TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
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俺とエルフっ娘が逃げ出さないからか、ゆっくりと威圧するように近づいてくるゴブリン闘士。
現時点でアイツに通用しそうな手札は2つ。ぱぺっとこんとろーる後の自傷と、弓ゴブのしびれ毒矢だ。
…………うし、とりあえずの作戦は決まった。
まずは俺から距離を詰める。エルフっ娘が近くにいると戦闘の余波に巻き込んじまうかもしれないからな。
まさかこっちから突っ込んでくるとは思ってなかったのか、少しだけ動揺した闘士が腰に差している棍棒を取り外そうとしている。
これは早々にチャンス到来。後ろへの警戒がお留守だぜ!
「――ぱぺっと
闘士の背後から這い出てきた弓ゴブが毒矢を放つ。矢は吸い込まれるように闘士の背中に突き立ち……って、刺さらねぇ!? だあああっ、皮膚が
でもまあ、これは想定内だ。本命は “ぱぺっとこんとろーる” の方だからな。ヤツの意識が後ろの弓ゴブに向いた瞬間に飛び込んでやるわ!
『後ろを……後ろ……そ、そんにゃっ!?』
意識が向かない!? ダメだコイツ、矢の威力が低すぎて気付いてすらいねぇ! クソがあぁぁっ!!
目前にまで迫ってしまった闘士は棍棒を構え、万全の体勢で待ち受けている。対し、俺は思惑が外れたことで動揺しまくっている状況。この不利な状況下でヤツの間合いに入ったが最後、俺はホームランされちまうことだろう。
俺は即座に急ブレーキを選択。ぽきゅいぃぃ、と音を立てながら足を突っ張り────目と鼻の先を棍棒が通過していくのを見たのだ。あっっぶねええ!?
だが、俺の窮地はまだ終わらない。
流石は闘士と名付けられたゴブリンだ。間合いに入ってきた獲物に繰り出すラッシュはなかなかに正確で、俺は回避だけで精一杯。防戦一方となりヤツの額に手を伸ばす余裕なんて無い。オマケに苦し紛れに出したナイフ持ちの攻撃は歯牙にも掛けられない始末。
くっ……このぉ……っ!
だーー、俺にもっとリーチがあればなぁ! 助けてインドのストリートファイター兼ヨガマスター!!
「きゃあ!? コイツら、またっ……!」
――背後から悲鳴。
俺は操作をスパッと諦めて後方へ大ジャンプ。くるくる回りながらエルフっ娘の様子をうかがう。
彼女は木に背を預け、枝で周囲を牽制していた。その対象は、またもやゴブリンたち。恐らく先程のヤツらが戻ってきてしまったのだろう。えんがちょな嗤い顔でエルフっ娘に
「――ッ、――ぱぺっと
ナイフ持ちと棒立ちになっていた弓ゴブを戻し、エルフっ娘を守らせるように再召喚。
先ほどと同じように逃げ出してくれれば万々歳だったのだが、再度同じ手は通じないようだ。恐らく、闘士という圧倒的強者がいるから気が大きくなってるんだろうな。虎の威を借りてんじゃねーぞゴルァ!
「GBUUU!!」
「――ッ」
俺の意識が逸れていたスキを突かれ、再び闘士の間合いに取り込まれてしまう。
いちおう回避に専念すれば均衡は保てるが――
「「ゴブ! ゴブゴブ!!」」
「どっか行きなさいよ! このバカどもっ!」
エルフっ娘側にも意識を割かないと操作が疎かになっちまうっていうね! でも、それをやると今度はこっちが疎かに……! やることが……やることが多い……!!
だーーもうっ! このままじゃ頭がパンクすりゅぅぅ――って、棍棒がカスッた!? 無理ムリむりぃ! 死ぬ、
(『ニャにやってんのニャ、チビジャリ! オイラたちのこと忘れてんじゃねーニャ!』)
(『わたくしたちは、ただのマスコットでも話し相手でもございませんにゃ。本来の役割は――』)
っ……! ああそうか、そうだったな。
俺の魂を分割してまで創造したのが2人だ。それが、ただの賑やかしなワケがねぇ。彼女たちは俺の目であり、耳であり、口であり──── “手” でもあるんだからな!
「――ユーハブコントロール」
(『アイハブコントロール、ニャ!』)
「――託しますわ――あにャたに」
(『受け取りました、あにゃたから……! ――しゃあ!
俺が完全にパペット操作から意識を手放すと同時、本来なら棒立ちになる2匹のゴブリンが
これこそが分け御霊が恩恵の1つ、“並行操作” だ。天使ちゃんと悪魔ちゃんに操作を任せることで、俺がフリーになる(腕は除く)能力。
また、普段から俺の腕で好き勝手してる2人が操作を担当するんだ。俺より腕を繊細に動かすことが可能
おしおし、これであっち側は数的不利(2vs5)の状況でもイーブンくらいにはなった。しびれ毒矢もある分、次第にこちらへと天秤が傾いてくるだろう。
ただなぁ……
「GOB! BGOOOU!!」
「――ッ、――ッッ」
こっちの状況が如何ともし難いから困るんよ。闘士と俺、お互いに決め手が無い膠着状態だ。
だが、それもいつまで続くか……。正直、戦いが長引くと不利になる可能性が高いのは俺の方なんだよな、多分。
その理由は2つ。
1つ、戦いが長引いた場合に闘士は体力を失うだけで済むが、俺は体力に加えて魔力も失っていくことが挙げられる。しかも、俺の身体は体力魔力ともに万全じゃない状態から戦闘がスタートしていることも考慮する必要があるのだ。
2つ、増援の可能性。俺に当ては無いし、エルフっ娘は不明。対し、ゴブリン側はいつ来ても不思議じゃないのがこの森の現状だ。下位のゴブリンならまだしも、中位種が1体でも追加されたらその時点でほぼ詰みとなる。
…………決めた。このままじゃジリ貧だというのなら、一か八かで飛び込むしかあるめぇよ。
タイミングを慎重に見計らって――今だっ!
ラッシュの中で放たれた、他の攻撃と比べてわずかに大振りな大上段からの叩きつけ。それを必要最低限のサイドステップで躱し――またカスッたああ!?――お、恐れず一気に飛び込めっ!
そんな大博打の甲斐もあり、俺の手がヤツの額に触れる――
――寸前
「────ッ」
突如として訪れた衝撃と浮遊感。そして、離れてゆく闘士との距離……。
ヤツの体勢を見るに、どうやら俺は咄嗟に手で払われたらしい。人間が不意に現れた羽虫にやるようにな。
だが、そんな攻撃とも呼べない反射に近い行動でも、子猫人の軽い肉体には驚異だ。現に俺の身体はエルフっ娘たちの近くまで弾き飛ばされてしまっている。
幸い、ダメージは軽い。普通に着地すれば戦闘継続は可能だった。
…………可能、
不測の事態が訪れた時に生物はまず、本能や習性に従った動きをしようとする。
では、猫に近い動きを自然と取る猫人が不意に空中へと投げ出された場合どうするか? 答えは、両手足のバネを使って着地の衝撃を和らげようとする、である。
当然、俺の身体もこの習性通りの動きをしようとした。だが、ここで “俺” という異物の存在が牙を剥く。
俺はこの身体に転生して以降、高いところから跳び降りる時は両足のみで着地していた。それは、人間だった頃からの着地法だというのもあるが、何より生命線である両手に負担をかけないためというのが大きい。
つまり、俺が今回取ってしまった行動はこうだ。
弾き飛ばされた直後、俺の身体は自然と体勢を整えて両手足で着地をしようとした。しかし、接地直前に
その結果は――
「――ッ゙」
(『クロコ!?』)(『チビジャリ!?』)
「ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」
無様にも両膝を強打し、勢いのままにゴロゴロと転がる俺の身体。ようやく止まる頃にはエルフっ娘の足元にまでたどり着いており、心配と不安で圧し潰されそうな瞳が目に入った。
そんな顔をさせてしまった罪悪感と自己嫌悪に浸りつつも立ち上がろうとして……直後、膝を襲う激痛に崩れ落ちる。
「あっ、そんな……アタシ…………」
背中を悪寒が這いずり回り、額に感じるイヤな汗。何度起き上がろうとしても応えてくれない両足に、俺は最大の失態を悟る。クロコちゃんの2つの武器の1つ、身体能力を失ったのだ。
天使ちゃんたちが仕留めきれなかった下位ゴブリンズが、それはもう不快な顔で近づいてくる。
本体である俺が深刻なダメージを負ったせいで弓ゴブたちも消えた今、俺とエルフっ娘を守る盾はいない。再召喚はクールタイム中で不可能(術を破られたペナルティ)だ。
端的に言って、絶体絶命である。
……だがまあ、ヤられそうな状況ってのもそんなに悪くない。
(『うわキモ』)
(『その願望は悪魔でも食えんニャ……消化不良起こすニャ……』)
コラそこ、勘違いすんな。あとガチトーンやめろ。
当たり前の話だが、密着しないとヤることヤれないわけだ。それすなわち、獲物の額に俺の手が届くということでもあるわけでして。
リスクは高いし心情的にもキツいから今まで選択してこなかったけど、実は最も楽な強制契約の方法ではあるんだよな。
とまあ、俺はこの時点ではまだ希望を捨ててなかったわけだが。悪いことは重なるとでも言うべきなのか。
ゴブリンの接近を待っている俺の身体に、予期せぬ方向から来た生物が覆いかぶさってきたのだ。その予想外の行動に反応が遅れ、俺はあっけなく仰向けで押し倒されてしまった。
まさかの増援!? そう考え、さすがにテンパった俺の視界に映るのは――エルフ耳と緑がかった金髪。
……おいおい、冗談だろ?
「動かないで。諦めて大人しくしてなさいな」
突 然 の 裏 切 り ☆
いや、ネタに現実逃避してる場合じゃねーんだわ。どういうことだってばよ!?
俺を押し倒したのはエルフっ娘だった。しかも、小学生体型の俺よりかは大きい彼女に全身をガッチリホールドされているため、手すら満足に動かせない状態で……あれ、これ詰んでね?
「ちょ、抵抗しないでってば……! 大丈夫、こんなヤツらなんて……ア、アタシ1人で十分なんだからっ」
うおー、放せー……って、ん? どういう意味? もしかして、裏切ったわけじゃない??
ん~? ……あ、そういうことか! この娘、自分を餌にすることで俺の貞操を守ろうとしてるんだ!
おいおい、どんだけ自己犠牲精神の塊なんだよ。というか、それやるなら元男の俺の方がダメージ少ないだろ。やっぱ放せーー!
そうして俺たちがワチャワチャやってる間に、ついに下位ゴブリンの魔の手がエルフっ娘に伸びようとした時――
「GYBUUUUUU!!!!」
「ゴブッ……!?」
「ブギッ、ゴギャブブ!!」「ゴブブ! ゴブギャア!!」
「…………な、なに? なんか言い争ってる……?」
遅れて接近してきた闘士が発した、下位ゴブどもを一喝するような大声。それにビビったヤツらの手が止まる。
なんだなんだと見守っていると……2匹のゴブリンが闘士のもとへ向かい、なにやら抗議し始めたようだ。しかし闘士は聞く耳を持たず、2匹を文字通り足蹴にして一蹴している。扱いヒデェなオイ。
――ひょっとして、一番槍(意味深)の取り合いか?
そんな俺の予想は、闘士が俺たちに向けて棍棒を両手で大きく振りかぶったことで否定された。どうやら “お楽しみタイム” は設けず、一思いに殺してくれるらしい。
なるほど、この世界の人がコイツらに “
「っ……! ごめんね、アタシを助けようとしたせいでアナタまで……」
俺に覆いかぶさってるエルフっ娘がギュッと目をつぶり、謝罪してくる。俺が勝手にやっただけなんだから、別に気にせんでもいいんだけどな。
そんな思いを込めて軽く抱きしめ、その震える細い身体を優しく撫でる。あーあ、こんな状況じゃなければ役得だと喜べたハズだったのに。うまくいかないものだにゃあ。
……ま、せめてもの救いはこの娘の女性としての尊厳だけは守れたことか。前世で何も成さず、ただ無益に死んだであろう俺が頑張った結果がコレなら上出来なんじゃねーの?
そう納得し、諦観に身を委ねるように目を閉じた俺の耳に、少女の最期の言葉が届く。
「ごめんね、みんな。それから……今までありがとね、クーねぇ────」
「 大 好 き 」
ドクン
――心臓が爆ぜる。全身に
くわっ
――目を見開く。
ガゴッ
――地より伸びた緑色の細腕が、ナイフで棍棒を受け止める。その物理法則を無視した現実に、怯えし
ぽきゅんっ
――呆然とするエルフっ娘の身体を優しく
「……は、え? な、なによ、この魔力の嵐は……っ! なんか膝の怪我も治ってるし! どうなってんのよーー!?」
俺の激しい怒りと歓喜が木々を震わす。身体が淡い光に包まれ、傷や体力が回復してゆく! 魔力が
そんな俺の突然の覚醒に、エルフっ娘の頭上で疑問符が飛びかっているようだが、別に不思議なことはない。
――だって、そうだろう?
“百合” は全てを解決するのだからっっ!!(ドンッ)
エルフっ娘の最期となっていたかもしれない言葉。彼女の人生で出会った人物のほとんどを “みんな” と括ったであろうなか、1人だけ特別扱いされた “クーねぇ” なる人物はいったい誰なのか? 彼女とはどんな関係なのであろうか?
現時点で与えられた情報は呼び名のみ。“クーネェ” という名の男性かもしれないし、何らかの役職名という可能性もあるだろう。
だがしかし! 俺はここで “クー
だとすれば先程の言葉は愛の告白に相違なし。環境のせいで終ぞ口に出せなかった秘められた想いに他ならぬ!
血が繋がっている姉妹の禁断の愛だろうか? それとも、兄嫁に抱いてしまった禁忌の愛?
はぁぁぁん、どちらにせよてぇてぇなぁ……♡(恍惚)
この尊さにかかれば膝の打撲の治癒なぞ、お茶の子さいさいなのは疑問の余地もないだろう。*1
なんせ、前世において『百合は将来ガンに効くようになる』と世間一般で認知されていた万能薬候補だ。ファンタジー世界なら一瞬で怪我や体力魔力が全快しても不思議じゃないさ!*2
「GOB……GOBBUUU!」
予想だにしてなかったであろう事態に怯えていた闘士が、恐怖を振り払うように再攻撃を仕掛けてくる。チッ、百合に浸る時間を邪魔するとはなんたる無粋……!
あふれ出そうになる怒りを抑えつけ、
目障りとばかりにナイフ持ちに振り下ろされる棍棒。当然、体格に武器等、あらゆる面で不利なナイフ持ちはぺしゃんこに潰され――
(『どっせえええい、でごぜーますにゃん!!』)
「うそっ、また受け止めた!? なんで……さっきまでまるで歯が立ってなかったのに」
――潰されない。それどころか天使ちゃん操作のナイフ持ちは攻撃を受け止め、つばぜり合いで拮抗させているではないか。
(『ホイ、一丁上がりニャ。キシシッ♡ 今のオイラにかかればこんなヤツらざこざこニャン♡』)
パタパタパタン、と3つ分の重量物が倒れた音。チラと視線を向ければ、そこには矢が突き刺さったまま白目を剥いている下位ゴブリンたちの姿があった。どうやら悪魔ちゃんが瞬殺してしまったらしい。
「ね、ねぇ! よくわからないけど今なら逃げられるんじゃない?」
逃げる? なるほど確かに。
あ……あいつを引き離せば……あいつを差し切れば……ほ……ほんとに……俺らの “命” は助かるのだろうさ。
「! なら早く――」
「────だが断る――にャ」
「なんでよッ!!」
そんなの、コイツらが大罪を犯したからに決まっているじゃないか。
俺たち百合厨には決して許してはならない存在がいる。不倶戴天の敵、それは―― “百合の間に挟まろうとする男” 。
ああ、思い浮かべただけでも
そして再び、俺の怒りのボルテージ上昇に併せるかのように魔力が荒れ狂い、森をざわめかすのだ……。
言っておくが、俺自身にも何が起こっているのかはさっぱり妖精だからな。ハァーさっぱりさっぱり。
だが、さすが俺。
ならば、その想いを解き放とう。表に出そう。
たとえ設定で表情と言葉の99%以上がカットされるのだとしても。百合を
────聴け、あまねく世界の野郎ども!
百合を愛で、そっと見守るなら同志として歓迎しよう、盛大にな!
だがしかし! 欲望に負けて禁忌を犯そうとするのなら、我ら百合厨は決して容赦しない!
覚えろ。そして心に、魂に刻み込め!
百合の間に挟まろうとする男には――
「―― “死” あるのみ ―― にャ 」
「GYAAAAAA!?!?」
言葉と同時に発された圧力を伴うナニカにより、俺の前髪がブワッとめくれ上がる。そして、その顕になった瞳を見た
ハッハッハッハ、どこへ行こうというのかね。さあ、第2ラウンドを始めようじゃないか!
※以下、お礼
本作を『お気に入り』『評価』『感想』『ここすき』等でご支援いただき、本当にありがとうございます。本作より前に数作品をハーメルンに投稿してましたが、これほど反応いただけたのは初めてでとても嬉しく思ってます。
TS作品を投稿するのは初めて(=初巡礼)ですが、流石はTS小説の聖地(性地)ハーメルン。並びにその巡礼者様方と言ったところでしょうか……!
これからも皆様の良きTS&百合ライフの一助となれるよう投稿していきますので、よろしくお願いいたします。