TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
ここは村へと続く森の中。時刻は日が暮れてからしばしの時が経過した頃。
昨日は雲がほとんど無い満天の星空にまん丸お月様、恋人と語らうにはもってこいの夜の恵みをもたらしてくれていた空。
だが、今夜は生憎の雨。星明かりすら届かないこの森で、普段ならパラパラという雨音のみが響いていたであろうこの森で。
――ああ、なんということだろうか
今宵この時この場所で、何故か消えない松明の炎に照らされ、
森の自然な緑を侵食するかのように広がり続ける、不快で不気味な緑の濁流。
その正体の名を、
数は50を超え、60、70に届くであろうか。
その大半は下位種の雑魚ゴブリンだが、中にはゴブリン闘士などの中位種らしき個体もチラホラと交じっているようだ。
だが、それら全てを合わせても先頭を歩む者の存在感にはかなわないだろう。
身の丈は2メートルを優に超え、その身に纏う灰色がかった緑色の筋肉の鎧は闘士のそれすら霞むほど。
そんなゴブリンとは名ばかりのリアルヘラクレスが威風堂々と、その威圧感を隠すこともなく進撃しているのだ。
……これは俺の主観だが、恐らくヤツはすこぶる機嫌が悪い。なんか目が血走ってるし、他のゴブリンからすっげー遠巻きにされてるしな。
まあ、それもさもありなん。アイツからすれば今の状況はめっちゃ不本意、業腹の極みだろうからなぁ。
本来であれば昨日以前には人間たちの集落で “遊ぶ” ことができていたのだ。
なのに、ゴブリン側のとある事情で襲撃が伸びてしまった。しかも、伸びただけならまだしも人間に存在がバレて慌てて襲撃することになるという体たらく。
オマケに完全に日も暮れてしまっているうえ、雨まで降っている状況に。
多少は夜目がきくアイツらだが、獲物が苦しむ様を堪能するのなら日が出ている時間帯がベスト。あと、雨は普通に嫌いらしいからな。実に不満なんだろうさ。
ま、ヤツらの事情なんてどうでもいいか。今の俺たちにとって重要なのは、おおむねレオーネ嬢の予想通りに事が運んでいるという事実だけだ。
そのまま、我らが知将の読み通りに進むこと数分。先頭をのっしのっしと歩いていたデカブツの足が止まった。
どうしたのかと俺も “観察対象” から視線を外し、デカブツが見つめている先を見る。
そこにあったのは、ちょいと奇妙な光景。松明の淡い光に照らされ、浮かび上がる2つの人影。
1つはゴブリン闘士。数時間前に失踪したハズの仲間。そいつが何故か微動だにせず傘(でっかい編み笠みたいなの)を持ち、自身が濡れるのも構わずに傍らの人物が雨に濡れるのを防いでいる。ん~、執事の鑑だね。
そしてもう1つ。差し出された傘の下、のんきに椅子に腰掛けている褐色肌の女性が1人。そんな彼女がレオーネ嬢から渡されたほかほか蒸かし芋を
さて、そんな光景を認めたゴブリンズ。その余りに不自然さに中位種以上の動きが鈍るなか、状況を読めない愚か者どもが前に出る。
「あら~? ごきげんよう、みなみなさま~。この場所はとっても危険ですので~、ただいま通行止めとなっております~」
水をくぴくぴと飲み干し、「ぷはっ」と唇をなめる仕草が妙に色っぽいクーニュさんが通行止めを告げた。
彼女が陣取っている場所は両サイドが急斜面になっていてな。村へと続く道の中で最もゴブリンどもの進軍をコントロールしやすい場所となっているのだ。
だがまあ、当たり前だが彼女の言葉は届かない。何を言っているかはわからないだろうし、わかろうとも思ってないだろうからな。
前に出てきたヤツらの頭にあるのは1つの事実のみ。それを訳すとこんな感じだろうか。
――前菜が自ら喰われにやってきたぜ! ゲヒャヒャヒャ!
ゴブリンたちがクーニュさんを嘲笑う。あの雌を嬲るのは自分だと騒ぎだす。う~ん、ホント下位のゴブリンどもって下半身の一部で思考してんのな。
で、だ。絶賛増長中とはいえ、不可解な状況に追い立てられて襲撃に踏み切らざるを得なかったゴブリンズ。そんな彼らが前方の謎光景を見せつけられてなお、
それがゴブリンの生態だろ。そう言われちまったらそれまでなんだが、一応他にも理由はある。下位ゴブ視点で見てみよう。
まずは人間の側に立つ
次、大本命おっぱい。その持ち主はぽわぽわした人間の雌。
剣などの明確な脅威は見当たらず、手元にあるのは木製と思しき棒が2本のみ。身に纏うのも動きやすそうではあるものの、ただのワンピース(着替えた)だけ。
そして何よりも目立つのが、ワンピ―スの裾にスリットを入れたことで露わになった、両足に刻まれた大きく無惨な傷跡らしきもの。
自分たち敵を前にしても木の
このありさまなら、
――そう結論づけてしまったんだろうな。
その考えが、まんま誘導されたものだとは気がつきもせずに。
……む、そんな考察をしている間に場が動いたか。
ヒャア我慢できねぇ、とばかりに気の早い個体が先頭のデカブツの横を通り過ぎて飛び出してゆく。
デカブツは一瞬止めようとしたみたいだが、考え直したのかすぐに静観の構えを取り直していた。
「あらあらもうもう~。ダメだって言ってますのに~。……うふふ、今宵のお相手はよりどりみどりですね~」
クーニュさんが軽く右手を上げ、ひらひらと適当な方向に手を振っている。これは俺に向けての合図で、闘士を
指示通りに闘士を遠ざけると、ゴブリンたちはさらなる勢いで突っ込んでゆく。オマケに、なけなしの理性で闘士を警戒し様子見をしていた連中までもが追随を始めてしまう。
状況は限りなく詰みに近い。憐れ、クーニュさんは慰み者となり、百合の花は散りゆく定めであったのか――
「ふふふ…………えいっ」
「ゴッ!? ブギャアアア♂アアア!?!?」
「ギョベェ!? 「んもう、寸止めはだ~め」ゲピュッ――」
……………………………………………………ヒェッ
「ちょっとクロコ、なんでアナタまで股間を押さえてるのよ。はしたないわねぇ」
ラーナたんの隣に腰を下ろした俺への容赦ないツッコミ。いやいや、アレはタマヒュン不可避だって。まだ失ってから日が浅いんですよコッチは。
っていうか、なんで初撃にビリヤード(意味深)する必要が……え、女には男に日頃からいろいろ溜まってるモノがあるのよ、って? …………スゥッー、アッハイ。
さて、ゴブリンどもの大半が俺と同じ体勢で行動不能に陥っているうちに、今起きたことをまとめておこう。
まず、最も性欲に忠実だった1匹のゴブリンがクーニュさんに飛びかかった瞬間、太ももの上に置いていた杖でゴブリンのゴブリン(♂)を突いたのだ。恐らくだが、その際に響いた “ブチュッ” っていう生々しい音を……俺は一生忘れられないような気がする。
で、その玉突き事故(故意)を眼前で見せつけられたヤツらの足が止まるわけよ。
そこをクーニュさんがドーン。タマタマ射程内にいたゴブリンの頭に向けて杖を振り下ろし、グチャッと……ん? 子鬼の頭…… “
――ハッ!? い、一瞬意識が飛んでたぜ。
いやぁ、それにしてもアレだ。いろんな意味でスゲェな、クーニュさん。
見ての通りに。それと、ざこ兄貴が口を滑らせていた通りに彼女は――
実際、上半身のバネだけで頭蓋を割る威力の一撃を正確無比に繰り出しているわけで。あの濃褐色の杖だって、元々は現役時代に棍として使ってた物らしいからな。どうりで変形もヒビ割れもしてないわけだよ。
で、これらの流れをニコニコ笑顔で。しかも、語尾に “
おっと、どうやら再び場面が動きそうだな。
無策で飛び出した2匹が一瞬で無力化されたからか、少しは慎重になった下位種どもがクーニュさんの前面を包囲するように広がっていく。それでも “襲う” っていう前提がこれっぽっちも崩れてないのは流石と言うべきかアホと言うべきか。
ただまあ、なるほど。今度は広範囲から一斉に飛びかかることで数の利を最大限に活かそうってわけだ。
「うふふふ、あっはははは~」
だが、その程度の浅知恵が高位冒険者に通じるハズもなく。
一斉に襲いかかってくるゴブリンに対し、時には蜂のように鋭い突きで崖下に落とし。時には棍を風車のように回すことで牽制し。またある時は象の如き一撃で容赦なく頭蓋を叩き割っていく。
たった2本の棍で行われているとはとても信じられない暴力の嵐。そして、その嵐が止んだ頃には……クーニュさんの周囲と崖下に、見るも無惨な光景が広がっていたのだった。
――残り、およそ7割
「…………」
20匹近くの同胞が、ほんの数十秒で無力化された。しかも、息を乱すこともなく。
そんな悪夢のような現実にゴブリンどもの大半が怯むなか、デカブツはただ無言でクーニュさんを見つめ――
「……ゴブ」
人間の言葉に直すと『ふむ』とか『ほう』とか、そんな感じだろうか。
ヤツはわずかに口角を上げると、組んでいた丸太のような腕で背負っていた得物を解き放つ。
それは、“巨大な岩から持ち手だけ削り出しました” 。そうとしか表現できないような無骨で
デザイン? バランス? そんなの知るか、要はデカくて重い物を振り回せば威力は出るんだよ。……そう考えていることがまるわかりの脳筋武器だ。
「ゴブルァ!」
ドゴオオオン
「……あらまぁ」
――だがしかし、その威力だけは本物。
恐怖を煽るため、己の威容を示すため。そんな目的のために振り下ろされたであろう一撃が地面を大きくえぐり、発生した衝撃波が近くにいたゴブリンを崖下に落としていく。あれ、キミどっちの味方?
難を逃れた連中のなんか言いたそうな視線をその背に受けながら、デカブツがクーニュさんの前に出る。
その横に並ぶ者はいない。ということは、これから始まるのは互いの最高戦力同士の一騎打ち。クーニュさんにとっては最初で最後、かつ最大のチャンスが訪れたことになる……のだが。
「う~ん…………もう無理ね~、お手上げです~。えへへ~」
はいかわいい~♡ えへへ~♡
「こ、こいつら……! これじゃ緊張してるアタシがバカみたいじゃない。えいっ、このっ」
いやぁ、今の状況からしたらラーナたんの反応の方が正しいんじゃないかなぁ、うん。
わかったから俺の尻尾をぺちぺちするのはやめようね。勝手にハートを形づくっちゃうのは仕様なんだわ。
そう、クーニュさんのお手上げポーズからもわかる通り……現状、彼女は完全に詰んでいる。威力もリーチも相手に負けているというのに、足が動かないから回避もままならない。同じ打撃武器でこの差は致命的な差となってしまう。
これぞまさしく、“\(^o^)/オワタ” 状態ってわけだ。
そして、どうやらその事実をデカブツも気づいてるっぽくてなぁ。
ヤツはゆうゆうとクーニュさんの間合いの少し外側まで近づくと、まるでゴルフのショット前スイングをするように右手で持った武器をこれ見よがしに素振りし始める。うわぁ、ヤな感じ~。
あのかち上げるような超アッパースイングを見るに、ヤツがやろうとしてるのはアレだ。“きたねえ花火” だわ。
ゴブリン側はその人体花火を以って今宵のパーティーの開幕を告げ、どこかで様子をうかがっているであろう人間側に絶望を与えてやる……とかなんとか考えてるんだろうな。
――そして、ついにその時が訪れる。
目の前を何度も通過する石塊を見ても、なおニコニコ微笑んでいるクーニュさんが気に入らないのだろう。デカブツはわずかに顔を歪めると1歩前に進み、彼女を完全に射程内に収めてその武器を振るう。
対し、クーニュさんは一連の行動を座ったまま眺めているだけ。もはや回避も逃亡も不可能だ。
暴走トラックの衝突に負けず劣らずの一撃が彼女に迫る。哀れ、クーニュさんは
直後――!
耳をつんざくような破砕音とともに、人間大の大きさのナニカがクルクルと宙を舞う。
辺り一面にドス黒く、生温かい液体が降り注ぐ。
周囲のゴブリン達が狂喜の声を上げる。
血を浴びろ! 死体を汚せ! 勝者を称えよ! ――そんなところだろうか。
だが、各々の趣味嗜好や性格に合わせた行動を取ろうとしたゴブリン達だったが…………ほぼ同時に違和感に気付いたのか、一斉に動きを止めた。
なぜ血がドス黒いのだ? 人間の血は黒みがかった赤のハズ。これではまるで、我らの血ではないか??
なぜ宙を舞い、たった今地面に落下したナニカの色が緑色なんだ? そのナニカにくっついている見覚えのある石塊はなんだ??
なぜデカブツは勝鬨を、宴の開幕を告げる雄叫びを上げないのだ? なぜ右肘から先が存在せず……そこから血が噴き出ているのだ??
そして――
そして、なぜ────
「うふフ」
どうして人間の雌が五体満足どころか、