便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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被身子:姉 仁:兄 圧紘:近所の気の良いおじさん(自称)


No.59『レイミィちゃん、見守り隊』

 話し合いの結果、適当に雑貨とかを見に行かないという話になり行動を開始する一行……と付かず離れずの距離、人混みに紛れ一般人と同化するように彼女たちを追う影が三つ。

 

「ふむふむ、無事に楽しんでるみたいですね、レイミィちゃん」

 

「なぁ、これ絶対にお嬢にバレてる気がするんだが」

 

「かもしれないけど、まぁ被身子ちゃんが退かないって言うから付き合うしかないかな」

 

 などと書くと敵連合の者かとかで怪しい雰囲気になるが実態はこれである。事の始まりはレイミィが出ていってから数分後、唐突に手を上げた被身子からだった。

 

 いつもの笑顔のまま、私に意見がありますという事を示すような行動に男三人衆はどうしたものかと思うと同時に、誰が彼女に聞くかと視線でやりとり、そして動いたのは圧紘、彼は彼女にどうしたのかなと聞けば

 

「私達もショッピングモール行きましょう!」

 

「……」

 

「……」

 

 変なことを笑顔で言い始めたよこの娘。と言う空気が事務所を包み込む、間違っても買うものがあったから行きたいというのはないだろう、その証拠に目がこれでもかというくらいに輝いているのが嫌でも見ることが出来てしまう。

 

 要は、レイミィの様子をコソコソと見たいということなのは三人にも理解できたし、じゃあどうするよと言われても

 

「被身子ちゃん、流石に怒られるとおじさん思うかなって」

 

「俺もそう思うぞ、それにお嬢に気付かれないってのも無理だろ」

 

「馬鹿言ってないで、空き部屋の掃除するならさっさとやるぞ」

 

「ふっふーん、このトガがその程度のことを考えてないとでも思ってるんですか?」

 

 腰に手を当ててドヤ顔を披露する姿に、男達はこれはもう止められないなと悟る。しかもドヤ顔まで言ってるならば根拠はあるが強くない自信に満ち溢れてしまっているので、下手に否定した場合は更に煩くなるか、じゃあいいですからと単独行動してしまうだろう。

 

 とりあえず、考えがあるなら聞いてみたいと伝えれば上機嫌な彼女は簡単な話ですと策を披露した。曰く、あのショッピングモールは平日でも人は多く混雑している、更に一年A組は雄英体育祭で一種の有名人となっているので遠巻きだろうと視線は沢山彼女たちに集まる、つまり

 

「いくら、レイミィちゃんと言えどその沢山の視線が集まれば一般人に紛れている私達の視線や気配には気付きにくいはず、そこに本気の潜伏を加えれば倍率ドンッです!」

 

 あれ、割ときちんと根拠があったわ。内容だけを聞けば確かに一理あるかもしれないという言葉に男三人衆は素直にそう思った、今の今までが思い付きが殆どだったが今回はかなり力を入れて考えの元での発言だったらしい。

 

 力を入れて考えた理由がレイミィをこっそり付けて、楽しんでる姿を見てみたいという純度百%の私欲なのが彼女らしいと言えばらしいのだが。それでもレイミィの気配察知をかいくぐれるかもしれないことを思い付いたということにはきちんと賞賛を送るべきかもしれないと各々が口を開く。

 

「(被身子が考えたにしては)確かに、一理あるな」

 

「(被身子にしては的を射てて)なるほどな、やれるかもしれない」

 

「(被身子ちゃんの案にしては)結構、上手くいくかもしれないねそれは」

 

「えへへ~……ん?」

 

 口々に褒められ嬉しそうに笑みを浮かべだが直ぐに何か含みなかった今と微妙な違和感に気付く、絶対に口にしてないだけで主語が存在してるんじゃないかと、故に真顔で

 

「待ってください、今ちょっと褒め方に違和感が」

 

「で、部屋の掃除はどうするんだ」

 

「へ? あぁ、それも私に秘策ありです! 仁くん、私を増やしてください!」

 

 だがそれを聞くよりも前に血染から被せるように飛んできた質問にこれもまた胸を張って答えるが、それに対してははぁとため息が返され、どうしてだと聞けば、血染は答える。

 

 仁の個性で増える分身は意思がないとかではない、そっくりそのまま増えるので今の被身子を増やせば、思考回路もそのままなので分身も見に行くと言うに決まっていると。

 

 無情にも返されたその言葉に被身子は固まる。固まってから仁の方を見れば、血染の言葉を肯定するように頷かれ、ここで自身の計画が崩れ始めていることに気付き

 

「や、やってみなきゃわからないですし?」

 

「馬鹿言って面倒を増やすな。帰ってから掃除しろ」

 

「むぅ……って、あれ?」

 

 今、眼の前の新聞を開いている副所長はなんと言ったと被身子。確かであれば『帰ってから』と言ったようなと視線を送れば、それを鬱陶しそうな声でこう告げる。

 

「どうせ、言っても止まらないだろお前は。だったらさっさと行って、満足したらさっさと帰ってこい、圧紘と仁も念の為についていけ」

 

「あ、ありがとう血染くん!!!」

 

「ふふっ、良かったね被身子ちゃん」

 

「念の為に俺の分身を一人置いておくか?」

 

「要らねぇ、どうしてもの時は連絡する」

 

 それじゃすぐに準備して向かいましょう! という経緯の元、三人はレイミィを追ってショッピングモールに来ていたという訳であり、便利屋で培った追跡技能をフルに使って現在に至る。

 

 ここまでの経緯としては、レイミィ達にナンパ目的で近寄ろうとしたチャラ男グループを被身子が無の表情と一瞬だけの殺気で追い払った際にバレかけたくらいであり、今は友人たちと雑貨屋で適当なものを楽しげに見ている彼女を少し離れた位置で眺めているのだが。

 

「所長、楽しそうで何よりだね」

 

「ですね~。あんなにカアイイ笑顔、私達以外にも出来るなんて余程ですよ」

 

「見るからに良い子たちだからな。お嬢も気に入ってんだろ」

 

 彼らの視線の先には透明少女こと葉隠が彼女が部屋着にしているTシャツに描かれている丸くて白い黄色い嘴を持った焦点があってない目をしている鳥のぬいぐるみを見せて、これ見たことあるというか部屋着に描かれているやつじゃんとケタケタと笑うレイミィの姿。

 

 少し前、中学一年から二年の後半までは学校であんなに純粋に楽しいという表情をしたのを被身子は見たことがなかった。何時だって便利屋のため、それと並行して学業もしっかりしなければと澄ました表情を常にしており、友達付き合いも当時はまだ便利屋も軌道に乗っているとは言えなかった時代なのでそちらを優先してるがゆえに断っていたりと言う学生生活を過ごしていた。

 

 それは事務所でも同じ、笑うには笑うけど直ぐにあれこれと考える表情に変わり、毎日のように今月はこうで、だから依頼をこれだけこなしてなどを考えている姿しか見ておらず、余裕というものがなく、そんな事を繰り返していれば、気付けば彼女の周りからは同級生達も必要最低限でしか近寄らなくなり、結果として彼女の中学時代は被身子以外は友人が居ないという現実に成っていた。

 

 勿論、軌道に乗って安定してきた中学三年の頃には被身子との会話で楽しげに笑うようにも成ったし、事務所でも血染、圧紘、仁と会話して笑うようにもなった。逆に言えば自分たち以外であんな風に笑うことはなかったのが雄英高校に入学してからはクラスメイトの話をすれば笑っている姿に安心感を覚えた。

 

「私、レイミィちゃんが雄英高校に入学してくれて良かったと思います。多分、他の高校だったら、今までと変わらなかったんじゃないかなって」

 

 あの日、協会と公安の二つの署名で便利屋を継続させたいならと出された条件。雄英高校への入学及び卒業、レイミィならば問題なく行けるだろうと言う条件を飲んだことで彼女は自分以外の友人と巡り会えたということに被身子は嬉しさを隠せない。

 

 そして、それは圧紘と仁も同じであり、彼女にやっと出来た新たな友人たちには感謝をしている。

 

「分からなくもないかな。言っちゃえば超一流の子たちが集まってるし、人が出来てる子が多い、だから所長にとっても居心地が良いんだろうし」

 

「信頼できる人間が沢山いるってのは、大事だからな」

 

「仁くんがそれを言うと洒落にならない重さになるんですが」

 

 急に出来上がった重力に思わず真顔になる被身子と彼の過去を考えればその発言も仕方がないよと苦笑する圧紘、と言うトリオ漫才をしている最中、レイミィはと言うとふと直ぐ目の前、もっと言えば三人が自然に溶け込むという形で潜伏している人混みに視線を向ける。

 

 やはりなんか覚えしかない視線を先程から感じると、そこに先程の覚えのある殺気が合わさった瞬間、彼女はため息を吐き出した。

 

(これ、もしかしなくてもよね。何やってるのかしら)

 

「どったんレイミィ、ため息なんてして」

 

「え、いや、これ買おうかどうかを悩んで買った場合の被身子の反応が思い浮かんじゃってね」

 

 どういう訳か、周囲からの反応がイマイチなこの愛嬌(レイミィ視点)のある丸い鳥のぬいぐるみを手に発言すれば、耳郎もうーんまぁ個人の自由だしという当たり障りのない答えしか返ってこずむぅとなる。

 

 可愛いと思うんだけどと彼女たちの反応にイマイチ納得できないがまぁいいかと買うことにして、買い物かごに放り込むのだがそれは彼らにも見えており、被身子もまた困惑していた。

 

「か、買うんですかあれ」

 

「お嬢ってよく分からない物を偶に買うよな」

 

「まぁでも少し前の頃は物欲もなかった感じだったのが自分が欲しいのを買うって所まで来たのは喜ぶべきじゃないかな」

 

 かもしれませんがあれはないでしょと言うのは被身子の言葉。なんて言いつつも圧紘の言うようにこれ欲しいなで軽い衝動買い的な行動をするようになったのは嬉しいことであるとは思いつつ、その後もレイミィにバレないように彼女が友人たちと楽しむ様子を眺めていく。なお、レイミィには既にバレかかっていることは誰も気付いていない模様。

 

 基本的にはショッピングを、時にはモール内にある屋台でクレープやらタピオカドリンクなどを、時にはゲームセンターコーナーにてクレーンゲームなどを、まるで中学の頃には出来なかった友人たちとの青春を取り戻すかのように打ち上げを楽しむ姿に、被身子達も思わず笑みが浮かんでしまう。

 

「流石にお昼の時は同じお店に入れなかったので分かりませんが、まぁあの様子ならワイワイ楽しんでたんですよね」

 

「同じところに入ったら気付いてくださいって言ってるようなものだしね。でも久し振りにラーメン食べたけど、胃に結構来るね……」

 

「そうか? まぁ圧紘は食が細いからなぁ」

 

 昼食時にレイミィたちはファミレスに向かったが、上記の判断で彼らはラーメン屋に行った時以外を除けば常に観察し、ふと被身子が腕時計を見れば向こうもそろそろお開きにしようかと言ってる時間。

 

「本当だったらもう少しって言いたんだけど、帰りも声を掛けられたりなんだりを考えたら、早めに解散したほうが良いよね」

 

「帰りなんて、人が行きよりも多そうってことを考えればそれが良いでしょうね。特にそういうのに慣れてないのだから」

 

 百のように迎えの車がとかではない電車組は行きも結構な声を掛けられたことを考えれば確かにとなる。レイミィは来るまではなかったが流石にモール内では名前を普通に呼ばれるのもあって三位で早退してしまった娘として割と声を掛けられた。

 

 レイミィ自身はその手のやり取りは多くはないが慣れているので問題ない。けれど自分以外はそうではなく、気付かぬくらいには体力と神経を使っているので早めに帰宅はあるだろうと同意する。

 

「だね~、でも楽しかったよ!」

 

「いやぁ、遊んだ遊んだ」

 

「とても楽しかったですわ」

 

「またどっかのタイミングでこうやって遊びに来たいね」

 

「良いわね、直近だと夏休みとかかしら」

 

 夏休み、学生ってそう言えばそんな休暇があったわねとレイミィは蛙吹の言葉で思い出したという表情になる。便利屋も夏季休暇モドキは無いわけではない、が長くても3日や4日程度であり、あとは通常営業であることが殆だ。

 

 なので仮に集まるとすれば事前に伝えてもらえればと言えば、夏休みでも通常営業の便利屋の実態に驚きと、それもそうかと納得が半々に混ざった目をされた。

 

「便利屋って言ってしまえば年中無休が普通なのよね」

 

「そうなのよ、それでもまぁちょくちょくと細かい休みとか作ってるけど、長々というのは難しいのよね」

 

 やれなくはないけどやった場合は後が怖いと続け、更に言えばヒーローも変わらないわよと現実を叩きつける。割と容赦ないそれに現実は厳しいと思いつつ、だからこそ学生の時に楽しむしか無いなと誰かが言えば笑いが生まれる。

 

 いつまでもこうして雑談をしていたいが、見れば帰りの電車が混みそうな時間に差し掛かっており、今度こそ解散、とは言いつつも電車組は駅まで一緒であり、先ずは車が向かいに来た百が先に別れ、駅にてレイミィが乗るのとは逆側に向かう者たちが、そして降りた場所で、と別れの挨拶をしていきそして

 

「ただいま~」

 

「思ったよりも早かったな、おかえり」

 

「おかえり、所長」

 

「おかえり、お嬢。電車とかで声かけられなかったか?」

 

「おかえりなさい、レイミィちゃん! 楽しかったですか?」

 

 なんとも白々しいと声に出さなかった自分を褒めたいとレイミィは思いながら、ニコニコ笑顔の被身子に向けてただ一言、だがそれは彼女を凍らせるには十分な言葉を伝えた。

 

「あら、最初から最後まで見てたんだから分かるでしょ、被身子? そうよね、圧紘と仁?」

 

「……うそーん」

 

「あらら、やっぱり駄目だったか」

 

「流石、お嬢だな。けど、よく気付いたな」

 

 あれだけの人混みに紛れる形だったというのに、仮に自分たちが同じ状況だったら気付ける自信がないからこそ聞いてみればクスリと笑ってから答える。分かったのはなんてこと無い、こうしてずっと共同生活をしていて家族同然の付き合いだからこその答え。

 

「何年一緒に住んでると思ってるのよ。あれだけの人混みでも貴方たちの視線くらいはすぐに気付けるわよ」

 

「レイミィちゃん、そう、そうですよね!」

 

「開き直りやがった。さて、今日の夕飯は……」

 

 どうするんだバートリー。と血染が聞くよりも前に彼女のスマホが着信音を響かせる、個人の端末になんて誰かしらと取り出し画面を見れば【轟冬美】の文字、増々どうしてという疑問を浮かばせながら出たレイミィだったが向こうからの始めの一言で解消された。

 

「もしもし、バートリーですが何かありましたか?」

 

《あ、レイミィちゃん久し振り。突然で申し訳ないんだけど、今日、こっちで夕食どうかなって、お母さんがぜひ招待したいって言ってて》

 

 スッと便利屋面々の視線を送れば、任せるという視線を返され、貴方達は……と思いつつ、でも彼女の中では断るという選択肢が全く浮かんでいないことに自分でも苦笑しながら

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔していいかしら」

 

《うん、待ってますね》

 

 レイミィはこの時は知らなかった。まさかこの夕食の招待があの一件に繋がるということを、なんで家族会議に自分が巻き込まれてるんだと思いつつも自業自得じゃんこれとなることを……




次回、地獄の轟くん家PartIF

便利屋メモ
自分の中学二年までの行いが友人が居ない理由ではとレイミィが気付いたのは中学三年の後半になってからだった模様
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