便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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なんかもう色んなことが加速して進んでいくんだけど、どうしようこれ。


No.95『ネタばらしはさっさとやれ』

 ここ数日でどうして何度も驚くと言うか想定外なことしか起きないのかしらね本当に……

 

 軽く遠い目をしながら一つ一つを整理していく。さっきまで順調に緑谷は特訓してて、彼が思ったよりもやるものだから最後の直線で火伊那が本気でやるってなったのよね。

 

 えぇ、彼の成長の為にならと許可したわ。そしたらビックリすることに彼女の本気を回避してそのままゴールしてくると思ったら頭を抑えて蹲って、いや、冷静に状況を分析するフリで現実逃避は止めましょう。

 

「被身子、直ぐにリカバリーガールを!」

 

「は、はい!!」

 

「血染、オールマイトを呼び出して!」

 

「やつを? あぁ、分かった」

 

 ダメージからの頭痛じゃないのは確か、なら考えられるのはOFA関連でしょう。そこは良い、問題は事情も何も知らない三人よね。

 

 ここまで来ちゃったら隠し立てはほぼ不可能だと思うしオールマイトと相談ってことになるのかしら。まぁ良いわ、今は緑谷の状態の方が大事だしって。

 

「緑谷、大丈夫なのか!?」

 

「今すぐ保健室に運んだ方が良いだろう、それで構わないよなバートリーくん!」

 

 ありがたいけど落ち着いて頂戴、動かすのも良くない状態だったらどうするのかしら? なんてそれっぽいことを言いつつ緑谷に近付けば火伊那も来ており容態を確認中だった。

 

 見た感じは今は落ち着いてるかしら。ともすれば頭痛は一瞬だった? そもそも頭痛一つで気絶まで行くってのもおかしな話よね。

 

「どんな感じかしら、彼」

 

「気を失ってるだけっぽいな。にしても何があったってんだ、それに最後に見せたアレ、勘がいいとか軌道を読んだとかじゃ済まない話だぞ」

 

 はっきり言えば、最後の火伊那の射撃は私だって避けきれるか怪しいと言えるものだった。一発の銃声に紛れ込ませた複数発、しかも弾種は別々となれば対処が遅れたって不思議じゃないし、仮に緑谷が被弾したとしてもまぁそうよね程度には大人げないとすら思った。

 

 だからこそ彼がそれら全てを見切って回避したときは驚愕しか無かった。端からじゃ分からない何かを感じ取ったのだろうか、私はその可能性を感じ未だ気絶している緑谷からコウモリ越しに血を取り記憶を覗き見ることにしてみる。

 

(……最後、やっぱり何かを感じ取ってる素振りを見せてるわね)

 

 見えるのは何とか狙撃を回避しようと動き回る視界、途中で声は漏れているが大体が息を吐きだしたりとかそんなのばかり、ただ最後の最後、火伊那の本気を避けようとしたときだけは明確に違いが出ていた。

 

 回避しようとした直前に痛みに襲われたかのような声を出し、その直後に一発目を回避する動きではなく二発目以降も回避できる位置取りをした。つまり、始めは火伊那の仕込みに気付いてなかったということになる。

 

「まるで虫の知らせを聞いたみたいな動き……まさか?」

 

「バートリーくん?」

 

「何かまずいのか、緑谷」

 

 あっと、そう言えば三人が居るんだったわね。まぁ、さっきから爆豪は気持ち悪いくらいに黙りしてるけど、どちらにせよ一度は保健室に送り込んだ方が良いのは確かだと飯田に頼めば任せろと彼を背負う。

 

 それを確認してから被身子がリカバリーガールから保健室に運んでこいと言われたとの事なので全員で向かえば、彼女とマッスルモードのオールマイトが居るのは良いのだけど、その姿でオロオロするな、なんか鳥肌が立つ。

 

「ふむ……」

 

 そんなオールマイトを尻目にリカバリーガールがベッドに寝かされた緑谷の診察を始める。とは言っても本人はまだ気絶しているので出来るのはあまり多くないと思うけど。

 

「気絶してるだけ、としか言えないね」

 

「つまり、目立った異常とかは無いってことでいいのかしら?」

 

「内出血等も無いからね。そのうち目を覚ますだろうさ」

 

 この言葉に全員が安堵の息を吐き出す。言うまでもないけど、爆豪は無反応よ、チラッと寝てる彼を見るくらいはしてるけど本当にそれだけ、にしても何時になったら起きるのかしらねこれ。

 

 あまり時間が掛るようならオールマイトを呼んだ意味がなくなるんだけど……

 

「そもそもだ、なぜ私は呼ばれたのかな?」

 

「そりゃ弟子がぶっ倒れたからに決まってるでしょうが」

 

「ちょっ!?」

 

「……緑谷、オールマイトの弟子だったのか?」

 

 端的に言うわ、この状況になった時点で隠し通すのは不可能だし、する意味がないわよ。ここまでの急成長のお陰で緑谷の個性が明らかに異次元だってのも周りにはバレてるし、あの頭痛からの気絶は異常だもの。

 

 それを目撃してしまった三人にはすべてを話す必要があると私は思ってるわ。あぁ、そうだ、それに関連することなんだけどと振り返り告げる。

 

「この特訓を見学する際に出した条件、覚えてるわよね?」

 

「勿論、見たこと聞いたこと、そして察したことは誰にも、そして決して外で話題にすら出すな、だろ?」

 

「えぇ、その条件は今この場にも適用されるから気を付けて頂戴、ね、オールマイト?」

 

 視線を送れば露骨にたじろぐオールマイト、因みにリカバリーガールには随分と前にタイミング見て話すことは伝えてあるし、校長にも通達済みなので彼に逃げ場なんてものはない。

 

 そもそも無駄に隠し立てなんかするから彼の特訓が単独でしかできなくなるのよ。私達、便利屋が居なかったらどうやって特訓をさせるつもりだったのかしら?

 

「い、いや、それは、その……」

 

「だから貴方の昔の師匠がドツイてきたんじゃなくて?」

 

「うぐっ……」

 

「そ、その、俺の気の所為かもしれないのだがバートリーくん、妙に活き活きしてないかい?」

 

「あいつ、ああやって目上を淡々と詰めていくのが好きらしいぞ」

 

「趣味わりぃな」

 

 趣味が悪いなんて言われ慣れてるから、そんなの便利屋じゃ挨拶にもならないわよ。ともかく、この場に居る三人の口の堅さは私が保証するし、万が一漏洩した場合の責任は私が取る、だからもう話しておくべきだわ。

 

 緑谷と貴方の関係を、そして貴方自身のことを全て。確かに簡単に吐き出せることじゃないけど、だからって緑谷一人に持たせ続ける荷物じゃないのも事実でしょ?

 

「そう、だね。あぁ、どうしても私は独りでというのばかりだったものだからついそうやって押し付けてしまう」

 

「呆れた、まぁそれを二つ返事でやろうっていう弟子も弟子だけど。ったく」

 

「緑谷と、オールマイトの関係?」

 

 まぁさっき師弟関係だったことを話しちゃったから別段、これはもう省略しても良いんだろうけど。えぇ、まぁ、そのときはそう思ってたのよ、正直に言えば轟の抜けっぷりを若干甘く見てたわ。

 

 上記の言葉をつぶやいたかと思えば神妙な面持ちで何かを考え始め、そしてポツリと何かを閃いたとばかりに顔を上げたと思えば

 

「まさか、緑谷はオールマイトの隠し子だったのか」

 

「ぶふっ!???」

 

「あぁ、レイミィちゃんが決壊しちゃいました……」

 

「なんと、そうだったのですかオールマイト!?」

 

「ど、どうしてそうなるんだい君たち!?」

 

「どうすんだよ、ボケしか居ねぇぞここ」

 

 まさかそんな発想に至るなんて思わなくて、見事にツボに入ってしまった私は保健室だからと声を抑えてひたすら笑うことになる。被身子が介抱してくれているけど、笑い死にもあり得るんじゃないかしらと言うくらいにまるで収まらないし息が出来ない。

 

 いや、だって隠し子よ? 隠し子なんて早々に出てくる言葉じゃないっての、しかも真顔で言われたら誰だってツボるでしょう。

 

「けほっ、ごほっ、ぷっ、あっはは、ふふっ」

 

「あ~、すみません、リカバリーガール。酸素スプレーとかってありますか?」

 

「待ってな、ったく全く関係ないことで身体に負荷をかけるんじゃないよ」

 

「……いや、それは無いだろ」

 

「あぁ、オールマイトに隠し子とか出来るわけがない」

 

 いよいよ収集が付かなくなり始める前に爆豪と血染がそう呟いてから、オールマイトに訂正と説明を求めることに。私はその間に笑いを抑え込み、酸素スプレーで呼吸を整え、落ち着いた所で。

 

「ふぅ、ふぅ、はぁ。ほら、さっさと話しちゃいなさい、その姿で居るのだって無理してるんだし」

 

「分かった。三人とも、今から話すことは絶対に他で口にはしないでくれよ、じゃないとかなりマズイことだからね」

 

 流石はオールマイトの言葉というべきか、爆豪も素直に頷いたのを確認してからトゥルーフォームになり彼は全てを順に話した。

 

 自身の怪我のこと、その後遺症で制限がかかっている活動時間のこと、そしてOFAと緑谷のことを丁寧に。丁寧だったのでそれなりに時間は経ってしまったけど説明を聞いた三人はそれどころではないという表情を晒していた。

 

 当然といえば当然でしょうねという感想しか出てこない。血染と火伊那も聞いていたがやはり実際にトゥルーフォームのオールマイトを見るとなれば少しばかり同様に近い感情を見せているので彼の存在の大きさが見て取れる。

 

「……んで」

 

「む?」

 

 誰もが沈黙を保っていた中で動きたのはやっぱりと言うべきか、爆豪だった。彼は私から見ても何かを堪えているのが分かる表情で、オールマイトに問いかけた。

 

「なんで、デクなんだ」

 

 言葉として出てきたのは短文、けれど秘められた言葉を紐解いていけばそれは非常に長文の言葉になるだろう質問にオールマイトは間を置かずに彼を、いや、彼らを見据えてはっきりと答えた。

 

「彼が非力で、誰よりもヒーローだった。君たちは強い男だと思った、既に土俵に立つ君たちじゃなく、彼を土俵に立たせるべきだと判断した」

 

 聞けば私もニュースと新聞で見たことがあるヘドロ事件と呼ばれる(ヴィラン)の騒動の際に爆豪が囚われたのを当時は未だ〝無個性〟だった緑谷が助けるために飛び出したのを彼は見てと言う流れらしい。

 

 私個人の感想を述べるとすれば、無謀も良いところだと怒りたい。彼がやったそれは確かに考えと策があってのことだろうけど、勇気と無謀を履き違えていると言われても無理はない代物だ。

 

「ナチュラルボーンヒーロー……」

 

「ですね、ちょっと怖いとも思っちゃいます」

 

 〝怖い〟それはヒーロー志望でもなんでもない被身子だからこそ出てきた感想。そして、爆豪も全く同じものではないだろうけど、近いものを抱えている、今の話を聞いて私だって彼の〝心〟はヤバいと思えたもの。

 

 普通は〝無個性〟なら策があろうと突っ込まない。いえ、〝個性〟があろうとも近くのヒーローに任せてしまうはず、だと言うのに彼は体を張った、怖くないはずがないだろうに、それでも爆豪と言う幼馴染のために。

 

「んっ……あ、あれ?」

 

「緑谷くん! 良かった、目が覚めたか」

 

「飯田くん? そ、そうだ、特訓の途中で気絶したんだ……ってあれ、これってどういう状況?」

 

 場の空気がこれまたどんよりとし始めた頃、緑谷が目を覚ましたけど彼は彼でこの場の空気に戸惑い始める。戸惑ってるところ悪いんだけど、と私はついさっきまでの事を説明すれば。

 

「は、話したんですかオールマイト!?」

 

「あぁ、全てね。それよりもだ、倒れたらしいが何があったんだい?」

 

「それよりもって話じゃないんだけど。まぁ、私もそれは気になるのよ、話してくれる?」

 

 はっきり言えば閑話休題って言える話題じゃないんだけど、本筋は確かに緑谷が倒れた原因ではあるので間違ってるとも言えずに微妙な表情になりながら聞いてみれば、数秒後に今度は私が頭痛で倒れそうになった、曰く。

 

「えっと、気絶している間にOFAの中に眠っていた〝先代〟と話をしまして」

 

「……は?」

 

「これはまたデカい話が出てきたな」

 

 出てきたのは四代目【四ノ森 避影】であり、頭痛で倒れたのも彼の〝個性〟である【危機感知】が目覚めたからとのこと。待って頂戴、目覚めたって何!?

 

 ちょっと、そんな話聞いてないんだけどオールマイトと彼を問い詰めれば、向こうも向こうで首を何度も横に降ってから

 

「わ、私も初めて聞いたのだが!?」

 

「え、オールマイトも知らないことだったんですか!?」

 

 急展開とも言える真実の提示にフラッと体が倒れそうになったのは私のせいじゃないと思う。被身子が慌てた様子で私を支えてくれたし、そもそも倒れそうになったってだけですぐに足に力を入れて堪えたけどさ。

 

 にしても、えぇ、じゃあ何、もしかして今後も何かしらの拍子に歴代継承者の〝個性〟が目覚めるってことなの?

 

「た、多分そうじゃないかな」

 

「なんだかもう、俺は混乱してきた」

 

「あぁ、今までの常識が一気にぶっ壊されたって感じだ」

 

 分かる、分かるわ二人共。もう何かしら、笑うしか無いわよねこれ、見なさいよ、火伊那も血染も面白い表情してるわよ、まぁ片方は仮面で見えないんだけど。

 

「……んだよそれ」

 

「かっちゃん?」

 

 漏れ出た言葉に込められていたのは悔しさ。見れば表情は言葉に難しいくらいに複雑なものになっており、内には大量な何かを抱え込み爆発寸前だというのは分かるくらいだ。

 

 緑谷がも流石にそれは察知したようで、その上で言葉を探しているようなのだけれど。えぇ、はっきりと言うわ、面倒になったのよ、だからこう言ってやったわ。

 

「緑谷、爆豪、面倒だから二人共一回、本気で喧嘩しなさい」

 

 刹那、その場の全員が私の顔を見たのは言うまでもないかもしれない。だって、何時までもグズグズはっきりしないし、言わないから面倒だったんだもん……




因みに、緑谷と爆豪の本気の喧嘩は詳しくは書かないかなって、あくまでレイミィちゃんは観戦組ですし、喧嘩中のセリフも大体が原作でしょうから。

便利屋メモ
レイミィちゃんが〝だもん〟とか言い出したら大体が面倒だなと思い始めている証拠とか
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