TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
誤字報告ほんとありがとうございますです!
『レオーネさま~、“便乗” させていただき感謝感激でございますにゃ~ん』
「いえ、構いませんよ。ではクロコさん、しっかり捕まっていてください」
『ウニャ~ン、文字通りおんぶに抱っこで移動するのはさいこ~ニャ~』
「ふふ、抱っこはしていませんが喜んでいただけているなら嬉しいですね」
前回のラストが百合に相応しくないネタだと思ってた?
ふはは、引っかかったな! アレは次回への伏線だったのだー!!
────ん? あれ??
なんか少しの間だけ意識が飛んで、メタい変な電波を受信してたような気がする。……ま、いいか。
さて、俺とレオーネ嬢、カスヤネンのオッサンと護衛の兄ちゃんの4人は現在クーニュさんたちの家へと向かっている。俺だけは帰宅だが。
レオーネ嬢が野郎2人についていくってことは仕事かな? まだ日没前とはいえ大変だねぇ。背負わせて余計な体力を使わせている俺の言えたことじゃないかもしれんが。
で、ぽつぽつ会話しながら歩き、村はずれの高台を上っていく。すると、はい!
見えてきましたのは居候先の家とクーニュさん~……ん? クーニュさん?
「あら~? ……これはカスヤネンさん~、いらっしゃいませ~」
「ええ、お邪魔しま、すよ……む?」
どうやら玄関先で子どもたちと遊んでいたらしいクーニュさんがこちらに気づき、オッサンを見て一瞬だけ真顔になった。まあ、すぐにデフォの微笑み顔に戻ったが。
「レオーネちゃんもいらっしゃ~い。クロちゃんは~、んもぅ、まさか1日中レオーネちゃんにお世話させてたんじゃないでしょうね~?」
「──────」(
「んもぉぉぉ! クロちゃんはもう~! でも、おかえりなさ~い」
「……あはは」
ふむ、俺とレオーネ嬢への態度はいつも通りだな。
なーんだ、なら別に俺が気にすることじゃない――ッ!? な、なんだ……!?
「あーその、なんだ。久しぶりだなぁ、クーニュ」
「うふふ~。えぇ、久しぶりね、“レンド” 。いらっしゃ~い」
「――ッ」
「…………っ」
い、いま、ナニカが……絶対に見逃してはいけないナニカに俺の全身が震えた。
レオーネ嬢も息を呑み、背中の俺を支えている手に力が入っている。俺の動揺が伝わったのか、彼女自身に何か思うところがあったのかは知らんが……警戒すべきことが起きたのは間違いない。
「そちらの調子はどうかしら~? 携行品の質を見るに~、う~ん? 相変わらずあんまり景気はよくなさそうね~」
「あー、最近さらに薬価が上がっていてなぁ。って、いや、俺のことよりも。お前は……お前たちこそどうなってんだ? その、随分と見違えたじゃねえか」
「うふふ~、そうでしょ~。みんなが頑張ってくれたおかげでね~。……ようやく、みんなが笑えるようになったの」
知らん……何
いや、クーニュさんの笑顔の……質? 種類? うまく言えんが、俺たちに向ける笑顔とは微妙に違っているような気がするのだ。
何なのだ、これは! どうすればいいのだ?!
そんなふうに内心でテンパっていると――
「な、何なのだこれは!?」
あれ? 俺、声に出したっけ?
そう思って
「カスヤネン氏? どうかされましたか?」
「どうもこうも! クーニュさん、この服は一体どういうことですか! あの子らの服もです!」
「はい~? この服は「おじさん見る目あるぅ!」……あら~?」
突然怒り出したオッサンがクーニュさんに食って掛かろうとする。
だが、そこに割って入るように子どもの声が。
「見てよ見てよこの服! 生地はつるつるのすべすべ、適度な
「え、あ、はい……」
「そして、そんな生地を縫い目が見立たず、きれいに見えるように縫い上げた技量! さらにはサイズもピッタリ! すぐに大きくなる身体に備えた “あそび” も無しの寛大な親心! あぁ、わたしたちには2人のママがいる……! しあわせ!」
「私はいいけど~、ラーナちゃんにママ呼びがバレたら怒られるわよ~?」
モデルのようなポーズと喜色満面のドヤ顔で場にエントリーしたのは、最近になってこの村一番のファッションリーダーを自称しだした女の子。子どもたちの中では(ラーナたんを除けば)最年長の1人で、ラーナたんに新調してもらった服にゾッコンな子だ。
俺が来る前の我慢生活で子どもらしいことが全然できなかった彼女たち。生活に余裕が出てからも最初はおっかなびっくり周りの様子をうかがってたんだが、最近になってようやく現状が認識できてきたらしくてね。
今までの反動からなのか、一気に彼女たちの “子どもらしさ” が爆発しだしたんだよな。
ある子は実年齢より言動や行動が幼くなったり、
また、ある子は甘えることが多くなったり、
件の子のように自分の興味があることになると、我を忘れて前のめりになったりするようになったのだ。
うん、それ自体はいいことだよね。
ようやく子どもらしく遊ばせてあげられるって、保護者組もこっそり泣いて喜んでたし。
ただまあ、それは決していいことだけじゃなく……。
「ふっふーん♪ ラナねーちんとクロねーちんの “愛の結晶” である服「バカ!」「それ言ったらダメなやつ!」――もがぁ!?」
子どもらしく隠しごとがヘタになったっていう弊害が出やすくなったってことでもある。まあ、素直なのも美徳ってことで俺なんかは微笑ましく思うけどね。
ただ、それはそうと……なんかスゲェこと口走ろうとしてなかった?
途中から脳が理解を拒み、猫耳が頭にめり込まんばかりに伏せてたから血を吐かなくて済んだけど。
「む、2人の……? いえ、今は置いておきましょう。それより、やはりその服はラーナさんが作成したものなのですね!」
「はい~、そうですけど~?」
「何を呑気な! これは重大な契約違反、横領ですよ!」
「ッ!? いえあの、それは誤解で「バッカじゃないの」……ラーナさん」
いつから居たのか、玄関ドアから顔を覗かせているラーナたん……ラーナたん? いや、なんでローブとフードをすっぽり被ってんだ? ゴブリンズのコスプレ?
そんな俺の疑問をパペットの2人ごしに聞いたレオーネ嬢がこっそり教えてくれたところによると、アレは正体隠しのためなんだとさ。
基本、この村ではラーナたんがハーフエルフであることは外部の者には秘密らしい。そういや、前にバカ兄貴が俺にポロッと漏らした際に一悶着あったっけか。そういうことだったのね。
「ふん、普段からあれだけご高説を垂れてたくせに布の目利きもロクにできないのね。そのくせ人にあらん疑いをかけてさ……ふざケロって感じよ、ほんと」
うわ、辛辣ぅ。
ほら、あまりの毒舌っぷりにオッサンの口があんぐりしてるよ。ざまぁwww
「ほら、アンタたち。アタシたちは家でお仕事の話をしなくちゃいけないから、もう少しだけ外で遊んでなさい」
「「「はーい!」」」
「……雇い主さまはさっさと中に入ったらどうなの? もしかして今みたいなマヌケ
「かっ……!? こ、このガキィ……!」
『アイツ、オイラより煽り
『ぷーくすくす♪ にゃら、悪魔ちゃんからサンドバッグちゃんに改名『ニ゙ャ゙ッ!?』――くひっ♪』
俺の設定のせいで悪魔ちゃんが己の薄幸さに気づかないからって、最近ちょっと自由すぎやしませんかねぇこのド畜生天使ちゃん。
さて、場面変わって家の中。場所は応接室として使っている、この家だと比較的マシな方の部屋だ。まあ、それでも壁の一部に穴が空いてたりするんだけど。
というのも、実はクーニュさんたちの家って元々は居住スペース付き廃教会(未使用)なんだよな。……相変わらずツッコミどころが多い家だけど、今回は流そうか。
応接室内ではテーブルの片側にラーナたん。そして、彼女を挟むようにクーニュさんとレオーネ嬢が着席している。
で、その反対側にカスヤネンのオッサンが座り、その斜め後ろに護衛の兄ちゃんが立っている状況だ。
あと、テーブルの上には綺麗にたたまれた服が十数枚と、生地の端切れが収められた箱が乗っている。
「カスヤネン氏、今回は兄に代わりわたしが同席いたします。本来であれば仲介者である兄の役割なのですが……部屋から出てこないので」
「逃げましたか……と、おや? これはこれは、珍しいこともあるものですなぁ。ラーナさん自ら納品いただけるとは。いつも対面するのはクーニュさんだけで、貴女とは扉越しでの会話でしたから」
「…………」
「やれやれ、不必要な会話には応じないというわけですか。フード越しとはいえ、初めの頃は対面に応じていただけていたというのに。それが、こうしてまともに相対したのは久しぶりという始末。すっかり嫌われたものですなぁ」
「……やめて」
「いやはや、それにしても変わらずお美しい! その美貌、フードなんかでは隠しきれ「やめてって言ってるでしょ!」……ふふ、これは失礼いたしました」
……オイオイ、この2人互いに相手のこと嫌いすぎるだろ。なにこの嫌味とともに的確に相手の地雷を踏み抜いていくファイトスタイルは。殺伐としすぎでしょ。
「……今日だけ、今回限りの特別よ。とにかく、イヤすぎてさっきから冷や汗は止まらないし正直キツイの。だから、さっさと仕事の話をさせてもらうわ」
「ラーナちゃん、大丈夫よ~」
「及ばずながら、わたしたちが傍にいます。クロコさんだって見守ってくれていますよ」
「……うんっ」
あら^~、3人で手を取り合っちゃってまあまあ^~♡ 文字通り、“両手に(百合の)花” とかいいですわゾ~♡
あ、俺とかいう異物のことは忘れていいんだよ? 梁の上に溜まったホコリみたいなもんだと考えてちょうだい。
いや~、それにしても眼福眼福、気力回復いたしますわ~。
――え、なんでそんなとこにいるのかって?
まあ、単純に俺が猫の性質を持ってるから落ち着くってのもあるが……何かを観察する時って上からがベターじゃん。視界は通るし、観察対象側からは死角になって気になりづらくなるしね。
「はい、じゃあこれが今回の納品分の服。あと、こっちが余りの生地・糸・端切れ。さあ、とっとと検品しちゃって」
「む……どれどれ――」
やたら早口なラーナたんが心底イヤそうな顔でオッサンに検品を促す。
っつーか、スゲェなラーナたん。いくら嫌ってるにしろ、依頼主に対して傍若無人すぎる。俺に納品する時とぜんぜん態度が違うじゃんよ。
もしかして、オッサンに対してはいつもこんな感じなのか?
……いや、違うっぽいな。
クーニュさんは困惑気味だし、レオーネ嬢もラーナたんと俺をチラチラ見てるし……ん? なんで俺?? なにその俺が関わってるみたいなリアクションは。
「あー、ラーナちゃん? 今日はなんつーか、いやに強気だけどさ。そんなに自信があるのかな?」
「別に……ただ、アタシが弱気だとめんどくさくなるヤツがいるから……っ~~~~」
俺 の せ い だ っ た わ*1
え、なにこの娘、強気で行くと決めたらムカついてるヤツにはこんな風になるの?
俺、将来的にクーラナ百合ップルのハードルになるルートを選択しちゃってるんですけど? 片や戦闘になるとエロバーサーカー化し、もう片方は毒舌でグサグサぶっ刺してくるの?
今も怒りで耳まで真っ赤にして俯いてるし……ワイの身体と
「……ハァ、やれやれ────今回もまるで話になりませんな」
「そう…………ま、知ってたわ」
空気がピリつき、全身の毛が逆立つ。俺は自然と警戒体勢に移行し、パペット2人の爪と牙も飛び出している。
「そこまで強気なのだから、さぞや素晴らしい出来なのかと期待しましたがね。普段通りか、それ以下ですよこんなモノ」
「ソウ、ソレハ
わー、すっごい棒読み。なんの感情もこもってないぞ。
「ぐ、具体的に……? ……ふ、ふん。まあ、一例を挙げるならこのあたりだが? ですが、これ以上は貴女自身でお考えなさい。これも教育、向上心を忘れてはいけませんよ。国、あるいは “無国” でも名の知れた都市になら
「っ……!」
「そもそもとして――」
なんやこいつ……ハァ、なんか興味失せたわ。無駄な警戒しちまったぜ。
ん~? あ、そっか。俺が怒り出すって思われてたのか。*2
いや、確かに少し剣呑な雰囲気にさせちまった自覚はあるけどさあ。具体的な指摘を一切せず、感覚的な指摘やらに終始している時点で聞く価値も無いし、興味もなくすっつーの。そんなのがピーチクパーチク鳴いてたって気にするだけ無駄よ。
そのことを3人も理解したのか、ホッとしたような表情を浮かべて内緒話――あ、またラーナたんの顔が赤くなった。『余計な心配させんな!』って感じだろうな。うへへ、なんかゴメンね~。
……にしてもオッサン、いつまで1人でネチネチやってるつもりなんだか。この場にいる全員が聞いてないのに。
…………ふぁ~、もうだめ、ねっむぅ。
2人とも、悪いけど俺ちょっと寝るから進んだら起こし、て――既に寝てらっしゃる……!?
マジかよ。ってことは寝られねーじゃん! 俺まで寝たら
うおおおい、頼むオッサン! もう勘弁してくれええぇぇ!?
~(20分後)~
「さて、後も予定が詰まっているしこのあたりにしておきましょうか。いやなに、礼ならいりませんよ」
返事がない ただの しかばねのようだ
――はっ!? あ、あっぶねー! 危うく天使様のもとへ還るとこだったわ。
眼下を見ても、みんなユルユルと自分の世界から帰還してるところだね……いや、クーニュさんアレたぶん寝てんな。
普段から糸目なのをこんなところで利用するなんて、ってあーあ、ラーナたんに手を
「では、お待ちかねの今回の報酬ですが……まあ、規定の半分が妥当でしょう。ご苦労様でした」
「ん、ありがとうございます。――ふぁ~、これでようやく肩の荷の半分が下りたわぁ」
「……お、おや? 今日は随分と物わかりが良いですね。いつもはもっとゴネるというのに……」
ゲ、あのオッサン対面からは見えないようにしてたけど、最初から半額しか用意してないじゃん。上からは丸見えだけど。話に夢中になりすぎて俺の存在わすれてんな、これ。
そっか、あの無駄話の目的は減額の理由付けのためだったんだな。まあ、マウント取って悦に浸りたいって理由もあるんだろうけど。
ただ……おやおや~、今日はいつもと様子が違うようですぞ~?(ニヤニヤ)
「まあ、素直でよろしい。次回以降もそれでお願いしますよ。ではレンドさん、次の依頼分をテーブルに」
「ああ、了解しt「置かなくていいわよ、レンドさん」……え?」
「……ラーナさん? いったいどういうことですか?」
不穏な流れを感じ取ったのかオッサンが凄む。
だが、ラーナたんは一度深呼吸をして――寄り添う2人の手をギュッと握るフォオオオオオオ!!!!
『グェニ゙ャッ!?』
あ、つられて俺も両手を握ろうとしたから悪魔ちゃん
――え、なんでオイラだけって? それはね、天使ちゃん本体には “絶対危険回避能力” が設定上備わっているからなんだ。まあ、悪魔ちゃんには知りようがないんだけど。
おっと、そんなことより百合だ百合。
ラーナたんが握りしめた手を2人も握り返す。まるで、勇気をわけるように――安心させるかのように。
ヤベェ、尊すぎて尻尾が梁をぺちんぺちん叩いてるけど止められないんですけどォwww
そして、2人に勇気づけられたラーナたんがオッサンに向き直り……って、あれ? なんで最後に俺を見たの……も、もしかして尻尾うるさかった? 百合の雰囲気を乱した罪で切腹不可避!?
「ふぅ……よしっ。だから、お断りだって言ってんのよ!」
「え、あ……な、なにをっ!?」
「今まで針子として仕事をくれたことは感謝してるわ。おかげでアイツと出会えるまで食いつなげた。でも――」
感情が振り切れつつあるのだろう。少女の目に、じわりと涙が浮かぶ。
「でもね! もう金輪際、
「ひ、ひぃぃっ……!?」
言ったーー!! 超! エキサイティン!! しゅっきりぃー!
「な、なななにを勝手な……! そんな身勝手、許されませんよ!?」
「勝手? オマエは “話にならない” 服を引き取らなくて済む。アタシも作らなくて済むわ。お互いにイヤな思いをしない、素敵な関係だと思うけど?」
「あ……いや、それは……こ、言葉の綾と申しますか。予約だってたくさん……」
「……待ってください。予約とは?」
お、なんだその『あ、ヤベ』みたいな顔は。
レオーネ嬢も表情が一気に険しくなったし、きな臭くなってきたじゃん。
「おかしいですね。ラーナさんからも兄からも、貴方に『買い手がつかなくて大変』と嘆かれた。……そう聞いてますが?」
「……その通り。き、聞き間違いですよ。私がラーナさんに針子の仕事を持ってくるのは、あくまで人助け。ロトムさんからの紹介で仕方なく、なので……」
「なら問題ないでしょうに。はいコレ、貸与されてた裁縫道具一式ね。あと、こうして対面で第三者も交えて契約も破棄、礼儀も果たした。ぃよ~し! これで肩の荷が全部下りたぁ!」
「うふふ~、よかったわね~」
「かっ……!?」
無邪気に喜び合うラーナたんとクーニュさん。
対し、見事に墓穴を掘ったっぽいオッサンの “ぐぬぬ顔” 。これは芸術点たかいですよぉ!
だが、これで終わりかなと思ったのも束の間。
落ちつきなく目線を彷徨わせていたオッサンが、クーニュさんとレオーネ嬢の胸の辺りを凝視したかと思うと――ニヤリと嘲笑った。オイ、急に親近感いだかせてくるのやめろ。頼むから純粋な敵役でいてくれ。
「お、横領だ!」
「…………はい?」
「ラーナさん、貴女は私が用意した生地を私的に流用してますよね! これは重大な契約違反! 弁済はもちろんのことですが、罰則として引き続きの契約を……いや、無給での再契約を要求する!」
――おまえは何を言っているんだ(
アホじゃねーのコイツ。親近感くん、一瞬で行方不明になっちゃったよ。
見てたの胸じゃなくて服だし、言ってることは間違いだらけだし、無給で働けとか突然言い出すし。*3
ほらぁ、女性3人も呆れ果ててるじゃん。
自ら罵られにくるとか……まさかMかコイツ!?(
「まだ
「……参ったわ。人って呆れすぎるとふざケロって怒りすら湧かないのね。……ハァ、あのさ、前に自分で言ってたじゃない。『余計な布や糸は無いから失敗するな』って」
「へ……? あっ」
顔を真っ青にしながら慌てて端切れなんかが入ってる箱を確認するオッサン。ヘイヘーイ、手がプルプル震えてんよー。
「見ての通り、仕様通りに出た端切れは全部返却しているわ」
「い、いや、それは……ハッ! そうk――」
「前もって言及させていただきますが、以前の分がどうのと難癖をつけることは慎むべきかと。その場で確認、指摘できなかった時点で雇用主側の落ち度ですゆえ」
「…………かっ」
すっげー早口で言うじゃん。レオーネ嬢、さてはもう帰りたがってるな?
「それにですね~、たしかラーナちゃんが言うには~、この服の生地ってお仕事用のよりスゴイらしいですよ~?」
「正確には大半の生地より、ね。今までに数回だけ持ってきたことがある “最高級品” 、アレと同等くらいの質。まあ? その数回分の生地を全て使っても子ども服2着分くらいにしかならないけど」
「 」
まさに絶句ってやつだな。もはやお得意の『かっ』すら出せねぇ感じか。
あ、ちなみに俺とパペット2人も絶句してるぞ。なんせ初耳だったからな。俺がてきと~に出してる布がそんな高級品だったなんて、知らん……何それ……怖……。
「しかもコレ、魔力まで帯びてるのよねぇ。外部にはまだ秘密だけど」
「ええ、現時点ではとびきりの厄ネタですから。村にもっと
「もう、そんな顔しないの。焦りは禁物よ~?」
――ファッ!? 近い近いチューするの近い近いチューしろ近い近いチューして♡
なんか知らんが俺が慄いてる間に3人が急接近してる!? こ、これはまさか義姉妹百合の間に挟まろうとする女……!
いいぞー、やれー! 男なら処すけど女性なら百合トライアングルになるから大歓迎――あ、ただの内緒話ですかそうですか。いやまあ、それはそれで大変結構。
「ぐぬぬ……! で、では私が引き取ろうではありませんか! そのような服を普段着に、しかもすぐに痛めてしまう子ども服にするなどあまりにもったいないですぞ!」
「オマエがアタシたちの価値を勝手に決めんな。それに、売りに出す余裕なんて無いのよ。オマエが言ったように子どもたちにはまだまだ数がいるし、レオーネちゃんや他の村人たちにも用意しないといけないんだから」
「ではせめてっ……せめて布の入手先を! 私がそちらに出向いて――」
「無駄よ。どの口が言ってるの感はあるけど、本人曰く目立ちたくないそうだから。そ、それに……その……ア、アタシの、独占、だから……っ~~~~」
百合のためなら目立つことも辞さんが、百合の(観察の)ために目立ちたくないというジレンマよ。んー、難しいね。
それはそうと、またまた赤くなってるけど大丈夫?
独占……まあ、確かに俺がダすのはキミにのみだけど。*4
「っ!? ぅあ゙ああもうっ! と・に・か・く! 教えられないし、オマエとの話も終わり! ほら、とっとと帰りなさい!」
「お、お待ちを! お待ちくだされえぇぇ!」
「うっさいカエレ! こっちは腹ペコ軍団のために夕飯作らないとなんだから忙しいの! レオーネちゃん、悪いけど――」
「お任せを。それではカスヤネン氏、次も控えてますしお暇いたしましょう」
「あ、レンドは是非お夕飯食べていってね~。いろいろお話したいこともあるし~」
「あー……いや、そうだな。んじゃ、馳走になるわ。カスヤネンさん、今日は上がるわ」
「そうそう、忘れるところだったわ。雇い主だったから礼儀としてウチで対応してたけど、この家は基本的に男の立ち入り禁止よ。だから、もう二度と近づかないでよね。それじゃ、さ・よ・う・な・ら」
「くそおおおおおぉぉぉ――」
みっともなくレオーネ嬢に引きづられながら、オッサンは帰っていった。断末魔を響かせながら。
まあ、それ自体は良いことなんだが……護衛の兄ちゃんはなんで残ったんだ?
引き留めたクーニュさんはともかく、男に厳しいラーナたんまで何も言わないし……やれやれ、どうやらまだ日常には戻れないらしいなぁ。