便利屋チェイテと愉快な仲間たち   作:鮪薙

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『』の時のセリフは全部過去の回想ってことでお願いします。


No.99『便利屋の外部協力者』

 静岡県某所の都市部に存在する小さな雑居ビルの一室、そこから今日のお話は幕を開ける。

 

 ここはとある二人組の職場なのだが規模としては本当に小さなものであり、部屋の中にあるのも一人用のデスクトップPCとそれを補助する機器、それ以外は書類仕事をするための机と収めるための棚、あとは居住空間と言う程度でしかない。

 

 そんな事務所の入口、扉の横にかけられている看板に刻まれている名前は【GeLinc.】、世間的に有名というわけではないが知る人ぞ知るプログラマーの事務所であり、表立ってはいないが大企業もここにセキュリティの構築を依頼が来ているくらいには名は知られている。

 

「一旦休憩にしたらどうかね?」

 

「ん? あっ、もうそんな時間だったのね。ありがと、そうするわ」

 

 見た目だけで判断するならば老紳士と言った風貌の男性、【ジェントル】こと『飛田 弾柔郎』が淹れた紅茶を受け取りお礼を言う、パソコンを操作していた赤いツインテールの小柄な少女。彼女こそがこの事務所の所長でありこの〝個性〟社会で〝個性〟無しで最高峰のプログラマーと称される【ラブラバ】こと『相塲愛美』。

 

 元々この二人は自身の犯罪行為を動画サイトに上げるという事を行っていた(ヴィラン)だったのだが、とある出会いによってこうしてプログラマーとして働くことになっている。

 

 彼女もその出来事は今でも昨日のように思い出すことができ、ふとまた思い出したのだろうか、紅茶を飲んでから一言呟いた。

 

「昔の私達からするとまさかこうして、世間に認められるようになるとは思わなかったわよね」

 

「どうしたのかな急に。と言いたいが、私もたまに思うよ、実はコレが都合の良い夢なのではないかとね」

 

 互いに笑い合いながら、その時のことを思い出す。あれはまだ、自分たちが【義賊】と題して(ヴィラン)、最も今思い返しても小悪党程度と言える活動をしていた頃。

 

 当時、彼らがやっていたことは商品の偽装表示を行ったコンビニで強盗を働き、駆けつけたプロヒーローを個性で蹴散らすという光景を動画にしサイトにアップして抗議と自分たちの名を売るという程度のこと。

 

 しかも始めの頃、まだジェントルが一人で活動していた頃は再生数も伸びることもなく、すぐに動画も消され、アカウントのBANされては作り直すということを繰り返す程度であり、ラブラバが(押し掛けたとも言うが)来てから再生数は伸びるようになったがそれでも名が売れたと言うよりは世間からはた迷惑な小悪党としか認識されていなかった。

 

 このままでは泣かず飛ばずのまま、何か大きな事をそろそろするべきかもしれない。そんな事をジェントルが思い始めた頃の、ある日にラブラバが見つけた。

 

『ジェントル、これ見て』

 

『なにか見つけたのかい?』

 

 これよとノートパソコンの画面を覗き込めば映されていたのはとある事務所のホームページ、その名前を見てジェントルもここはと言葉を漏らす。

 

 彼もここは知っていた。政府公認ヴィジランテ集団と揶揄されており、自分たちとは違い世間から認められ活動している【便利屋チェイテ】、そこのホームページを出して来たラブラバに何か考えがあるのかいと聞いてみれば

 

『冷静に考えてみて、そもそも政府公認でプロヒーローでもないのに個性を利用して活動できるなんて普通じゃない。なら向こうがどんな手段で認めさせたと考えるべきかしら』

 

『ふむ……安直に考えるとすれば脅した、とかだろうか?』

 

『私もそう考えたわジェントル。でもなければ国がそんな事を認めるはずがないもの、そしてそれを行っているのは……きっとコイツよ』

 

 ラブラバが指を指したのは所長と所員が紹介されているページの副所長の男性。ジェントルから見ても確かにそうかも知れないと思うえるほどに人相が悪く、所長となっている少女を脅してると言われても容易に信じられるだろうと思ってしまった。

 

『っと言うか所長の娘はまだ中学生じゃないか。これは、思ったよりも大事かもしれないぞラブラバ』

 

『すぐに情報を収集して動いたほうが良いかもしれないわよね』

 

 知らなかったとは言え、自分たちはトンデモナイ勘違いをしていたものだとあの日のやり取りを思い出して苦笑してしまう二人。

 

 確かに何も知らない人間が見ればそう考えてしまうだろうし、実際にジェントルとラブラバも勘違いしたまま行動を起こしてしまった。

 

 用意周到に情報を集め、証拠をラブラバのハッキングで抜き、下調べも済ませ、後は計画を遂行するという段階にまで進め、、そうして依頼人と偽って事務所に乗り込んで……そこまで想起してジェントルが紅茶を一口飲んでからポツリと呟いた。

 

「今にして思えば、あまりに順調に行き過ぎていた。彼らも素人ではないというのに」

 

「泳がされたのよね。しかも私達が乗り込んでくるのを待ってたし」

 

 意気揚々と出向いたジェントルを出迎えたのはここの所長、レイミィ・バートリーだった。今は所員が全員、出払っているからと彼女自身が応接室に案内してから互いに座り、始めの一言目で自分が誘い込まれたと察することになった。

 

『こんにちは、ジェントル、いえ、飛田弾柔郎と呼んだほうが良いかしら?』

 

『っ!?』

 

『私が貴方達を知らないとでも? 貴方が上げる動画は見かける度に視聴してるわ、良い暇つぶしにはなるから』

 

 その言葉にジェントルは拳を強く握った。こうもあからさまに馬鹿にされているという感じの声に相手が少女とは言え何も感じるなという方が無理だろう、そしてそれは別の場所にいるラブラバも同じでありなけなしの資金で調達した通信機越しに彼女の怒りが籠もった歯軋りが届いた。

 

 だがここで感情的になれば向こうのペースになるだけだとジェントルは感情を落ち着け、彼女を見て口を開く。

 

『君たち便利屋の今日までの悪行の証拠を我々は掴んでいる。この意味が君にも分かると思うがね?』

 

『えぇ知ってるわ、ラブラバっていう貴方の彼女さんがここにハッキング仕掛けて色々すっぱ抜いてたんでしょ?』

 

 なぜ知っている。ジェントルは背中に嫌な冷たさを感じ、額には冷や汗を溢れさせながら彼女を見てしまう。さっきまでは少女という認識だったはずなのに今ではもっと強大な何かにしか見えない。

 

 ここに来て自分たちは踏み入れてはいけない場所に踏み込んでしまったのだと悟り、状況を打破するために思考を回そうとするのだが、何かが浮かぶよりも前に応接室の扉が開き現れたのは副所長と所員二人、そして……

 

『ごめんなさい、ジェントル』

 

『ラブラバ!? 貴様ら!』

 

 人質としか見えない形で連れてこられたラブラバの姿にジェントルが激昂し動こうとするが、その体は急に固まったかのように動けなくなり床に倒れ伏すことになる。

 

 何が起きたのかすら把握できず、ラブラバの自分の名を呼ぶ声に返事すら出来ずにいればレイミィが覗き込んで

 

『さて、貴方に2つの選択肢を与えてあげる。このまま二人仲良く警察に突き出されるか、私達便利屋に力を貸すか、この二択よ』

 

『ふざけないで! そんなの実質一つの脅しじゃない!!』

 

『脅しなんて、人聞きが悪いわね。本来であれば問答無用で塀の中に放り込まれるはずの貴方達に道を示してるだけじゃないの』

 

 クスクスと笑いながら告げられた言葉にジェントルもラブラバも寒気しか感じなかった。心からこの少女はそう思っているし、だとすれば副所長の男に脅されてというのも間違っていたのだと。

 

 この少女は一から十までここまでやり遂げ、今こうして活動している。何故、思わず聞いてしまったが少女は嫌な顔ひとつせずに答えてくれる。

 

『ヒーローか(ヴィラン)か、その2つしか無いから貴方のような存在が生まれる。だから、私達が楔を打ち込んで社会を変えるつもりだからよ』

 

『……』

 

 目の前の少女は自分の過去すら知っているのかと遂に言葉を失った。最早、ここから逆転することも何も出来ない、あるとすれば彼女が提示した2つの選択肢に答えるだけだろう。

 

 考え、考えて、ジェントルはゆっくりと口を開いた。彼女は悪くない、私だけを警察に突き出し、開放してくれと。

 

『へぇ、そっちを選ぶんだ』

 

『ジェントル……? 何言ってるのよ、駄目よそんなの!!』

 

『彼女は、ただ私に拐かされた世間知らずの女性でしかないんだ』

 

『悪いが、こちらも調査は済ませている。それを通すほど俺等は甘くないぞ』

 

 副所長の言葉にジェントルは反論する。何から何まで自分が彼女を騙し利用していただけだと、意見を曲げるつもりはないという覚悟を決めた顔を見て、副所長は流れが予想と違うぞ、どうするんだとレイミィに視線を送り、送られた彼女はふむと考えてから。

 

『そうね、まさか貴方が此処まで覚悟を決めれる人だとは思わなかったわ。人を見る目には自信があったけど、ふぅ、言い方を変えましょう』

 

 私は初めから貴方達を引き込むつもりで泳がしてたのよ。場の空気が一気に死んだのを二人は感じ取れた、何を言ったこの少女はといつの間にか動くようになっていた身体で視線を向ければ、初めからこうするべきだったかしらと呟く少女の姿。

 

『ま、待って頂戴。どういうことなの』

 

『どうもなにも、貴方達のことは知ってるって言ったじゃないの、ラブラバのハッキング能力もそうだし、ジェントルの鍛えれば化ける〝個性〟、絶対に便利屋に欲しいなって思ってたのよ』

 

『それはつまりなんだ、我々がここまで来ることを待っていた、と?』

 

『えぇ、なんかコソコソと動き出したからちょうどいいなって』

 

 脅威になんて初めから見ていなかったと探らずとも分かる言葉と態度にジェントルとラブラバは格の違いに近いなにかを感じ取ってしまった。

 

 いや、それ以上にもしかして彼女を脅威と思うのも間違いなんじゃなかろうかとすら思い始めるし、スカウトしたいなら初めからすれば良かったのではとすら思う。

 

『聞くけど、なんで便利屋にってことなら話に来なかったのよ』

 

『何でって、流石に貴方達の家まではまだ調べてなかったのよ。知らないのに行けるわけ無いじゃない』

 

 ド正論ではあった。が、それはそれとして、だったら自分たちが来た時点でその話をすればいいのに、なんでこんな脅しまがいの形にしたのかという疑問が残るが、それも彼女はあっさりと答えて、ラブラバは激怒することになる。

 

『うーん、まぁ面白そうだったから? 今まで便利屋にそうやって乗り込んでくるやつ居なかったし』

 

『は?』

 

 ジェントルは後に語る、あれほど激怒している彼女を見るのはあれが最初で最後だったと。そこからは話がスカウトという形になるがラブラバがそれを断固拒否、外部協力者としてなら構わないと言えば

 

『ん、じゃあそれで行きましょうか。プログラマーとして活動できる方が良いでしょ? 公安に話して事務所用意してあげるから』

 

『簡単に言ってるけど出来るのそれ』

 

『出来なきゃ言わないっての。あとジェントルの方よね、何かあるかしら?』

 

 話を振られ、考える。自分たちが今日までこの活動をしていたのは『どのような手段でも名を歴史に残すため』、レイミィもそれを知ってるからこそこのままだと目的達成出来ないけどという感じに聞いたのだろう。

 

 ジェントルもそれは理解していた。だが妙案が浮かぶでもなく、悩むことになってしまったのを見てレイミィはポンッと何かを閃いたと手を叩いてから二人に提案し、結果だけで言えばラブラバもジェントルもある意味で改めて有名になった。

 

「まさか課長の〝個性〟で私と君を増やし、偽物の【ジェントル】と【ラブラバ】として警察に突き出し、私達を本物で本来はこういった人間だと便利屋が宣伝するとはね」

 

「確かにその御蔭で私達は世間からも認められてと言うか、(ヴィラン)によって悪評をばら撒かれた被害者ってことになったけど……」

 

 お陰で自分たちはその後に物凄く苦労することになったのよというラブラバの言葉にはジェントルも当時を思い出し曖昧な笑みを浮かべるしか出来なかった。

 

 あれは過酷だったと。ラブラバの方はまだいい、プログラマーとして自分がはじめから持っていた技術で実績を積んでいけば良いのだから、だがジェントルはそうじゃなかった。

 

 学生時代でも四度も仮免試験に落ちるほどだった自分が実力を認めてもらうためにそれ相応に鍛えないといけない、なのでと行われた特訓はパワーレベリングとも言えるほどに過密で過酷だった。

 

 だが成果はきちんと出ており、扱いづらかった己の〝個性〟【弾性】はある程度なら出したり消したりも可能になり、身体能力なども全体的に向上。

 

 ついでとばかりに交渉術などもレイミィが自分の独学ではあるがと教えた結果、今ではGeLinc.の所長を守る盾にして書類業務や相手方との交渉を一手に担う者として知られるようになっている。

 

「何だかんだ、上手く回って今があると思えば、彼女たちには頭が上がらないものだ」

 

「そうだけど、あの娘から来る仕事が毎回毎回、出来なくはない無茶振りなのはどうかと思うのよね」

 

 無論、何の見返りがレイミィから無いかと言えばそうじゃない、ここと便利屋は協力体制ということもあり向こうが対処できない依頼はここに回されるし、時には所長であるレイミィから直接来るものだった存在する。

 

 問題はそれにあり、ここまでやってあげたんだから良いでしょと言わんばかりにレイミィから直接来る依頼はどれもこれもラブラバの技術を持ってしても危険だと言わざるを得ないものばかり。

 

 この出来なくはないというのが厄介であり、恩義があるから断れないということでラブラバはその都度、半ギレになりながら依頼をこなしているのをジェントルも知っている。

 

「とは言ってもここ二ヶ月は平和じゃないか。彼女も雄英で楽しんでいるようだし」

 

「二ヶ月来てないっていうのが怖いけどね。けど、あの娘が学生してるのは安心する……」

 

 なんて和みそうなタイミングで電話が鳴り響き、ラブラバの顔から表情が消えた。いえ、もしかしたら違うかもしれない、そう思いながら受話器を取って

 

「こちらGeLinc.のラブラバです」

 

《あ、久し振りね、私よ。二ヶ月ぶりくらいかしらラブラバ、少し話……」

 

 ガチャン! 勢いしか無いガチャ切りにジェントルはマズいのではと言う表情でラブラバを見てから

 

「ま、〝愛美〟くん、その今の電話は間違いなくバートリー所長からでは?」

 

「最近の詐欺はここまで精密に声真似をしてくるのね、驚いて切っちゃったわ」

 

 間違いなく詐欺じゃないのではなかろうかと言うよりも前に彼のスマホが着信を知らせ、表示される相手は【バートリー所長】つまりそういうことであり、ジェントルは冷や汗を流しながら即座に通話状態にして

 

「や、やぁ、何か用かな?」

 

《ジェントル、そこに彼女居るでしょ、代わりなさい》

 

「あ、あぁすぐに変わろう、バートリー所長」

 

 すっと差し出されたスマホを見てラブラバは溜息を一つ吐き出してから受け取れば、先ず相手からの第一声は

 

《随分な態度じゃないの、って言いたいけど、手でも滑ったのよね》

 

「詐欺だと思ったのよ。猫被りしてる貴女の声とかあり得ないと思っただけよ」

 

《ふぅん、そう、じゃあそういうことにしてあげるけど、私そんなに貴女に嫌われるようなことしたかしら?》

 

 したかしてないかで言えば、あのファーストコンタクトがそうじゃないかなとジェントルは思いながら、その言葉を紅茶で流し込む。

 

 言うとすればレイミィは自分が嫌われていると思い込んでいるだけであり、ラブラバは無茶ぶりとファーストコンタクトでジェントルを馬鹿にしたからちょっとだけ思うところがあるだけで、そこまで嫌っては居ないということだろう。




待って、ここだけで一話使うつもり無かったんだけど!!!???

言っちゃえば、この二人組好きなんだよねが暴走した結果がこの長さです、はい。因みにジェントルとラブラバだけはほぼもう原作の最終回の状態ですね、つまり勝ち組です。

便利屋メモ
二人と交渉してる時、仁と圧紘は所長生き生きしてるなぁとか思ってた。
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