便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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まさかヒーロー名の話で1ページ潰れるとは思わんだ


No.66『名は体を表す』

 雄英高校正門前、そこに少しだけ疲れた顔をしたレイミィ・バートリーは居た。原因はかなりの頻度で声を掛けられたから、一昨日の打ち上げは集団だったのと彼女本人が変装をしていたので問題にならなかったが今日はそれをせずにしかも制服姿だったのでそれはもう声を掛けられた。

 

 主に表彰式で早退したのも原因の一つにはなっているだろう。大体が大丈夫だったのか的なニュアンスだったので特に問題はなく、応援関連には笑みで返すなどでここまで来たが

 

「……疲れた」

 

 これって今後暫くはこんな感じになるのかしらと思いつつ2日ぶりとなる教室へ。朝のHRまで15分近く前という事で教室にはクラスメイトがほぼ揃っており、入ってきたレイミィに挨拶をし、彼女もまたそれを返してから席に座り込み

 

「はぁ、なるほどね。一昨日、貴方達が大変だったって言ってた理由がわかったわ」

 

「凄い声かけられたでしょ。私なんかはちょっと落ち着いてきたけど、三位はまだまだ掛けられるんじゃない?」

 

「今後暫くは飛んで来ようかしら」

 

「それは怒られるのでないでしょうか……?」

 

 身体全体での疲れましたに耳郎はやっぱりレイミィでも疲れるんだなと思いながら言葉を掛ける。表彰を逃した自分でも結構だったのを考えれば、三位でなおかつ早退しましたという彼女は自分以上だろうというのは想像は容易いのもある。

 

 そこで事情を知らない男子組の一人、切島があの日の早退はなにかあったのかと聞いてくる。見れば、周囲も気になるというのを隠してない雰囲気にうーんと言葉を選ぶように悩んでから

 

「いや、特に私とかが何かってわけじゃないわ。そうね、便利屋でちょっと外せない用事があってね」

 

「そうだったのか。でも勿体ないな、表彰式にオールマイトが来てくれたんだぜって……す、すげー露骨に嫌な顔するな」

 

「エ、アァ、ウン、ソウネ、モッタイナカッタワネ」

 

「何一つ感情が籠もってない棒読みとか初めて見たわ」

 

 もはや嫌いという感情すらも捨て去る域にまで来た棒読みと表情にクラスメイトは苦笑いするしかない、No.1ヒーローにここまでの態度を取れるのは中々居ないであろう。

 

 それでも最近は彼女の中ではそれなりに軟化している部分はある、具体的には向こうも苦労してるし出久の精神性と彼が同じというのならば当時の彼の行動も分からなくはないという理解した程度ではあるが。

 

「そう言えば、表彰式で爆豪は大人しかった? 三位だと不服だって暴れそうだけど」

 

「暴れてねぇよ、オメェ人を何だと思ってんだコウモリ女」

 

「瞬間起爆人間かしら?」

 

 ガタッと立ち上がる切れる寸前という攻撃的な笑みを浮かべる勝己と瞬間的に彼女の周囲から避難するクラスメイト、それを見ても余裕そうな笑みを崩さずに彼を見つめるレイミィ。一発即発の空気になる教室、出久もどうにか収めようと思考を戦闘時のそれで回すが打開策が浮かばずにマズイぞこれとなるが

 

「おはよう」

 

「……チッ」

 

「フフ、残念ね。爆豪」

 

 時間とともに現れた相澤の言葉でその空気は霧散、初めからそれを狙っての行動だったと分かればクラスメイト達も何だいつもの彼女の悪癖かとなるわけであり、もっと言えば彼が現れた時には全員が瞬時に自身の席に座り静かにしているので尚の事二人の空気が目立つ。

 

 結果、相澤はレイミィがなにか勝己を煽ったんだろうなと判断してから小さく息を吐きだして

 

「バートリー、早退からの明けで随分と調子が良さそうだな」

 

「……ごめんなさい、ちょっとタガが外れてたわ」

 

「分かれば良い。さて、今日のヒーロー情報学だがちょっと特別だぞ」

 

〝特別〟その言葉にざわめく教室、もしかして突発的な小テストでもやるのかと言う言葉にレイミィもだとしたら面倒だわと思いつつ、そう言えばと昨日のことを思い出す。

 

(校長が指名云々の話をするとか言ってたわね。だとしたらそれかしら)

 

「【コードネーム】ヒーロー名の考案だ」

 

『胸膨らむやつきたああああああ!!!』

 

 彼女は油断していた。指名の話からするだろうから、その間は火伊那が加入したことで変わった資金繰りの計算でもしようかとイソイソと鞄から電卓とノートを取り出していたレイミィの鼓膜を襲ったのは大音響のクラスメイトの叫び。

 

 端的に言えば、彼女は一瞬だけ意識が飛んだ。目から光を失い、ドスンと机に頭を叩きつけるように沈む音に彼女の前の百が何事かと振り向いた先にあったのは事件現場とも言える光景、それを見て彼女は叫んだ。

 

「れ、レイミィさん!!??」

 

「……え? あ、あぁ、大丈夫、ちょっと気を失っただけ」

 

「大問題ではありませんか!?」

 

 問題ないかあるかで言えばあるかもしれないが、いい加減にA組のこの突発的な爆音にも慣れてない自分に問題があるので気にしないでくれと伝え、それよりもと教卓を指させば、ゾワッと個性を使い髪を昇らせる相澤の姿に全員が一気に静まり返る。

 

 訓練もとい、彼の調教の成果とも言える光景に頭を抑えながら顔を上げノートを開きつつ彼の話に耳を傾ける。

 

「というのも先日話した【プロからのドラフト指名】に関係してくる」

 

(先日? あぁ、私が早退した時の話か)

 

 曰く、指名こそ来ているが本格化するのは即戦力として判断される2年か3年からであり今回のこれは将来性に対する〝興味〟程度のものであるということ。

 

 なので卒業までのその〝興味〟が削がれた場合は一方的にキャンセルなんてことがあり得るということ、それを聞きレイミィは相澤に注意されない程度の音で電卓を叩きながら思う。

 

(そんな事してるから、いたずらにヒーローに逆恨みを生み出したりするんじゃないの。まぁ、プロとしては中途半端なやつ囲って死なれたりするのは困るからって話なんだろうけど)

 

 一方的ってのは無いわよね、傲慢だわ。カタカタと記憶にある数字を元にあれこれと計算しつつノートにその計算を書き入れては再計算を繰り返しつつそんな事を思う。

 

 過去に何度か、そんな理由で黒に落ちた人間を見たことがあるからこそ尚の事そう感じてしまう。もっとも、聞いてみたり情報収集してみれば実力がとか性格がとか本人に問題があるのが殆どなので逆恨みと言う言葉を使ったわけではあるが。

 

 それはそれとしてレイミィはヒーロー名についてはあまりに興味が湧いてこない。そもそも使わないというのがあれば、便利屋としてもコードネームと言うものは使用していないのも手伝って、カッコいいとは思うけど付けるほどじゃないという感想に落ち着いている。

 

「頂いた指名がそんまま、自身へのハードルになるんですね」

 

「そ。でその指名の集計結果がこうだ」

 

 それは気になるなと顔を上げ黒板を見れば上位9名の名前と指名数が書かれている。一番は焦凍、続いて出久とタイで勝己、そして四番目の己の名前が入っており数字も低いものではない。

 

 と言うよりも全体でそれなりにバラけている。上位四名までは四桁言ってるのは、やはり決勝トーナメントの影響だろう、それでもレイミィは自分にそこまで入ってるのはある意味で意外だった。

 

「1000ちょい来てるのは意外ね。なんだったら100もないかと思ったのに」

 

「それはないのでしょうか? 雄英体育祭の成績から見ればこれは妥当な結果だと私は思うのですが」

 

 確かに百が言うことは間違っていない。雄英体育祭での動きや成績だけを見れば将来性の塊であり早い内に唾を付けておきたいと指名が入るのは当然とも言えるだろう、だが忘れてはならないが彼女は普通の生徒ではなく、そしてその事を隠しているわけではないということだ。

 

「私、別に便利屋やってるってことを隠してないのよ?」

 

「……そうか、バートリーの便利屋は普通に検索して出てくるんだったな」

 

「そ、便利屋の所長。そんなのがヒーローを本気で目指してるって思うかしら?」

 

 名前から調べれば直ぐにでも検索結果に現れるというのに指名がこれだけ来た、つまりは彼女のことを調べていないか、或いは調べた上でヒーローになるとでも本気で思われているのか。

 

 浮かぶ二択に面倒という表情しか晒せない。因みに他の面々、特に麗日は指名が来てたということに天哉の両肩を揺さぶり喜びを表し、出久もその結果に放心状態になっていた。なお、焦凍は親の話題だろうなとしか思っていないし、勝己は出久とタイだったことに何処か不満げでもあったと記しておく。

 

「これを踏まえ、指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

 

(あぁ、そんなことも……ふむ)

 

 だからヒーロー名を今考えてもらうというのは理解できたが、レイミィとしては職場体験を利用すれば保須市の警邏の依頼を同時に潰せるのではないかと考えた。まだムーンフィッシュがそこに居るとは限らないが、それでも態々保須市で活動させたということに意味がないとは思えない。

 

 だとすれば、敵連合は保須市でなにか動くんじゃないかと彼女は考えており出来ればこの依頼も事態が動くまでは受けたいと思っていたので丁度いいなと思っているとどうやら話は相澤が仮ではあるが適当なもんはと言い切るよりも前に付けたら地獄を見ちゃうわよ!! と現れたミッドナイトの姿を見て

 

「この時の名が! 世に認知されそのまま、プロ名になってる人多いからね!」

 

「あれでよく、教員としてここに居ることが許されてるわよね」

 

「最早今更という話ではありませんか?」

 

 どうやら彼女がヒーロー名の査定をするらしく相澤が呼んだらしい。その本人は既に寝袋を取り出して我関せずという姿勢を取ろうとしつつ、こう続ける。将来、自分がどんなどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近付いていく。

 

「それが【名は体を表す】ってことだ。〝オールマイト〟とかな」

 

(あれは名は体を表せ過ぎだと思うけどね)

 

 それから15分のシンキングタイムを取られるがレイミィはヒーロー名を付ける気がサラサラ無いのでレイミィもしくはバートリーとクリップボードに書いてからひたすらに電卓を叩いてはノートに書き写す作業の時間に費やすことに。

 

 15分後。思ったよりも短いのよねと思いながら流石に時間が過ぎてからも電卓を叩けばバレて怒られるかと思い手を止める。

 

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

 

「発表方式なのね。まぁヒーロー名を堂々と名乗れないなら付ける意味ないってことでしょ」

 

「なるほど、確かにそうですわね」

 

 名乗るのが恥ずかしいヒーロー名なら初めから付けるなということでもあるのだろう。もっともまだ感覚的に慣れてないクラスメイトはマジかよと言う空気の中、先発は青山、彼が堂々と掲げたクリップボードに記されていたヒーロー名は〝I can not stop twinkling.(キラキラが止められないよ☆)〟

 

「そこは〝I〟を取って〝can't〟に省略したほうが呼びやすい」

 

「それねマドモアゼル☆」

 

 短文ってありだし、ちゃんとアドバイスもするのねとレイミィ。否定しない辺りは流石プロヒーローというべきなのか、それとも既に短文をプロヒーローにしてるのが居たのか。彼女の知識の中にはそのヒーロー名は存在しないので後で出久に聞くことになるだろう。

 

 と彼女が思っている最中、クラスメイトは一発目がぶっ飛んだのが来たのでまさかこの流れはと何かを察する。続いたのは芦戸、彼らは願う、頼むこの懸念は外れてくれと、だが現実はあまりに無情だった。

 

「じゃあ次アタシね〝エイリアンクイーン〟!!」

 

「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? やめておきな!」

 

 ミッドナイトの迫真のツッコミにクラスメイトの大半は頷くが、レイミィと百は小首を傾げてから互いに見つめ合い

 

「……2?」

 

「何の話でしょうか?」

 

「レイミィちゃんとヤオモモが分からないのは何となく察してたよ!」

 

 悲しいかな、この二人は映画というものを滅多に見ないのである。レイミィはもしかしたら仁や被身子とかに聞けば出てくるかもしれないが彼女自身が興味がないのと見る暇が無いと言うので殆ど触れたことがないのである。

 

 という突けば重力が生まれそうな話題は置いておき、これじゃ大喜利だぞとなるクラスメイト、だが直ぐに蛙吹がかなりまともな〝フロッピー〟と言うヒーロー名を提示、そこからは至って普通の流れになり、続々と紹介していき、レイミィの手番が回ってくる。

 

 なお、ここまでの流れで飯田はと言うとまだ決めかねているというのがあるらしく、曰く

 

「いずれは兄さんの〝インゲニウム〟をと思っているが、ただ追ってるだけではと考えてしまってね。今はまだ〝天哉〟で濁しておくよ」

 

 焦凍は〝ショート〟とわかりやすいものに、勝己は勝己で〝爆殺王〟と付けるもミッドナイトに流石にと再考を告げられレイミィが笑いを堪えるのに必死になったとかなんとか。出久は結構考え込んでいたが一つ頷き、提示したのは彼にとって今までは蔑称だったはずの渾名〝デク〟

 

「貴方、良いのそれ?」

 

「うん、今まで好きじゃなかった。けどある人に意味を変えられて、僕には結構な衝撃で、嬉しかったんだ。だからこれが僕のヒーロー名です」

 

 まっすぐとした目と迷いのない表情で告げた出久に周りはそれ以上何も言わずに拍手で迎える。頑張れって感じの〝デク〟確かに彼らしいかもしれないとレイミィも思いつつ、教卓に向かいスッと立てたクリップボードをミッドナイトは見てから

 

「〝レイミィ〟貴女も名前、というよりも事情がって言うことよね」

 

「えぇ、付けても使わなくなるもの。ならば初めからって話、宣伝してもいいなら〝チェイテ〟ってのも考えたけどね」

 

 流石にそれでヒーロー活動するのは便利屋としての名折れだものと笑みを浮かべながら告げる。彼女にとってそれだけ便利屋チェイテと言う看板は大きく、大切なものなのだと。

 

 実を言うと、一つだけお遊びでいいならとヒーロー名を考えてはいた。もしこれをこの場で出していればミッドナイトは彼女の母親に気付けたかもしれないそのヒーロー名は……

 

〝スカーレットデビル〟

 

 真紅の悪魔を名乗るそのヒーローはかつて確かに存在したのだ。これは余談だが、爆殺王を却下された勝己は続けて〝爆殺卿〟と提出しレイミィのツボが決壊し、勝己がブチギレそうになるという一幕があったとか無かったとか。




なんかこの話必要だったかなと思いつつもまぁ良いかの精神である。

原作との相違
インゲニウムが無事

出久にも指名が来てる(行き先は変わらない)

便利屋メモ
レイミィ曰く、映画とかドラマはなんかこう見てると飽きてくるとのこと。現実が色々と大変だった弊害だろうと血染は語る。
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