「ふむふむ、つまりは正体を隠すことが出来てなおかつ活動に有利な機能を乗せたマスクが欲しいと」
「えぇ、それをパワーローダー先生に聞いたら貴女を連れてきたって話よ」
あれから、パワーローダーが発目を引き剥がし何とかして落ち着いてもらった後、事情をレイミィが改めて説明。それを聞いた彼女はなるほどと頷けば、持ってきていたケースから一つの作品を取り出しレイミィに見せる。
それは一枚の飾り気のないのっぺりとしたお面にガスマスクのような吸収缶が付けられた代物、これがパワーローダーが言っていた彼女の試作品らしく、説明を促せば
「この子は私が入学が決まってすぐに作った
一度、試しに付けて確認してみてくださいと渡されたそれをレイミィはそっと顔に近づけてみれば自動でサイズが調整されピッタリと装着。付け心地は悪くないと思うよりも先におぉと彼女は感嘆の声を上げることになる。
説明の通り、視界がこれを付けているのにもかかわらず、まるで付けてないのではと思わせるくらいに良好なのだ。更に映っている視界には注視した人物との距離やズーム機能まで付けられており、これにはレイミィも思わず
「凄いじゃないこれ、この薄いお面にここまで機能を乗せるなんて」
「前面のこの花びらのような部分にメインの最新の小型センサーを、そしてお面そのものに無数の超小型カメラを組み込むことでこのデザインで視界の確保などに成功しました!」
「もっとも、お陰でこの仮面は精密機器と成ってしまってヒーローにお出しするには難しいアイテムにも成ってしまったけどね」
「精密機器ってことは、そういう事か。衝撃に弱すぎてヒーロー活動には耐えられないってことね?」
ミッドナイトの指摘にその通りと頷くパワーローダー。確かに発想などは良かったのだが上記の欠点で試作品止まりになってしまい、今日まで埃を被ってしまっていたらしい、ヒーロー活動ともなれば大体が
だと言うのに少しの衝撃でも支障が出てしまうサポートアイテムは実用に耐えられない。だがこと今回に関してはレイミィは気にしてはいなかった、多少の不安要素にはなるが火伊那の基本的な動きを考えるのならば仮面に強い衝撃を受ける場面はそうないだろうという判断である。
因みに欠点もとい、あまりウケが良くなかった部分がもう一つあり、それは顔全体が隠れてしまうという点、つまりは
「ヒーロー活動してるのに顔を覚えられないんじゃ意味が無い。とのことでこの子が日の目を見ることは無かったんです」
「バッカじゃないの? それだけの理由でこれを却下とかヒーロー辞めたら?」
「くけけ、どストレートな感想だね」
「相手の言い分もわからなくは無いけど、バートリーさんの感想も確かなのよね」
パワーローダーとミッドナイトの言葉にやべっとなるレイミィ。あまりにあんまりな理由を聞き反射的に感想を述べてしまったが二人のプロヒーローであり先生が居ることを失念していたと。
大丈夫だろうかと二人の顔を見れば方や笑い、方や苦笑で留まっており怒っている感じはないことに息を吐きだしてから改めて発目の作品である仮面を手にとり眺めてから発目に対して
「これ、今は一つしか無い? もし予備として二、三個欲しいって言ったらどの程度で用意できるかしら」
「試作品なのでそれだけですね。新たに作るとなると部品はまだ残ってた筈ですし、1個だけなら一週間で用意可能ですけどって、これつまり?」
「えぇ、この作品、便利屋で使わせてもらえないかしら? 勿論、便利屋として出せるものは出すつもりよ」
試作品の仮面を発目に戻しながら所長としての笑みで彼女にそう伝える。本音を言えば、彼女のような技術力を持っている人物とパイプを繋ぐチャンスだとも思っているので出来ることならばここから更に話を発展させていきたいが発目の出方次第であり、向こうからの返答を待つ。
対して発目は自身の
(と言ってもこういうのはあまり得意じゃないんですよね)
そもそも所長として経験とを積んでいるレイミィとその辺りはまっさらな発目では考えたところでという部分があることを彼女自身も自覚しているのでチラッとパワーローダーに視線を送れば、意図を汲んだ彼はレイミィに視線を向けて
「便利屋として、というのならばこちらからの依頼を受けてもらうというのも可能かな?」
「依頼を? えぇ、まぁ、内容によるけど可能な限りは受けてあげるけど」
この場面で依頼? とちょっと想定してなかった展開に面を食らったという表情をしながら頷けば、パワーローダーはそれは良かったと嬉しそうな声を出してから便利屋への依頼を提示する。
「もし良かったらなのだけど、このサポート科で作られた試作品のテスターをしてもらえないだろうか。もっとも、大体が君からの発注か発目のものになるだろうけどね」
「あ、なるほど、それは良いですね先生! ヒーロー活動のアイテムでは作れないような
なお、パワーローダーの内心の3割位にはこれで発目の暴走を抑制できないだろうかという気持ちも混ざってないわけではない。確かに彼女は優秀ではあるのだが同時にトラブルメーカーでもあり、授業以外ではここに籠もってサポートアイテムを開発しては爆発させたりが日常茶飯事、故に誰かが確実に使うという状況にすれば爆発は無くなるのではないだろうかと考えていたりする。
一方のレイミィはまさかの依頼という体の申し出に目を丸くしていた。確かにパイプは欲しいと願ったがこんなにもあっさり、しかも理想的な流れで出来てしまうとはと、だがこの機を逃すわけもに行かないのでとりあえず悩んだふりをしてから笑みを浮かべ
「えぇ喜んでその依頼、承るわ。とりあえず今回はこの仮面ということで、細かな話は何時決めようかしら?」
「依頼書などは私が作成してイレイザーヘッドに渡しておこう。依頼内容は今言った通り、報酬に関してはそうだな、テスターしたアイテムの正規品をタダで渡すのはどうだろう」
「わお、太っ腹。でも良いのかしら? 開発だって安くないんでしょ?」
だからこそ当初はこちらから謝礼としてお金を出すつもりだったんだしとレイミィが言えば、パワーローダーから返ってきた言葉に自身がとある人物の掌の上だったことを思い知らされることに成った。
「くけけ、その事だが、実を言うと校長から話が来ていてね。君からサポートアイテムに関しての話が来るだろうから、その分の予算はこちらから出すので可能な限り受けてあげて欲しいと、ね」
「……さ、流石ハイスペックだこと」
「うわ、声が凄い震えてますよ」
「明らかに悔しがってるわねこれ」
表情は澄まし顔のままではあるが身体全体から漏れ出ている雰囲気と声から踊らされたことに対して流石だと思う気持ちこそ本当にあれど、それ以上に悔しさを滲み出ており発目とミッドナイトもそれに気付いて上記の台詞を口にする。
ともかく、彼のお陰で便利屋も優秀なメカニックとも言える存在のサポートを受けれるようになったのは事実なのでそれ以上の感情をぐっと飲み込んでから
「ふぅ、まぁ校長の思惑がどうであれ、有意義な取引が出来たことに感謝するわ。パワーローダー先生、発目、今後とも宜しくお願いするわね」
「ふへへ、あれもこれも作りたかったんですよね~」
「あまり調子付いて作りすぎないようにしてくれ、あぁそうだ、他に今なにか注文があったりするかな? 言ってもらえれば作っておこう」
「本当に至れり尽くせりってやつね。うーん、あ、こう、フード付きマントみたいな感じの光学迷彩アイテムとかって難しいかしら? 出来るならコレが一枚だけでいいから欲しいわ」
これもまた火伊那用のアイテムである。彼女が基本的に動くとすれば長距離の高所からの狙撃や監視、なので姿を消せるそれがあれば助けになると思い聞いてみれば、二人は当たり前のように頷き
「それでしたら、確かこの前、個性で透明な人のコスチューム関連で髪の毛のサンプルがまだ残ってるので利用すれば作れるかと」
「確かに可能だな。それと件の人物は目の前の彼女のクラスメイトで友人であるから言葉には気をつけるべきだ」
とことん興味がないことは覚えないタチなのね彼女と思いつつ大丈夫だとレイミィは伝えておく、話を聞くに葉隠の髪の毛を利用した光学迷彩マントを作るらしいということが分かったので後日彼女にはお礼をしておかなくちゃとなるが、詳細は話せない都合上でのお礼なので言われた本人は何に対してのお礼なのか分からずに困惑する光景が後日見られる模様。
これにてサポート科でのやるべきことは終わったので二人に改めて依頼の件と今回の仮面の件でお礼を伝えてからミッドナイトと共に部屋を出て昇降口側の玄関に向けて歩き出す。どうやら見送りもするつもりらしいとレイミィは考えながら受け取った仮面が入ったケースを笑顔で弄りっていると唐突にミッドナイトから彼女へ問い掛けた。
「一つ、聞いていいかしら?」
「何かしら?」
「貴女、便利屋所長として今のヒーローをどう思ってるのかしら」
声と表情から真剣なものだというのが嫌でも感じ取れ、なるほど、これが聞きたくて立候補したのかと納得しつつレイミィは少しだけ言葉を探してから口を開いた。
「正直に言えば、雄英に居る者や全部じゃないけど上位層はヒーローとして問題はないと思ってる。問題はそれ以下よ、肩書だけが先行し、本質を見てないか見失ってるのがあまりに多すぎるわ」
彼女はエンデヴァーは嫌いではあるがヒーローとして見れば認めざるを得ない。彼は確かにレイミィのことは辛辣に対応こそしても便利屋の事は信頼し、悪く言ったことでは初対面を除いてない。
それくらいにはヒーローとして出来ている。彼が二位なのはオールマイトに対しての実力というのもあるにはあるがそれ以上にファンに対しての対応が悪いということでの人気がないというだけに過ぎない、では彼女が言うそれ以下、つまりはヒーロービルボードチャートJPの下の方の順位に甘んじている存在はどうかと言えば
「ヒーロー崩れ、モドキ、言葉を選ばないならこの2つがお似合いね」
情も何もないバッサリとして物言いから彼女は続ける、中には胸はってヒーロー言える存在も居る、居るけど大多数がヒーローと言う肩書に胡座かいてて、便利屋に仕事を取られると目の敵にしてくるようなのばかりだと。
彼女から言わせれば、自分たちのような所に依頼が舞い込むということはつまりそういう事でありお前たちの頑張りが足りないだけだろと。
「まぁでもヒーロー全部がそうじゃないってここに来て分かったから、これから次第ってことじゃない?」
「これから、ね。確かにそうかも知れない、ふふっ、何だかんだ言っても貴女は決して見捨てようとかは思わないのね」
「へ?」
何を唐突に変なこと言ってるのこの人と言う表情と目でミッドナイトを見てしまうレイミィ。だが向こうはそんな視線を受けても微笑みを絶やすこと無く、彼女を見つめ返して
「だって、便利屋をしてるなら胡座かいてるなら自分たちが全部掻っ攫っていくみたいな感じにならない?」
とは言われてもレイミィとしてはそこまでは考えたことは一度もないんだけどとしか返せない。ヒーロー根絶とかはそれもう
「バートリーさんを少し知りたくて、でも今のでよく分かったわ」
「と、言うと?」
「貴女は、白に憧れてるってことが」
ドクンっと心臓が跳ねた幻覚を覚えた。自分は今どんな表情をしているのかわからないままミッドナイトに顔を向け、ふぅと息を吐き出し彼女は言う、そんな事まったくないからと。
「急に変なこと言ってくるから驚いたじゃない。っと、それじゃさようなら、ミッドナイト先生」
「ごめんなさい、気をつけて帰るのよ、バートリーさん」
去り際、チラッとミッドナイトが見たレイミィの顔は何処か寂しげなものであり、同時に彼女は少し焦ったと己の選択に後悔する。明らかに焦ってしまったと、レイミィ・バートリーが背負っているそれを知ろうとして踏み込みすぎてしまったと。
らしくないミスに私もまだまだねとボソリと呟かれた言葉は誰にも聞かれることも……無かったわけではない。
「やぁ、ミッドナイトくん。誰かを見送ってたのかな?」
「っ!? こ、校長、えっとはい、バートリーさんを」
「なんてね。済まない、先程までの君とバートリーくんの会話を聞いていたよ、君らしくないミスをしたね」
容赦ない指摘にミッドナイトはうぐっとなる。が事実なので反省していますと頭を下げれば、いや、そこまでしなくてもいいさと根津は伝えてから、ふと彼はこんな事を口にした。
「ところで、生物のDNAはどう足掻いても100%の一致はしないというのは知ってるよね、それが例え親子であろうとも」
「どうしたのですか急に、いや、はい、知ってますけど」
なに、少し唐突に聞きたくなっただけさと笑い、では私は仕事に戻るよと校長室へと向かっていくがミッドナイトからすれば根津が意味もなくこういう事を聞く人(?)ではないと思っているので疑問しか浮かばない。
浮かばないが既に姿はなく聞くことも出来ないのでミッドナイトも自身の残りの業務を終わらせるべく職員室へと向かう。
彼が何を伝えたかったのか。それはまだ誰も知らない、知っている根津とリカバリーガールの二人以外は、あの襲撃事件の際にヴァンパイア・プリンセスの反動を調べるための血液検査から発展した事実を。
もし、母親とDNAが完全一致してしまった場合、彼女は果たして何者と定義すれば良いのだろうか……
便利屋は優秀なサポート科との契約を手に入れたぞ! 因みに仮面のデザインはブルアカのアツコがしてるガスマスクを思い浮かべてもらえれば大体それです
え、最後のやつ? えっとあれです、ドルフロ書いてた時代の持病がちょっと(ちゃぶ台がひっくり返る音
便利屋メモ
レイミィ・バートリー、過去一にウキウキ気分で下校、道中で声を掛けられファンサもしたとか