便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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おかしい、この章は便利屋の羽休めだったのではないのか……


No.61『かくして彼らは可能性を知る』

 話がある。唐突に、それでいて何か覚悟がいることを話そうとしているのは分かる表情と雰囲気のエンデヴァーを前に、冷とレイミィ以外はどうしたのかと困惑気味な空気になる。

 

 もし、なにか重要な話だとすれば便利屋が帰ってからの方がいいのではないかと冬美が言うがレイミィが静止し

 

「絡んでるのよ、私も」

 

「え?」

 

「なるほど、お前が夜中にコソコソやってた理由か」

 

 うぐっと血染からの言葉にレイミィはなんとも言えない表情になる。隠し通せるつもりはなかったのだが、彼の言葉から察するに随分と前から知っていたという感じであり、だとすれば迂闊すぎたかと思わざるを得ない。

 

 因みにこの事は血染だけではなく、依頼で帰りが遅くなったり、ちょっと夜更かししてたとかで彼女が夜遅くに何かをしているということは便利屋全員に気付かれており、隠せていると思っているのはレイミィだけだったりする。

 

 そんな余談は置いておき、レイミィ個人も絡んでいながら家族である自分たちにも関係がある話と言われてもピンとこないものであり、それにプラスして冷は沈痛な面持ちで、エンデヴァーは迷うような見たことない態度に夏雄が驚きつつ

 

「それで、話ってなんだよ」

 

「……」

 

 このタイミングまで来て迷うのかとレイミィがジト目に近い視線を送ってしまうが、冷も同じような様子だと気付けば目を閉じ、息を吐き出す。気持ちは分からないでもない、これを話すということは二人にはとてつもなく重いことだろう、特にもうほぼ完治していると言える冷にはまた精神を不安定にさせてしまうかもしれない、そんな事を考えたら自然を口が開こうとして

 

「なぁ、それって燈矢兄さんの事なのか」

 

「っ!?」

 

「焦凍、それはどこで?」

 

 恐らくはエンデヴァーが話があるという時点で何かを察していたのだろう焦凍が迷いながらそれを口にすれば、エンデヴァーは驚愕し、冷も驚きながらそっと問い掛ければ雄英体育祭のあの日、レイミィと二人が会ってる時に聞いてしまったと素直に答える。

 

 レイミィ自身は知っていたし、いつかこれも話さなければとは思っていたのだが今回は事態が思ったよりも早く進んでしまったがゆえにタイミングを逃してしまった形だ。なので、実はとバツの悪そうな顔で焦凍を庇うように補足を付け足す。

 

「どうやら、あの時、あのタイミングで来てたんじゃなくてもっと早くには私達の所に居たみたいでね。一から十まで聞かれてたらしいわ」

 

「悪い、盗み聞きするつもりはなかった」

 

「いえ、悪いのは二人に会うっていうのを口止めし忘れた私よ」

 

 あれ、それってつまり私のやらかしではとここで当時のことを思い出して目を泳がせる被身子を見なかったことにしつつ、もうさっさと腹を括るしかないわよとエンデヴァーに言えば彼は小さく頷きそして告げる。

 

「あぁ、話というのは燈矢についてだ」

 

「燈矢お兄さんの……?」

 

「はい、あの子のことで重要な話です」

 

 山火事で死んだ兄の話とは、唯一内容を知っている焦凍を除き、知らない面々は次の言葉を持つようにエンデヴァーと冷を見つめる。暫しの沈黙、恐らくは言葉を選んでいるのだろうとは思うが一々止まると覚悟が鈍らないか心配になるわねと思ったりするが、場の雰囲気的にそんな事を口には出来すはずもなく黙って待っていれば、意を決した表情のエンデヴァーがこう告げた。

 

 燈矢が生きているかもしれないと。考えに考えたが下手に誤魔化すような言い方をしなかった彼にふぅんとレイミィは感心するように見つめる。もっとも今の言葉で場は騒然としており、それどころではないのだが

 

「え……?」

 

「おい、それって本当なのか!?」

 

 冬美は衝撃的過ぎることに口元を手で抑えて言葉が出ないという感じで二人を見つめ、夏雄は衝動のままエンデヴァーを問い詰めるように声を上げる。焦凍は雄英体育祭で一度聞いていたからというのがあるからだろう、驚いた表情こそしているが、その顔は聞き間違いじゃなかったんだというのが強く浮かび上がっているのが見える。

 

「燈矢くんって、長男さんですよね。確か山火事でって話じゃ?」

 

「って一度だけ聞いてるね。所長が絡んでるとなると信憑性はかなり高いとは思うけど」

 

「仮に生きてるとして、何で戻ってきてないんだって話が出るがな」

 

「その辺りもエンデヴァーかバートリーが語るんだろ、どうなんだ?」

 

 便利屋もカミングアウトされた内容に驚きこそするが、レイミィが絡んでいたという事でエンデヴァーの出任せではないというのが理解でき、それぞれが上記の反応を見せたあと、血染がレイミィに視線を送りつつ聞けば彼女は

 

「ここからは私から話したほうが良いかしらエンデヴァー」

 

「その方が良いだろう、だが三人ともこれが俺の出任せとかではないということは信じてくれ」

 

 信じてくれとかどの口で言ってんだかと思いつつ、レイミィは先ずその可能性に至って経緯を話すことに。火災跡から見つかったのが下顎の一部分だったことに疑問を持ったこと、それから自分とエンデヴァーで内密に情報収集をしていたこと、その途中でエンデヴァーが冷にバレたこと、話した所でエンデヴァーが態とらしい咳払いが入る。

 

「何よ、事実でしょうが。話が逸れたわね、それで最後に彼から山火事から3年後にとある孤児院で火災が合って、その際に【蒼い炎】が目撃されたってことから彼が、轟燈矢が生きている可能性が高いと推測したというのが今日までの経緯よ」

 

「けど蒼い炎ってのは他の同じような個性持ちの可能性もあるし、そもそも母さんの体質が強かったのを考えれば、やっぱり下顎部の一部だけしか残らなかったって考えるのが普通じゃないのか?」

 

 暗に希望的観測が過ぎると夏雄は言いたいのだろう。それも確かにそうかも知れない、偶々似た誰かの炎の個性だったかもしれない、けれどレイミィは否定した。雄英体育祭の時に自身の治療中にリカバリーガールに聞いていた、もしそれだけの山火事で炎に弱い体質の持ち主が下顎部の一部だけを残して焼失するのかと。

 

「返ってきた答えは、そうだとしたら身体全部が炭になるはずだとのこと。このことから、下顎部の一部【しか】残らなかったじゃない、下顎部の一部【だけ】が彼の身体から焼け落ちて、大部分は無事ではないとは言え残っていたと推測できるわ」

 

「無事ではないけど、現場にはなかったってそれってつまり、誰かが燈矢くんを連れ去ったってことにならないかい所長」

 

「……えぇ、見つからないとなれば、そう考えるのが妥当と思うわ。ごめんなさい、冷さんの居る前でこれは話さないつもりだったのだけれど……」

 

 今度はエンデヴァーと冷も驚く側に回ることになる。雄英体育祭のあの場面では生きていて裏でなんて言ったが、リカバリーガールの話を聞いた時に仮に生きてたとしても瀕死だろうということから、彼女は第三者が山火事跡地から彼を連れ去ったという考えに至っていた。

 

 そして、彼女は知っている。脳無と言う存在を作ることが出来る組織を、それが可能ならば瀕死人間も再生とも言える治療ができてしまうのではないかと、流石にこれは冷や冬美達が居る前では言えないが。

 

「ともかく、連れ去られたと仮定すれば放火された孤児院は彼が保護されてた場所と考えられるわ」

 

「それって、燈矢兄さんがやったって言いたいのかバートリーさん」

 

 夏雄からの鋭い視線と回答次第ではと言う感情が込められた声に彼女は小さく頷いた。状況証拠でしかないが、それでも雄弁に語ってしまっていると。だからこそ生きてるという仮定で彼らに、雄英体育祭でエンデヴァーと冷に聞いたことと同じことを問う。

 

「もしそうだとすれば彼は犯罪者ではある、それでも会いたいかしら?」

 

「うん、ちゃんと話をしたいかな」

 

「俺も謝りたい、何も出来なくてごめんって」

 

「……俺は燈矢兄さんのことをよく知らない、だからこそ話をしたい、と思う」

 

 それぞれがしっかりとレイミィを見て答える姿にこういう所は親子そっくりなのねと羨ましい目をしてから、分かったと頷き。先ずは便利屋メンバーに伝える。これは依頼でもなんでもない、エンデヴァーから借りこそ作れるがそれだけの自分がこの家族をこれ以上悲しい顔させたくないだけのエゴで行うことであり、もし付き合いきれないなら関わらなくて良いと。

 

「何を言い出すかと思えば、そのくらいのお嬢の我が儘なんて可愛いものだと思うぞ俺は」

 

「おじさんも同意見だね。それに轟家には夕飯とかでお世話になってるからそれくらいなら大丈夫だよ」

 

「トガもでーす! にしし、レイミィちゃんがしおらしくそんな事言うなんてカアイイですね~」

 

「ふん、エンデヴァーから借りが作れるだけでも儲け話だ、乗ってやる」

 

「……ありがとう」

 

 嫌な顔一つせずにそう答えてくれた便利屋の仲間たちにレイミィは微笑み、それから二人に姿勢を向けてから伝える。これからは轟燈矢の捜索に便利屋が全面的に協力すると、そしてもし接触できたのならば

 

「私は全力で説得をするわ。彼がどんな考えで裏に身を置いてるかは、まぁ大体がエンデヴァーの所為でしょうけど、それ以外でどうにか灰色に引き上げられないかやってみる」

 

「……」

 

「レイミィさん、ありがたいのですが無理だけはしないで下さいね」

 

 スッと自身の前まで来てレイミィの手を取る冷の表情は赤の他人を心配するようなものではなく、まるで本当の娘を心から心配するようなそれ見た時、彼女は口元に最悪な違和感を感じ、ヤバいと感じるよりも前に冷の首元を見て息が詰まった。

 

(っ!?)

 

 歯型が見えた、溢れ出る血が見えた、錯乱しそうになる頭を無理やり押さえつけ、一旦距離を取ろうとして冷に言葉をかけようとした時、彼女の顔を見て悲鳴を上げてしまった。そこに映っていたのは彼女の顔ではなく、あの日、二歳の時に殺してしまった自分の母親の生気が感じられない表情、それを認識したと同時に一気に込み上げてきた嫌な感覚にパッとヒンヤリとした彼女の手を払い除けて

 

「ヒッ!? うっ、や、ば……!!」

 

「レイミィちゃん!!!???」

 

 ドンッ! と居間の障子を開き中庭に飛び出したと同時に響く吐瀉物が地面に叩きつけられる音、すぐさま被身子が駆け寄り背中を擦るのだが今回のこれは明らかに何時もとは違うことに彼女も若干だが混乱している。

 

 突然のことに遅れて冬美と焦凍も大丈夫かと向かい、血染たちはその様子を見つつ驚いている冷に不快な思いをさせてすまないと頭を下げることに。

 

「いえ、それは大丈夫です。あのレイミィさんは……」

 

「話には聞いているが、あそこまで酷いのか」

 

「いや、昔ならまだしも今はああまでパニックにならない。今回が特別おかしい」

 

 明らかに気が動転しているという感じで食べたものをすべて吐き出す勢いのレイミィにどうしたんだとなる血染と仁、そこで圧紘が一つ考えついた。もしかしたら、冷さんの今の行動が母親を想起させてしまったのではないのかと。

 

「勿論、悪いことじゃないです。ただ、あの反応を見るに何時も以上にはっきりとフラッシュバックが来ちゃったんじゃないかなと」

 

「あっ……」

 

「気に病まないでくれ、お嬢だってそのつもりはないからな」

 

「大丈夫か、母さん」

 

 己の行動でレイミィのトラウマを想起させてしまったことに後悔の念に押しつぶされそうになっていた彼女を仁と夏雄が介抱する。一方レイミィは大凡を胃から吐き出した所で落ち着いてきたらしく、冷の様子を見てから自身の不甲斐なさに舌打ちを思想になるのを堪えてフラっとしながらも立ち上がり

 

「ごめんなさい、嫌なものを見せてしまったわね。ああっと、これって弁償か何かしたほうが良いのかしら」

 

「平気だと思う、後で適当にやっておく。それよりも顔色かなり酷いぞバートリー」

 

 でしょうねと答えながら被身子たちとともにゆっくりとした足取りで居間に戻り、そっと頭を下げた。見苦しい姿を見せてしまったと、それと冷さんが悪いわけではなく、自分がまだこれを乗り越えられてないだけだとも。

 

「いえ、私も迂闊でした。レイミィさんはその事も話してくれていたのに」

 

「冷さんが気に病むことはないです。事故みたいなものだと思ってもらえれば、ふぅ」

 

 彼女が気を落とす姿を見れば、それだけでズキンと痛む頭に息を吐き出し、時計を見ればお暇するには丁度良い時間帯。庭の件についてはエンデヴァーにもし弁償しろというのならば後日払いに来ると言うが、向こうはふんと鼻を鳴らし。

 

「こんな状態のお前にそんな事を言えるか。それよりも帰れるのか」

 

「帰れるわよ。寧ろ帰らないと明日は明日で予定が朝からあるから」

 

 それにここに居たら冷さんや冬美さん達に気を使わしちゃうでしょと自嘲気味な笑みを浮かべ、便利屋メンバーにも帰るわよと告げて立ち上がる。もっとも立った瞬間にふらつき被身子に支えられるが、そのまま門まで進み、圧紘が車を持ってくる間に見送りに来た冷に向けて

 

「あ~、その、明日からまた冷さんは入院でしたっけ?」

 

「えぇ、けど今月中には退院になりそうです」

 

「そう、ならまぁえと、お大事に。また呼んでもらえたら来るわ」

 

「素直じゃないですねレイミィちゃん、毎週呼んでくれたって喜ぶいったい!?」

 

 余計なことを口走った被身子に一発入れたタイミングで車が到着、最後に改めて今晩はありがとうございましたと感謝を告げてからレイミィたちは車に乗り込み、轟家が見送る中、走り去っていった。

 

 こうして轟家のお呼ばれは終わりを告げる。本来よりも早いタイミングで知った燈矢生存の可能性、コレがどう転がるかは誰にもわからない。




フラッシュバックしてゲロゲロしちゃう系主人公。なお、冷さん以外でも心から心配してくるような母親系キャラだったら割と直ぐに危なくなる模様

便利屋メモ
車の中でも真っ青な顔で居たので便利屋全員が気が気でない状態が事務所到着まで続いた
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