彼女と僕しか知らない一日 ~妙に距離感の近い元気系ガイノイドと行く小旅行~ 作:さばてん@コピーライター
所変わって、宿屋の寝室。
荷物を置いて腰を下ろすと、彼女が背中をつついてくる
「宿代は経費で落ちないから、キミの名前で安く取っちゃった。」
なんと、彼女なりに事業者登録までして、帳簿をつけているらしい。もう人間いらないんじゃないかな。
「待ってくれ、僕の支払いってこと……?」
「………頑張って!」
介護ロボットのフリをしてタダ乗りした彼女を見ながら、来月の家計について考えていると
彼女が袖を引いてくる。
「まぁまぁ、悩んでないでさ。お風呂にしよっか」
そう言うと、彼女は下着のホックを外し始めた。
「うわっ!急に脱ぐな!」
「だって…脱衣室、ここしかないから…」
指差した先には湯気漂う入口と暖簾
「家族風呂付きにしたんだ。介護ロボットが温泉入ってたら、怪しいでしょ?」
その宿泊費は高かったと思うのだが。
いくら相手が人間でない──法律上は人間だが──とはいえ、外見上は人間を…しかも同じ年頃の女の子を完璧に再現した存在と一緒に温泉へ入るのは、かなり躊躇われた。
しかし、彼女が許すはずもない
部屋でもじもじしていると、あっという間に捕まえられ、裸にひん剥かれる。
「先に入ってるね」
と手を振る彼女を見送ってから十数分後、諦めて僕もついていくことにした。
「あ、やっと来た。ほら、おいで」
しっとりと濡れたタオルを纏う彼女は、こうして見ても、もう人間にしか見えない…
見蕩れていると、彼女が洗い場の椅子をぽんぽんと叩く。
お互い、走ったり寝そべったりして汗に泥にまみれているだろうし
しっかり洗うことには反対しないが…
「なんで僕の後ろにいるのかな?」
「それはもちろん…洗いっこしたいから!」
僕の後ろに腰掛けた彼女が、シャンプー塗れの手でわしりと頭を掴む
嫌じゃなかった……?と聞きながらも、その手は止める素振りを見せない。
「うぅっ…君も結構、洗うの上手いじゃん…」
どこでそんな技を覚えてきたのか、心配ではあるが…
頭皮をほぐし、こね回し
頭を流した彼女は、笑顔で石鹸を手に取る。
「じゃあ、次はこっち…ちょっとくすぐったいよ?」
「いいよ、お願いして…ぁ…っ…!」
ぬめりを帯びた細い指がにゅるりと蠢いて、僕の首に触れる。
これは、ものすごく……くすぐったい!
早く終わらせて貰えないと、僕が耐えられないかもしれない…
───────────────────────
頭から爪先まで、散々洗い倒された僕はその後
何もできずに露天風呂までエスコートされた。
彼女は後で来るだろう。後ろから鼻歌交じりの水音が響いてくる
しばらくすると、ぽちゃり
隣で重い水音が聞こえた。
彼女もシャワーを済ませて、こちらへ入ってきたようだ。
「お待たせ」
「それほどでも」
岩を挟んで、少し離れた隣同士
静かな水音と湯気に身を委ねる。
隣を覗き込むと、彼女は瞳を閉じて
心地よさそうに揺れている。
濡れたタオルを頭に巻いて、悠々と湯に浸かる彼女は
もう人間にしか見えない。
ふと、自分が本当に
女の子と混浴しているような錯覚に陥る
見蕩れていると、こちらに微笑む2つの青色と目が合った。
「こら、逃げないで」
身を引こうとすると、そっと肩を捕まえられる。
「わかったってば、力は加減して…」
「素直なのはいいことだね。憧れてたんだ、こういうの」
少女のような細い腕と、少女とは思えない腕力で抱き寄せられる。
諦めて身体を寄せながら、ふと彼女へ目をやると
目線を泳がせながら、頬を赤く上気させていた。
給気口から、しゅっと湯気が上がる
器用なものだ、どこで覚えてきたのやら。