと体から力が抜け膝を付いてしまうが目だけは出久から逸らさないように向ければ右腕をダランと垂らし、立ってるのがやっとだと分かる彼の姿を見て思わず笑みを浮かべながら

 

「ボロボロじゃねぇか、それで立ってるとか流石の根性だな、緑谷」

 

「そ、そっちこそ膝付いてるけど意識ははっきりしてるじゃないか、轟くん」

 

 軽口を叩き合うが互いに動けないという状況、いや、そうではない。周りから見れば両者とも同じようなダメージのように見えるが内情は出久は立ってるのが不思議なレベルに達しており、実を言えば彼はもう本当に一歩も動けないという状況に陥っている。

 

 それでも降参と言わないのは彼なりの意地だろうか。ここまで来て、と言うのもあるかもしれないが意地で体が動くかと言われればそう簡単な話ではなく、気合などで彼も動こうとするが

 

「く、ぐぅ!!」

 

「無茶すんな。お前、体ボロボロだろ」

 

「それでも、ここまで来たから、ね……」

 

 この状況でも笑って答える出久に焦凍はオールマイトが重なって見えた。どんな困難な状況にも笑って立ち向かい勝利するNo.1プロヒーロー、そんな彼と出久が重なったことに不思議と疑問には思わずに、寧ろすんなりと受け入れることが出来た。

 

 恐らく彼の精神性がそういうものなのだろうと。だからこそレイミィは彼が今後もヒーローとして活躍することに対して難しい顔をしながら呟いてしまう。

 

「冗談みたいな話ね。オールマイトを生き写したかのような存在が居るなんて」

 

 ドサリと音が聞こえた。見れば根性で一歩踏み出した出久が前のめりで倒れている姿、どうやらその一歩で限界が来たらしい、ミッドナイトも直ぐに掛けより容態を確認し、そして

 

「緑谷くん、行動不能!! よって轟くんの勝ち!!」

 

《以上で全ての競技が終了!! 今年度の雄英体育祭一年、優勝はA組、轟焦凍!!!!》

 

 優勝を告げる審判の声とプレゼント・マイクの叫び、それに負けない観客の大歓声を聞きながらレイミィは、A組の面々に急用が入ったから早退すると告げ、更衣室にて備え付けられているシャワーで軽く汗を流してから着替え、向かった先に居たのは一台の車とその側にはホークスと血染の姿。

 

「や、待ってたよお嬢様」

 

「これから行く場所を考えると制服で大丈夫なんだろうな、バートリー」

 

「構わないと聞いてるから大丈夫よ。それじゃ案内頼むわよ、色男」

 

 生徒として青春を楽しんだ、ならば次は所長として職務を全うする時間だ。




次回、スカウト。便利屋所長としてのカリスマを見せる時

便利屋メモ
実は表彰式でオールマイトが来るというのをモスキート越しで知ったのでホークスの呼び出しは内心で助かったと思っている。
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