TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い)   作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N

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2-2 『行商一行の来訪』と『便乗』の間に挟まる話

 

 

「カスヤネン氏、それから護衛の冒険者の皆様方。ようこそ()()()へ。歓迎いたします」

 

「え、レオーネさん……? あ、はい。ありがとう、ございます?」

 

「…………これは、いったい……」

 

 行商人が訪れるというアナウンスがあった青空集会から3日目の昼ごろ、彼らはやってきた。

 俺が想像していたよりも大型の馬車が1台と、護衛兼運搬員である冒険者が引く大八車に似た木製カートが3台。人数的には10人と少しくらいの一行だ。

 

 そういえば以前に冒険者の話が出た時に詳細が知りたかったんだけど、結局聞くの忘れたまんまだな。ただなんとなくだが、連中の仕事や外見を見るにラノベ的王道の便利屋タイプっぽいかな?

 ま、そのうち知る機会もあるだろ。今はダルいからね、のーさんきゅーにゃん。

 

「はっはっは、いや驚いてもらえましたかな? 実は前々からの懸案であった村の後継者問題にこうして片がつきまして。引き継ぎを進めるために少しずつ仕事を任せておるのです」

 

「わたしはまだ村長代理の身ではありますが、今回より皆様の対応を任されております。ですので、何かある時はわたしにお願い致しますね」

 

「なんと!? ――っと、失礼。それはおめでとうございます。レオーネさんならこの村の未来はきっと明るいものになることでしょう」

 

「そんなバカな……チッ、あの野郎はなにをやってたんだ……!」

 

 ん~? 小声すぎて俺にしか聞こえてないだろうけど、冒険者の代表者っぽい兄ちゃんがなんか文句言ってんな。あからさまに不機嫌だし。

 

『アイツの周りだけ空気悪そうだニャ~。耳と尻尾にピリッときたのニャ~』

 

『あの方ほどではございませんが、商人さまも動揺が表に出ていたのでございますにゃ~』

 

「……彼らが以前いらした時には、ほぼ兄で決まりの状況でしたからね。仕方のないことかと」

 

『だとしても、顔に出しちまった時点で商人としては2流のざこだニャ~。慌てて取り繕っても(おせ)ぇのニャ~ン。チビジャリ以下ニャ~、キシシッシ~♡』

 

「ふふ、クロコさんのポーカーフェイスと比べられたら世界中の商人が廃業ですね。――っと、1度抱え直しますよクロコさん」

 

 お~、密着してる俺にしか聞こえていないとはいえレオーネ嬢もなかなか言うようになってきたね~。

 ……あ、抱え直し? そういえばケツが下がってきてるな。いつでもどうぞ――にゃっふん。

 

 ん~む、一応これでも精一杯抱きついてるんだけどなぁ。あんま力が入ってないのか、レオーネ嬢に負担がいっちゃってるようだ。

 

 ごめんね、重くない?

 ――え、大丈夫だからこのくらいさせてください、ってか。にゃは~、うれしいこと言ってくれるじゃ~ん! ほれてまうやろ~。

 

「────」

 

「その、代理殿……? 背中の子どもはいったい……」

 

「はい、ご紹介が遅れて申し訳ありません。この御方はクロコさん。新たな村の住民にして、この村の恩人です。……ちなみに、成人されてますのでご留意ください」

 

「ッ!? こ、これは重ね重ね失礼をば……」

 

『こちらこそ、このようにゃ格好で失礼いたしますのでございますにゃ~。それと、年齢のことはお気ににゃさらずでございますにゃ~ん』

 

『顔に出したのに続き、またマイナス点ニャ~。ざこざこ3流商人に格下げニャ~。キッシシシ~♡』

 

「耳が痛いことです。恥ずかしながら、わたしも最初は子どもだと思っていましたので」

 

 ええんやで。基本的には違法ロリと間違えていてくれた方がいろいろと楽だからな。酒を飲みたい時とか都合が良い時だけ必要に応じて合法ロリに戻るスタンスなので。

 

「それと、こうして背負っていることについてですが。見ての通りに体調がすぐれないようなのですが、皆さんに興味があるとのことでして。ですので、わたしが背負わさせていただいてます」

 

 ダルい。でも、好奇心が抑えられない。でもでも、くっそダルい。

 そんな俺の内心を天使ちゃんと悪魔ちゃんに通訳してもらいつつ、家でラーナたんにウザ絡みしてたんよ。『もう疲れちゃって 全然動けなくてェ……』ってな。ガン無視されてたけど。

 そしたら、見かねたレオーネ嬢が気を利かせてくれてな。こうして子泣きじじいと化すことで見学に来れたってわけだね。

 いや~、感謝感謝。ただ、出かける時の『……返ってきたら覚えてなさいよ』っていうジト目ラーナたんのセリフがおっそろしいけどな! ガハハ!

 

「さて、皆様お疲れでしょうし挨拶はここまでにしておきましょう。いつも通りに “井戸の広場” を開放いたしますのでこちらへどうぞ」

 

 和製ファンタジーに染まった俺のイメージだと、行商っつーと人1人(ひとひとり)で運搬可能な小規模取引のイメージなんだけどな。こっちではそうでもないのかもしれんね。

 ここまでの規模になると、もはや一大イベント。村の中心の開放と専有も、さもありなんって感じか。

 

「また、皆様の宿泊場所として、こちらもいつものように村外れの空き家群を開放いたします。掃除と補修はしてありますので、ご自由におくつろぎください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、この村にゴブリンが。確かにそのような一大事が起これば以前の状況からの逆転もあり得ますか」

 

「はい。幸いなことに犠牲者を出すことなく無事に解決に至りまして。その際の功績が評価された結果、わたしが次期村長に内定いたしました」

 

「…………ふぅむ」

 

 あれから、レオーネ嬢の先導で広場に到着したカスヤネンのオッサンは早速とばかりに商売を始めた。

 ちなみに、冒険者たちの大半はしばらくお役御免。代表者の兄ちゃんだけはオッサンの護衛として残ったが、他は宿泊場所に向かっていった。村の酒屋で酒を買ってな。ったく、いいご身分だぜ。*1

 

 さてさて、俺が見たかった商売の様子なのだが。これがまた、なかなかに興味深いものだった。

 

 まず、取引の形態について。

 村では大半――俺の体感で8割以上の取引が物々交換なのだが、ここでは比率が逆転していた。

 ほとんどが貨幣(砂金や宝石の粒など、貨幣の代わりとなる物も含む)での取引だってことだな。まあ、数字と貨幣への理解が低いから、レオーネ嬢ら一部の理解者が見守ってる必要があるのだが。

 

 で、かなり意外に思ったのが、カスヤネンのオッサンが運んできた商品だ。なんとなんと、農水産物がけっこうな比率を占めていたんだよね。そして、それらが普通に売れていくという。

 これさ、俺の常識からすると異常なんだよね。普通は逆だろ、と。

 田舎村で採れた収穫物を都市へ持っていくならわかるが、なんで田舎に持ってきとんねんって話よ。じゃあ村人たち(キミら)は逆に何を売って貨幣を得てるのさ、って疑問も当然わいてくるわけで。

 あと、なんで腐ってないのかとも思ったんだが……そこはファンタジー世界。魔導具で凍らせてるんだとさ。ほんと突然ファンタジー要素ぶっ込んでくるよねぇ。

 

 とまあこんな感じで疑問点がいくつかあるのだが、残念ながら今は放置中だ。

 理由は3つ。ダルいのと、俺が常識知らずなのを知られるのを避けるため。あとダルいからだ。……考えるのってけっこう気力を使うよねぇ。

 

 うん、とりあえず行商を見ていて気になったのはそんなところかな。

 

 で、いま現在の話になるんだが、夕方になったため店じまいをしているところだね。

 後片付けをしているオッサンと座っているレオーネ嬢が、ゴブリン騒動とその後に決まった(らしい)後継者レースの顛末を()()()語っているわけだ。

 

 ――え? なんで “らしい” が付いてるのかって?

 だって、俺も詳しいこと知らねぇんだもんwww 寝て起きたら知らぬ間に全部終わってたし、話を聞こうとするとラーナたんとクーニュさんの表情が曇るんだよ。

 曇り曇らせの百合も好きだし好物ではある。でもさ、やっぱ百合には笑顔が似合うんだよ……! だから、俺も聞いてないってわけ。

 

「ちなみにですが、詳細を教えてもらうわけには?」

 

「申し訳ありませんが、お答えできません。これは村の自衛能力に関わる機密事項ですので」

 

「まあ、そうですよねぇ……」

 

「────」

 

 残念そうなオッサン2人。あ、護衛の人は含まないぞ。カスヤネン氏と俺だよ、俺。詳細、知りたかったなぁ。

 

「ただ、本人から許可が出ているのでお伝えしますが、一連の出来事の全てにおいてクロコさんが重要な働きをしております。(ゆえ)『ワビス◯!……スニャァ』…………ゆ、故に先程、お、恩人?? と紹介した……かもしれません」

 

「アッハイ」

 

 悪魔ちゃんがとんでもねぇ寝言を言ってる件。話の腰バッキバキやし、レオーネ嬢トーンダウンしとるやないか。

 まあ、俺が反射的に脳内で浮かべてしまった “故にイ宅且カ(ネタ)” の数々を代わりに叫んでしまう、という誰かさんの悪ノリ設定のせいなのだが。

 でも、実際に口に出したのは悪魔ちゃんだからさ。今もキミを見つめながらニチャついてる天使ちゃんの折檻を後で甘んじて受けいれてね♡

 

「ふむ。それにしてもこのような猫が……失礼、ガキが……ゲフンゲフン、貴女のような可憐な女性が、ですか」

 

 もうボロッボロじゃねーか。まったく、失礼しちゃうわ。

 今の俺の堂々たる姿、目ん玉かっぴらいてよーく見やがれってんだ。

 

 

 

 いくら俺がなあ――

 

 女の子座りをしているレオーネ嬢の膝上で丸くなり!

 

 猫の警戒心どこいった、と言われんばかりにダラケきり!!

 

 慈愛の表情のレオーネ嬢に頭と背中と(アゴ)を撫でられていても!!!

 

 尻尾が頭と背中撫ででフリフリ、顎撫でに至っては大フィーバーしたり!!!!

 

 パペットの2人が(とろ)けた顔で間延びした声をあげてても!!!!!

 

 ――我、この村の救世主ゾ!!!!!!

 

 ⚡️ピシャーン!!!!!!!⚡️

 

 

 

 ……とまあ? 一応、脳内エフェクトでカミナリを落としてみたけれど。別に目立ちたいわけではないし、オッサンに侮られようとどうでもいいんだけどな。

 

 じゃあ、なんでわざわざオッサンらに俺の関与を伝えたのか?

 それはな、全部クーニュさんのため……いや、クーラナの百合ップルのためなのだー! あ、もちろんラナクーでもいいぞ!

 どういうことかというとですねぇ――

 

「ゴブリンが襲ってきた時……クーニュはどうしていたんだ?」

 

 ――こうなる危険性があるからだ。

 

 

 

 聞くところによると、件の後継者問題は外部の人でもそこそこの人数が知ってることらしい。別に隠してたわけじゃなかったそうだしね。

 その人たちは結末を知った時、間違いなくこう思う。『普通は長男が継ぐから、ほぼ結果は決まってたハズなのに何があった!?』ってな。

 となると、彼らは当然だが事情を村の誰かに聞くわけだ。で、聞かれた人はこう答える。『ゴブリンの群れの襲撃があって、それを殲滅した時の功績を評価されたからだ』と。

 

 さて、ゴブリンのことを聞いた彼らは次にこう考える。『どうやって殲滅したんだ?』ってな。

 レオーネ嬢が策を講じて殲滅した? いや、頭の良い彼女でも流石に無理だろう。そんな策を思いつくほど隔絶した能力を持つなら、そもそもロトム(アホ)と争いにすらなっていない。

 となると、彼女がしたのは策の立案などの支援までだろう。『そうだ、実際に殲滅した者は他にいる!』

 

 はい、正解。まあ、ここまでならたどり着かれても問題はないんだ。

 問題となるのはここから。

 

 クーニュさんは一応現役のB級冒険者だ。これは在野ではかなりの上澄みらしく、足が動かなくなる前はそこそこ名が売れていたそうでな。その知名度は今もある程度は健在だ。

 そうなると必然、こう繋げるヤツが出てくる。『殲滅者=クーニュ』ってな。

 

 こうなっちまうと最悪だ。

 クーニュさんのもとには毎日のように村外から客が訪れ、勧誘やら真偽の確認やらで騒がしくなることだろう。

 なんせ、ゴブリンの群れを殲滅できるほどの戦力なら引く手あまただ。今まで彼女が放置されてたのは明確な弱点があり、戦力にならないと思われてきただけなのだから。

 

 さて、ここまでの展開予想なのだが、考えたのは当然レオーネ嬢だ。俺、ラーナたん、クーニュさんは忠告と相談を受けたカタチだな。

 クーニュさんたちがこの村より条件が良いところを望み、移住も1つの手だと考えているのなら客の来訪は歓迎すべきだろう。だが、そうでないのなら彼らは招かれざる客となる。『どうしますか?』ってな。

 そして、肝心のクーニュさんたちは後者を選んだ。一切迷うことなく、な。

 

 方針は決まった。クーニュさんたち家族がいらん騒動に巻き込まれないようにしなければならない。

 だが、殲滅者がいることは絶対にバレる。ならば、肝心なのはクーニュさんと(イコール)で繋がらないようにすることだ。

 そのためには────スケープゴートが必要となる。

 

 で、俺が立候補したってわけですよ。スケープキャットと呼んでくれ。

 

 ほら、ウソを吐くコツは真実を交ぜることって言うじゃん?

 ゴブリン戦に俺がガッツリ噛んでたのは事実だし、客観的に見ると得体が知れない俺なら信憑性(しんぴょうせい)も出るって寸法よ。あと、村人たちにとっても真っ赤なウソよりかはウソを吐きやすいって理由もある。

 

 俺のこの提案をレオーネ嬢は支持してくれた。だが、クーラナの2人には反対されちゃったんだよね。自分たちの身代わりなんてさせられるか、ってな。

 ……気持ちは嬉しいのだけど、そこは頷いてほしかったなって。俺が慈善活動家じゃない以上、そこには()()()()()()()()んだからさ。

 

 クーニュさんの足は俺の補助がなければ動かないままだ。それに、仮に治っても冒険者とか兵士とかの戦闘を伴う仕事に就く気はもう無いのだとさ。あ、俺は契約があるから別な。

 となると、無益極まりない勧誘や要請に時間を取られるくらいならさ――家族のために時間を使ってほしいじゃん。今まで辛い思いをしてきた分もね。

 

 具体的にはですねぇ?

 

 ラーナたんとイチャコラしたり、

 子どもたちと遊んだり、

 ラーナたんとイチャコラしたり、

 レオーネ嬢と楽しくおしゃべりしたり、

 ラーナたんとイチャコラしてほしいんだよ!! なんなら “シ” て♡♡

 

 ぜーっ、はーっ……! ふぅ……これでよしッッ!!*2

 

 俺が働くのは基本的に百合のためだけだ。……まあ? 人命がかかってたり、好感度が高い人のためなら動くこともあるけど。

 とはいえ、これらの願望欲望まみれの内心や行動理念を伝えるわけにはいかない。百合は決して押し付けるものではないからだ。

 

 なのでまあ……2人の説得には苦労した。レオーネ嬢は静観してるし、俺の口先だけの身代わり理由なんざ歯牙にも掛けない。牙があるのは猫人(コッチ)なのにな。

 だからもう、仕方なく。ほんとーーーに仕方なく俺の “切り札” の1つを2人に開示して、ようやくのことで許しを得たのだ。無念にゃりぃ……。

 

 そんな経緯があり、『クーニュが条件付きで戦闘可能なのは部外者には内緒。ゴブリンの件にも一切関わっていない』というウソを村全体で吐くことになったわけだ。

 村人たちも快く協力してくれてるぞ。なんせあの人ら、クーニュさんに対して負い目と感謝で内心ゴチャついてるからな。恩を返せるなら前のめりでやってくれるぞ。

 

 あ、ちなみに『ゴブリンの襲撃自体を部外者に言わなければいいのでは?』ってのは無しな。

 理由は2つ。下手に隠しすぎるとボロが出やすくなり、そこからクーニュさん(本命)にたどり着かれちまう可能性が上がるから。これが1つ。

 もう1つは、ゴブリン撃滅の件は普通に村のアピールポイントになるからだな。

 外敵に襲われても撃退できる村、住みたいと思いませんか? あ、我が村は移住者を常時募集していますよ(byレオーネ嬢)

 

 

 

 さて、随分と長くなっちまったがこの村の方針はそういうことだ。

 だから、護衛の兄ちゃんの問いにはこう答えることになる。

 

「はい? あの家族思いのクーニュさんがラーナさんや子どもたちの側を離れるとお思いですか?」

 

「いや、それは……だが、アイツがただ震えてるだけってのも考えづらいが」

 

「まあ、村にまで到達させてしまっていたら己を犠牲に家族を逃がす覚悟くらいはあったでしょうが。この件に彼女は無関係ですよ」

 

「…………そうかよ」

 

 そうだよ(便乗)

 

 

*1
おまいう

*2
なにが??

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