ターボヒーロー【インゲニウム】東京都という激戦区に事務所を構え、プロヒーローにしては珍しく個人ではなくチームとしての組織力による活動及び数を的確に利用した捕物が特徴、数は偉大である。
組織力、と言うことでこの事務所ではサイドキックやサポートスタッフなどを中心とした『チームIDATEN』を組織しており、チームとしては【ワンポイントの個性を拾い上げて適材適所に配置】【チームの総合力で勝負】という方針を掲げ、活用の機会に恵まれない移動系個性の人々を中心に積極的に勧誘を行っているとのこと。
つまり、方針としては私達、便利屋チェイテの向かう先だなと思っており此処でいろはを学ぶのは決して無駄にはならないはずだということで職場体験先に選んだのは今までも言った通り。
それにインゲニウム自身も現場で不安な思いをしている人を一秒でも早く安心させるっていう考えも好みであり、私が個人的にファンだと言ってる理由もそれだ。
現在は合流後、彼の事務所へと向かっている途中。時折、人助けに動いたりもするので真っ直ぐではないがヒーローなのでその辺りは仕方ないことだし、悪いことではないので気にはしてない。
「ところでインゲニウム、私については学園からはどの程度聞いてるかしら」
「大体のことは聞いてるよ。君が便利屋チェイテの所長だってことも含めてね」
ま、あの校長がその辺りを忘れるわけないわよね。恐らくは雄英高校からの依頼の件は話してないでしょうけど、お上からの指示で便利屋のために雄英高校に入学したっていう所はそれとなく話してる感じかしら。
にしても説明を受け、納得した上で指名を受け入れたと言うのは分かっていてもこれは言いたくなる事がある。どう考えてもインゲニウムのような清廉潔白とも言えるヒーローが便利屋の所長を迎えるのは些かリスクじゃないのかと。
「リスクなんて思わないよ、そりゃ君が犯罪行為をしてる組織の長だったら駄目だがそうじゃないんだろ?」
「そうじゃないっていうか、灰色ではあるのよ? 貴方が良くても周りの目とかがあるでしょ?」
人間っていうのは本人がどう思っているとかを軽々しく無視できる。例え、納得していても世間はそう思わなかったら最終的に彼らへ迷惑がかかることになってしまう、だからこそリスクだと言ったのだけれど。
どうやら、その辺りも折り込みで大丈夫だと言ってる感じねこれ。人が良いと言うべきかしら、まぁ飯田のお兄さんって考えたら当然とも言えるかもしれないけど。
「それにだ。恩人からのお願い位は快く受けたいだろ?」
「助けたのは私じゃないけど、でもそうね、それならこれ以上私がとやかく言うのは野暮ってやつか。ありがたく、貴方のご厚意に甘えることにするわ」
真正面から好意をぶつけられて、反論するのが自分が嫌なやつになったような気がするからもあるけど。なんていうか、最近、知り合うヒーローやヒーローの卵は皆して便利屋を悪く言わないどころか認めてくれる言動ばかりで悪い気はしないけどむず痒くなるのよね。
だからって悪く言われるのが良いってわけじゃないんだけどって……
「さぁ着いたよ。ここが事務所さ」
駅から歩いて寄り道無しなら十数分と立地が良い場所に建っていた彼の事務所を端的に表すなら私のところよりも立派なビル、便利屋事務所として使っているのは社員寮だけど、思わず比較して溜息を出したくなった。
外壁まで綺麗となるとこうも印象が良くなるのね。でもウチの壁まで手を出したらちょっと洒落にならない金額になるのよ、考えただけで頭痛がしてくるわね。
「ん? 頭を抑えて、どうかしたかい?」
「いえ、立派な事務所を見てちょっと費用を考えてしまっただけよ」
主に月々の水道や光熱費諸々を考えれば考えるほどにこういう事務所に移りたいなとかの感情が消え失せていくのは我ながら酷い具合に現金だと苦笑いすらしたくなる。見ればインゲニウムもプロヒーローの事務所を見て一言目でそういった事を言われたのは初めてだと驚いた感じの表情で言ってくるが、まぁ普通は言わないだろうとは私も思う。
今回に関しては私自身が普通じゃないからのセリフなので気にしないで欲しい、寧ろ普通だと言われたほうが怖いまであるわこれ。それよりも今日はどんな予定なのかしら、まさか事務所案内で一日を潰すわけ無いと思うしで聞いてみれば
「今日は事務所を軽く案内、途中で更衣室で
ざっくばらんに言ってしまえばテンプレートと言える内容だけど、だからこそ分かりやすくて助かるとも言える。テンプレがテンプレたる所以は分かりやすさにこそあるし、変に捻られてもそれはそれで私としては反応に困るのでありがたいことである。
そんな感じでインゲニウムの案内のもと事務所へ、一階は受付、入ってすぐに係がインゲニウムを見てお帰りなさいと挨拶をし彼もまた一人一人丁寧に返しつつ、私のことも話を通しておくという抜かりなさを見せていく。
私も紹介されれば軽く頭を下げ、今日からお世話になることを伝えれば、どうやら雄英体育祭のお陰で有名になっているらしい、顔を見るや三位の娘という事でスムーズに顔を覚えられていくのがよく分かる、ただ一部では三位の娘ではなく。
「青春宣言の娘って、いや、言いたいことは分かるのだけれど」
「あの選手宣誓、結構刺さったスタッフがウチにも多くてね。俺も聞いた時は心に心地よく響いたよ」
「面と向かって言われるの初めてだけど、結構恥ずかしいわね。あれって、その、原稿は書いたけど結構その場のノリだったし」
そう、今だから言えるのだがあのときの選手宣誓の6割くらいはその場のノリでアレンジした物に変わっている。宣誓してる途中で段々と会場のボルテージが上がっていくのを肌で感じ、私自身もめちゃくちゃ楽しくなってきてしまった結果、此処で言われるような青春宣言と呼ばれる選手宣誓が完成しただけ、なので良かったと言われても正直な話、小恥ずかしくて仕方がないのよね。
いや我ながら後先考えてない行動だったけど、後悔はしてない。結果として世間にも受けが良かったらしいし、あれのお陰、と断言はできないかもしれないが一年だけで見れば割といい感じの空気間に変わって楽しい雄英体育祭になったし。などと誰にするでもない言い訳を脳内で並べながらインゲニウムの案内で事務所内を歩いていく。
やはりと言うべきか何処も清掃が行き届いていることがよく分かるほどに綺麗で、スタッフやサイドキックたちの士気も高く、皆がテキパキと業務に取り掛かっている姿を見てインゲニウムがどれほど慕われているのかというのがよく分かる光景に思わずそのまま伝えてみれば、彼は笑顔で
「ははは、うん、本当に俺には勿体ないくらいに優秀な人達で、そんな彼らに慕ってもらってるからこそ俺も頑張ろうってなってる。カッコ悪いところとか見せられないなって感じに」
「分かるわその気持ち、私も同じだもの。皆、私よりも年上だってのに所長として慕ってくれて、寧ろ感謝したいくらいだわ」
もし、私だけだったらここまで軌道に乗るどころか便利屋を開くことだって叶わなかった。血染が、圧紘が、仁が、被身子が、そして新たに火伊那が来て、そんな彼らが私を所長として認めてくれてるからこそ私は彼らのために所長として働けている。
私が、というよりも彼らが困らないように、其の為に多少危険な橋でも渡ってみせようと思えるくらいに。
「本当に所員さん達のことが好きなんだね」
「えぇ勿論、家族みたいなものよ」
「ふふっ、っとここが更衣室、右側が女性部屋になっている。事務所を入る前に説明したけど早速、
指示され更衣室に入れば、流石のこの時間帯だと私の貸切状態であり用意されていた自身の名前が書かれたロッカーに
そう言えば私はどんな顔でインゲニウムに便利屋の話していたのだろうか。確かあの時は微笑ましいものを見たという感じの彼の表情であり、だとすれば笑っていたのかもしれない、まぁ彼らの話をするのなら私は嫌な顔をすることはないでしょうから。
「これで、よしっと」
まだ三回しか着てない
とりあえず、着替え終わったのならばこれ以上待たせる必要もないのでロッカーの鍵を締めて、鍵は無くさない場所に仕舞い込んでから更衣室を出てインゲニウムの下へ戻る。
戻ってきた私を見たインゲニウムは何やら感想の言葉を探している雰囲気を出しているので、先手として私は
「これ、クラスメイトからは【女社長】と【アウトロー】と言う感想を貰ってるのよね」
「ヒーローとしての感想なのかなそれ。でも君にはよく似合ってると思うよ。じゃ、オフィスに向かうから付いてきてくれ」
ふむ、彼ほどのヒーローとなると大抵のことは受け入れるのが早いらしい。とは言え、世のプロヒーローにはもっと色々とインパクトが強い
そんなどうでも良い話はそこで打ち切っておき、次はオフィスとなれば自己紹介をしなければならない。はてさて、何処まで話して良いのだろうか、そもそもインゲニウムはこの事務所の誰にまで私が便利屋の所長だということを話しているのだろうか。
「ん? あぁ、その辺りは安心してくれ、皆知っているから」
そもそも聞いてから思ったが、私自身それを隠してないし、便利屋のホームページで普通に出てくるので雄英体育祭で気になったで調べて知られていると考えれば分かることだったわね。まぁ、ちょくちょくすれ違うスタッフの視線から敵を見るとかそういう嫌なものは感じ取れないから、大丈夫か。
そんなこんなでオフィスに到着、インゲニウムの後に続く形で入室し見たのはこれまた立派なオフィスとしか言えない光景、便利屋の事務所件オフィスとは比較にもならない、きっとパソコンとかもお高めの良いの使ってるんでしょうね。
「みんな聞いてくれ、今朝も話したが今日から一週間、雄英高校から職場体験の生徒が来てくれている!」
「はじめまして、ご紹介に預かったレイミィ・バートリーよ。これから一週間、ご指導ご鞭撻よろしくお願いするわ」
インゲニウムからのパスを受け取り、一歩前に出てから名乗りと一言添えてから深めのお辞儀をすれば返ってきたのはその場全員からの拍手、それから
「雄英体育祭で三位の娘だろ、決勝トーナメントとか凄かったよ!」
「あの速さはこの事務所でも中々見ないと言うか、本気のインゲニウムさんと同等じゃないかしら?」
「おいおい、青春宣言も忘れちゃいけないだろ、こうガツン! と来る選手宣誓は初めて聞いたよ」
おのれ青春宣言、今後ずっと私の黒歴史の一つして付き纏うのか*2、でも悪い雰囲気でもなければ受け入れられてないとかでもないのは助かるわね。校長の推薦とは言え、一枚岩じゃない可能性もあったし懸念点が消えてくれるのは素直に嬉しいわ。
なお、このまま質問などが始まるかとも思ったがそれはなくインゲニウムの一言で仕事に戻る所はプロだわとなった。実際、この後は直ぐにでもパトロールに出るって話だから呑気に会話をしている時間がないというのも事実、とそうだ。
「インゲニウム、今日のパトロールは何処で? それと私のパトロール中の行動許可の範囲も知りたいわ」
「今日は、というよりもここ暫くは保須市に出ている。ムーンフィッシュの動向が気になるし、近頃、あそこの治安が少し悪い気がしてね。それとパトロール中のバートリーくんの行動許可はとりあえず俺の指示に従ってもらうって形でいいかな?」
「問題ないわ。なら有事の際は貴方に許可を貰うようにするわね。ただ、非常事態に値することが起きたら【便利屋】として動かせてもらうけど、そこは良いかしら?」
「本来なら許可はおろしたくないが、分かった。君を信じるよ、ただその場合も一言貰えると助かる」
ま、流石に学生できてる以上は仕方がないことよね。それに緊急の時でも報連相は大事だからその辺りは当然だと頷けば、インゲニウムも納得したようでそれ以上は何も言わず、保須市へのパトロールへとむかうのだけれど、結論から言えば
「平和ね」
「良いことだけどね」
初日のパトロールは平和以外の感想が付けれない内容だったわ。
ヒロアカ、最終回迎えましたね。すっごく良かったです、そして読み終わってから自分の作品を見て、これ書くのかぁとなりました(自傷ダメージ)