便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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この吸血姫、何か変……


No.90『なにかおかしい事、言ったかしら私?』

 確かに緑谷の成長率は物凄いというのは私も知ってたし、それを考慮した訓練メニューを組んでたつもりだった。

 

 つもりだったんだけど、それ込みで私は甘かったと言わざるを得ない。眼の前で小恥ずかしそうに頭を掻いてる少年はこちらの想定を軽々と飛び越える逸材だった。

 

「だ、大丈夫かい、バートリーくん?」

 

「え、あぁ、飯田? えぇ、まぁ大丈夫、多分」

 

「なんか、バートリーのあんな姿見るのは初めてな気がするな。つか、そんな反応するんだなアイツ」

 

「分かる、なんだかんだで想定内って反応する印象強いよな」

 

 それは私を買いかぶり過ぎじゃないかしらと峰田と上鳴の会話を聞きながら思いつつ、とりあえずで息を吐き出す。

 

 吐き出した上でやっぱりおかしいわよコイツとなった。だってそうでしょ? ついこの間まで無個性で、継承したOFAも上手く扱えなかったってハズの少年が今や普通にコントロール出来てますって言われるのよ?

 

 世の個性持ちがふざけんなお前ってなる案件でしか無いわこれ。いや、まぁ、だろうなって感情もあるにはあるんだけど……

 

「ねぇ、爆豪。もしかして緑谷ってトンデモナイ宝石なんじゃないかしら?」

 

「あぁ?」

 

「寧ろ何でちょっと磨けば光る宝石が今日まで放置されてたのかが聞きたいんだけど、ねぇ爆豪?」

 

「何が言いてぇ?」

 

 ギロリとした視線と圧が私を襲う。なんだか久し振りだからちょっと心地よいと言うよりもあれ、こんなに強いものだったっけとなるし、なんだか以前よりもあまり自分が満たされるような気がしないと思った。

 

 もしかしたら罪悪感からのトラウマを吹っ切った影響かもしれないわね。まぁ、【吸血姫】としては彼からのそれは好ましい物なのは確かなので変わらず接するけど。

 

「ちょっと他と違うからって蓋を押さえつけてて誰も彼の可能性に気付けなかったって酷い話よね?」

 

「だからなんだってんだ?」

 

「前に貴方と緑谷をウサギとカメなんて例えたけど、カメはカメでもガメラとかの類でアレと張り合おうとするのは中々の度胸よねって」

 

「……」

 

 我ながら中々の例え話だと自画自賛出来ることを話していると、ふと爆豪からの視線から圧が微妙に消え、思わず彼を見たけどえ、その顔は何よ。いや、てか周りの雰囲気も何かおかしいわね、どうしたのよ?

 

「いや、バートリーの口からガメラって単語が出てきたことが素直に驚いた」

 

「待ちなさい、貴方たちの中で私はどんな存在だと思われてるのかしら?」

 

 まるで人が便利屋以外に全く興味がないみたいな感じ方されると私だってちょっと凹むからね? これでも……これでも……そう、そうよ、これとか私の趣味の一つと言えるものよ。

 

 そう言いながら見せたのはスマホの待ち受けにしている私が寝間着のTシャツの描かれている例の丸く黄色い嘴の鳥のイラスト。それを見るや、耳郎から。

 

「うわでた、だから何なのその丸い焦点があってない目をしてる鳥モドキは」

 

「名前とかはないのよね。でも種類があって見かけると手にとって買いたくなるのよ。ほら、愛嬌あるじゃないの」

 

「いや、その目の何処に愛嬌を見い出せと。つか他の種類のあるんだこれ」

 

「えぇ、他にも胴長の猫とか骨のマスクをしたデフォルメボディをしたのとか、水色のフクロウとか、不思議なことにデザイナーとか名前だけがないけどね」

 

 自分で言っておいて、この辺りが不明なのに店に並んでたりこうしてイラストが描かれてたりって不可思議な存在ねこれ。

 

 まぁ良いわ、ともかく私だって興味を持つものはあるにはあるって話がしたいわけなのよ。

 

「あれ、そんな話だったっけ?」

 

「元を辿れば緑谷の成長が云々でバートリーが頭を抱えたのが始まりだと記憶しているが」

 

 勿論覚えてるわよ。あぁ、そうね、えぇ、そこから爆豪からどうにか一週間ぶりの栄養を得るつもりだったけどガメラから話が逸れたのよね。

 

 まぁ、もうそろそろ相澤先生も来そうな時間だからこの辺にしておいてあげましょうか。

 

「レイミィちゃん、もしかして一週間振りだからはしゃいでるのかしらね」

 

「確かにあるかも、何時もよりも口数と言うか反応がはっきりしてる気がするし」

 

 席に向かってる時に梅雨ちゃんと麗日のそんな会話も聞こえたけど、その辺りは否定はしないわね。やっぱりほら、クラスメイトとは何の気負いもなく話せるから私としても肩肘張る必要がないから楽って気分になるし。

 

 こうしてみると改めて思うのは日常を象徴するものっていうのは大事なのよ。私みたいに裏にも首突っ込んでると尚の事そう思うわけ、なんて考えながら席に座れば轟が私の方に身体を向け、私をじっと見るので

 

「何かしら、轟」

 

「……いや、なんかちょっと雰囲気が変わったような気がしたからな、気の所為、かもしれねぇが」

 

「そうでしょうか?」

 

 あ~、この辺りは付き合いの長さ故ってやつねきっと。何も八百万が鈍いってわけではない、寧ろ轟が恐ろしいほどに鋭いって話でしか無く、別に誤魔化すことでもないけど気の所為かもと思ってるならそれはそれ。

 

「なら気の所為なんでしょうね。っと、先生が来るわよ、静かにしたほうが良いわ」

 

「そう言うってことは気の所為じゃなかったか」

 

 人の言葉から推理するのは止めなさいってのと苦笑しながら姿勢を正したタイミングで相澤先生が教室に。それと同時に喧騒に包まれていた教室は一気に静まり返り、彼の挨拶に一糸の乱れもなく返事をする。

 

 これだけ書くと軍隊とかなのかしらここってなるわよね、えぇ、私もそう思ってるわ。思ってるだけで口には出さないけど、私だって命は惜しいのよ。

 

「今日はバートリーも来てるな。昨日の件で話がある、放課後に職員室に来るように」

 

「分かったわ。それと職場体験のレポートもその時に提出で?」

 

「それで構わない。それじゃHRを始めるぞ」

 

 ふむ、一応昨日の依頼の結果は校長にも話してあるから相澤先生も彼経由で知ってるでしょうし、話になるとすればその辺りか。

 

 私の出生、赤霧の正体、その他諸々。これは長くなりそうだし今日の緑谷の特訓は血染と被身子に任せっきりになりそうね。

 

「昨日も話したがバートリーが居なかったので改めて、今月末に期末テストがある。これで合格点を取れなかったら学校で補習授業なので、しっかりと励むように」

 

「……期末テストねぇ」

 

 中学の頃にもあったわねくらいの感想しか浮かばないのよねあれ。その時と違って演習試験もあるけど、そこも何とかなるでしょとしか思えないし、まぁでも油断は禁物ってことにはしておく、万が一やらかせば協会と公安が五月蝿いだろうし。

 

 そう考えると少しは気を引き締めないと駄目ね。最悪、私だけ特別コースとかもあり得ないわけじゃないし、いや、流石にないかと相澤先生の話を適度に聞き、いつものように授業が始まる。

 

 これは特に特筆するようなことはないから割愛し、昼休み、思えばこれも一週間振り……じゃないわね、職場体験三日目に学校でリカバリーガールの手伝いで此処に居たからランチラッシュの料理は食べてたわね。

 

 という事で心操含めたいつもの五人、ではなく今日は珍しく耳郎も麗日に呼ばれたとかで付いてきて七人と言う中々の大所帯で食堂に向かい、私はオムライスセットを食べていると麗日から。

 

「レイミィちゃん、期末テストは大丈夫なん?」

 

「ん? まぁ余裕よね、そんなので一々躓いてたら便利屋なんてやれてないわよ」

 

「流石の自信だなバートリーくん」

 

 とは言っても流石に八百万には勝てないけど、あの娘は何と言うか頭の出来が次元一つ違うのよ。そりゃ【創造】って〝個性〟を自在に扱えるわって納得できるレベルに。

 

「その余裕が羨ましい、ねぇバートリー、良かったら勉強教えてくれる?」

 

「構わないわよ。他もどう? いや、いっそ八百万巻き込むか」

 

「巻き込むって、普通に頼んでみたら良いんじゃ」

 

「バートリー、お前ただ単に金持ちの家が見たいとかじゃないよな目を逸らすな」

 

 なによ、別にいいじゃないそんな願望で巻き込んでも。こういう時じゃないと見れないでしょ? それに八百万って絶対に勉強の教え方とか上手そうだし、ね心操。

 

「え、い、いや、俺はその人知らないからな……」

 

「それもそうだったわね、っとそうだ心操。昨日の協力に感謝するわ、お陰で完璧に依頼を遂行できたから」

 

「あ、いや、言っただろ。友人として力を貸すって、だから気にしなくても。つか、話して良いのかそれ?」

 

「……え、心操くん、便利屋の依頼を手伝ったの?」

 

 正確には彼の寸法を測って仁にコピー体を作って連れてったってだけだし、内容まで喋るわけじゃないから平気よ。とりあえず、五人には暈しつつ話してみれば、どうやら納得してくれた反応をそれぞれ示す。

 

 それを確認してから、話の本題に、協力してもらって言葉だけのお礼だけというのは私としては頂けないわけなのよね。

 

「だから何か私個人っていう範囲にはなるけど、報酬のリクエストを聞くわよ」

 

「へ、あ、いや、だから気にしなくてもって言っても納得しないよな……」

 

「響香ちゃん、どう思う今の」

 

「ギリギリセーフかな、バートリーのことだから何も考えてないんだろうけど」

 

 二人は何を話してるのかしらね。うーん、でもそうよね、急になにかお礼としてなにかして欲しいとか言われても困るっちゃ困るのも理解できるからとりあえず、ここから切り出してみようかしらね。

 

「もし、物品、もしくは金一封とかでも大丈夫よ? 私が出せる範囲になるけど大体30は一括で出せるから遠慮しないで頂戴」

 

「30と言うのはその、万かい?」

 

「えぇ、万だけど。あ、別に便利屋のお金じゃないわ、私の貯金だから安心して」

 

 あれ、心操が固まっちゃったわ。まぁ確かに大金ではあるけど私って例のキャラクターグッズ以外はお金使わないから溜まっちゃうのよね、人工血液問題も雄英高校からの依頼のお陰で解決したから尚の事。

 

 だから痛い出費にはなるけど、リカバリーは普通に出来るから遠慮しないで欲しい。なんて旨で伝えてみるがどうにも手応えが悪い、もしかしてお金をチラつかせたのは間違いだったのだろうか。

 

「いやいやいや、心操は友人として力を貸したってだけだから、そういう話を出されてもって感じだと思うよ?」

 

「あぁ、お礼が欲しくてってわけじゃないから」

 

「ふーん、とは言っても今回のは危険だったことには変わりないし、その手当って意味もあるから受け取ってほしいんだけど……あ、そうだ」

 

 遠慮ってのもあるでしょうけど、ここで言われて思いつく訳もないわよね。なら、もっと手っ取り早い方法にしましょう、という事でひらめいたそれを提案してみれば周りの空気が急に変わって困惑することになった。

 

 私なにか変なこと言ったかしら、いえ、言ってないと思うのだけれど。ねぇ、轟、どう思う?

 

「多分、冬姉に言ったら話があるって呼ばれるぞバートリー」

 

「だ、大丈夫、心操くん」

 

「バートリーくん、些か無頓着が過ぎるのではないだろうか?」

 

「……」

 

 男性勢からはこんな反応をされたし心操は遂にフリーズしちゃったし。あと何でそこで冬美さんが出てくるのよ、関係ないと思うんだけど。

 

 さて、そろそろ麗日と耳郎の方を見ましょうか。さっきからすっごい視線が突き刺さるのよね、えっと、駄目だったかしら?

 

「駄目か、駄目じゃないかって話じゃないんよ。なんでそれを恥ずかしげもなく提案できるんって領域の話なんよ、レイミィちゃんにその辺りの感情があるのか本気で思いたくなるレベルなんよ」

 

「バートリーってさ、もしかして情緒幼稚園児とかそういう話だったりする?」

 

 え、罵倒!? ダメ出しとかそういうのじゃなくて!? と言うか情緒幼稚園児ってなによ、人並みと言うか年頃ぐらいには普通にあるつもりだけど私!

 

「え、マジで言ってるのそれ……」

 

「あかん、これはあかんよ。渡我さんに連絡してどうにかしたほうが良い気しかしないんよ」

 

「何でそこで被身子が出てくるのよ。ああ、もう、だってその方が早いし面倒もないじゃないのってだけで、別に変な意味があるわけじゃないのだけれど」

 

「それはそれで問題なんよ」

 

 分からない、私には二人がどうしてそこまで呆れてるのかが分からない。私はただちょっと、心操に次の休みは暇かどうかを確認してから暇だって言うから、一つ提案をしただけなのに。

 

「その提案が今の状況を引き起こしてるわけなんだわ。まさか堂々と言うと思わなかったよ、〝暇なら一緒に出掛けて、そこで貴方が欲しいのを買ってあげる〟って」

 

「別に、普通じゃないかしら?」

 

「曇りなき眼や!!! この子、心から普通だとしか思っとらんよこれ!」

 

 その後、黙々と耳郎から男女とはという話をされた。された上で別にそんな感情はないから平気よと伝えたら、脳天に割と本気のチョップを食らった、解せないんだけど。




心操くんの情緒はおしまい!

私事なのですが今度の火曜日は諸事情で更新がありません。今度の更新は金曜日となりますのでご了承ください。

便利屋メモ
レイミィがガメラを知ってる理由は偶々テレビで映画が流れてたから、曰く〝愛嬌あるわよね、ガメラって〟とのこと
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