便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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本日のレイミィのメニューはオムライスセット


No.71『食堂で話すあれこれ』

 雄英高校食堂にてレイミィ、出久、天哉、焦凍、麗日のいつものメンバーに加え、最近ではよく一緒に食べることが多くなった心操の六人は職場体験先の話をしていた。

 

 もっとも心操は普通科という事で、ヒーロー科の行事は行われなければ内容も知らなかったので職場体験と言う話に

 

「それって、現場に出るってことか? 1年から結構ハードな事するんだなヒーロー科って」

 

「うん、でもプロヒーローの側で一週間も活動できるのは貴重な体験だし、学ぶことも多いと思う」

 

 出久が言うように職場体験となればプロヒーローと共にパトロールなどで現場に出ることが殆どだろう。勿論、向こうも積極的に生徒である彼らを前には出さないと思うが状況によっては市民のために動かなければならないことだって起こり得る。

 

 しかし学校での座学や実技とかでは経験することが出来ないその空気に触れることが出来るというのは非常に貴重なのは間違いなく、だからこそ職場体験先は慎重に吟味を重ねて選ぶのだと天哉が言えば心操はオムライスを食べているレイミィを見る。

 

 ならば目の前の彼女は即決してるがこれは良いのかと。その指摘に対してレイミィの答えた内容は

 

「失礼ね、これでも昨日の夜ずっとリストを眺めてから決めてるわよ。お陰でちょっと寝不足だけど」

 

「そう言えば、今朝とかすっごいあくびしてたね。そんなに悩んだの?」

 

「バートリーくんにしては珍しいくらいには気が緩んでいるように見えたがそういうことだったのか」

 

 麗日と天哉が合点がいったとばかりに頷き、心操もそうだったのかと納得しているが出久と焦凍は確かにそうだろうけど多分それだけじゃないんじゃないかなと疑惑を持つ。

 

 確かに悩んだには悩んだのは言葉の通りだと思う、けれどことヒーロー関連となると割と雑さを発揮するレイミィが寝不足になるまで悩んだというのことには違和感を持ち、そこからもしかして並行してなにか作業をしてたんじゃないかと考え付く。

 

 けれど態々触れる必要もないかなとも考える出久、彼女のことだから口にしないということは便利屋に関することで喋るわけには行かない場合が多いと今日までの特訓などの付き合いで分かっている。焦凍もまた彼女のそういう性格を理解しているのでズズッとお茶を飲むことで浮かんが疑問を押し流していた。

 

「そもそも、今週末には提出しろって言われてるから時間の余裕無いんだし即決に近くなっても仕方ないし、それに貴方たちだってもう決めてるじゃないの」

 

 だから私だけがそう言われるのは遺憾であると表情で伝える。これは今朝の時点で本人から聞いていたことであり、だからこそ自分だけが即決だなんだと言われるのはちがうだろうと、それを言われてしまえば強くは出れなくなる面々である。

 

 となれば話題は誰が何処を選んだのかという心操の疑問に入る。まず答えたのは麗日、彼女は指名が来てた中で武闘派と言われるプロヒーロー【ガンヘッド】を選んでいた。

 

「確か【ガンヘッド・マーシャル・アーツ】とか言うオリジナルの格闘術を編み出してた武闘派のプロヒーローよね」

 

「そうそう、ゴリッゴリの武闘派。将来的には13号先生みたいなヒーローを目指してるけど、やれることは多いに越したこと無いと思ってね」

 

「一芸だけじゃ務まらない、と相澤先生も仰ってたからな」

 

 まぁあの人の場合は個性という名の一芸が割と簡単に潰されやすいからこその引き出しの多さだとは思うけどとレイミィは思いつつも麗日の言い分はご尤もだとも思っている。

 

 その辺りは自分も、そして出久も同じでありとにかく引き出しという手札を多く確保しておくのは重要でありそのために武闘派のプロヒーローの所へ向かうのは選択肢としては間違いないと言えることだろう。

 

「出来ることを増やす、か。じゃあ、他もそんな感じで選んだのか?」

 

「一概に全てでそうとは言えない、麗日くんのように引き出しを増やすためというのも有れば、自身の将来を見据え得意を更に磨きたい、もしくは俺のようにヒーローとしての心得をプロ視点から聞きたいからそこを選んだというのもあるんだ」

 

 そう力説する天哉が選択したプロヒーローは【マニュアル】、ノーマルヒーローと呼ばれ何でも卒なくこなし、ヒーロー名に込められた意味には【現代ヒーローのマニュアル的存在になりたい】と言うのを込めるほどに王道とも言えるプロヒーローである。

 

 レイミィも情報だけは知っているが所員含めて接触したことはないプロヒーローの一人。思えば自分への指名にも彼の名前あったようなと思い出す、だがその直前でインゲニウムがあったので検討すらされずに終わってしまったのだが。

 

「なるほどな。選ぶってだけでも色々と考えてるのか、え、なのに今週末には決めて出せって言われてるのかお前ら」

 

「ビックリでしょ、割と普通に時間ない状態を作らされるわよヒーロー科は。まぁそれでも問題ないという信頼でしょうけど、そう言えば轟は何処にするか決めたの?」

 

「もう決めてある。親父……エンデヴァーの所にした」

 

 これにはレイミィは目を丸くして焦凍を見つめてしまう。自分の息子に指名を出していたエンデヴァーにもだが、それに乗っかった彼に驚いてしまったのだ、

 

 周りも周りで、もっと言えば心操なんかはエンデヴァーが親父という言葉に固まってしまっている。一応、名字などから察することは出来ていたかもしれないがいざ本人の口から言われると衝撃が強いのだろう。

 

「なんでまた、てか自分の息子に指名出してるとかとことん贔屓するわねあいつ」

 

「辛辣!! レイミィちゃん、毎度のことだけど一部ヒーローに対する当たりが強くない!?」

 

「エンデヴァーは特別嫌いってだけよ」

 

 その声にはほんの僅かに怒気が混ざっていたので麗日は即座に話を打ち切る決断を下す。これはオールマイトよりも遥かに嫌っていて特大級の地雷だと嫌でも感じ取ってしまったのだ。

 

 レイミィがここまで感情を顕にするとは本当に便利屋と轟家で何があったのだろうかと何度目か分からない疑問を抱きつつ、エンデヴァーをどうした選んだのか聞いてみれば

 

「まだ炎の方の扱いが荒いからそこを見てもらいたいってのと、ヒーローとしての動きを見たかったってのもある。悔しいがヒーローとしてはNo.2は伊達に背負ってねぇだろうからな」

 

「あれで、扱いが荒い……?」

 

 雄英体育祭の戦いを見ていたからこその困惑した心操の言葉に焦凍曰くエンデヴァーはもっと精密に、それでいて火力を出しており自分のはまだ雑に出力を上げて火力を出しているに過ぎずそれでは民間人を巻き込む可能性が高いのでそこをどうにかしたいとのこと。

 

「あいつの炎は俺みたいにただばら撒いたり幕みたいに展開するだけじゃねぇ。槍のようにして投げたり、一点にのみ放射とかもやってのけてる、だからこそ俺もその域まで達したいんだ」

 

 超えるために、そしてヒーローとして母親や姉、兄に胸を張るために。何より、これは今この場では言えない理由の一つだが生きてるかもしれない燈矢をレイミィだけに追わせないように、その為にも今の自分を更に超えなければならない。

 

 だからエンデヴァーの指名を彼は受けた。その言葉と表情に出久達は彼の向上心に素直に凄いなとしか言えなかったがレイミィは彼が言葉にしなかった部分に気付き、その上でコンソメスープを飲んでから。

 

「ま、貴方が決めたことに口は出さないけど。気をつけなさいよ」

 

「大丈夫だって、ヒーローとしてのあいつは厳しいかもしれねぇが、あれ以上のことはしないだろ」

 

「だと良いけど。ん? あぁ、うん、まぁ依頼関連での話よえぇ」

 

「(物凄く気になるけど話してくれないんだろうなこれは)そっか、皆もう決めてるのか」

 

 どうやら出久はまだ決めかねているとのこと。一応、昨日の時点で相当数まで絞ってはいるので期日に間に合わせると言っている彼を見てレイミィは嘘だなと見抜く。彼ならば一日もあれば提出できるくらいには思考は早いはずだと、なのに嘘を付いたということは

 

(オールマイト関連、もしくはOFA? 或いはどっちもか。ともかく口外できないような存在から指名が入ったと見るべきかしら)

 

 態々自分にも隠し立てするとはいい度胸だとレイミィはモスキートを出久に飛ばし、帰ってきたそれをお茶を飲む動きで取り込み記憶を覗いてみれば、出てきたのはオールマイトとの会話、確かに放課後に彼は呼ばれていたなと映像と音声に集中すれば出てきたのは【グラントリノ】と言うプロヒーロー名。

 

(聞いたこと無いわね。緑谷も知らないってなると、相当昔のヒーロー?)

 

 どうやらOFAのことも先代の継承者のことも知っているとのことで年齢に換算したら相当なご年配だということが分かった所で映像を打ち切り意識を現実に戻してから

 

「まぁ行くなら麗日と同じように武闘派の方が良いと思うわ。技術を【理解】して吸収してきたほうが貴方の将来にもなるし」

 

「それは方向性としては決めてあるんだ。けど、決めた上でどこにしようかなって」

 

「あ~、武闘派言っても色々あるもんね。謂わばバイキングを前にしてどれを食べようかなって悩む感じか!」

 

「そ、その例えはどうなのだろうか……?」

 

 独特とも言える例えではあったが理解できないというわけでもないので出久もそんな感じと笑って答える。指名が多いとなるとそういう弊害もあるのねと思いつつ、ふとレイミィの脳内に疑問が浮かんだ。

 

 ヒーロー科はこんな感じに指名という話が出てくるが普通科で最終種目まで上り詰めた心操にはその手の話は来てないのだろうかと。確かに彼は普通科ではあるが天下の雄英高校の生徒とすればありえないことじゃないだろと心操に聞いてみれば

 

「実を言うと、あった【らしい】」

 

「らしい?」

 

「相澤先生が直接伝えに来たんだ。ヒーロー科じゃないから受けることは出来ないけど自分にも少ない数、指名が来てるって」

 

 そう、実は彼にもプロヒーローから指名があったのだ。相澤曰く十数件程度ではあったが心操のことを確かに認め、是非ウチにという話だったと、それを語る時の彼はまだ夢でも見てるんじゃないだろうかというものであり声の性質もそれに近いものになっている。

 

 けれど夢ではない。これは現実であり、普通科からヒーロー科へと言うことの足掛かりが確かに生まれたのだと。

 

「これは心操、貴方が星に手を伸ばし続けた成果よ! 誇りなさい、貴方はヒーローになれるのよ」

 

「うん、おめでとう、でいいのかな。とにかく、凄いことだよ心操くん!」

 

「普通科の生徒へのオファーというのは中々聞くことじゃない、快挙と言えることだ」

 

「うんうん、やったやん、心操くん!」

 

「おめでとう」

 

 ブワッと盛り上がり素直な称賛を送る五人、その賞賛を受けて心操はグッと胸から何かが込み上げ、それが感動と嬉しさであると分かったが同時にこれを堪えないと人前でみっともなく泣くかもしれないと抑え込みながら

 

「そ、その、ありがとう。いや、まぁヒーロー科に転入がとかじゃないけどさ……」

 

「それでもよ。あーあー、いよいよ持って貴方を便利屋に誘うのは不可能になっちゃったわね」

 

「まだ諦めてなかったのかバートリー」

 

 呆れ気味に焦凍が言うが彼女からすれば一度断られたからで諦める理由になると思われていたほうが心外である。が流石にこうなってしまっては本格的に無理なので諦めるしかない、更に言えばどうやら雄英体育祭にて、もっと言うとその前から相澤は彼に目を付けたらしく。

 

「今後、放課後とかに相澤先生がヒーロー科を本気で目指すなら特訓を付けてくれるって」

 

「至れり尽くせりってやつじゃないの」

 

 これはどうやら本気で相澤も彼をヒーローにしたいのかもしれないと悟ればこれはもう無理だわとなるのがレイミィ。これでも便利屋にと誘った場合、今後は相澤が出てくると考えると割に合わないとも言う。

 

「相澤先生の訓練か。僕もそれはちょっと気になるな」

 

「徹底的に合理的な感じだけど、糧になるものは沢山得られそうだよね」

 

 なお、後に心操は語るが恐ろしいほどにスパルタで、だが実感できるほどに成長していくのが分かるという内容だったとのこと。だが相澤と心操、互いに初見殺しとも言える個性を持ち、だが聞かない相手となると無個性と同じになってしまうという共通点を持っているので彼としても教え甲斐があるのだろう。

 

 だからこそ、彼が本気で目指すのならばと声を掛けた。心操は星に手を伸ばし、ついには相澤と言うプロヒーローから手を差し伸べられた、彼が諦めなかったからこその成果にレイミィは改めて良かったじゃないと告げてから一枚の紙を差し出した。

 

「えっと、これは?」

 

「私の端末の連絡先、ほら、貴方言ったじゃない、友人として力になるってその時に連絡が取れないと不便でしょ? あとはそうね、まずは一歩目おめでとうってお祝いもあるわ」

 

「レイミィちゃん、お祝いとか言って異性に連絡先渡すのは色々とアカンよ!!」

 

 主に心操の情緒がぐちゃぐちゃに成りかねない的な意味での麗日の叫びが食堂に木霊した。なお、心操は固まったし、ほか四人は相変わらずなレイミィに日常だなと思い始めていたし、それを見て麗日は心の中でこう叫んだ。

 

(駄目や、私だけじゃもうレイミィちゃんを抑えられん、助けて耳郎ちゃん!)

 

「……今、麗日が私に助けを求めてきたような気がするんだけど)

 

「ケロ? 気の所為じゃないかしら」

 

 同時刻、教室で弁当を食べていた耳郎が唐突にそう呟いた、彼女が真相を知るまであと数分後である。




出てくるたびに心操くんの情緒が壊れてる気がする……

便利屋メモ
実はレイミィは携帯端末を私用、社用、秘匿と3つ持っている。
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