TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い)   作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N

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1-3 『相棒と職業の判明』と『遭遇』の間に挟まる話

 

 

 

『改めまして自己紹介を。わたくしの名は “天使ちゃん” 。お気軽に、天使ちゃん、と呼び捨ててくださいませにゃん』

 

『オイラは “悪魔ちゃん” ニャ! 呼び方は、悪魔ちゃん様、でいいニャン。敬えニャー!』

 

 なにその “さかなクンさん” 的なアトモスフィアは。設定したの俺だけどさ。

 

 

 

 さて、俺が今回思い出した設定は2つ。

 1つが、天使ちゃん&悪魔ちゃんコンビのこと。もう1つが、“魔人形操師” についてだな。

 

 まず、魔人形操師というのは “なりきりストーリーくえすと!”(“ナス食え!”) で選択できる職業(ジョブ)の1つだ。

 この職業の最大の特徴が――キャラクター自身には攻撃方法が一切無い代わりに他者やモノを操ることができる――ことである。

 一応、操作に魔力(MP)魔力を帯びた人形(魔人形)を使うことから魔法使いに分類されてるな。

 

 で、天使ちゃん&悪魔ちゃんについてだが、2人は魔人形操師のスキル “分け御霊(みたま)” にて()()()()()()()()()()()()独立思考するパペットだ。

 好き勝手に動くし話すが、その際に使用されるのは俺の腕と声帯なんよね。一応、優先権は本体()にあるようだけど。

 元の魂は同一。そう理解すれば身体の一部の自由意思が奪われている状況にもかかわらず、なんら負の感情を抱かないのも当然か。なんせ、彼女たちもまた “俺” なのだから。

 

『ですので、クロコの記憶が戻るまでわたくしたち自身ですら己が(にゃに)者かわからにゃかったわけでございますにゃ』

 

『逆に、チビジャリが覚えてることニャら何でも知ってるニャ! 例えば、小6のプールの授業で――』

 

 ヤメルルォォォ!?!? 推し声優のエンジェルボイスで俺の黒歴史を語るなこの悪魔ァァ!!

 ぜーっ、はーっ……そう、前に考えた理想の声を持つクロコちゃんの発声方法について。やっぱ、ちゃんと設定してあったんだよ。我ながら斜め下の方向にだが。

 設定上、クロコちゃんは自分の身体(声含む)に自信が無いうえ極度の恥ずかしがり屋さんだ。だから無口無表情で目隠れ、胸を意識すると気分が沈んだりするわけよ。

 だが、同時に寂しがり屋でもある。誰かと話したい。でも、自分の声は出したくないし……どうしよう。

 

 …………そうだ、腹話術で代わりに誰かに喋らせればいい。

 発声しているのは自分でも、それがバレなければ恥ずかしくないもん。

 

 このぶっ飛んだ穴だらけの思いつきを実行した結果、彼女は努力の末に腹話術士を経て魔人形操師にまで至った。そして、話し相手欲しさに2人を創ったってわけだな。

 

 ――どうよ、この渾身の設定は。泣けるし萌えるやろ?

 

『その渾身の設定の結果がこれだけどニャーーーwww ニャあ、今どんニャ気持ち? 本来ニャら推しの声であんニャことやこんニャことを思う存分言えたのに、どんニャ気持ちィ??』

 

 …………。

 

『悪魔ちゃん、流石にプッ失礼でございますよ? これからのクロコはプフッ周囲から “無駄に高度な腹話術で一人芝居する痛い子” 扱いされにゃがらじゃないとププッ推しの声が聞けにゃいのでございますからプブフォッwww』

 

 ……………………ブチッ

 

 

 

 よろしい ならば戦争(クリーク)

 

 

 

 俺は悲鳴をあげながら逃げ回る2人を、口に尻尾にとあらゆる手段で手から外そうとする。待ちやがれゴルァ!

 

『きゃー!? 黒子殿ご乱心! 殿中にございますにゃ、殿中にございますにゃーーん!!』

 

『オイラたちの性格も含めて設定したのはお(ミャー)ニャ! 理不尽ニャー!』

 

 ここは森の中じゃい!

 それに、俺だってこんな厄介なことになるなら自重してたわ。めんどくせぇヤツらめ!

 

『めんどっ!? ……かっちーん、でございますにゃ』

 

『そんニャこと考えていいのニャン? なら、オイラたちも実力行使ニャ! ボイコットしてやるニャーー!!』

 

 えっ、ボイコット? どういうことさ?

 

『…………』

『…………』

 

 そ、そういうことか……っ! こいつら推しの声を人質ならぬ、“声質(こえじち)” に取りやがった!

 なんという悪辣、なんたる外道! お前らに人の心は無いのかっっ!!

 

『…………』

『……ッ、……ッ』

 

 あれ? ホラ、ここは “オイラたちは人形だけどニャ” とか “それ、魂を同じくする自分に人の心が(ニャ)いって言ってるようなもんニャ” とかあるじゃん。ツッコミがさあ! 現にツッコミたくて悪魔ちゃんプルプルしてるじゃん。

 さあ、来いよパペット! ボイコット()なんか捨ててツッコんで(かかって)来い!

 

『ッ、野郎オブクラッシャ『そぉいっ!』――げふニャァァッッ!?』

 

 あ、天使ちゃんの右ストレートが悪魔ちゃんの腹に入った。うわー痛そう、っていうか俺の小指が痛ぇ。なんて理不尽な自傷行為なんだ。俺の意思じゃないのにぃ……。

 

『…………』

『』(チーン)

 

 悪魔ちゃんを仕留めた天使ちゃんは変わらず沈黙を続け、悪魔ちゃんは目をバツ印にしてグッタリしている。

 その後も俺は声質を取った凶悪犯との交渉を続けた。だが、結果は敗北。俺は猫人の身体能力を駆使した、無駄に洗練された無駄なジャンピング土下座を右手に向けて敢行。無事許しを得たのだった。

 オタクは推しを人質に取られたら全面降伏するしかないのだよ……。

 

 

 

 

 

 

『以上で “魔人形操師の戦い方” の講義は終わりでございますにゃ。ご清聴、ありがとう存じますにゃん♪』

 

 優雅にカーテシーをキメる天使ちゃん先生に心の中で拍手を送る。やんややんや。

 ……ああ、それにしても耳が幸せだぁ。長話がまるで苦にならないなんて、ジャンピング土下座したかいがあるってもんだぜ。

 

 

 

 俺の降伏後、天使ちゃんとの話題は俺の戦闘方法へと移った。

 幸いなことに魔人形操師のことを思い出した際に戦い方も思い出してはいたんだ。でも、俺に完全勝利したことと悪魔ちゃんをKOしたことで機嫌が良い天使ちゃんが講義してくれることになってな。

 推しの声が聞けるなら拒否なぞするわけもなく、今まで復習がてらに話を聞いていたってわけだ。

 ちな、左手の悪魔ちゃんはまだ気絶中である。天使ちゃんが容赦なさすぎる件。

 

『では、早速いろいろと試してみるのでございますにゃ。まずは―― “直接攻撃” 』

 

 ま、そうなるか。

 ゲーム内での魔人形操師は武器装備不可、直接攻撃不可の職業だ。その仕様が現実でどう反映されているのかは確認しておくべきだろう。調理器具とか武器になり得るもの全て持てないとかだと生存すら危ういぞ。

 まずは石を持ってみる……おk。左手でちゃんと掴めたな。なんか『――もごっ!? もがががっ!!』って悲鳴が聞こえるが、パペットの仕様上顔面下部で挟まないと物が持てないのだから仕方ない。コラテラルダメージってやつだ。

 

 さて、次いってみよう。

 しゃがみ込んで石で地面に猫の顔を描いてゆく。ฅ(=^・ω・^=)ฅ<ニャー

 こちらも問題ないことを確認し、近くに生えている木のもとへ向かう。そして、木の幹に同じく猫の顔を刻み込もうとして……ここで異常が発生した。

 どうやっても、何回試しても石を幹に当てられないのだ。

 

『これは……にゃるほど。どうやら、クロコは生物を直接傷つけることができにゃいようでございますね』

 

 ふむぅ? ん~、もうちょい試してみるか。

 

『もごもご……ぷはぁっ! お、お(ミャー)ら! よくもやって――ニ゙ャ゙ッ!? いたたたたたニャァァ!?』

 

 石を手放し、左手で幹に()()猫パンチ猫パンチ! ……こっちは普通に当たるのか。

 要するに、直接的に生物を傷つける可能性が高い行動は自動的にミスになる。ただし、その可能性が低い場合は問題なく行動可能、と。

 

『おかしい……こんなことは許されニャい……。オイラの扱い、雑すぎニャい……?』

 

 すまんな悪魔ちゃん。実はこのヒエラルキーの差は俺が設定した公式な扱いなんだ。

 ほら、キミってば性格や言動がいわゆるメスガキじゃん? で、メスガキは最終的にわからせ棒(♂)で “わからせ” られるまでがセットじゃん? つまり、そういうことなのだよ。

 がんばれ♡ がんばれ♡ おにゃんにゃんがんばれ♡ 苦しむ声も愛らしいゾ♡

 

『…………くすっ♪』

 

 ちな、設定上悪魔ちゃんはこの逃れられない運命に気づけないが、天使ちゃんは気づいてたりする。でも、腹黒ドSだから教えない。今もニチャニチャした暗黒微笑で苦悩する悪魔ちゃんを見つめてるしな……(畏怖)

 

 ま、まあいいや。そんなことより戦い方の確認を続けよう。

 我ながら面倒な職業を選択したものだと思うが、所詮ここまでは前座だ。肝心なのはここから。本命である魔人形操師の能力を使用しての実験をしていこうか。

 

 さて、まずは俺の魔力を使って “魔法の裁縫セット” を作らないとな。

 ただ、当然ながら魔力の操作なんてしたこと無いわけで。どうしたもんかね?

 

『その辺りも天使様が調整してくれている、とは思うのでございますが……』

 

『んニャ~? とりま、能力名でも唱えてみるニャン? ラノベだと技名とかスキル名を口に出すだけで何故(ニャぜ)か使えたりするもんニャ。ご都合主義ニャー!』

 

 ふむ、一理ある。でもなぁ……

 

『……クロコ、自力だと発声できにゃいのでは?』

 

『ニ゙ャ゙ッ!?』

 

 そうなんよ。ここでも俺さま渾身の萌え設定が立ち塞がっちゃうんだなぁ、これが。テラワロスwww

 

『草生やしてる場合ニャ!? オイラたちが代わりに唱えても恐らく意味ニャいニャ! どーすんのニャー!』

 

 まあまあ、落ち着きなよ。きっと大丈夫だからさ。

 悪魔ちゃんの言う通り、仮説が正しいとしても俺が自らの意思で声に出さないとダメだろう。あくまでも活躍するのはクロコちゃんでなくてはならないからだ。

 設定厨の俺が、この無口キャラの矛盾に気づかないわけがない。となると俺のことだ。間違いなく無口キャラが破綻しない範囲で、“例外設定” を組み込んでいる。記憶がなくても断言できることはあるんだよ!

 

 

 

 ────カチッ

 

「──ッ、────ぱぺっと素材化(まてりある)

 

 

 

 見事に “鍵” を引き当て、記憶の扉が開かれる。

 そして、それをトリガーにしてついに頑なに開かなかった俺の口が開いた。同時に体内から魔力と思しきナニカが抜けてゆく感覚。

 淡く輝く黒い糸のような魔力。その糸は言の葉に乗って編み込まれ、やがて一塊の光となってゆく。

 見惚れるようなその光も収まると、目の前には針や糸、ハサミなどの魔法の裁縫セットが形を成していたのだ。ィヨッシャ!

 

 さあ、どんどんいこう。次は操作の媒介となる魔人形(パペット)を作る工程だ。

 ただ、その前に操作対象を見繕わないとだが……お、いいところに。対象となるモデルは、こっちを『なにやってんだあいつ』みたいな目で見てる(ツノ)のある青毛ウサギにしよう。ん~、異世界っぽくなってきたじゃん。

 追加で青と白の布を作り出し、レッツ編み編み! 中学の家庭科、5段階中2評価の実力を見せてやんよ~。

 

 

 

 

 

 

 ………………なぁにこれぇ(AIBO)

 

 クロコちゃんのぷりっぷり100点満点の太ももの上に転がる、0点どころかマイナスに突っ込んでそうな出来のウサギパペット(?)からそっと目を逸らす。ウサギが逃げないうちにと急いだのは事実だが、だとしてもコレは酷い……。

 

『評価2をくださった家庭科の先生の優しさに心打たれる思いでございますにゃん……!』

 

『オイラだったら迷わず1……いや、クビにニャっても(ゼロ)評価を付けてやるニャ! ざこざこ人形師はせいぜい先生に感謝するニャン♡』

 

 ありがとう恩師よ、顔も名前も思い出せんけど。

 しかし、困ったな。パペットの出来は魔人形操師の()()()()()()()()()()()から、どげんかせんといかんのだが。

 

 ま、この問題は後回しだ。今はやれるだけやってみよう。いざ、実践!

 右手を天使ちゃんからウサギパペット(惨)に変更し、ウサギの前方に意識と視線を向ける。すると、自分に注意が向いたことがわかったのか警戒を始めるものの、距離があるおかげで逃げたりはしないようだ。

 こいつは重畳。さあ、いでよドッペルゲンガー!

 

「────ぱぺっと幻影(どっぺる)

 

 魔人形操師の能力の1つ、“ぱぺっと幻影(どっぺる)” 。

 この能力はパペットのモデルとなった生物のドッペルゲンガーを、任意の場所(限界距離あり)に出現させて操ることができる魔法だ。注意点として、所詮は魔力を編んで作られた幻影なので衝撃に弱いことが挙げられるな。

 また、ドッペルの出来は2つの要素に左右される。1つ、俺が対象をどれだけ観察し理解できているか。そしてもう1つが、パペットそのものの出来となる。

 

 で、現状なのだが……観察はパペット作製時に遠くからちらちら見ただけ。パペットの出来はぶかぶかのゴミ状態。

 結果として現れるドッペルはというと――

 

『ニ゙ャッ!? ざ、ざざ惨殺死体ニャーー!? ――ガクッ』

 

 身体のあちこちが折れ曲がった、モデルより2回りくらい大きなウサギらしき物体で……あ、ぴくぴくと蠢くさまに悪魔ちゃんが気絶しちゃったよ。こりゃモザイク必至だわ、消しとこ。

 さて、実験結果は要改善だが、嬉しい誤算も1つあった。悪魔ちゃん同様SANチェックに失敗したらしきウサギが泡噴いて気絶したのだ。ま、目の前に突如として同族(大)の猟奇死体が出現したらねぇ。

 だが、これで魔人形操師を象徴する能力の実験ができる。

 気絶した悪魔ちゃんを天使ちゃんに入れ替え、ウサギパペット(笑)を左手に嵌めつつウサギに近づいてゆく。

 そして、未だ気絶中のウサギの額にパペットを押し当て――

 

「────ぱぺっと制御(こんとろーる)

 

 魔力が抜ける感覚とパペットから発生する黒っぽい光。結ばれる()()()()

 光が収まったのを確認し、ドキドキしながらパペットを動かしてみる。

 すると――

 

『クロコの手の動きに合わせてウサギさんが動いているのでございますにゃ! 実験成功でございますにゃーん♪』

 

 すっげーぎこちないけどな。なにこの素人ロボットダンスみたいな動きは。

 

『原因はパペットの出来がそもそも悪いこと。それと、クロコがパペット操作に(にゃ)れていにゃいからでございましょうね』

 

 そっかー、どっちも一朝一夕でどうにかなるもんじゃないなぁ。

 となると~、やっぱり()()()()()()()()()()()()か。

 

『ええ、ついにわたくしたちの出番でござ……あ、あらら?』

 

 俺の意のままに操られていたウサギの動きがピタッと止まる。何事かと思って見れば、どうやら意識を取り戻したようだ。ま、あんだけ好き勝手やれば当然か。

 まだ呆然としているウサギの前足をちょいちょいと動かしてやる。それを目をかっ(ぴら)いて見ていたウサギだったが――

 

「――ッ」

 

 突如として左手に発生した負荷により、一気に制御が難しくなる。恐らく、ウサギが抵抗を始めたのだろう。

 負けじと俺も右手を添えて支配の強化を試みる。だが、身体から急速に魔力が抜けていくのを感じ、慌てて手を引っ込めてしまった。

 すると当然、ウサギは俺の支配から脱し……その証なのかパペットが手から弾け飛び、衝撃で尻餅をついてしまう。うにゃあ!?

 

『いたた……にゃるほど、これが能力を破られたペナルティ(ぺにゃるてぃ)でございますか』

 

 キャラメイクの後に知ったことだが、“ナス食え!” で支配系魔法は不遇だったりする。打ち破られるとHPとMPの双方にダメージを受けるうえ、触媒を落としたり、最悪ロストしてしまうからだ。

 これだからクソゲーは困る。そんなことを思いつつ立ち上がり、尻をさすりながらパペットを回収する。

 当たり前だがウサギはとっくに逃げ去っており、辺りに動物の影は無し。実験終了だ。

 

 

 

 ――魔人形操師の象徴にして主力となる2つの能力のうちの1つ。

 それこそが、“ぱぺっと制御(こんとろーる)” である。

 

 対象を模したパペットを相手の額に当て、「ぱぺっと制御(こんとろーる)」と発言することで強制契約。対象を操ることができる魔法。

 対象が支配に抵抗した場合、魔力を消費して押さえつけることができる。支配の強度と魔力消費量はパペットの出来に依存。出来が良ければ支配しやすくなり、魔力消費量も減少。出来が悪ければその逆となる。

 相手の抵抗に怯んだり魔力切れになると契約は解除され、例のペナルティが発動。自分から契約を解除した場合はペナルティは無い。

 

 他にもいろいろとできることはあるんだが……ま、それはおいおいだな。

 兎にも角にも、今の最優先課題はパペットのランクをどうやって上げるか。それに尽きるね。

 

 

 

 そんなことを考えながらポケットに手を突っ込んでいると、左手に反応。どうやら悪魔ちゃんが復活したようだ。

 

『うニャ~、今日は厄日ニャ。散々だニャ~……』

 

『見事にグロッキーでございますにゃ。クロコは大丈夫にゃのでございますにゃん?』

 

 天使ちゃんに促され状態チェック。

 ……ん~、ちょいだる? けっこう魔力を消費したからか、微妙に倦怠感がある感じだな。

 

 となると、ここは失った魔力を回復したいところ。

 “ナス食え!” なら薬か宿屋で回復できるのだが、この世界の基準に適応した肉体だとどうなのかがわからんのよなぁ。

 まあ、ともかく試してみないと始まらん。食べて、寝る! 猫らしく自由気ままにぐーたらしてみよう!

 

 きゅるる~……

 

 お、ちょうど腹の虫も鳴いたことだし、いっちょ美味い飯にありつけるよう験担(げんかつ)ぎでもするか!

 空を見上げるように顔を上げ、遠くを見つめる。

 そして――

 

 

 腹が……減った。

 

『ぽん♪』(近距離(1カメ))

 

『ポン♡』(中距離(2カメ))

 

「────ぽん」(遠距離(3カメ))

 

 よし、店を探そう。

 

 

 2人が例のお店探索時のBGMを “にゃ” と “ニャ” で歌い始めたのをきっかけに、俺も適当に足を進める。気分は孤独でグルメな貿易商だ。

 

 そうそう、っていうか口動いたし声も出たよね。めっちゃ()っちゃかったけど。さすが設定上は大道芸人(エンターテイナー)、ネタには反応するんだよな。

 というのも、実はこれが発声例外設定の2つ目だからだ。ちな、1つ目は能力名を口に出す時やで。

 

 さて、店は冗談としても飯と寝床は探さないとな。

 まあ、幸いなことにここは豊かそうな森の中。ぽきゅぽきゅ大地を踏み鳴らしながら少し歩けば……ほら、木の実発見! ひゅ~♪ よりどりみどりってやつぅ?

 猫人(クロコちゃん)の身体能力なら木登りも楽勝楽勝。待ってろよ晩ごはん~。

 

 

 

 

 

 

『うニャ~、食べるべきニャのか、やめとくべきニャのか……』

 

(にゃや)ましいものでございますにゃん』

 

 夕方、偶然見つけた小川のほとりで悩む俺たち。その足元には多種多様な果物、木の実、キノコなどの収穫物が置かれている。大漁なり~。

 しかし、肝心の空腹は一切解消していない。なぜなら、これらを食べていいのかがわからないからだ。

 当然だが、現在の俺には毒の治療法が存在しない。もし、この中にハズレが混ざっていた場合……『ざんねん!! わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!』になっちゃう可能性があるんよなぁ。

 

 同じ理由で目の前を流れる水も飲めない。なんかちょっと濁ってるし。う~ん、転生場所付近の水はキレイだったのになぁ。どうにかして携帯すべきだったか……。

 されど諦めるわけにもいかないため水場の近くを未練がましく陣取っていたわけだが、後になって思えば悩む場所はもっと考えるべきだったんだよ。

 俺が何時間も歩いてようやく見つけた水場(イコール)他の生物にとっても貴重な水場ということでもあるわけでして。

 

 ────当然、害悪なヤツだって利用するよなあ!

 

 前世より鋭敏な大きな猫耳が、ガサリという葉音を捉える。瞬間、尻尾の毛が逆毛立ち、自然と猫科特有の警戒ポーズへと移行した。

 そんな俺の視線の先、葉音の発生源である茂みから現れたのは――!

 

「…………ゴブゥ?」

 

「ゴブッ!!」「ゲヒャッ!!」

 

 緑色の皮膚を持つ醜悪な子鬼たち――ゴブリン(仮)が3匹、こちらを見て(よだれ)を垂らしていたのだった。

 

 

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