便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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この場面の殆どは某透き通るような世界のソシャゲの社長が白目向いてる時のテーマが流れてるモノとする。


No.9『吸血姫は天然には勝てない』

職員室での一件、それは彼女『レイミィ・バートリー』にとって素直に嬉しい話のオンパレードだった。敵視すらされてるとすら思っていた便利屋が実は認められていたとなれば嬉しくならないはずがない。

 

 これなら三年間を気分良く依頼をこなせるし、学校自体も楽しめるだろうと。それはそれとして頭の中で整理を始めるのは他人へ出せる自分の情報。

 

 一応、自分が便利屋の所長だということはバレても問題ないと根津とも確認している。

 

(バレちゃマズイのは依頼を受けている事と、その依頼内容。まぁ当然よね)

 

 もっとも便利屋云々に関しては授業などの手伝いに入るという関係上、早いうちに絶対にバレることなので仕方のないことだろう。そこまで考えて、レイミィは難しく考えなくてもいいかと一度思考をリセットする。

 

 結局のところ、例の内通者に自分の任務をバレなければ良い、ならば逆に便利屋の所長であることは早々に話してしまっても構わないのかもしれない。

 

(まさか雄英がそんな依頼を、しかも便利屋と言う存在に出してるなんて誰も思わない。私だって、そっちの立場だったらそう思うわ)

 

 ならばと次に考えるのは便利屋だと名乗り出るタイミング、出来れば印象を強く叩き込める場面が良いわよねと云々と考えながら廊下を歩いていれば

 

(っと、ここがヒーロー科A組ね。扉もまぁ大きいこと)

 

 異形型の個性は体格が大きくなるタイプも多いのでその対策だろうなとレイミィは扉に手をかけて、開ける前に集中し教室に誰か居るのかを見るために気配を探れば、彼女の感覚は3人分のそれを拾った。

 

 次に耳をすませば、会話をしているのだろう話し声。声だけで判断するならば女が一人の男が二人、チラッと廊下の時計を見るがまだ一時間前だと言うのに三人も来ていることに真面目な子が結構居るのねと感心しつつ、さてその真面目なクラスメイトの顔を見せてもらいましょうと扉を開けた彼女を迎えたのは予想通り三人の男女。

 

 だがその顔を見た時、レイミィの思考は停止した。さながら処理能力を超えてしまったパソコンのように、眼の前の現実が受け入れられない少女のように。

 

 確かに三人居た、一人は少女、本当に同い年なのかと言いたくなるような体形を持ちつつも纏う雰囲気から本物の令嬢だなと分かる。もしかしたら名前を聞いた場合は話が変わるかもしれないが相手もレイミィを見ても反応がないので互いに初対面だというのは間違いないだろう。

 

 もう一人は二人居る内の眼鏡を掛けている男子、如何にも真面目だというのを体現しているような姿であり、制服を着ていても鍛えているということもよく分かるほどに体も仕上がっている。

 

 レイミィとしては何処かで見たような顔だなという感想も同時に抱いた。ただ、彼を見たと言うよりは彼の身内をというのが正しいかもしれない、眼鏡を外してくれれば思い出すかもと最後の一人に目を向ける。

 

 向けて、目を逸らしたくなった。なったが、向こうも向こうでレイミィの登場は想定外だという感じに驚いた表情をされしているのを見て、まぁそうよねと諦めにも似た感情で苦笑を浮かべる。

 

 浮かべてはいるが前回のラストのように内心では白目を剥き絶句している、言わなければ分からないが、ともかく彼女としてもここで彼と出会うのは色々と想定外であり、頭が痛くなる事案でもあった。

 

 その男子は左目を中心に火傷痕が目立つもののオッドアイの端正な顔立ち、右が白髪、左が赤髪と丁度半分に分かれた特徴的な髪、忘れろ言うほうが無理という姿を見て、現実逃避気味にもしかしたら他人の空似じゃないかしらと思うがありえない話であり、トドメとばかりに

 

「バートリー?」

 

 名前まで呼ばれてしまえば言い逃れは不可能、見れば他の二人も知り合いだったのかという感じに男子を見ている。

 

 つまりは詰みの状況でレイミィの此処まで来る間に立てていた便利屋カミングアウト計画は入学一日目で脆くも崩れ去った。

 

「あ~、久し振りね『轟』」

 

 一通りの現実逃避から漸く復帰した頭で崩れ去った計画を立て直しながらとりあえずで挨拶を返しつつ、縦5×横4の列からはみ出した窓際に配置された自身の机に荷物を置いてから腰を下ろす。

 

 明らかに例外的に増やしましたという感じの配置にヒーロー協会の慌てっぷりがよく分かり笑いそうになるのを堪えつつ、自己紹介をしておくかと口を開く。

 

「一人を除いてはじめましてよね。私はレイミィ・バートリー、これからよろしくお願いするわ」

 

「私は『八百万 百』、これからよろしくお願い致しますね」

 

「えぇ、よろしく。(八百万、ですって!?)」

 

 まず自己紹介を返してきたのは少女の方。八百万と名乗った彼女にレイミィもよろしくと返しながらその名字に内心では軽く表情が引きつりそうになるのを堪えている。

 

 と言うのも便利屋というヒーローとは違うが個性を扱える集団ということで彼らに頼めないような事も依頼という形で来ることが少なくは無いのだが、その中に一度だけ娘がストーカーに遭っているが本人が気付く前に対処してほしいと言う物が来たことがある。

 

 勿論、ヒーローとか警察のほうが良いんじゃ? 的なことを伝えたがどうやら頼ったら酷い目に遭わすとも取れる脅迫状が来てたらしく、便利屋が対処したがその依頼主が『八百万』、払われた報酬も口止めと言わんばかり*1に彼女たちが設定していたものから倍以上の金額が支払われたので固く口を結ぶことにしているが、ほぼ間違いなく目の前にいる発育の暴力な彼女が娘なのだろう、レイミィは軽く胃に痛みが走る幻痛に襲われた。

 

「俺は『飯田 天哉』、これから三年間、よろしく頼むよ」

 

「飯田……ねぇ、もしかして身内にヒーローが居たりしないかしら?」

 

「む? あぁ、兄さんがヒーローをしている。知っていたのかい?」

 

 次に名乗り出たのは眼鏡の男子。レイミィとしてはその名を聞いてあぁと納得したものを感じ、折角だからと質問してみれば返ってきた答えに、確かにそれなら見たことあるように感じても無理もないかと納得、それはそれとしてこの場に居る三人全員が何らかの形で便利屋と接点があるのはもはや嫌がらせだろうかとも同時に思うのだが。

 

「インゲニウムでしょ? まぁ個人的にファンだって話なだけよ」

 

「そうなのか! おっと、済まない急に大声を出して、つい嬉しくなってしまって」

 

「気にしなくてもいいわよ。でもそうか、道理で似てると思ったわけね」

 

 因みに彼女とインゲニウムが顔を合わせたことは未だ無い。では何故知ってるかと言えば、他の所員、圧紘や血染が何度か依頼中に出会って協力したとか言う話を聞いたことがあり、ファンだと言ったのも初対面から便利屋のことを認めてくれており、好印象だったからという話である。

 

「……さて、自己紹介居るかしら、轟」

 

「必要はないだろう。それよりも此処に受験してたんだな、バートリー」

 

「まぁ、成り行きでね」

 

 無視が出来るわけもないからといよいよ現実と向き合うことにしたレイミィは例の三人目の少年こと『轟 焦凍』に声をかければ、何処か嬉しそうな、それでいてやはり彼女が雄英高校に来るとは思ってなかった感じの声と反応に当然よねと苦笑しつつ答える。

 

 そのやり取りが長い付き合いを思わせたようで、天哉と百からの視線が中々に刺さるのでと言葉を脳内で探しつつそろそろ事情は話しておくかと二人に向き合い。

 

「実は、彼のお姉さんと付き合いがあってね」

 

「轟さんのお姉様とですか?」

 

 えぇと頷いてから焦凍に視線を送るレイミィ、色々事情があるから言葉を濁したのよお願い伝わってと願いを込めた物だったのだが現実は何時だって彼女に優しくなかった。

 

「あぁ、姉さんがバートリー、と言うか便利屋に……」

 

「ちょっと?」

 

「便利屋?」

 

 願いは届かずと言うよりも、寧ろまぁ好きに話せばと解釈した可能性すらある感じにぶっちゃけた焦凍、それに思わずドスの利いた声を口から出てしまうレイミィ、轟から出てきた単語に覚えがあるなと反応する天哉、幸いにもどれも知らなかったようで小首を傾げる百。

 

 場を支配する沈黙、此処まで来て焦凍も話すのは不味かったかもしれないと気付き、レイミィにどうすると視線を送られるが、受け取った側はもはやそれどころではないのが現実である。確かに問題ない、問題ないが色々と破綻してしまったという事実に仕事中の表情のまま思考を回しに回し続け、投げた、ハジけたとも言える。

 

(どうするのよこれって考えるだけ無駄か。えぇ、無駄ね)

 

「あの、便利屋と言うのは……?」

 

「便利屋チェイテ、お金さえ貰えれば犯罪以外は何でもやる、何でも屋の所長。それが私よ」

 

はいこれ、と常に持ち歩いている名刺入れから一枚の名刺を二人に手渡す。そこに書かれているのは【便利屋チェイテ 所長 レイミィ・バートリー】の名前と住所と電話番号、それとホームページのURLと言う結構本格的なシンプルな名刺。

 

 されど、それは彼女が確かに便利屋という組織の長だということを分からせるもの、故に天哉が驚いたように

 

「まさか、兄さんから聞いたことあるが君が……」

 

「えぇ、あぁけどインゲニウムのファンだっていうのは嘘じゃないわよ?」

 

「バートリー、便利屋のことは話しちゃマズかったか? だとしたら悪ぃ」

 

 うん、まぁと頷きそうになるが別段隠し立てするようなことでもないので問題ないと答えておく。けれど、次はなら何故そんな困ったような表情をしているのかと返され、もう私もぶっちゃけるかとなってるレイミィは隠すつもりもない感じに

 

「もう少しこう、インパクトを与えられる時に名乗りたかったのよ」

 

「インパクト……」

 

「バーン! って感じに便利屋の宣伝もしたいし」

 

 あれ、この娘、結構もしかして面白い性格なのでは? 両手を広げて語りだしたレイミィにそんな事を思い始める天哉と百、焦凍は既に知ってることなのでその辺りに反応はないのだが、彼女の計画を邪魔してしまったということには罪悪感を感じたらしく

 

「そうだったのか。なら、なおのこと俺が悪いな、すまねぇ」

 

「良いってば、ていうかかなり個人的な理由だし。それよりもお姉さんは元気?」

 

 これ以上話していると自分が悪い気がしてくるのでとさっさと打ち切り、彼の家族について聞いてみる。上記のやり取りから分かるように、轟家と便利屋は過去に依頼を受けて、そこからの付き合い、詳細は今は割愛しておくが始まりは焦凍の姉『轟 冬美』からの「弟を助けて」と言う一言から轟家全体の問題に広がった依頼、因みにその依頼で彼の父親でありNo.2ヒーローの『エンデヴァー』と便利屋全員で相対しやり合っていたりするが置いておく。

 

だからだろう、便利屋は轟家から気に入られており、プライベートな付き合いもそれなりにあったりする。もっとも、最近は便利屋も忙しい、受験時期だし邪魔しちゃ悪いからと頻度を下げていたので近況を知らないので上記の質問に戻る。

 

「みんな変わらず元気だ。母さんも、かなり良くなってきてる」

 

「それは良かったわ」

 

 母親。焦凍の口からその人物の話を聞き、安心したような言葉と息を吐き出す。と、ここで二人を置き去りにしてしまっていることに気付き、悪いわねと言えば

 

「いや、久しぶりに会ったと言うなら積もる話だってあるのだろ?」

 

「それに何も話す時間はまだまだこれから沢山ありますもの、大丈夫ですわ」

 

ヒーロー科に来れるくらいのだから当たり前かもしれないがこの歳で人間出来すぎでしょ。と言う言葉を口に出さずに感謝を告げたタイミングで、焦凍からそう言えばと一つの話題が、それは

 

「姉さんが心配してたな。夕食、食べられてるかって」

 

「何時の話ししてるのかしらね!?」

 

 ガタッ! 思わず立ち上がりながら叫ぶ、なんだかここに来てから私のキャラが維持できてないんだけれどとも続けたかったがそれよりも前に百が心からそう思ってますという表情で

 

「もしや、便利屋は苦労してらっしゃるのですか!?」

 

「昔の話よ。今は軌道に乗って、苦労してないわ安心して頂戴」

 

 このお嬢様、このまま放っておいたら自分が何とかするとか言い出すんじゃなかろうかと感じさせる気迫に若干押されつつも宥める。だが忘れてはいけない、彼女に負けず劣らずに真面目で他人思いのヒーローの卵が居ることを、そう天哉である。

 

 とは言っても彼が聞きたいのは軌道には乗ってるということを聞いているので苦労云々の話ではない、図らずともそれは相澤と同じような内容だった。

 

「聞きたいが、なぜそこまでして便利屋を?」

 

「……私が灰色の住人だから」

 

「え?」

 

 それ以上は今は答えないわと言葉にせずに態度で示すように微笑む。相澤に話したようなことをそのままとも思ったが、流石に初対面の同年代、しかもヒーローを目指している彼に話しても、あの時のようには行かないだろうという判断をした。

 

 とりあえず漸く場が落ち着いた所でレイミィは焦凍に先程の話の続きをすることに。思えば確かに今日まで連絡も取ってなかったので冬美の心配も当たり前かと納得してから

 

「だからまぁ、大丈夫だと伝えておいて頂戴。あ、それとそうね、機会があったらまた顔を出しに行くとも」

 

「分かった。伝えておく」

 

 なんだろう、たった数十分でどっと疲れたと片肘を机について手に顎を乗せて息を吐き出すレイミィ。もしかしてこれが根津、もとい校長の狙いだったのだろうかと思い、多分絶対にそうだなと結論付け、今度は当たり障りのない雑談を始めるかと話を振り、彼女としても中学時代にはなし得なかった何気ない会話を楽しむことにした。

*1
真相は純度100%の感謝の印




便利屋メモ
轟家とは良好な関係を築いており、その結果、焦凍が原作と違い既に丸くなっている。なお、エンデヴァー

焦凍も天哉も百もエミュ難しいんだが……? と言うか話自体もさほど進んでないなこれ?

そして後々に書かなきゃいけない話が多すぎて笑えてくるんですよね。
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