TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い)   作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N

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1-5 『ゴブリン戦後』と『出会い』の間に挟まる話

 

 

 

 ゴブリンとの戦いの後、武装解除を終えた俺たちの前にとある問題が浮上していた。

 

『う~ん。このゴブリンたち、どう処理すべきにゃのでございましょうか……』

 

『レイパー死すべし慈悲はニャい……とは言ったものの、ただ殺すだけってのも芸が(ニャ)いニャ~』

 

 その問題とは、コイツらどうすっぺ、ってことだな。殺すのはまあ前提として、何か俺の役に立つ殺し方はできないかと模索してるわけよ。

 キョロキョロと辺りを見渡す。すると、小川の側に置きっぱなしになっていた食料(仮)が目に入った。同時、俺の腹から飯はまだかという催促が……お!(電球(ぴこん))

 

 ふっふっふ、私にいい考えがある。

 

 俺はパーカーをトレイ代わりに使って食料(仮)を持ってくると、ゴブリンの1匹に1種類ずつ見せていく。幸い、しびれてても目や表情の動きである程度の感情は読めるからな。

 

 1種類目……特に反応なし。

 2種類目……特に反応なし。

 3種類目……目の輝きが増し、舌がわずかに動いたな。好物か?

 4種類目……目ん玉をかっ開き、だらだらと汗を流している。ほぉ~ん?

 

『キシシッ♡』

 

『はい、あ~んでございますにゃん♪』

 

 悪魔ちゃんがゴブリンの口をこじ開け、天使ちゃんが4種類目のキノコを投入。ついでにボロ桶に汲んでおいた水を流し込んでいく。

 飲み込んだのを確認後、他のゴブリンズにも同様の実験……じゃない、給仕を行う。おかわりもいいぞ!

 

 

 

 ――数分後

 

『じゃじゃーんニャ!』

 

『選別完了でございますにゃー!』

 

 前方に選別済み食料(天国)、後方に悶え苦しむ緑ども(地獄)

 ま、これでも安全だとは断言できないんだけどな。コイツらが同じ人型とはいえ、種族が違う以上はどうしても限界があるよ。

 だが、現状ではこれが限界だし、猶予のある空腹はともかく水と魔力は補給しないと命に関わる。腹くくって逝ってみよう。

 

 もぐもぐごくごく……お、案外イケるやん。

 

『そりゃ良かったニャア。……それにしてもチビジャリ、人畜無害そうニャ顔して悪魔のようニャ所業を平然とやってのけたニャね。日本人の倫理観とかどこ行ったのニャ?』

 

『今のクロコはゲームキャラを基としたファンタジー世界の住人でございますので……』

 

 そうね、多分天使ちゃんの言う通りなんだと思うよ。

 心優しき聖女って設定の女の子ですら、人間や人型生物を杖という名の鈍器で殴り殺すのがゲーム世界の戦闘倫理だ。その影響を受けている以上、前世の “俺” と今の俺は厳密には違う精神性なんだろうね。

 ……いや、前世の俺でもレイパーには容赦しなかったような気もするっちゃするけどな。

 

 ま、この程度なら想定内想定内。天使様の調整を受け入れた時点である程度の精神的な変異は覚悟してたさ。実際、息子(意味深)との別れすら引きずることなく乗り切ってるわけだしな。

 むしろ、この世界の弱肉強食度合いによっては倫理観とかクソの役にも立たない可能性だってあるんだ。“殺し” への葛藤(無駄なイベント)が省けたと思っとけばそれでいいのさ。

 

 それよか、もうすぐ日が暮れそうだな。()()()()()()()()、どこか寝られそうな場所を探して今日の探検は終わりにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 ――翌朝、大あくびと猫伸びとともに起き上がる。ぐっもーにん!

 

 ……え、襲われたばかりなのによく熟睡できたなって?

 そりゃ、今までの出来事でクロコちゃんが本物の野生猫並みの危険察知能力を持ってることが判明してるからな。熟睡は娘への信頼の証よ。

 

 ただ、1つだけ誤算だったことがある。思ってたほど魔力や体調が回復していないのだ。どうやら食っちゃ寝すれば全回復、というわけではないらしい。うぅ~ん、寝床の質が悪かったのが原因か、それとも回復薬とかじゃないとダメなのかねぇ?

 この辺りの事情は俺だけでどうこうできるものじゃないだろうし……むむむ。

 

 うん、今日の目標は決まったな。人を探そう。

 

 昨日の現場となった小川に戻り、川沿いを下ってゆく。遭遇戦とかのリスクもあるけど、闇雲に歩くよりはマシという判断だ。

 道中、食料の探索とつまみ食いしながら歩いていると――猫耳&尻尾(レーダー)に感あり。

 すぐに木に登って身を潜め、反応のあった方向を注視する。すると、そこにいたのはまたもやゴブリンたち。食料でも探しているのか、視線を下に向けてチームで歩いていた。

 気づかれてないなら俺からちょっかいかけたりはしない。無事、スルーに成功したわけだが……なーんかゴブリン多くね? これが普通なの??

 

天使様(あの方)が女の子とにゃったクロコを、(にゃん)の理由もにゃくレイパー(ゴブリン)が蔓延る地に転生させるとは思えませんが……』

 

 ウチの腹黒天使ちゃんならともかく、あのオドオド天使様がそんな鬼畜なことするわけないじゃん。ということは、何らかの訳があると見るべきか。

 

『単純にゴブリンごときに苦戦するニャんて思わニャかったんじゃねーニャ? チュートリアルとか言ってた誰かさんと同じで想像力が足りニャいニャン♡』

 

 誰だよそのマヌケ。ゲームと現実の区別もつかないのかよwww

 ……いや、悪かったって。反省してるから2人してポケットに帰ろうとしないで。寂しいからぁ……。

 

 

 

 さて、そんな茶番も挟みつつ人探しを続けること数時間。ちょいちょい遭遇するゴブリンに嫌気がさし始めた頃のこと。

 すっかり見かけなくなった食料に首を傾げつつ川沿いの痩せた木の上で休憩していると、突如として尻尾が激しく反応したのだ。それだけでなく、同時に強い危機感と焦燥感まで感じるという。

 慌てて周囲を見渡すも、特に異常は無い。どうしたことかと尻尾を見れば……え、なにこの異様な反応は。

 

『2本の尻尾が “(ハート)マーク” を形取り――』

 

『ハートが割れて “×(バツ)印” にニャるよう交差――』

 

 そして最後に、2本ともが同じ方向を指し示すかのようにアッピルしている……と。よくわからんが、何故か尻尾がこの3動作を繰り返しているのだ。

 多分、これも何らかの能力の影響だとは思う。ただ、記憶の鍵が足りていないからこの反応が何を意味しているのか謎なんよなぁ。

 

 ――まあ、走るんですけどね! 急げ急げー!

 

 だって、感じたのが危機感と焦燥感だもんよ。ぜってー動かなきゃ後悔するやつじゃん。

 尻尾に先導される形で森の中へ突入、しばし道なき道を全力で駆ける。ぽきゅきゅきゅきゅ!

 そして、息がかなりあがってきた頃――

 

 

 

「きゃあああ!? このっ、こっち来んなあ!!」

 

 

 

 耳朶を打つ、甲高い女性の悲鳴。レイパー蔓延(はびこ)るこの森の状況下で、最も聞きたくなかったもの。

 動かない表情筋の内側で歯を食いしばり、さらに加速――見えた!

 

「ゴブッ、ゴブゴブブ!!」

 

「いやだ……! ふざケロ触んな! 放しなさいよもうっ!!」

 

「ゲヒャ! ゴブブゴブ――ゴブゥ?」

 

 斜面の下の方に複数のゴブリンと、襲われている少女。既に引き倒されてしまっているが、激しく抵抗していてまだ無事だ。不幸中の幸いだな。

 問題はまだ距離があることだが……よし、俺の無駄に響く足音に気づかれて暴挙が止まった。サンキュークッツ。昨日は邪魔者扱いしてゴメンよ。

 

『これまた熱いテノヒラクルー、染○助・染○郎師匠もビックリだニャー』

 

『いつもより多めに回しておりまーす!』

 

 うるせー引っ込んでなさい!

 

『あ~――』

『れ~――』

 

 2人の代わりに両手にゴブパペットを装着――と、ここで少女もようやく俺の存在に気づいたのか、大きく目を見開いている。

 

「え……あっ! ダ、ダメよ、来ちゃダメ! 早く逃げなさい!!」

 

 うわヤベェ。あの()、絶対いい子だ。

 俺の身体が()っこい事を考慮したとしても、彼女の状況でいったいどれだけの人間が今のセリフを言えることか。こりゃ絶対に助けないとなあ!

 

 斜面を駆け下りながら脳内作戦タイム。まず、戦闘は悪手。即座に頭からポイ捨てる。俺1人の状況でもあんま余裕なかったのに護衛しながらなんてできるか!

 また、同様の理由で逃亡も難しいだろう。少女が1度追いつかれていると予想される以上、逃げ切るには護衛の必要があるからだ。

 となると、ゴブリンの方から逃げ出してもらう必要があるわけだが……アイツら俺のグロドッペル見ても平然としてるんだよなぁ。

 

 …………ならば、別種類の恐怖を。

 

「――ぱぺっと操霊術(ねくろまんしー)

 

 2つのゴブパペットが、不気味な黒いオーラに包まれる。それと同時、パーカーのポケットから黒い(しずく)が漏れ出し、地面に吸い込まれるように消えてゆく。

 そして――

 

「ゴブ? ――ブギャアアァァ!?」

 

 1匹のゴブリンの足元がドス黒い水面のように波打ち、そこから()()()()()()()()()()()()()()()()()が這い出てきたのだ。さらには、他のゴブリンの足元からも弓を持ったゴブリンが這い()づる。

 しかし、2匹のその顔に生気は無く、舌をだらりと垂らして白目を剥いているではないか。その姿から誰もが察するだろう――コイツらはもう死んでいる、と。

 それはゴブリンどもも例外ではなく、2匹を指さしてガタガタ震えていた。お、もしかして知り合いだったかな?

 

『『──────』』

 

「…………ゴ、ゴブブ……?」

 

『『――ケタケタケタケタ』』

 

「「「ゴブギャアアアアア!?!?」」」

 

 緊張が最高潮に達した瞬間、静寂に包まれていた森の中を狂った人形のようなワライゴエが響き渡る。これには流石のゴブリンどもも耐えられなかったのか、一目散に逃げ出していった。

 この反応の違いを見るに、昨日の連中が俺のゴブリンドッペルにビビらなかったり躊躇なく攻撃してきたのはアレだな。再現度が低すぎて、そもそも同族として認識されてなかったっぽいね。

 うわっ……私の裁縫の腕、低すぎ……?

 

 さて、兎にも角にも危機は脱した。死体を操る能力も試せたし、まあまあの成果なんじゃない? やったぜ。

 

「……………………」

 

 ただ、俺の想定以上に演出がおどろおどろしかったせいなのか、救助対象まで怯えちゃってますねぇクソが!

 

 

(『テノヒラ』)(『クルー』)

 

 

 うん、なんか聞こえた気もするが気のせいだな!

 

「アナタ、いったい……」

 

 おっと、少女の方から話しかけてきてくれたか。こいつはありがたい。

 そんじゃ、ここはいっちょ陽気な自己紹介でもするとしますか。

 

「────────」

 

「ちょっと、な、なんか言いなさいよぉ……。目も表情も見えないんだから、なんか言ってくれないとわからないじゃない……」

 

 ま、できないんですけどね。ちくせう。

 っていうか、やっぱ他人からは俺の目って見えないんだな。なんでか注視すれば前髪が透けるからワンチャン他人からも見えてるかもと思ってたんだが。便利なのかそうじゃないのかわからんな、このマジックミ◯ー号ヘアー。

 ったく、誰だよこんな害悪設定盛ったヤツは。でもかわいいしゅき♡ ラブリーマイエンジェルくろこたんLOVEにゃん♡ もえもえキュン♡♡

 

 

(『ヴォエッ』)(『さ、寒気がするニャ……』)

 

 

 おい、そのガチでドン引きしてる人のトーンやめろ。おら、出番やぞ。仕事しろキミたち。

 

『呼ばれて飛び出て!』

『じゃじゃじゃじゃーんニャ!』

 

「…………は?」

 

 どうでもよくないけどツリ目ぎみの女の子が目を丸くしてポカンとしてるとかわいいよね。ギャップ萌え。

 さて、そろそろ真面目にやるよ2人とも。表情を見るに、どうやら道化に徹してた成果がようやく出てきたようだし。

 

『ご無事で(にゃに)よりでございますにゃ。わたくしは天使ちゃん、しがにゃい天使にございますにゃん』

 

『ちったぁ緊張が解けたニャ? オイラは悪魔ちゃん、偉大ニャる悪魔ニャー!』

 

「え、あ、うん…………うん?」

 

 俺の顔と、わちゃわちゃ動き回るパペットの2人の間を視線が行ったり来たり。その度にツインテールにしている緑がかった金髪が俺の尻尾みたいにフリフリ揺れてかわいい。おそろい~。

 まあ、戸惑うよね。この娘からすれば一難去ってまた一難みたいな状況だもんな。クロコちゃんのキャラが特殊すぎて、本当に申し訳ない(MTLMN)

 

『そんでこっちのチビジャリが』

『魔人形操師のクロコでございますにゃん』

 

 っと、俺の番か。

 チョーカーに付いている “965(クロコ)” と刻まれた銀細工をピンッと弾いてもらい、くるっとバク宙して猫のポーズ。イェーイだにゃん!

 

「ア、アタシは――」

 

 目をパチクリしながらも少女が自己紹介を返してくれようとした────瞬間、少女を抱えて全力で跳ぶ。

 弓持ちのゴブリンに初めて射掛けられた時と同種の、しかしそれを優に超える危機感を覚えたゆえの咄嗟の判断だったが……どうやら英断だったようだなあ!

 

 俺と少女がいた場所に着弾する、10を超える小石。その大きさはビー玉~ゴルフボール大くらいで、散弾のように放たれたソレに当たれば大怪我は免れなかっただろう。実際、木や地面がへこむ威力だし。

 次弾が飛んでこないことを確認し、少女を下ろす。そして、小石が飛んできた方を見遣ると……そこにいたのは、180cmを超えていると思われる筋骨隆々の醜男。

 

「そんな……アイツはゴブリンの中位種、“ゴブリン闘士(ファイター)” じゃない……」

 

 “絶望” の2文字をその愛らしいお顔に貼り付けている少女からの情報。……下位が今までのゴブリンだとすると、たった1段階でちょぉぉっと進化しすぎじゃない!? ポケ○ンかよ!

 あんなマッチョ、チュートリアルの次に出てきていいヤツじゃねーぞ。幸い、距離は離れているし身体は見るからに重そう(俗に言う “上半身に比べて下半身が貧弱過ぎるだろ” 体型)だ。逃げるが勝ちだぜ。

 

 ただ、問題なのは――

 

「…………ぁ」

 

 ()()()()()()()()()()少女と前髪越しに目が合う。

 その吐息とともに思わず漏れたらしい言葉は、何を察したゆえなのか……。

 

 さて、今の俺の種族は猫人だ。身体能力の特徴もだいたい猫と一緒だとこの2日間で判明している。

 つまり、瞬発力は抜群だけど()()()()()()()ということ。実際、今までの道中でもかなりの頻度で休憩を挟んでたりするんよ。

 だから、少女を抱えての走り幅跳び5メートルは簡単にできたのに……恐らく、100メートルも抱えて走ればガス欠を起こしちまうんじゃねーかなぁ。

 となると、俺が取れる選択肢は――

 

 ポコン

 

 ――ん?

 闘士の様子をうかがう俺の後頭部に何かが当たった。足元を見ると……小枝?

 前方から完全に目を背けるわけにもいかないので肩越しに犯人を見遣る。すると、俺が庇おうとしている少女は、あろうことか不機嫌そうにこちらを睨みつけていたのだ。

 

「まったく、下賤で半端な猫人風情がアタシに触れてんじゃないわよ」

 

 ────は?

 

「聞こえなかったの? ハッ、そのご大層な耳は飾りってわけね」

 

 ……なんだコイツ。

 

「あーあー、あんな雑魚相手に尻尾巻いちゃって。情けないことこの上ないわ」

 

『お、お(ミャー)だって怯えていたニャ! ざこざこニャン!』

 

「……高貴な森のエルフであるこのアタシが? そんな髪型してるから見間違え……ああ、目が腐ってるから隠してるわけね。納得だわ」

 

 そう吐き捨てるように言うと、髪をかきあげて俺に耳を見せつける。その耳は確かに人間より長く、先端に向かうにつれ細くなっているようだ。

 

「まだいたの? アナタみたいな卑しき者がいるとエルフの神聖なる魔法が使えないんだけど? さっさと失せなさい、しっしっ」

 

 ああ、そうかよ。チッ、助けて損したな。

 言われなくてもスタコラサッサだぜ。あばよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――とでも言わせたいんだろうな。恐らく、状況的に考えて魔法なんて使えないのだろうに。

 

 あーあー、心にもない暴言の度に服を握りしめちゃって。冷たい表情を偽装(つく)ることに精一杯で、震える手元にまで意識がいってないのだろう。無表情な俺と違って勤勉な表情筋を持つと大変だにゃあ。

 ったくやれやれ、美少女のそんな悲壮な決意に揺れる瞳を見せつけられたらさあ……男として覚悟決めるしかねぇじゃんよ!

 

 気合は十分、戦闘開始だオラァ!!

 

 

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