便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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絶対に仮面付けて学校とか悪手だろとずっと思ってる。


No.93『筒美火伊那は愚痴りたい』

 ざわついた空気と周囲からの誰? と言う声と不審者を見るような視線、その3つを嫌でも感じ取りながら私は溜息を吐き出すしか無かった。

 

 用があるとは言え、まさか雄英高校に来ることになるとはな。こういう機会でもなけりゃ来ることもないんだが、そして来てみればこの扱いだ、悪態の一つも許されるだろと口にする。

 

「私は客寄せパンダじゃねぇぞ」

 

「まぁまぁかい、ゴホン、ホークアイちゃん」

 

「名前で呼ぶなよ、そこらにいるプロヒーローにバレるからな普通に」

 

 副所長殿の言う通り、ここは雄英高校であり教職員の大半はプロヒーローである。だからこそサングラスだけの簡易な変装じゃなく、髪色を変えることが出来るヘアピンに仮面まで付けてここに来てるんだが、一つ言っていいか?

 

 逆に目立つだろこれ、サングラスにヘアピンだけじゃ駄目だったのか? 駄目なのか、顔でバレるか、あ~、面倒だな。早いところ、どこか人目のつかない場所に行こうぜ。

 

「確か、校長からリカバリーガールから話がってことですよね? なら保健室ですか?」

 

「いや、その前に校長と合流する手筈になっている。職員室まで来いって話だったな、向こうから送られてきた許可書は首から下げてるな、行くぞ」

 

「これだろ? この薄いの一枚に色々とセキュリティを突破する物が仕込んでるって今の技術力すげーな」

 

「雄英高校だからってのもあると思いますけどね。噂ですと、【I・アイランド】ってところと実は技術提供を受けてるとか何とか」

 

 聞いたことだけはあるな。科学者が世界中から集まってる島、もっとも機密が多すぎるしそれを守るために出るにも入るにも厳重なチェックがあるとかで一つの国みたいな扱いだとか。

 

 まぁ私には縁も何も無いし、別段そこに行きたいとかも無いからどうでもいいんだが。あぁ、でもこの仮面とヘアピン、光学迷彩機能がついた外套を作ったって奴には会ってみたいとは思う、確か生徒が作ったとか言ってたよな?

 

「らしいですね、でもサポート科って外部の人間が近寄れる場所なんですか?」

 

「言っちまえばあそこも機密の塊だろうが、話を通せば無理ではないかもしれん。もっとも、そんな時間があればだが」

 

「元々がその緑谷ってやつの特訓だしな、自分で言ったことだが無理なら無理で構わねぇよ」

 

 最悪、その手の御礼話しは嬢ちゃんがするだろうしなと思いながら職員室に向かえば、その扉の前で待っていたと声とともに私等を出迎えたのは例の校長。

 

 にしても動物に個性ってだけでも驚きなのにそれが人間よりも高い知能をもたらす【ハイスペック】で、そいつが学園の校長を務めてるって言うのはどういう考えなんだろうな。

 

 普通、誰かしらの息のかかった人間だとかが務めるもんだと思うんだが。いや、だからこそか、ここはここで独立性を保つために何処にも属さず己を通せる存在を据えたと考えれば不思議でもない。

 

(しかも噂じゃ、あの校長は過去に人間に色々されたって話だ。寧ろ(ヴィラン)堕ちせずにヒーロー学校の校長をしてるってのは奇跡に近いだろ)

 

「やぁ、久し振り、と言うほどでもないと思うけど態々こんな時間に足を運んでもらって済まないね」

 

「いえ、それよりも話ってのは?」

 

「リカバリーガールの所に向かいながら話そう。あまりここで立ち話も目立ってしまうからね」

 

「既に手遅れ感がありますけどね」

 

 それは言わない約束って奴だな。そもそも校内に入ってる時点で目立ちっぱなしだっての、たった数十分で有名人に返り咲きだ、笑えねぇ。

 

 自分でも笑えない冗談を頭の中で浮かべつつ、そのリカバリーガールってのが居る保健室へと歩きながら校長が話を始める。

 

「彼女はどうやら君たちに聞きたいことがあるようでね、勿論、向こうから話があるというのも嘘ではないけど」

 

「俺達に聞きたいこと?」

 

「あのお婆ちゃんが聞きたいことってレイミィちゃんの様子とかそんなのですかね?」

 

「私等から見ての嬢ちゃんってことか? だったら別に本人が居るときにでも良いのに何で省いてる?」

 

 ま、聞いた所で答えが返ってくるわけがないんだが。ともかく、そういう話となれば私はあまり役に立てるとは思えない、何せ嬢ちゃんとこで住み込みを初めてそこまで時間が経ってるわけじゃないんでな。

 

 それ以前のこととなれば、副所長か被身子の出番だ。でもとりあえずここ最近での嬢ちゃんの様子は私も思い出しておくとするか、話を振られて考えてませんでしたじゃ何言われるか分からねぇし。

 

 にしても視線がウザったいな、いや、仮面姿の人間が居たら二度見しても文句言えないな、私だってするしなんだったら声を掛ける可能性だってある。

 

「なぁ、保健室着いたら流石に外していいよな」

 

「HAHAHA! 流石の君もここまで視線で針の筵にされるのは叶わないって感じだね」

 

「いや、寧ろ誰だったら耐えられるんですかこれ。トガだったら速攻で心折れてますよ」

 

 そこらはまぁ現役時代の賜物ってやつかね、ただあの時よりも視線の圧が強く感じるのは確かだ。若いやつ特有の不躾な視線ってやつはこうもウザったいのかとため息を吐きそうになるのを堪えた所で保健室に漸く到着。

 

 校長が、というよりも先ずは副所長が扉をノックし校長が声を掛ければ、間を開けずに老婆の声で「入りな」と言われ入室すれば椅子に座った姿のまま自分たちを見据える老婆が出迎えた。

 

 彼女が【リカバリーガール】か、その歳までヒーローしてるってことは所謂〝生き残り〟って奴だろう。

 

「やっと来たようだね。二人は知った顔だが……外しな、この部屋は誰かに覗かれることもないからね」

 

「んじゃ、遠慮なく」

 

 やっと取れると思いつつ仮面に手を当てて軽く力を加えれば空気が抜けるような音を確認してから顔から外し、続けてヘアピンの変装設定を解除する。

 

 こっちは別にする必要はなかったが、無駄にバッテリーを消耗する必要はないだろうと思って解除したのだがこれで私は正体を表したことになるのだが、眼の前の婆さんは驚く素振りも見せていない。

 

「なんだ、知ってたのか?」

 

「話だけは校長から聞いてたよ。ま、こうして実際に見てみたら腰を抜かしそうにはなってるけどね」

 

「抜かすじゃねぇか、眉一つも動かしてないってのに。まぁいいや、知っての通り便利屋に雇われた筒美火伊那だ」

 

「リカバリーガールだよ、今はお宅の所長の主治医みたいなこともさせられてる」

 

 言い方はぶっきらぼうではあるが見捨てるつもりはサラサラ無いという感じの声に思わず笑いそうになる。が、それで無駄に時間を消費するのは良くないだろうと我慢していると副所長から話を切り出す。

 

「それで俺達をこんな時間に呼び出したのはどういう要件だ。一応、校長からは聞きたいことがあるってのは伝えられているが」

 

「彼女のことだよ。まずは私から話すとしようか、先に聞くけどあの嬢ちゃんについて何処まで知ってるんだい?」

 

「何処までとなると、ほぼ全てですかね」

 

 ほぼ全て、嬢ちゃんが実は作られた存在でしたから含めたそれらだと被身子が答えれば、リカバリーガールはなら話が早いと前置きをしてから、何枚かのカルテをボードに貼り付け、それから。

 

「これはバートリー嬢ちゃんの診断結果のカルテ、この時に血液検査もしたんだけど、その際のDNA鑑定で一人の人物と合致しちまったのさ」

 

「それってエルジェーベトってやつだろ」

 

「その通り、実を言えばUSJ襲撃の際には判明してたことだけど話すタイミングが無かったんだよ。で、あんたたちが知っての通り彼女の遺伝子を下に作られたってんならこれも納得するしか無いわけだったんだが、ちょいと厄介なことも同時に分かっちまったんだ」

 

「厄介なこと?」

 

 偉く勿体ぶるな、老人の話は割とコレがあるから好きじゃねぇんだ、まぁ暇なときだったら嫌いでもないんだが。リカバリーガールの話し方に現役時代のあれこれを思い出していると別のカルテを指さしながらこう告げた、それは私も流石に眉を顰めちまった内容だ。

 

「当初は私も個性に身体が追いついていない、その程度に考えていたんだけどね。二度目の検査の時に分かったが、彼女は【無個性】として身体を調整されていたんだよ」

 

「【無個性】として、そうか、だからバートリーは個性の出力が多大な負荷になってるのか」

 

「そうさ、しかも個性を使ったとしても身体が決して馴染まず、合わせるように成長もしない。使えば使うほどに〝個性〟だけが成長しちまう体になってるってわけだ」

 

 なんだそりゃ、と思いそうになったがそもそも作られた経緯がエルジェーベトの自殺目的だったことを思い出してその設定にある程度の納得をしてしまった。

 

 自分が死んだ後のも吸血衝動で暴走してても沈静化出来るように。ようは勝手に自爆するシステムとして【無個性】としての身体を調整したのだろう。

 

「で、でもレイミィちゃんは今も普通に生きてますよ?」

 

「イレギュラーってやつだろうな。向こうからしてみても嬢ちゃんが普通に活動してるのは不思議で仕方ないだろ」

 

「だが殻木はバートリーを利用するつもりだったとも言ってた、ともすれば始めからそのつもりで本人には言わずに調整し直してた可能性もあるぞ」

 

「ふむ、その辺りを少し詳しく聞いてもいいかな? 後でバートリーくんからの報告書でも知るとは思うのだけれど」

 

 校長に聞かれれば隠し立てする必要もないので昨日の案件を伝えておく、そもそも殻木が病院と慈善活動を隠れ蓑にあれこれとしてたことに驚きつつ、なるほどと呟いてから。

 

「AFOはある程度は彼女を駒として使うつもりだったのかもしれない。そして〝個性〟が成長したら奪う、それがプランだったのだろう」

 

「が、結果として初めの一歩で転けたと。笑えるな、しかも現在進行系で自分の計画を狂わせに掛かってんだから尚の事」

 

「むむむ、なんだかちょっと迂闊が過ぎません? そのAFOって人」

 

 これでよく悪の帝王だなんだと名乗れるなと言われたら確かにそうだなと今は思う。こう、あれだな、自分は絶対だと思い込んでるからこそ足元から一気に掬われてるってのがそいつの今なんだろうな。

 

 って、どうした副所長、難しい顔をしてるが? え、もしかしたら嬢ちゃんがヤバいかもしれないって?

 

「考えてみろ、【無個性】としての身体だってのに【吸血姫】の力を使い回してるんだ、俺達が思っている以上に負荷が掛かってる可能性がある」

 

「可能性が、じゃない、確実に予想よりも遥かに強い負荷が彼女を襲っているだろうね。寧ろ、心臓だけで済んでるっていうほうが不思議だ、そこで聞きたいがここ最近で異常を見たりはしなかったかい?」

 

 異常ったってこの間の吐血とかしか私は知らないからな。被身子、何か知ってるか? そう聞こうと彼女を見れば顔を蒼くし、もしかしたらこれも? と呟いてから

 

「血染くん、雄英体育祭の打ち上げの日の朝なんですけど。レイミィちゃん、その事を忘れちゃってたんです」

 

「……物忘れをしたってことか?」

 

「口振り的に普段は絶対にしないのかい?」

 

 曰く嬢ちゃんは自分から決めたことだろうが、他人からの約束だろうと決して忘れたりしたこと無かったとのこと。だとすれば確かに異常だ、偶々と言われたらそれまでだが、それで切り捨てるには危険が過ぎる。

 

「脳に異常が出てると見るべきだね。もしかして、朝が弱いってのも、脳が回復しきれてないからこその症状かもしれない」

 

「そう言えば、嬢ちゃんって朝起きる時もベッドから落ちてるがそれも異常ってことがあり得るか? 確か手を置く場所を間違えたとか、そんな事言ってたと思う」

 

「感覚のズレ、或いは視覚に何かしらの異常が出てる症状。ったく、お宅の所長はどうしてこれを話さないんだい!」

 

 多分、異常だと思ってないんだよなあの嬢ちゃん……しかし、こうして聞くと結構ボロボロじゃねぇか、このままだとどう考えても碌な目に合わないぞアイツ。

 

「思ったよりも深刻なのは確かだよ。本当ならドクターストップしたいが言っても聞かないのは目に見えてる、だからあんたらがあの娘を見てやってくれ」

 

「勿論そのつもりだが、このままだとどうなる」

 

「仮に次に戦闘して例の【ヴァンパイア・プリンセス】を使った場合、身体の何処かにはっきりとして異常が出ると見ていい」

 

「それって、動かなくなるとか?」

 

 恐る恐ると言う感じの被身子の質問にリカバリーガールはゆっくりとだが頷くことで肯定する。しかも今の【吸血姫】の出力でそれであり、今後、成長した場合は分からないと聞き浮かんだのは今朝方の嬢ちゃんの言葉。

 

「【そろそろ、覚悟を決めるべきかもしれない】って言ってたが、これって〝個性〟を成長させるとかか?」

 

「あ、確かに言ってました。レイミィちゃんが覚悟を決めるって言葉を使ったってことは確かにそうかも知れません」

 

「あいつ、〝吸血〟をするつもりか?」

 

 【吸血姫】を成長させる唯一の手段、嬢ちゃん自身がトラウマのせいで出来なかったことだが今はそれを乗り越え、しかも現状では赤霧に勝てないとなれば実行する可能性は非常に高くなるだろう。

 

 そして、成長させるということは負荷も更に強くするということ、どうなるかなんてものはリカバリーガールにだって分からない。その事実に私は何度目か分からないため息を吐き出して。

 

「所長が無駄に所員に心配かけてんじゃねぇっての」

 

「組織の長がそれは確かに駄目だね。やれやれ、バートリーくんもまだまだ子供ということだ」

 

 その時の校長の目が笑ってなかったように見えたのは私の気の所為だと思うことにした。とりあえず、今日は特訓が終わり次第また保健室に来て再度今の話をするということにし、時間が放課後、訓練場γと言う密集工業地帯を模した場所に私は潜伏していた。

 

 理由は言わずもがな、仮面の機能で入口をズームして見ていれば、来たなっておい。

 

「どういう事だ、三人のギャラリーが居るぞ」

 

《学園内での訓練だ、A組の熱心な奴らは喰らいついてくるだろうな》

 

《まぁレイミィちゃんが条件を提示してそれを飲んでるはずなので、大丈夫だと思いますよ》

 

 だと良いがな、んで二人は見たことある顔だ。片方がエンデヴァーの息子で片方がインゲニウムの弟、んであの地味目のが緑谷、じゃあ最期のは誰だあれ?

 

「こちらホークアイ、ギャラリーが居るなんて聞いてないぞ、嬢ちゃん」

 

《ごめんなさいね、飛び入り参加ってやつよ。でも此処でのことは黙ってるって条件を飲んでもらってるから安心して頂戴》

 

「ふぅん、なら良いけどよ。それと何時でも良いぞ」

 

 右肘から銃身を展開、距離を測定、弾丸を生成、今回は模擬戦だってことだから模擬弾だがこれでも当たらば結構痛いそれを装填、狙撃準備完了。

 

 仮面の右目部分だけを展開しスコープを覗き込む、対象は未だ動かず、あとは嬢ちゃんの合図を待つだけ……

 

《ホークアイ、挨拶》

 

「Roger」

 

 嬢ちゃんからの指示に短い返答、それにプラスして重音な銃声で答えた。




え、まだ先代達の個性が出てない出久くんでレディ・ナガン戦だって!?(次回予告
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