最寄りの一番大きな駅に私達、雄英高校A組は揃っていた。手には
「レイミィちゃん、めっちゃ荷物多いね」
「なんか、一週間じゃなくて一ヶ月とかみたいな感じに見えるよ」
言わないで頂戴、麗日、出久。仕方がないの、私は修学旅行とかの類も体験したこと無かったんだから、どの程度を用意すればとかは全く知らなかったんだし、そうじゃなくても衝動を抑えるための人工血液のセットがある以上はこうなることは分かってたことだし。
と言うか
「くれぐれも失礼のないように! じゃあ、行け。すまないが、バートリーだけは少し待て」
「っと、何かしら?」
相澤先生から話って心当たりがちょっと多すぎて分からないのよね。でも雰囲気も顔も怒ってるとかじゃないし、そもそも怒られるようなことは今日までやってないし。
だからこそ、次の相澤先生からの内容は想定外で間が抜けたような表情を晒すことになるのだけど。
「パワーローダーから伝言を預かってる。【注文の品は今日中に完成する】以上だ」
「……は?」
いやいやいや、早すぎるでしょ。注文してまだそんなに経ってないのよ? え、なに、サポート科ってこれが普通だとでも言うの?? 言うの? えぇ……
というわけでもなく、実際は発目が寝るのも食事も忘れるくらいにテンションを上げて開発に勤しんでいたらしいとのこと。集中すると時間を忘れる私が言えた身じゃないけど、流石に寝るのも食べるのも忘れるまでは行ったことないわよ。
「えっと、パワーローダー先生には完成したら便利屋の方に送ってほしいと伝えて」
「分かった。話はそれだけだ、行って来い、飯田も待ってるようだしな」
振り向けば確かに飯田の姿がそこにあった。確かに向かい先は殆ど同じだが態々待って無くても良かったのにと思いながら相澤先生に一つ頭を下げてから彼の下へと向かい。
「おまたせ、というよりも先に行ってくれて良かったのよ?」
「まだ時間には余裕があるからな、それに行き先が同じ友人を置いていくなんて薄情だろ?」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。じゃ、行きましょ」
その場にまだ居た芦戸達にも互いに言葉を交わし合ってから私と飯田は目的地である東京行きの新幹線に乗り込む。
どうやら指定席も複数人が同じの場合は固まるように学校側は買っていたらしく、飯田は通路側の私は窓側に座り、今は高速で流れていく風景を頬杖を付きながら眺めている。
自分が本気で飛ぶ時は風景なんて見る余裕は勿論ないのでこういった時に見る光景は新鮮なものだ。新幹線が走り出してから数分はそんな風に楽しんでいたが、隣に座って読書をしていた飯田がふと顔を本から上げたと思えば
「さっきの相澤先生の伝言を聞いてしまったのだが、注文の品と言うのは? 済まない、言えないなら良いのだが」
「別に内密の話とかじゃないから良いわよ。数日前にサポート科に頼んだものがもう完成するってだけ、フード付きマントの光学迷彩がまさか短期間で出来るとは思わなかったけど」
そもそも内密にしたいのならばあんな大人数が集まっている場所で話したりはしない。私もだが相澤先生だって、それくらいは徹底できる人間なのであの場で話すということはぶっちゃければその程度の話と言ってるようなものである。
なので他に聞きたいことが有れば聞いてくれと伝えてみれば、ふむと悩む素振りを見せてからサポートアイテムの関連ではないが良いかとのこと。だとすれば今回の職場体験でしょうねと当たりをつけてから頷けば
「どうして、兄さんの所だったのかい? 勿論、君が個人的にファンだということも便利屋の運営術などを習いたいからというのは分かっているのだが、どうにも何かが引っかかるんだ」
勘が良いわね。そんな素振りは彼らの前では見せた覚えないのだけれど、或いは便利屋がある地区からここまで離れたところを選んだからこその違和感を感じたってところかしら。
じゃないとしても飯田の表情も声も出任せという感じはしないところを見るに本当に勘だけで言い当てたも有り得そうだけど、彼の性格を考えれば前者でしょうね。
「うーん……」
何処からどう話したものかと悩んだ私に話せないことなのか、そんな感じの表情で見つめてくる飯田。どうやら勘違いさせてしまったようなので話せなくはないがと前置きはしておく、しておくのだがどこから話そうかしらこれ。
考える、先ず何故インゲニウムの所へと言われれば経営術とか云々も当然あるが本目的は保須市を最後に行方を眩ませているムーンフィッシュの捜索及び依頼の遂行のためなんだけどこれを正直に話すのは、いや、逆に考えましょう。
飯田が今回向かうのは保須市に拠点を置く【マニュアル】のもと、だとすればことが起きれば間違いなく巻き込まれることになる、ならいっそ話しておけば手が広がるのでは? うん、ちょっとリスキーな部分もあるけどそれでいきましょう。
「先ず大前提、別に貴方に話したインゲニウムの下へ向かう理由も嘘ではないというのは信じて頂戴」
「それは勿論信じるさ、君がその手の嘘をつかないと思っているからな」
信頼が重い!! やめて、その真っ直ぐな瞳でそんな事言わないで、いや、まぁクラスメイトに嘘を付くなんて〝滅多に〟ないから良いんだけど、ふぅ、いけないいけない思考がちょっと飛んでしまったわね。
「多分、話は聞いてると思うのだけれど雄英体育祭があった日に保須市でムーンフィッシュが目撃されてるのよ」
「確か、兄さんも襲われたと、あっ、その時に便利屋が助けに入ってくれてとも聞いている! そうだ、その時のお礼も言おうと思ってたんだ、ありがとう、兄さんを救ってくれて」
う、うん、私じゃなくて血染なんだけどね? それを言われると私もその件があってから会いに行ってなかったのもあるのよね、今日行ったらその事を話しておきましょうか。
「(じゃなくて)その件は後で話すとして。そのムーンフィッシュがその後の足取りが全く掴めてないのよ」
「それは、別の場所に行ったということでは?」
勿論、私もそれは考えた。けれど、ムーンフィッシュの性格とその精神性を考えた時、それはおかしいという結論に至った。
というのも別の地区に向かったというのならば、そこで目撃情報なり、最悪殺人事件が起きているはずだと言うのにその手の情報も一切ない、そこから考えられるのは
「ムーンフィッシュは現状、『待て』を指示されている状態なのよ。恐らくは保須市のどこかで」
「だが君が言うような性格ならば大人しく指示を聞くとは思えないのだが」
「それがもし、聞かせることが出来るほどに強力で強大な組織だとしたら?」
ここまで言えば飯田も勘付いたように目を見開く。そう、その辺の一山いくらとかの組織ならばムーンフィッシュは言うことを聞かずに己の衝動に身を任せて事件を起こしているはず、けれどそれがないとすれば彼の頭を押さえつけて待ての状態に出来る程の力を持っている組織。
その組織を私達は既に知っている。脳無と言う生物兵器を作り出し、雄英高校に真っ向から喧嘩を売ることすら可能な組織『敵連合』、彼らの傘下に居るとすれば今日まで消息がつかめずにしかも他の地区でも情報がないという状態に一定の納得ができてしまう。
「黒霧を利用すれば先ず足取りを掴むのは私達には不可能だし、奴らの拠点で『待て』をされてるなら他の地区で情報が上がらない理由にもなるわ。そのうえで断言するけど、間違いなく奴らは保須市でなにかしようとしてると思うの」
「急に話が飛んだような気がするのだが、何故?」
「これは私の勘としか言いようがないのよね。でも態々一度ムーンフィッシュを保須市で活動させたことが全くの無意味だとは思えなくて」
恐らくはもっと前から敵連合に拾われており、雄英体育祭での活動も敵連合の指示だと私は睨んでいる。その目的ははっきりとは言えないが私達便利屋の可能性が高い、あれは私達を誘き出すためか、もしくは出てくるかどうかを見たかったかのどっちか。
そのどっちかに便利屋は見事に嵌ったわけだけど、今回はそれを利用させてもらう。その延長線ということでインゲニウムも利用することになるのだけれど、そこは素直に謝っておこう、うん、何処からどう見ても最低な指名の受け方だものこれ。
「そんなわけで保須市にパトロールに出ることが多い貴方のお兄さんのところにしたって話なのよ。利用するようでごめんなさいね」
「思わないところがないわけではないが。けど、バートリーくんがそれだけで兄さんを選んだわけではないというのも分かっているからな、それよりも仮に君の推測がそうだった場合、大丈夫なのか?」
この大丈夫なのかと言うのは私の身を案じてという事でいいのよね? ちょっと新鮮な気分ね、被身子たちはしょっちゅうだけど友人とかからその手の心配をされたことはあまり無かったから。
大体が私なら大丈夫でしょ的な感じだったし、まぁ当時の私は人付き合いが酷かったってのもあるんだけど。ともかく、心配されてることは分かるし大丈夫だと返しておきましょ。
「伊達に今日まで何度も修羅場をくぐり抜けてないわよ。それよりも飯田、貴方の方も気をつけなさい、マニュアルの活動場所が思いっきり保須市なんだから」
「う、うむ、実を言うと俺がそこを選んだのはムーンフィッシュも理由の一つなんだ」
おっと急に流れが変わってきたわよこれ。前に聞いた時はヒーローとしての心得を改めて習いたいとかそんな理由だったと思うんだけど、ムーンフィッシュも理由の一つ?
「兄さんが襲われたと聞いて、無事だとは分かっていたがまた奴が兄さんを狙うんじゃないかと思ってしまってね。だから保須市で活動しているマニュアルさんの所に希望を出したんだ」
「もしかしたらインゲニウムよりも先にムーンフィッシュを見つけ、確保できるかもしれないって思ったってこと?」
「あぁ、それに何時までも兄さんの背中を追うだけじゃ駄目だとも思ったから。なにか、乗り越える切っ掛けを見つけたかったというのもある」
なるほどね、至極真面目が服着て歩いてるなんて思ってたけど、内に秘めてるものは中々に熱いじゃないの。けど、だからといって脱走した死刑囚を標的にするのはちょっと勇み足が過ぎないかしら?
貴方なら焦らなくても上に行けると思うんだけど、まぁ向上心があるのは良いことだし下手に水を差さないでおきましょうか。最悪、私達が先に見つけておけばいいしって、これも伝えておきましょ。
「そうそう、保須市になんだけど、便利屋から二人が警邏依頼のために向かってるわ。もしかしたら片方、血染は見かけるかもしれないわね」
「確か副所長さんだったかな。分かった覚えておこう、ところでもう一人は?」
「悪いわね、それは今回のトップシークレット案件ってやつよ。それに活動場所は地上じゃなくて高台からの監視だから見ることもないでしょうね」
「ふむ、つまり目が良いということか。もしや、その人物にサポートアイテムを?」
微笑みながら私は頷けただろうか。なぜ、今の少ない会話でこうも的確に推理が出来るのかしら、もしかして私が小出ししていると思ってるだけで致命的なまでにヒントを出してるってこと?
だとしたら、思ったよりもクラスメイトを信頼してるのかもしれないわね私。けど、名前を出してるわけでもないから大丈夫か、いや、仮に名前なんて出したら大騒ぎになりかねないから出さないけどと思いながら話題を思いっきり変えてなんてことない雑談へ。
そんな時間も思ったよりも長くは続かないもので、気付けば次の駅が私が降りるべき駅というところまで新幹線は近付いていた。
「っと、次がそうね。じゃ、互いに頑張りましょ」
「もうここまで来てたのか。あぁ、頑張ろう、それと気を付けて、何かあったら呼んでくれればすぐに駆け付ける」
なんとも心強い言葉に私は背中越しに手を振りながら答えて新幹線を降り、インゲニウムの事務所がある方の改札口へと向かう。さて、確か迎えに来てるのよねと到着した私の視界に入ったのは飯田の
彼は、改札を抜けた私を見つければ直ぐに駆け寄り、ヘルメットを脱いでから
「君がバートリーくんだね。俺は【インゲニウム】、これから一週間、宜しくな」
「レイミィ・バートリー。こちらこそ一週間お世話になるわ」
差し出された右手に私も右手を出して握手を交わす。交わしながら彼を見るが、顔とかは飯田に似てるけど雰囲気は向こうよりも柔らかいのねとか思ってたのは秘密よ、でもまぁこれくらいのほうが嫌いじゃないわね。
誰だよ、一人称なら書きやすいとか言ったのはさ!(自分)てか、どうしよう、インゲニウムのエミュとか出来る気がしないんですけど(無計画
因みにレイミィちゃんの推理は作者の頭で出されてるのでガバガバです、気にしないでね