TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
初巡礼です
1-1 『転生の説明』と『転生した身体の確認』の間に挟まる話
「つまり、俺にとって最も思い入れの強いゲームのアバターに異世界転生するってことか!」(クソデカボイス)
「ひぅっ!? は、はぃぃ……その通りですぅぅ……ごめんなさいぃぃぃ…………!」
「あ、いや怒ってるわけじゃないですよ。だから衝立の裏に引きこもらないで出てきてください天使様」
俺がそう声をかけると、おずおずといった感じで顔だけをのぞかせる銀髪美少女。うん、かわいい。
さて、“俺” こと転生候補者が謎の衝立がある白一色の空間――
その転生の間の主である天使様から説明を受けて己の死を知り、転生先の身体のことを理解したのが現在の状況だ。『オタ……サブカル好きの方は理解が早くて助かりますぅ』とは天使様談。別にオタクでもキモオタでも構わんねんで?
にしても『最も思い入れの強いゲームのアバター』なぁ? いったいどのゲームだろうか。
単純にプレイ時間なら某狩猟ゲームの携帯機版になるのかね。シリーズ累計10000時間を超えるが、その携帯機版だけで3000時間オーバーだったハズだからなぁ。
他にも、ハマったという意味なら某MMO。課金額という意味なら某アプリゲーなど、言葉の捉え様によって変わってくる。うん、わからん!
なんなら天使様に聞いてもいいが……やめておこう。その方が楽しみも増すうえ、どのゲームであっても問題ないからな。どれにせよフツメンのハズだし、強さもその世界の上位勢だろうからね。ヨシ!(現場猫)*1
「? おかしなポーズを取っているところ申し訳ありませんが、貴方は気にならないのですか?」
「気になる? 転生先の話でしょうか?」
「いえ、そちらではなく……亡くなった時のことですぅ」
あー、そっちか。言われてみれば死因とか覚えてないんだよね。なんでだろ?
「記憶が魂に根付くまでには相応の時間がかかりますし、脳が失われているからですぅ。なので、今の貴方は記憶が曖昧なハズですぅ」
なるほど、そりゃそうか。今の俺は脳という記憶媒体を失ってるんだ。さっきから “ハズ” とか “だろう” とかの推定が多く、なんだかぽわぽわしてるのも、さもありなんってな。
ん~、生前のことねぇ。そりゃ全く気にならないってわけではないんだが、わざわざ聞くほどでもないってのが正直なところか。
数年前には親を見送ってバカ姉を除けば完全独り身だったハズだし、別に心残りもない……ん? いや、なんでか童貞のまま人生を終えたのは強く覚えてるんだよなぁ。そんなに心残りだったのか俺(号泣)
「えぇ……。ま、まぁ、来世に前向きということにしておきますぅ。では、残る説明は注意事項だけとなりますぅ」
「おっと、来ましたね。ふふ、契約書の注意事項にはちょっと身構えちゃいますよ俺は……!」
「ひぅぅ、急に劇画調で凄まないでくださいぃぃ……。いったい生前に何があったのですか? ともかく、集中してくださるうちに話しちゃいますぅ」
俺の画風が変わったせいでまた衝立の裏に引っ込んでしまった天使様の注意事項は以下の2つ。
①『転生後、生前の記憶の一部に制限がかかること』
これは先に話題に挙がった “記憶が曖昧な理由” とは別口になる。
俺の記憶自体は生前の身体から転生先の身体に移行できているらしい。ただし、それは本当に移しただけであって整理とかは一切できていない。なので、記憶を引き出す際にリミッターがかかってしまう、とのこと。
引っ越し直後をイメージするとわかりやすいかもな。とりあえず部屋内に荷物を全部突っ込んだので休憩。テレビでも見ようとリモコンを……どのダンボールだよオイィ!? って感じか。
では、この記憶制限はどうすれば解消されるのか? その答えは――時間経過、だ。
思わず「えぇ……」と困惑の声が漏れちまったが、理由を聞けば納得した。記憶の整理ってのは主に寝てる時に行われるもんだ。それは異世界人だろうと同じこと。果報は寝て待て、ってことだな!
ただ、救済措置はあるようだ。
人間の記憶ってのは外的刺激をきっかけに思い出すことも多い。他人の言動だったり景色だったりを “鍵” としてな。
この機能はちゃんと働いているので、どうしても思い出したいことがあったなら様々な角度から “鍵” となり得る情報を集めればいいのだとさ。
②『転生先の身体を異世界の環境に合わせて調整してあること』
身体を調整、そう聞くとビビっちまうかもしれないが、なんてことはない。言語や抗体、種族や能力などを現地に合わせて俺が暮らしやすいようにしてくれてある、ってだけの話だ。
これは神調整ならぬ天使調整、ありがとう天使様。というのも、俺には生前からの “ライフワーク” があってな。それを行うには人々に違和感なく溶け込んでいる必要があるのだ。
それを考えると悪目立ちしないのは本当にありがたい。オンリーワンの種族とか能力とかはお呼びじゃなく、そこそこで十分なのですよ。
……大丈夫だよね? なんか今の思考、スローライフ希望()の転生者みたいになってない? これは前振りじゃなくて、マジで “俺TUEEE” とか “やれやれ” とかは望んでないッスよ?
「う~ん、流石に没個性的とまでは調整できませんでした。でも、転生先の異世界で再現不可な要素は無いですぅ」
「 “俺だけ
腕に自信のある旅人Aくらいが理想ではあるが、ここまでしてもらって贅沢は言えん。
転生させてもらえるだけでも『感謝っ……! 圧倒的感謝っ……!』なのだから。
「他に質問などは────無いようですね。では、いってらっしゃいませ。良き旅路を! ですぅ!」
「はい! どうもありがとうございました天使様! いってまいります!」
天使様との別れの挨拶。それが終わると同時、ただでさえ白一色であった世界が光に包まれてゆく。
しっかしあの天使様、結局衝立から出てきてくれなかったな。顔の半分と片翼くらいしか見えなかったけど、めっちゃかわいかった。その全身を、是非とも拝見したかったぜ。
なーんてことを薄れゆく意識の中で考えていると。
「は、はわわ……わ、わかりました。貴方が再びここにたどり着いた時にお見せいたしますぅ」
「心読まないでっ!? でも、楽しみにしてますぅぅぅ────」
マジか。来世への楽しみだけじゃなく、その後にまで期待を抱かせてくれるとか天使かよ天使だったわ!
こうして俺は天使様に見送られ、意気揚々と異世界へ旅立つのだった。
────あたたかい
再び意識を覚醒させた俺が抱いた率直な感想がそれだ。
まぶたを閉じていてもわかる暖かな日差し。背中に感じる柔らかな草と土の感触。お日様と土、木々や水の匂いに覚える、包まれるような安心感。
起き上がり、思わず手足を突っ張り尻を上げる。そんな、まるで猫の伸びのようなポーズを自然と取ってあくびを1つ。う~ん、気持ちいいぜ!
さて、どうやら転生には成功したようだ。となると、まず行うべきは現状確認だろう。
ようやく目が日差しに慣れてきたようなので恐る恐る目を開ける。すると、そこに広がっていたのは予想通りの森の…………ん?
「────」
いや、視界のほぼ全域が真っ黒なんですけどォ!? 具体的に言えば髪の毛なんですけどォォ!?
記念すべき『こんにちは異世界!』の初光景が髪の毛でほとんど塗りつぶされてるってさぁ。ちょっと前髪の調整ミスってんよ天使様ェ。
せっかくの良い天気なのにもったいない。そう内心でボヤキつつ邪魔な前髪をかき上げようとするが……するが……? て、手が動かねぇ。なんで??
試しに他のことをしようとすればちゃんと動くのに、何故か前髪に触れようとするとものすごい抵抗感があるんだよ。マジなんなんコレェ!?
「────」
数分間の葛藤の末に諦め、長過ぎる前髪をしぶしぶ受け入れた俺は現状確認を再開する。
なんでかは知らんが、
さて、どうやら匂いと音から察するに近くに水場があるようなんだが……なんかやたら目線低くね?
転生の間で挙げたアバター候補たちは全員身長が高めだったハズなのだけど。というか、前世の身長よりも遥かに低いんじゃねコレ。
「──────」
前髪のことといい嗅覚と聴覚が異様に鋭敏なことといい、何かがおかしい。どのアバターでもいいや、と軽く考えていた俺はここでようやく目線を下へ向け、己の身体を確認する。
まずは両手…………ちっっっちゃ!? ナニコレ小学生の手かよ!? 大剣なんて当然持てないし、細剣どころか果物ナイフくらいしか握れないんじゃねーの?
次に胸部は……おおぅ、見事なまでのぺったんこ。または絶壁。あれぇ? 発達した大胸筋さんはどこに行ってしまったの?
さらに下にはスカートスカートォォオオ!?!?!?
は? いや、は?? いや待て待ておちけつ素数を数える必要はないぞKOOLになれ!
「──────」
えっと、これはだな……その…………そう! これは民族衣装なんだよ! 男性用スカートみたいなのあるじゃん!
ふーっふーっ、お、驚かせやがって。たとえ上着がどう見てもパーカーだったとしても、そもそも民族衣装のアバターに心当たりが無くても、そうとわかればど、動揺はないさ。
現にホラ、股間に意識を向ければ必ず存在を主張してくれるブツが……息子ががが…………んんんんん?????
チ◯◯の霊圧が……消えた……?
「────────ッ」
大慌てで股に手を伸ばすも……無い。無い、ないないないナイナイナイ! ◯ンコが無いいいい゙い゙い゙!?
俺、女の子になってるうううぅぅぅ!?!?
「──────」
あと、さっきからずっと声が出ねぇ……。