加州清光は今度は自分から、審神者に二人だけの話し合いを提案した。そして夜、審神者の寝室を訪ねた。
「俺は、三日月が何を隠しているのか、なぜ隠しているのかを知りたい。でも、三日月は何を訊いてもたぶん、こっちを煙に巻くだけだと思う」
加州清光がそう言うと審神者は深くうなずいた。
「わかる」
加州清光と審神者は顔を見合わせて少し笑った。
加州清光はほっとした。やっと主と共感できた気がする。
審神者が淹れてくれた茶を飲みながら、加州清光は自分の考えを話した。
「次の大侵寇は、政府が援軍を要請してくるんだよね。だったら、そのとき政府に潜入できないかな。円環のことをできるだけ調べて戻ってくる」
審神者はひどく驚いて口をあんぐり開けた。
「俺は円環を終わらせたい。だから、知りたいんだよね。何がどうなってるのかを」
加州清光がそう言うと、審神者はしばらく口をぱくぱくさせていた。
「……潜入? 一体どうやって?」
「クダ屋から入電があったときの話だと、本部への跳躍経路へ浸食した敵が、修復に時間がかかるくらいのダメージを政府に加えた。ってことは、本部への跳躍経路がある。次の大侵寇での防衛ラインはその跳躍経路を守るもので、そのための援軍要請になるんじゃないかな」
審神者は「うん……まぁ、たしかに……」と言いながら首をひねっている。
加州清光は話を続けた。
「きっとまた防衛ラインが三重に設置されると思う。その一番内側に政府はあるはずだ。防人作戦のときも一番内側に各本丸のサーバーが守られてた。最終防衛ラインなら、政府に一番近づける。どさくさにまぎれて入り込めるかも」
「どさくさって……どうやって?」
「それは、行ってみないと分からない」
「えーっ! そんな無茶な……」
審神者はすっとんきょうな声を上げた。
「政府を攻撃する敵に紛れて入り込むとか、どうかな。寝返ったように見せかけてさ」
と加州清光が提案すると、審神者はあわてた。
「それはダメだよ! 危険すぎる。他の本丸から標的にされる!」
「じゃあ、やっぱり敵が政府を攻撃するどさくさに紛れるしかない」
審神者は頭を抱えてしまった。
「止めて……折れちゃうでしょう、そんなの。仮に政府の本部に侵入できたって、何が起きるか……」
「円環を抜けられなかったら、どうせ本丸も終わりでしょ。俺は、何も知らないまま、何もできないまま折れたくない」
審神者は頭を抱えたまま茫然としている。
その審神者の両手に、加州清光は自分の手をそっと重ねた。
「……主、力を貸して。一緒に考えてほしいんだ。これから何が起きるか、俺たちはどうずればいいか、それには何が必要か」
審神者はうろたえたまま加州清光の目を見た。
加州清光は審神者の目を見つめながらうなずいた。