ペラペラと渡された資料の束を流し読みするレイミィ。これはヒーロー名の一連の流れが終わったあと、相澤から生徒たちに渡された指名、及び指名が入ってない生徒には雄英高校がオファーした全国各地の受入可能なプロヒーローの事務所が記されたものである。
だが彼女のだけは指名云々もあるが、そこから更に根津の査定が入ったものになっており相澤曰く
「これが校長が纏めた、『君へのオススメヒーロー一覧』とのことだ。目を通して職場体験場所を選べ」
「あの校長、イメージ通りだけど結構茶目っ気強いわよね」
てかこれ態々作ったのと渡された資料には可愛らしいフォントでそのタイトルが記されており、【ここなら君も気に入ると思うのさ!】とデフォルメされた根津のイラストが書かれているそれを見て思ったのは彼女だけではなく後ろから覗いてきたクラスメイト達も同じことを思っていた。
だがいざ自席に戻り流し読み程度とは言え見てみれば、茶目っ気な見た目とは裏腹にピックアップされたプロヒーロー事務所はどれも確かに便利屋だからと揉め事になりそうにはない所だけであり、彼女的にも何処に行こうかしらと悩むものに仕上がっており、そして冒頭に繋がる。
ヒーロー事となるとかなり適当に即決する彼女が珍しく悩む姿に麗日と出久の二人はどこから指名が? と気になりレイミィに許可を貰ってから資料を見れば
「どこも有名どころばっかやん、凄いなレイミィちゃん」
「あれ、でも関東圏しか無い……?」
「まぁ便利屋の依頼で確かにあっちこっち飛ぶには飛ぶけど基本的に関東圏が私達の活動限界、だから校長も気を利かせてくれたのでしょうね」
なお例外の殆どがホークスからの呼び出しではあるがこれは内密なことが多いので喋れない案件である。そんなこんなでペラペラと読んでいくが流石に即決はできないなこれと判断、帰ってから自室でゆっくり読むことにしてから、相澤に
「先生、少し良いかしら?」
「手短に」
「サポート科に用があって、何か事前に話とかを通したほうが良いのかしらって」
サポート科、その言葉に相澤は何かを考える。まさかヒーロー活動関連ではないだろうと思うがでは他にとなれば便利屋しか無いので便利屋としてか? とストレートに聞いてみれば
「えぇ、ちょっと相談したいことがあって。話さえ通してもらえれば、後は私が出向いて勝手に話を進めるから」
「……分かった。パワーローダーに話しておく、放課後でいいな?」
「感謝するわ」
とりあえず席は用意されたことに一安心だと内心で思う。そこで今の会話を聞いていた数人がサポート科に便利屋として? と疑問に思うのは当然であり差し支えなければと言いつつも興味がありますという声で聞いてくるのでレイミィは暈すところだけはぼかしつつ話すことに。
「昨日、一人新しい所員が入ってね。それ関連ってこと」
「アイテム無しだと使いづらい個性持ちっこと?」
「あ~、そうかヒーローとしてじゃないからその辺りのアイテムも簡単には手に入らないのか」
何やら勘違いをされ、しかも周りも納得している光景にレイミィはさてどうするかと考えた末に出したのはまぁ良いかと曖昧に認めることだった。一応、訂正も考えたがじゃあなんて言って訂正すれば良いのかと思った時に名案が思いつかなかったとも言う。
もし、火伊那と彼らが接触したとしてもその辺りで話を進めるか、そうだとその時は別に個性がなんて言ってないけど? と全力ですっとぼければいいやと。彼女は割とその辺りは適当なのである、もっとも今回に関しては彼女について詳細を話せないという事情があるので仕方がないという部分もあるにはあるのだが。
このまま、この話題で盛り上がってしまいそうになるが忘れてはならない。一応、授業中であり相澤の一睨みで即座に解散となるのだが間際に
「つか、人って入るんだな便利屋」
「入ったって言っても向こうからじゃなくて、私がスカウトしたが正しいけどね」
「スカウトって、心操くんにしたみたいなやつ?」
「ええ、まぁ、大体そんな感じね」
「バートリーにあれだけストレートに誘われたら、俺もかなり揺らいじまうかもしれねぇよ」
「お前らいい加減にしろよ?」
一度場は静まったというのに再度賑やかになりそうになるのをそれだけで人を潰すことが出来るんじゃなかろうかという質の声を出した相澤によって強制的に鎮められる。
これにはレイミィもやらかしたという表情をするしかない。ここで機嫌を損ねたらサポート科の話がお流れになるかもと軽く危惧はしたが、そういうことはなく時間は大きく進んで放課後、丁度帰りのSHRが終わったタイミングで
「バートリー、今朝の話だがパワーローダーに通してある。途中でミッドナイトが合流するから共にサポート科に行ってこい」
「分かったわ。ま、監視は当然、か」
「お前がそんな危険なものを要求するとは思ってねぇが一応ってやつだ」
逆説的にサポート科にはそれほどのものが眠っていると言外に伝えられ、少しだけ見学できないかと興味が湧くレイミィ。やはりヒーローをサポートするためのアイテムだけあって、そういう危険物も存在しても不思議ではない、なので話を聞いた相澤は根津にも話し、とりあえずでという事で立候補してきたミッドナイトに監視を任せたという流れだ。
「サポート科かぁ、そういや俺も電流に指向性を持たせることが出来るアイテムとか聞けないかな」
「時間がある時に聞いてみたらどうかしら、私と違ってヒーローとしてなら簡単に話は通るでしょうし」
「だな、ん? じゃあ俺も一緒に良いか?」
おい上鳴テメェ! となにかを勘違いしている峰田が叫ぶがスルーされ、上鳴の提案にレイミィは申し訳ないがと断りをいれる。これが自分のとか、被身子達だったら別に構わなかったのだが、今回は可能な限り情報を伏せておきたい火伊那のサポートアイテム。
なので彼が誰それ構わずに喋るとは思っていないが、それでも可能性は潰しておきたい。なので流石に本当の理由は話せないので暈しながら上鳴に頭を下げ。
「今回、ちょっと便利屋としての交渉になるのよ。だから長くなるし、あまりその辺りの情報を誰かに聞かせたくないの」
「あ~、ならしゃーないな、てかポンッと頭を下げないでくれよ。なんか、ビビる」
「何でビビるのよ」
どこに怯えられる要素あったのかしらと思いながら再度、上鳴に謝ってから彼女は教室を出て先ずは職員室へ。到着すぐに扉をノックしてから入ればミッドナイトが直ぐに席から彼女の元へと来て
「来たわね。じゃあ、サポート科まで案内するわ」
「ありがとうございます。ところで、なぜ私の監視と案内の立候補を?」
「特に深い理由とかはないわよ。ただ、初日以外であまり話してなかったと思っただけ」
なるほど確かにとレイミィ。入学してからそれなり経っているが、それでも話したこと無い教師は割と存在する、隣のB組の担任であるブラドキングとも今日まで会話したことがない。
とは言っても単純に顔を合わせたことがないと言うだけであり、通りすがれば挨拶はしているので会話という部分だけの話ではあるが。ともかく、こういう機会は中々レイミィとしても貴重なのは確かなのでとミッドナイトと便利屋所長とプロヒーローとしてであったり、生徒と先生としてだったりの雑談をしながらサポート科を目指す。
「そう言えば、便利屋の所員のためにサポート科にって聞いてるけど具体的には?」
「着いたら話すつもりだけど、顔を隠せるものが欲しいのよ。ただ、彼女の個性を考えるとただ隠すだけじゃなくそれなりの機能面が欲しくて、だから雄英高校のサポート科ならって思ったわけ」
「なるほどね。(彼女、女性か)良いのが有ればいいけれどっと此処がサポート科、パワーローダー、お客様よ!」
扉から呼びかければ、直ぐに入ってくれと声がかかり、失礼しますと言いながら入った彼女を迎えたのはこの雄英高校の基礎工事及びサポート科を請け負っているプロヒーロー【パワーローダー】、彼はレイミィを見ると。
「君が便利屋チェイテの所長さんだね。はじめまして、私はパワーローダー、ここ【サポート科】の担任をしてる」
「はじめまして、便利屋チェイテ、レイミィ・バートリーよ。話は聞いてると思うけど、今日は相談があってきたの」
あぁ勿論聞いてるよと相手が頷いたのを確認してからレイミィは早速と、今回の目的のアイテムの詳細をパワーローダーに話していくことに。
「求めてるのは顔を隠せるマスクのようなアイテム。視界の確保はもちろん、距離を測定できたり防塵性能もあると嬉しいわ」
「ふむ、ガスマスクとスコープを合体させた感じということかな?」
「それがイメージに近いわね。あと、動きを阻害しないデザインと重量だとなお好ましいわ、勿論だけどタダでなんて言わない、こちらから出せる限りのものは用意するわよ」
どうかしらと問えば、パワーローダーはふむと自身の記憶から条件に合致する物がなかったかを思い出すかのように考える仕草を取る。
一方、来てから黙って今のほんの数分にも満たないやり取りを見ていたミッドナイトはこう思っていた。
(今朝の教室での彼女と同一人物なのよね。所長って皮を被るだけでここまで変わるのは驚かされるわ)
生徒としてのレイミィ・バートリーと所長としてのレイミィ・バートリー、同じ人物だと言うのに纏う雰囲気がガラッと変わることに内心で驚きつつも、だからこそ便利屋をやっているのだと改めて思い知らされる。
同時に、彼女がここまでのものを会得するのにどれほどの苦労があったのかとも。とここでパワーローダーがアァ、そう言えばと声を上げた、どうやら条件に合うものを思い出したらしい。
「私のではないが、学生の試作品でも大丈夫だろうか? 勿論、品質は保証するよ」
「教師の貴方がそう言うなら本当に確かなのでしょ? 構わないわ」
「分かった、では少し待っててくれ」
立ち上がり、隣の部屋へと消えていったパワーローダーを見送り、少しだけ暇になったレイミィはキョロキョロと部屋の中を見渡すことに。そこかしこにキレイに飾られているサポートアイテムの数々と明らかに失敗作だとわかる残骸、常に誰かしらが開発をしているのだろうというのがよく分かる光景。
これを見て彼女はワクワクしていた、例えるなら遊園地に来たような感覚だろう、その空気を察したミッドナイトが微笑ましいものを見たという感じの表情で
「やっぱり、こういう所に来ると貴女でも楽しくなっちゃうのかしら?」
「そうね、ゴチャゴチャしてる光景とか嫌いじゃないし何がどう動くのかしらとかは思うとワクワクしてくるわね」
これ全部が一斉に動いたらそれはもう賑やかになるんでしょうねと心から思う言葉にミッドナイトはこの娘ってちょっと物騒な部分あるわよねと苦笑する。
因みにだがレイミィは周りが賑やかなのが上記の言葉通り好きであり、片手の指程度ではあるが依頼で遊園地、動物園、水族館などに行った時にはかなり上機嫌で依頼をこなす姿が見れる。
曰く賑やかなら変なことを考えなくて済むからとのこと。この変なことは大体が彼女自身の仄暗い過去の記憶関連であることは言うまでもないだろうし、この事は今は関係ないので置いておくとしよう。
「お待たせしたね」
「むぅ、一体誰ですか私の邪魔をしてまで呼んでるというのは……?」
パワーローダーが消えてから十分程度だろうか、戻ってきた彼は一人の女子生徒を連れてきていた。向こうは明らかに不機嫌ですというのを隠す気がない声と表情でレイミィを見てからむむ? となにかを思い出すように目を閉じ、レイミィもまたはて、この娘どっかで見た記憶あるなと彼女を見つめる。
二人の間に妙な沈黙が流れ、パワーローダーが紹介しようとしたタイミングで二人同時に声を上げた。
「あ、もしかして便利屋っていうのをやってる人じゃありません?」
「貴女、緑谷と騎馬を組んでた娘じゃない?」
今のやり取りに珍しいものを見たという感じの声を上げたのはパワーローダー、彼女【発目明】は関心を持たないことにはとことん無関心を貫き、なんだったら記憶にも留めないほどの自己中心的な性格をしている。そんな彼女が接点なんて殆ど無いはずの彼女を記憶にとどめていたということに驚かされた。
因みに彼女がレイミィを覚えていたのは騎馬戦の時に出久がずっと彼女のことを気をつけて欲しいと言い続けていたから、そこから便利屋を営んでいるということを聞いた発目はヒーローともヴィジランテとも違う組織の長という事で若干ながらも興味を持っていたのだ。
とりあえず、互いに軽い自己紹介をしてからパワーローダーが発目に先程までのレイミィとのやり取りを説明、それを聞くやいなや彼女はレイミィの手を取り
「もしや、私のドッ可愛いベイビーに興味があるんですね!!!!???」
「べ、ベイビー?」
おっと、思ったよりもキャラが濃いなこいつ。レイミィはあまりの押しの強さに冷や汗を流すのであった。
この引きから次回の私にバトンタッチを!!???(無計画
便利屋メモ
発目の押しの強さは初見の時の被身子を思い出させたとか