TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
「グ!? グブギャアアアア゙ッ!?」
「あラあラ、もウゥ。こうなるから危険だと申しましたのにィ。うフ、腕と
糸目だった目を半分開き、隠されていた緋色の瞳を衆目に晒しているクーニュさん。その口は歪に、ただしとぉっっっても愉快そうにゆがめられている。
そして、うっとりとした表情で見つめるのは “この子” こと1本の長棍。2本の棍を己の魔力で接続して作った2メートル超えの長棍。
……いや、正確には棍の先端に顕現している、彼女の瞳と同じ緋色の大鎌のような刃を愛おしそうに見つめているのだ。
「ゴブ……ゴ、ゴブブゥ……!?」
「はぁン……その表情、最高だわァ。あぁ、再びこの足で。この緋色の魔法刃で。またこの
「ブゲエエエッ!?!?」
己の片腕を斬り飛ばした白黒の人間――デカブツの血が降り注ぎ、全身をくまなく黒に染められつつあるというのに、気にする素振りも見せないどころか恍惚な表情すら浮かべてみせる目の前のナニカ。
味方の俺たち3人ですらドン引きする光景(天使ちゃんはなんか羨ましそうなので除外)を見せつけられたデカブツが尻餅をつき、慌てて後ずさってゆく。また、他のゴブリンたちも呆然としているのか、動きが完全に止まってしまっている。
これは明らかな隙。我らが軍師が作りだした絶好のチャンス。おのれ孔明。
「うふフ、さすがレオーネちゃん。ならば、後は素敵なステキなダンスタイムを楽しみましょうか。それじゃあ、リードはお任せするわねェ。こ・ね・こ・ちゃん?」
そう言うと、俺たちの潜む方向へパチリとウィンクをかましてくる褐色巨乳お姉さん。
ほらぁ、キミの百合パートナーが隣でジト目で責めてくるじゃん! 俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!!
ああもう、こうなったら憂さ晴らしに暴れてやらあ! お望み通りにリードしてやんよ!
右手に着けた
「――ぱぺっと
「っくあア! 無遠慮に直接
言い方ァ!? ただ俺の魔力を譲渡しただけだろうが! 真の百合厨たるこの俺を、無責任ナマ◯メナカダ◯クソ野郎みたいに言うんじゃねぇっ!!
もはや俺を苦しめようとしているとしか思えない嬌声奇声をあげながら、クーニュさんが思い切り
その加速力は生半可なものではなく、とても衰えた両足の筋肉で出せるものではない。また、彼女の魔力により作られる緋色の刃はよりデカく、より凶悪に輝きを増しているではないか。
まあ、それでも本人曰く『全盛期ほどではないわ~』とのことだったが……うん、過剰戦力としか言いようがないわ。現に、俺たちがあれだけ苦労して倒したゴブリン闘士が一瞬で
「うフフゥ、踊り子さんへのオイタはァ、禁止されておりますわァ。アハッ」
「ゴブ!? ギャブブゲゲェッ!!」
「 “騙したな卑怯者” 、そんなところかしらァ? でも、ざ~んねん。私は騙してなんかいないわァ。私の足が動かなかったのも魔力切れで緋刃を出せなかったのも、ぜ~んぶ本当のこと。あの
「……クーねぇ」
クーニュさんとその相棒である双棍――名を “
それに応えたクーニュさんの顔がわずかに曇り、俺の左手を握るラーナたんの右手に力がこもる。
……まあね。確かに俺がいなければラーナたんは昼前にこの森で。クーニュさんは妹を探しに入った森のどこかで命運が尽きていたわけだからねぇ。
2人の義姉妹を救った魔法、魔人形操師の象徴にして主力となる能力は2つある。
ラーナたんを助けた時に使った、敵を操る “操作” の能力。そして今回、クーニュさんへと行使している味方の行動を “補助” する能力。この2つだ。
俺はこの魔人形操師の能力の詳細をキャラメイク時に知ったわけだが、その時にとある存在を思い浮かべた。
その存在こそが、クロコちゃんの元ネタの1つにして根幹――縁の下の力持ち “黒子” 。
日本の伝統芸能の補佐役や人形劇の演者を始め、サングラス芸能人がブラブラする番組の補佐からサムライの魂を賭けた決闘の審判役までこなせる黒衣のなんでも屋さん。
その役割は多岐に渡るものの、大別すれば2つに分けられるだろう。意思なき
魔人形操師と黒子、2つの世界の操作と補助のスペシャリストたち。
そんな彼らに俺の性癖という “異物” を混入させ、こねくり回して合体事故を起こした結果生まれた存在こそが────我らがクロコちゃんなのである。
さて、そんな経緯で誕生したクロコちゃんの魔法。その詳細を少しおさらいしておこう。
1つは “ぱぺっと
そして、残りのもう1つこそが “ぱぺっと
対象を模したパペットを相手の額に当て、『ぱぺっと
契約をどちらかが破棄しない限り、俺の魔力やら体力やらを対象に譲渡することが可能。また、負傷やらで動かすことができない箇所を補助することもできるようになる。
譲渡できる量や補助の精度・強度は、パペットの出来と “双方の信頼度” に依存する。
なので、今回のように突貫作業でパペットの出来が悪く(ラーナたんの自己採点で20点。ちな、俺の採点だと200点な。意識高すぎィ!)、俺への信頼度が低い場合は大した強化はできないハズなんだけどな。それがなんで無双ゲーみたいになってるのか、コレガワカラナイ(dnk)
ちなみに、対象の身体操作の優先権は俺にあったりするのだが……まあ、基本的には相手方の好きにさせるのが無難だよね。この魔法の目的はあくまでも補助であり、主役は相手方なのだから。
それに、俺の操作内容が対象の意に本気でそぐわない場合は拒否されるし、その場合は俺にマジで重いペナルティがあるぞ。こわひ……。
さて、閑話休題……とともに、デカブツを除いたゴブリンが全滅してるんですがどうなってるんですかねぇ? はえーよホセ。
「あラあラァ、もう終わりですかァ? ようやく身体がほてってきたところですのにィィ」
「ゴ……ゴゴゴブェ」
「やァン、そんな必死に距離を取ろうとされたら傷ついちゃうわァ。もゥっ、い・け・ず、ですねェ~」
どうやら腰が抜けたらしく、ズリズリと後退することしかできないデカブツ。そのザマに嗜虐心を刺激されたのか、焦らすようにゆっくりと近づいていくクーニュさん。腰をくねらせる必要あるぅ?
己の勝利を確信したのであろう。その表情は
人はそれを──── “油断” と呼ぶのだろう
「ッ! ゴブブ!!」
「ワカッテイル! フレイムトルネード、クラエィ!」
怯えていた……否、怯えたように見せかけていたデカブツが声を張り上げる。まるで合図のように。
そして、その声に応える声が1つ。間違いなくクーニュさんが未警戒だった木の陰から、カタコトではあるものの意味を成す言葉が紡がれる。編み込まれた魔力が “魔法” と成りて顕現す!
現れたのは炎の竜巻。周囲の木々をも呑み込みかねない大きさの業炎が4つ、クーニュさんを取り囲むように荒れ狂う。
既に逃げ場は無い。上は竜巻の性質上広がった炎で塞がれているし、下は地面。竜巻同士の隙間はわずかに存在するが――
「ダメ……あれは罠」
確認をするように呟いたラーナたんの言う通り、あの微妙な隙間は術者が用意した罠だ。
この世界の魔法は発動後でもある程度操作できるらしいからな。隙間を突っ切ろうとしたした瞬間、2つの炎で挟み込むつもりなんだと思うんよ。
そうなったら最後、いくら
――でも、大丈夫。キミの想い人は死なないさ。
そんな想いが伝わるよう、繋いだ手に力を込め────そっと手を離す。
さあ、いよいよ俺が動ける条件が整った。