TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い)   作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N

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※今話は声や音の大きさを表現するために特殊タグを多めに使用しております。




1-13 VS上位種ゴブリンたち

 

 

 木の陰から突然現れた、カタコトながら言葉を話す新たなるゴブリン。

 杖を持つそのゴブリンが放った魔法により追い詰められるクーニュさん。これは絶体絶命のピンチだぞー(棒)

 

「あラあラァ? もう、これじゃ動けないわァ」

 

「オロカナヒトメスガ! ウゴカナクトモ、ドノミチオマエハオワリダ!」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

 その大声で行われた死刑宣告が示す通り、4つの炎の竜巻が轟音とともに移動を始める。中心にいるクーニュさん目掛けて。

 隙間が失われてゆく。それはつまり、段々とクーニュさんの姿が炎で見えなくなっていくということであり……やがて、完全に姿が隠れてしまった。

 

 そして、その数秒後────合流した炎のエネルギーが許容限界を超えたのか、ついには爆発を起こしてしまったのだ!

 

「ゴブ! ゴブオオオオオ!!」

 

「ブゲゲゲゲ! ミタカ、バケモノ! ()()()ノキョウリョクダケハカンシャシテヤランデモナイゾ!」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

 ほぉん、なんで味方が惨殺されてるのに黙って見てるのかと思ってたけど、間引きのためだったのか。

 かーっ、やだやだ。頭脳役が冷酷だとこんな簡単に切り捨てられちまうのか。ウチの頭脳役が優しくてホント良かったぜ。

 それに加え――

 

 

 ドスッ

 

 

「ここまでの展開のほとんどを読みきっちゃうんだものねェ。さすがレオーネちゃんだわァ」

 

「……ブ?」「……ハ?」

 

 突如としてデカブツの背後から聞こえてきた、何かが地面に突き刺さったような音と間延びした女性の声。

 前者はともかく、後者の声は2匹にとっては完全に想定外だったのだろう。おもしれーぐらい表情をひきつらせ、錆びついたオモチャのように音の発生源に顔を向けた。

 

「んもゥ、踊り子さんへのオイタはダァメェ」

 

「「ギョベエエエエエッ!?!?」」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅきゅっ

 

「――ッ」

 

 漫画だったら目ん玉が飛び出てそうなくらいかっ開いた視線の先には、()()()()()()()()()()()()()()()無傷で妖艶に微笑んでいるクーニュさん。

 彼女は己の健在と余裕を見せつけるためか、はたまたポールダンスという存在を教えた俺への当てつけか……地面に突き刺した己の相棒に、全身を使って艶めかしく絡みついているんだから堪らない。

 そのせいで咄嗟に視線を逸らしちまったもんだから、ずっこけそうになったよね。いやホント勘弁してクレメンス。バレちゃうからぁ。

 

「バ、バカナ! イキテイルダケナラマダシモ、ムキズダトッ!」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

「うふフ、こんなのただの装備頼りのゴリ押しでしかないわァ、もゥ。まァ、それができたのはウチの妹とあの子のおかげなんだけどねェ。――それじゃあ、少しタネ明かしでもいたしましょうか」

 

 そして始まるタネ明かし。といっても、ホント単純な話なんだけどな。

 タネは彼女が着ているワンピースにある。このワンピ、実は俺の魔法で創った布で縫い上げられていてな。もちろん、この短時間で仕上げたのはラーナたんだ。

 ラーナたん曰く、俺の魔法製の布は魔力を帯びているんだと。で、この世界の魔力にはとある特性があるらしい。それは、他者の魔力に干渉された際に “向けられた感情に応じて反応が変化する” っていう特性だ。

 今回の例でいうと、俺の魔力をクーニュさんに譲渡した時のこと。この時、俺に彼女を害する意思はなく、むしろ助力をしようとしている。その場合、クーニュさんの体内魔力は俺の魔力を吸収して糧とした。

 魔法で攻撃された時は当然その逆の反応となる。害意しかないわけだから抗い、反発しようとするわけだ。

 なので、クーニュさんの体内魔力と布に込められている俺の魔力はゴブリンが放った魔法に抵抗し、その威力を弱めてくれたってわけだ。……ま、流石に完全レジストはこっちも想定してなかったんだけどな。う~ん、このつよつよバーサーカー。

 あとは簡単だ。魔法の威力の弱い部分を見極め、そこを最短距離で突っ切ればいい。例えば――

 

「竜巻の上の方、とかねェ。炎が広がっているということは密度が低いってことでもあるわァ。好都合にも熱により発生した上昇気流(上に向かう風)もあったことだし、ぶっつけ本番でも楽勝だったわねェ」

 

「アリエン! サキノマホウハマリョクダマリデエタマリョクノホトンドヲツカッタノダゾ! ソレニ、ナゼキシュウニコウモツゴウヨクタイオウデキタノダッ!?」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

「魔力溜まり……? 魔法は門外漢だからわからないけど、アナタの奇襲については簡単なことよォ。――だって、最初から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものォ」

 

「…………………………エ?」

 

 村での対策会議で好戦的な上位種――今回だとデカブツことゴブリン巨人(ジャイアント)――が群れを率いているって予測が立った時のこと。あの時、実はレオーネ嬢からもう1つの可能性が指摘されていた。

 それは、(ゴブリンにしては)比較的理性的な上位種が最低1体は存在している可能性だ。

 理由を聞いてみればなるほど。トップに脳筋、雑兵は下半身の一部が脳みその蛮族ども。そんな集団が偵察をしたり、ましてや何日も時間をかけて襲撃の準備や生活基盤を整えるだろうか?

 答えは(いな)。実際、デカブツも雑魚どももかなりフラストレーションが溜まってたっぽいしな。

 よって、そんな脳筋どもの手綱を握れる、つまりはデカブツとほぼ対等な存在がいるってのは確定的に明らかだったわけよ。

 

「手の内も早々にわかっちゃったしねェ。んもゥ、ダメよォ、便利だからって不用意に魔法の松明なんて使ったらァ。雨なのにまったく勢いの衰えない炎なんて、魔力属性が “火” の魔法使いがいるって白状しているようなものだものォ」

 

「グ、グギギ…………、…………ッ!」

 

「さァて、そろそろ「イマダ! ウシロカラ射殺(イコロ)セ!」……あらァ?」

 

 クーニュさんの背後を指差し、そこに潜むナニカに指示を出すウィッチ。

 すわ伏兵の奇襲か、咄嗟にそう判断したクーニュさんが背後を振り返────らない。

 

「…………アレ?」

 

「注意を逸らしてその隙に逃亡か反撃、といったところかしらァ? フフ、でもざ~んねん。もうこの場にはアナタたち2人しかいないことを私は知っているものォ」

 

「フザケルナフザケルナフザケルナァ! ナゼソンナコトガ断言(ダンゲン)デキル! (トリ)(ウエ)カラミハッテイタトデモイウツモリカァ!!」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

「アラもう、半分せいか~い」

 

「…………エッ」

 

「その通り、上から見張っていたのよォ。た・だ・し、トリじゃなくて────ネコちゃんだけどねェ」

 

 ぽきゅ ぽきゅ ぽきゅ

 

「ネコ、ダト……? ――ッ゙!?」

 

 おっと、流石に不用意に近づきすぎたか。だが、もう()()()()()()だ。振り返ってくれたのも逆に好都合だぜ!

 

「――ぱぺっと制御(こんとろーる)

 

「ナ二ヤツ――ガアッ!? カ、カラダガカッテニウゴク……!」

 

 左手にはめた新品ゴブリンウィッチパペット。それをウィッチの額に押し付け強制契約。即座に操り、杖の石突(先端)をヤツの首に添える。

 抵抗するなら刺し殺す――そんなメッセージを正確に受け取ったのか、ウィッチは次第に抵抗をやめていく。

 ウィッチの制圧を確認し、チラとクーニュさん側に視線を向け……うん、あっちも大丈夫だな。逃げようとしていたデカブツの首に再出現させた緋刃を添え、動きを封じている――ってあーあ、気絶しちゃったよ。笑顔(EGAO)で覗き込まれたのがそんなに怖かったのか。

 

 つまり、だ。

 

「勝った、の……? アタシたちで、村のみんなを守れた……?」

 

 ちょっと離れた位置にある木の上から聞こえる震えたような声。気を張っていたおかげで抑えられていた恐怖が今になって襲ってきているのか、口元に当てられた手もぷるぷると震えている。

 

 ――ああそうさ、俺たちは勝ったんだぜラーナたん。

 

 俺はそんなメッセージを込め、ウィッチを操って勝利のポーズを一緒に決める。ホイ、ぱぱぱぱーぱーぱーぱっぱぱーん♪

 

「ぷふっ……っ、ちょ、そ、そのへんてこダンスやめてって……ふっ、あはは! って、落ちる!? やめなさいクロコぉっ!?」

 

「グ、ヌ……エルフトネコモドキ、ダト……!? イツノマニ、イッタイドコカラ()イテキタノダ――オイ、イイカゲンニコノヘッポコナオドリヲトメロブゲェッ!?

 

 おっと手が滑った(棒) 地面に顔から突っ込むなんて不幸だなーwww

 で、俺たち2人がなんでこの場にいるのかだっけ? はっはー、いいぜ。イチから説明してやろうじゃん。

 

 

 

 時はゴブリン対策会議中、俺がクーニュさんへの要求を伝えた後にまで遡る。

 あの後、俺は “ぱぺっと補助(あしすたんす)” についての説明と実演を行い、クーニュさんが戦えることを証明した。ちなみに、パペットはラーナたんがパパっと作ってくれたぞ。有能!

 で、クーニュさんという戦力を軸にした作戦をレオーネ嬢が数パターン立案。状況に応じて使い分けていく方針で最終決定がなされた。

 

 その後は俺とクーニュさんは戦闘の慣熟のための練習を行い、ラーナたんは戦闘服の制作へ。

 そして、日没間際にそれぞれの所定位置――クーニュさんは会敵予定地点、ラーナたんはその近くの木の上、俺は敵の通過予測地点――へと陣取ったのだ。

 

 息をひそめ、闇に溶け込むことおよそ一刻後。現れた敵集団の情報を俺が収集し、走って2人に合流する。雨が降ってて良かったよね。じゃないと靴のぽきゅ音でバレてたかもしれんし。

 んで、俺がもたらした情報を基にレオーネ嬢の策の中から1つを選び、2人は引き続きしばしの待機。俺は再び偵察に向かう。

 敵集団の最後尾にいるウィッチの観察をしつつストーキングを続け、クーニュさんの会敵を確認してからラーナたんのもとへ。

 隠れているウィッチ(上からは丸見え)をジロジロと観察していたラーナたんの隣に腰を下ろし、彼女の身体を木から落ちないようしっかりと支える。

 そして、両手が自由になったラーナたんが満を持してこの作戦のキーアイテムの制作に取り掛かったのだ。そう――ゴブリンウィッチパペットの制作にな。

 

 ここまでくれば後は作業。クーニュさんが敵の処理と時間稼ぎをしているうちにラーナたんが余裕を持ってパペットの制作を終える……ハズだったんだけどなぁ。

 どこぞのえちえちバーサーカーが調子に乗ったせいでものすげぇ勢いで敵が減っていったよね。それを目線を向けずとも察した妹の「あンのバカ姉がぁ……!」ってセリフはちょっと尻尾がゾクゾクしました♡

 

 ま、まあ、そんな俺の百合癖はさておき。

 雨・木の上・暗闇の中で灯りはロウソク1本のみという超絶クソ環境に加え、義姉による納期短縮というブラック仕事。それでもなんとか間に合わせてくれたパペットを受け取り、俺は作戦の最終段階へと移行するため腰を上げたわけだ。

 ここで言う最終段階とは、“ゴブリンウィッチとデカブツの生け捕り” のことを指す。

 

 

(「なんで生け捕りなんて面倒なことを……」)

 

 

 ――なーんて意見もモチロン出たが、手持ちの駒を増やしたい俺のワガママに他ならないよね。

 と言ってもこれは努力目標みたいなもんで、余裕があったら的な感じだ。さすがに多くの人命を天秤にかけてまで我を通したりはせんよ。

 

 で、蓋を開けてみたら思いのほか順調だったので生け捕りの決行を決めたわけだ。

 デカブツの方は完全にクーニュさんにビビってるみたいだから彼女に任せ、俺は当初の予定通りにウィッチのもとへ()()()近づくことに。

 だが、ここで1つの問題が。そう、毎度おなじみ肉球シューズから発生するぽきゅ音ですよ。

 偵察時には一定の距離が開いていたから雨音だけで隠せた足音だが、俺の手が届く位置まで近づこうものなら流石にバレる。

 

 

(「いや、脱ぎなさいよ。裸足なり靴を履き替えるなり────ハア!? 脱げないってなんでよっ!」)

 

 

 呪いで 身体から 外せない!(でろでろでろでろでっでん)

 

 はい、そんなドラ◯エの呪い装備BGMが脳内で鳴り響いている通りなんとこのシューズ、入浴など特定の状況以外では脱げない仕様になっておりまーす。しかも、その特定の状況が終わると自動的に再装着される便利仕様ですよ奥さん!

 

 ……いやぁ、ラーナたんの極寒ジト目が骨身に染みたぜ。我ながらなんでこんな設定にしたんだろーね、わはは(白目)

 

 さて、話を戻そう。

 ぽきゅ音が発生するのはどうしようもない。ならば、どうするか。

 いろいろと案は出たんだが、ゴブリンウィッチの存在が決め手となり脳筋戦法を採用することになった。“木を隠すなら森の中” ――つまり、音を隠すならより大きな音の中だ。

 雨音、雨が葉に当たる音、炎の竜巻の音、ゴブリン2匹の絶叫etc……戦場から発生する轟音。それに加え、ウィッチはクーニュ(踊り子)さんに夢中で背後に一寸の意識も向けていない状況。

 流石に手が届きそうな距離まで接近すると気づかれたものの、その時点で既にチェックメイト。ウィッチパペットを額に押し当てゲームセットだ。

 

 

 

 ────とまあ、こんな経緯があったってわけよ。どぅーゆーあんだすたーん?

 

「」

 

 って、おいぃ! 人に説明させておいてなに眠ってくれちゃってるんですかねぇ?

 

「いや、眠ってるんじゃなくて怖さで気絶してるのよ。主にクロコのせいで」

 

「うふふ~、生殺与奪権を握られた相手にじ~っと無表情で見つめられるだけだったもんね~。私でも気絶しちゃうかも~」

 

 クーニュさんに木から下ろしてもらったのだろう。糸目のぽわぽわ状態に戻っているクーニュさんと、そんな彼女に背負われたラーナたんが苦笑しながら近づいてくる。

 で、なんで俺のせい……あ~そっか。天使ちゃんと悪魔ちゃんの2人が引っ込んじゃってるからだ。

 

 

(『よーやく気づいたのニャ? ざこてーとくおっそーい、ニャン♡』)

 

(『普段はわたくしたちのどちらかがクロコの(にゃい)心を適時通訳しているからコミュニケーションが取れているのでございますにゃん。しかし、今回のようにどちらも表に出ていにゃい場合は……』)

 

 

 無言無表情でウィッチの前でガン見してただけってわけだ。軽いホラーじゃねぇか。

 

 ま、どうでもいいや。そんなことより残った仕事を片付けてさっさと村に帰りたいぜ。気が抜けたのか眠気が限界に近い。

 

「ふあぁぁ……さんせ~。アタシもちょっとむりっぽいかもぉ……」

 

「あ、あらあらもう~。2人とももう少しだけ頑張って~!?」

 

 

 

 

 

 

 こうして村の危機は去り、俺たちの活躍により完全勝利で幕を閉じることになったのだった。

 

 

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