便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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翌日ってなると話が全く進まない癖はどうにかしたい。


No.97『思えばあまり話してないわよね?』

 大怪獣大喧嘩(命名私)の翌日、それは運動場γの一部建造物を吹き飛ばし、そこに設置してあったカメラと訓練用にとサポート科から借りていたドローンを消し飛ばし、私の懐にちょっと笑えないダメージを与えた。

 

 だが雨降って地固まる、というべきだろう、二人の歪んでいた関係を無理やりながらも矯正したのは確か。昨日の帰り際も言動こそ変わらないが爆豪から緑谷に対する雰囲気というものが良くなったのは全員が感じ取れたので、もう心配はないと思う。

 

 そう考えれば弁償費用も必要経費として……として……頭でそう納得させようとするが吹っ飛んだ貯金の二割を無慈悲に見せてきた通帳の数字を思い出して思わず項垂れてから

 

「うぅ、やっぱり辛いわ」

 

「言えたじゃないですか、レイミィちゃん。貯金を溜め込んでて良かったですね」

 

「確かに私が焚き付けたから悪いとは思ってるけど……けどさぁ」

 

 貯金の二割が消えたとなったら嘆きたくもなるわよ、つか25%ってあんなに暴力的な衝撃波が出てくるのね、彼にその辺りの戦い方を叩き込んだ方が良いわよ。

 

 じゃないと街に被害がとかで面倒になるだろうし、なんていうのは簡単なんだけど私達ってそもそもが大火力が出る個性じゃないから、どう教えたものなのかしらね……

 

「オールマイトに聞くのが手っ取り早いかもしれんな、奴ならアドバイスくらいは出せるだろ」

 

「そう言えば、何人かには彼とオールマイトの秘密を話したんだっけ?」

 

「えぇ、お陰で特訓の人数と幅が広がったから遠くない内に私達の役割はただの監督ってことになると思うわ。それでも火伊那による遠距離の対処とか、圧紘と仁、貴方達二人みたいな〝個性〟持ちとの対処を習わすつもりでもあるからまだ先だけど」

 

「俺達も出番があるのか、てっきり無いとばかり思ってた」

 

 当初はその予定だったわ、けど状況は大きく変わってしまった。特に敵連合や死柄木関連が関わってる手前、ただ鍛えるだけじゃ不足が出てきても不思議じゃないし。

 

 そうじゃなくても、ふとした勢いで日本に世界の(ヴィラン)が来たとかもありえる。と言うか私がOFAだったら呼び寄せて混乱を巻き起こして動きやすくする、絶対に。

 

「本当ならA組全員が理想だけど、難しいわよね」

 

「流石に手が回らん、今の人数に多くても二人が限度だぞ」

 

「そうよね~。林間合宿までに底上げしておきたいことも考えれば、それくらいが限界か」

 

 林間合宿、向こうが次に動いてくれば確実に此処だろうと私たち便利屋は睨んでいる。まぁ、睨むも何も学園っていう守りから外にしかも泊まりで出ていく行事なんだから向こうとしては襲わない理由がないわよねってだけなんだけど。

 

 一応、当日到着まで合宿先は伏せておくらしいけど、青山っていう内通者が居るから無意味に等しいし。

 

「っとそうだ、仁、圧紘、青山夫妻の件はどう?」

 

「順調だよ。あとは室内に死角無く設置されてる監視カメラをどう掻い潜るかだね」

 

「一瞬でも俺達が映ればアウトだからな、外でってのもOFAの手先が見てるとなったら難しいぞ、お嬢」

 

 現在、便利屋は青山の監視と並行して夫妻の救出も遂行している。最も、本人達には内密にだが、流石に何時までも監視下に置くことなんて彼の精神衛生上よろしくないし、仮に内通者だと周りにバレた場合、人質に取られてしまうと言う自体を避けるためという理由がある。

 

 その下見を二人には頼んでいたのだけれど、どうやら簡単にとは行かないらしい、分かってたけど。侵入は圧紘の個性で何とかなるとして、屋内のカメラよね、流石に私達の中でハッキングなんて出来る人材はってそうだ。

 

「居るじゃないの」

 

「なんだ、未だ此処って所員が居たのか?」

 

「あ~、いや、正確には外部協力者ってことになってる人が居るんですよ火伊那ちゃん」

 

「外部協力者? 此処に?」

 

 言いたいことは分かるけど、居ないことはないのよ火伊那。そんなに頻繁には使えないけど、ここ数ヶ月は頼ってないし、多分大丈夫でしょっていうのもあるし、今回の件じゃ向こうを頼るしかないのよね。

 

 デメリットがあるとすればそこそこの額を吹っ掛けられるし、グチグチ文句を言われて面倒だなっていう部分だけど、それを補ってあまりがあるくらいには優秀なのよ。

 

「へぇ、そこまで褒めるってことは凄腕のハッカーってやつか?」

 

「やろうと思えば、雄英高校のセキュリティの一部だってぶち抜けるんじゃないかしら、まぁやらせないけど」

 

 早い内に連絡したほうが良いわよね、今日の放課後か、帰ってきてからしておきましょう。とりあえず、〝昔話〟をしてから夫妻の救出の成功報酬の7割でもぶつければ泣いて喜んでくれるでしょ。

 

「お嬢、昔話を挟んでる時点で脅しに昇格してるぞ」

 

「脅しじゃないわよ、〝お願い〟よ」

 

「お願いするのに昔話は必要ないと思うんですよトガは」

 

「だってじゃないと話聞いてくれないし」

 

「分かった、お前そいつに嫌われてんな?」

 

 嫌われてないわよ、寧ろ良好な関係を築いてると断言すら出来るわ。ね、血染、圧紘、何よその曖昧な表情は、言いたいことがあるならはっきりと言いなさいよ。

 

「あれを良好な関係と言い切れるお前の図太さに感動すら覚える」

 

「今度、ちゃんと菓子折りも持ってお礼しに行こうね、所長」

 

「嬢ちゃんお前……」

 

 凶悪犯罪者を見るような目をするのを止めなさい。そりゃ、まぁ、ちょっとばかり揉めたりはするけど何だかんだで協力してくれるんだから良いじゃない。

 

 そもそも私に尻尾を握らせた向こうが悪いし。とりあえず、この件は帰ってから続きにしましょ、えぇ。

 

「それじゃ、流れは昨日と同じ、時間になったら三人は学校に来て頂戴、今日こそは特訓をするから」

 

「あいよ、にしても危機感知か、あれをくぐり抜ける手段を考えねぇとな」

 

「凄いよね~。AFOに加えてその先代の〝個性〟が発現しますって、おじさん驚きすぎて昨日は眠れなかったよ」

 

「普通に考えれば荒唐無稽って思う話なんだが、殻木が〝個性〟を複製してるってのを見てると有り得ても不思議じゃないって思えちまうんだよな」

 

「とりあえず、先代の〝個性〟がって話からオールマイトには先代の情報を集めてもらっている、それが分かれば今後出てくる〝個性〟も判明して特訓はしやすくなるだろ」

 

「あらゆる〝個性〟って考えると、トガが少しは教えられそうですね、私も似たようなこと出来ますし」

 

 貴方のは条件付きだけど確かにそうかもね。なんてこと思いつついつも通りの言葉を掛けてから雄英高校へ、道中もなにかがあったということもなく、教室に到着し席に座れば

 

「おはようございます、バートリーさん。あの、先程、轟さんから聞いたのですが緑谷さんと爆豪さんが喧嘩をしたとか」

 

「へ? あぁ、えぇしたわ盛大に。てか、話したのね」

 

「悪い、つい呟いちまって、それとやっぱりある程度は噂になってるらしい」

 

「まぁそこは仕方のないことよ。そもそも昨日の怪我だって治り切らないでくるでしょうから、嫌でも騒ぎになるわ」

 

 昨日は宣言通りリカバリーガールは〝個性〟による治療は一切行わずに、応急手当だけを施して保健室から追い出している。なので包帯は取れてるだろうけど、ガーゼやバンドエイドなどは張り直してくるだろう。

 

 ただ、重傷とかはないのでそこは流石だなと言うべきかもしれない。或いは互いに無意識に手加減でもしていたか、いや、これはないか。

 

「それもあるのですが、話を聞くに運動場γの一部が未だ修復作業中だとも聞いたので」

 

「そういや、あの辺りは凄いことになってたなって、どうしたバートリー」

 

「思い出したくないことを思い出しただけ、気にしないで」

 

 今朝も思い出して項垂れたってのに改めて聞くとやりすぎよアイツラって感情しか出てこないわ。いや、失敗したなとは思ったわよ? でも他に借りてる場所無かったし、密集工業地帯の建物なら頑丈かなって思っちゃったのよ、まぁ結果はお察しだけど。

 

 そもそもカメラとドローンだけで私の貯金の二割が飛ぶってどんだけ高性能な機械よ、だったらあれで破損しないでほしいわ。

 

「今度、個人的な依頼でも受けて出費を取り戻そうかしら」

 

「個人的な依頼? えっと、それはどんなものなのでしょうか?」

 

 どうやら口に出てしまっていたらしい。八百万が興味がありますという表情で私を見つめて聞いてきたので、別に隠すことでもないしと今のことについての説明をすることにした。

 

 個人的な依頼、なんて言ったけど早い話が自分が得意として月に十数件から20件近く受けている浮気調査や信用調査と同じように、近所の住民から来る本当に些細な依頼のことを指している。

 

 その中に私を指名しての依頼も多々混ざっており、今度の休みにでもそれを受けておこうかなと言うだけである。

 

「大体がそうね、喫茶店とか八百屋、ようは商店街のお店の手伝いだったり迷子のペットの捜索とかそういうのばっかりよ」

 

「なるほど、文字通り便利屋として市民の方々を助けて回るということですか」

 

「偶に迫さんが手品ショーをしてるとかも聞いたことあるな」

 

 勿論ながら個人的な依頼となれば各所員にも同じ様に指名が来る。まだ火伊那は入ったばかりなので仕方がないが、それ以外の面々にはそれぞれ得意とするものだったり、受けが良かったりでよく依頼が来る。

 

 圧紘は轟が今言ったようにマジックショーだったり身軽さを活かし、頻度はそこまでではないけど撮影のアシスタントをすることもあるにはある。

 

 仁は大柄と〝個性〟を活かして引越の手伝いだったり、家の模様替えを手伝って欲しいとか、その手の重労働な依頼の指名が多い、因みにだけどこの〝個性〟社会でも時代劇っていうのは存在してるので〝個性〟で切られ役を増やしてほしいなんてのも来たりしたわね。

 

 曰く、切られ、リアクションを取ってから倒れて、消滅するから臨場感が増すんだとか、実際にテレビで見たときはなるほど確かにと全員で唸ったわね。

 

「時代劇、見るんだお前」

 

「昨日から思うんだけど、私ってそんなにテレビとかに興味がないって思われてたわけ?」

 

「正直に申し上げるとバートリーさんは便利屋一筋という思いが強く、私もそう思ってしまいましたわ」

 

 うーむ、昨日の昼食の時も思ったけどもしかして、あまりプライベートを出してないのが原因なのかしら? なら折角出しこのタイミングでその辺りも提示してみましょうか。

 

「話を戻すんだけど、被身子は私と似たりよったりね。最近だとデザイナーとかメイクやヘアスタイルの腕の良さが知られて介護施設の利用者にしてあげてほしいってのもあるわね」

 

 あの娘、気付いたらマルチで色々とやるようになってて私以上に稼ぐ時が偶にあるのよね。あぁ、そう言えば読者モデルだっけ? あれにも一度だけ出たことがあったわ。

 

 なんて話をしたタイミングで、芦戸たちも教室に来たのだけれど読者モデルの話で凄まじく喰らいついて来た。いえ、もっと正確に言いましょう、彼女はその時の被身子と〝私〟が表紙のそれを購入していたらしい。

 

「え、じゃあ、もしかして、この幻の読者モデルって二人のことだったりする!?」

 

「あら懐かしい、って言うほど昔じゃないけど。えぇ、それがそうよ、オフで街を二人で歩いてたらスカウトされてね、便利屋やってるから依頼で通してくれたら考えるって言ったら本当に電話が来て笑っちゃったわ」

 

 しかも向こうが結構な勢いで推してくるもんだから私も被身子も苦笑しながら一度だけならで頷いたのよね。提示された額が良かったってのもあるんだけど、んで撮影後に正式にって言われたけど断ったのよね。

 

「うわ勿体な!? ここってすっごい有名どころなんだよ、レミィ!」

 

「いや、そう言われても……私には便利屋があるから、悪い仕事じゃないとは思うけど専業はちょっとね」

 

「レイミィちゃんらしい言葉だなぁ、でも良いなぁ私は透明だからその辺りはからっきしだよ~」

 

 葉隠はもう、ね? でもそっか、普通の女子ってなると読者モデルに出れるってだけでも凄いことなのよね、思えば被身子も何だかんだではしゃいでたし。

 

 でもこれのお陰で被身子が人を着せ替え人形にする頻度が増えたし、さっきも八百万達に話した商店街の喫茶店とかの制服をデザインしたりし始めたのよね。

 

「ほら、これとかがあの娘が考えた喫茶店の制服よ」

 

「おぉ、可愛いじゃん。つか、当たり前のようにバートリーが着せられてるんだね」

 

「その時は丁度手伝いに入ってたから、でも受けが良かったからでここからはちょくちょく私と被身子で依頼が来るわね」

 

 たまの息抜きには良いからそれなりに依頼を受けては顔を出しに行くくらいにはこことは仲が良かったりする。向こうも孫娘が遊びに来たみたいな感覚らしくて賄いも出してくれるし、昔なんかは凄く助かってたのよね。

 

 勿論、助けてくれたのはその喫茶店だけじゃないし、だからこそ恩返しって側面で依頼を受けてる部分もあるわって。

 

「いやぁ、改めて見てもボロボロね、二人共」

 

「え、何あれ、緑谷と爆豪、喧嘩でもしたん?」

 

「だとしたら相当派手だったってことよね。それにしても緑谷ちゃんもだけど、爆豪ちゃんもあそこまでボロボロになるなんて……」

 

 一体どうしたのかしらと呟いてるけどごめんなさい、梅雨ちゃん。煽ったの私なのよ、えぇ、思わず苦笑しながら二人を見れば、向こうは私に気付くなり緑谷は曖昧な笑みで、爆豪は何か反応するわけでもなく席に座るのであった。

 

 とりあえず、昨日のカメラとドローンの修理代の話をしておこう。そう決意しつつ曖昧な笑みの緑谷にニッコリと笑みを返せば、何故か盛大にビビられた、解せないわ。




なんかこう、次回は話を圧縮して冷さんの退院祝いとかの話に持っていきたい(願望)
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