TSネコ少女おじさんは百合の間に挟まらない(叶わぬ願い) 作:TSの聖地(性地)ハーメルン巡礼者N
ざあざあと降り続く雨が室内の空気を重くする。ったく、ただでさえ湿っぽい雰囲気だってのにな。
「なんということだ……。この村はもうダメだ、お終いだぁ……」
「ウッソだろオヤジィ!? クソが、冗談じゃねえぞオイ!」
村長の娘であるレオーネ嬢の大予言からしばし、村長宅では緊急の代表者会議が行われていた。
参加しているのは村長一家に長老、自警団長など。俺とラーナたんは情報提供者としての参加。クーニュさんは……なんだろ? 保護者枠とかかな?
「レオーネの勘違い……いや、そうか! きっとラーナと黒猫がウソを吐いてるんだぜ! 俺たちが避難した隙に火事場泥棒でもするつもりなんだろオイ!」
「んなっ! バッカじゃないの、このドラ息子! 証拠の死体だってあるのに言いがかりはやめて!」
「わたしの勘違いであれば罰を受けましょう。ですが、今わたしたちがすべきことは最悪を想定して備えることですよ、兄さん」
「……チッ」
おーおー、女性陣はまだ諦めていないのに野郎どもの情けないこと。ダッセーの……とは言えないかなぁ、正直。
というのも、事態は俺たちが想定していた以上に逼迫していることがわかったからだ。
レオーネ嬢の知識、及びそれの基となった小冊子によると、この世界のゴブリンは基本的に単独の夜行性で人間の生活圏に姿を見せることは少ないらしい。
人間にとって奴らが有害になってくるのは、中位種以上が頭となり “群れ” を作った時。この段階になって初めて、自発的に人や獣人らにちょっかいかけてくるようになるそうな。だが、まだ夜行性なのと住処を変えたりはしていない。
奴らが昼行性かつ人間の生活圏の近くにまで進出してくるようになるのは――
「お客人の情報から、森に上位種率いる中規模以上の群れが存在するのはほぼ間違いありません。村人の目が届かなくなるこの時期に移住してきたのは偶然か必然か。いずれにせよ、発覚が遅れたことはわたし達にとっては不運ですね」
「でも、クロコちゃんのおかげで最悪の事態だけは避けられました~」
「はい。それと、少々難がある言い方になってしまいますが……ラーナさんが襲われたおかげで最も重要な情報を得ることができました」
「アタシ的にすっっっごい不本意だけどね!」
ここで言う “最も重要な情報” ってのは襲撃のタイミングのことだ。事前にわかっていれば、こうして備えることができるからな。
ラーナたんの証言によると、彼女がゴブリンと遭遇したのは森からの帰り道。正面からバッタリと、らしい。
この事実が意味すること、それはアイツらが
では、アイツらが偵察だったと仮定して現状をゴブリン目線で考えてみよう。
アイツらに偵察を命じた奴からすれば、現状はかなりマズイ状況なのは想像に容易い。なんせ偵察との連絡が途絶えたうえ、護衛だか連絡係だかに付けていた闘士の行方も不明なのだから。そら焦ることだろうよ。
そして、俺ならこう考える。『あ、これはバレましたわ』とな。
俺が単独行動していた際の下っ端ゴブリンズの行動――生活基盤の構築を優先――から考えるに、奴らはまだ襲撃態勢を整えきってはいない。なのに、獲物にバレてしまった。こうなると奴らが取れる手段は2つだけだろう。
再移住をするか、獲物が何らかの行動を起こす前にとりあえず襲っちまう。この2択だ。
村の人たちが備えるべきは当然ながら後者。増長しているであろうゴブリンどもが選択するのもまた、恐らく後者。
じゃあ、襲撃があるのはいつなのか。日は
――そう、襲撃は今夜だ!
「ラーナの
「っ、それは……」
うん、まあこれはどっちの見方も正しいとしか言えんね。ラーナたんを庇いたい、味方になりたいかそうでないかで見方は変わるのだろうよ(カイチョー)
それか……何も知らず数日の日常を過ごした後に蹂躙されるか、今からなんの覚悟もできないまま着の身着のままで逃げ出すか。どちらをマシと取るかで立場は決まるんじゃねーの? 知らんけど。
『そんにゃ不毛な議論をしている場合でございますにゃ? 時間は有限、これからの方針を決めることを優先すべきでございますにゃん』
『だからお
「ンだとメスガキゴラァ! オヤジがハゲ散らかしてるからって俺様もそうなるとは限らねーだろうがオイ!」
「……むぅ、確かにお客人の言う通り「マジかよオヤジィ!?」
親父さんの教育的一髪……違う、げんこつ一発が落ちた後、議論が再開される。
「ぐおぉ……! ほ、方針も何も防衛しかねーだろうが。自警団総出でなんとかしやがれってんだオイ」
第1案、防衛策。ま、これができるんなら万々歳だろうよ。……できれば、な。
「無茶言うなよ坊っちゃん。ザコだけならともかく中位種、終いにゃ上位種だあ? 素人に毛が生えた程度の俺らじゃあ手に負えない相手だぜ」
また髪の話してる……
おっと、なつかしのネタはさておき、そらお手上げだよな。実際に闘士を相手取った俺だから断言できるけど、アレは一般ピーポーには荷が重いよ。
「なら応援を呼べばいい。兵士でも冒険者でも、プロならなんとかなるだろオイ」
第2案、救援策。
そして、はい出ました “冒険者” 。これが出るとファンタジー世界にいるんだな、って実感が増しちゃうオタク心よ。
この世界の冒険者はどのタイプなんだろうなあ。ラノベの王道、地域の便利屋さん。ファンタジーの王道、命知らずな探検家。それとも、ド底辺が集まる半グレ集団か。
正直すっげー聞きたいんだけど……まあ、今は大人しくしておくべきか。
「バカもん。彼らが滞在するような規模の街まで、ここから何日かかると思っとるんだ」
ド田舎っぽいなー、とは思ってたけどやっぱそうなんだな。
う~むむ、これ詰んでね?
「だったら……いや待て。冒険者、冒険者……そうだぜ! クーニュがいるじゃねーかオイ! B級冒険者様がよぉ」
「──────」
「上位種とはいえ所詮はゴブリン。ドラゴ「っざケロ、バカー!」……ンだオイ?」
「クーねぇが冒険者を実質引退しているのを知ってるでしょ! 両足ともほとんど動かせないし、魔力だってアタシのせいで「ラーナちゃん!」……ともかく、すっからかんなのに戦えるわけないでしょうが!」
「だったらどうしろってんだオイ! 文句があるなら対案を出しやがれ!」
「そ、それは……近隣の村とか街に保護してもらうとか」
「ハッ、これだから世間知らずの小娘は。いいか、俺たち “無国民” が財と居住地を失った先に待つのは奴隷か物乞いの未来だけだ。俺はそんなのごめんだぜオイ」
「うっぐ」
「それと、逃げたら当然追ってくるだろうよ。そうなりゃ必然、最初に犠牲になるのは足の遅いジジババにガキども、加えて――足に障害のあるヤツ、とかなあ?」
「っ!」
「ラーナ、ちゃん……」
「そいつらの尊い犠牲で生き残っても結局は生き地獄。特にお前は悲惨だぜ? なあ────」
「 “ハーフエルフ” のラーナちゃんよぉ」
「っ!?」
「に、兄さん!? その話はお客人の前では!」
「ああン? あ、やべっ」
「あ……い、いやぁ……! アタシは……アタシ、は……っぅぅ」
「ラーナちゃん! 大丈夫、大丈夫だからおちついて、ね? それに、貴女を助けてくれたクロコちゃんならきっと…………あ、あららら~??」
「お客人?」
「いやいやオイオイ。なーにやってんだ、あの黒猫はよぉオイ」
「…………クロ、コ?」
ぬおおああああ゙あ゙!?
ね、ねこじゃらしなんかにぜったいまけないんだからああ あぁ^~心と身体がぴょんぴょんするんじゃぁ^~(即堕ち)
『長老のおばあさま! 困ります! あーっ! いけません! ねこじゃらしはいけませんでございます! おばあさま! あーーっっ!!』
『ざ、ざぁこっ……いい歳こいてねこじゃらしニャんかに釣られウニャー!? って、ニャに見てんだニャ! オイラたちは見世物じゃねーのニャアアァァン……!』
まてまてー、たーのしー!(ヤケクソ)
やっぱりねこじゃらしには勝てなかったよ……(猫並感)
「あーその、長老よ。そのあたりで勘弁してやっては……いや、お客人痙攣してるから! 無表情だからわかりづらいけど限界だから! 長老! ちょうろーーうっ!?」
「おや、これはすまなかったねぇ。構ってほしそうにしてたもんだからつい、ねぇ。いっひっひ」
ぜひゅー、こひゅー……た、たすかった。ありがとうオッサン。やさしいハゲはいいハッゲ。
――ん? この緊迫した場でなに遊んでんだって? ばかやろう、ねこじゃらしは遊びじゃねえんだよ……はい、ごめんなさい。ちゃんとします。
いや、だってさあ。もうとっくに
「襲撃を、超えられる……! ああいえ、それはそれで詳細を知りたいのですが……ラーナさんのことは、その……」
「! いやいや、なんでもないんだぜオイ。たいした話でもなし、聞いてなかったのなら別に『ハーフエルフのことニャ?』――お、おぉぅ」
「……あーあ、バレちゃった、かぁ。あはは、仲良くなれたかもしれなかったのになぁ」
え、なにこの空気。というか、ゴブリンのことよりそっち優先でいいの?
なんか知らんがラーナたんの目からどんどん光が失われていくし、もしかしなくても地雷踏んだ感じかコレ?
……ふぅむ、状況から考えるにこの世界では “ハーフエルフ” という存在になんらかの意味があるっぽいね。それも、常識レベルで知られている意味が。だが、転生直後の俺にはそれがわからない、と。
さぁて、これはちょいと困った事態だ。というのも、俺がこの村に居座る気マンマンだからだな。
田舎では “異物” は忌避され、排除されるもの。常識知らずのよそ者とか排斥待ったなしだろうよ。
そんな事態を避けるために、今ここで俺が取るべき行動は――この世界での常識的なリアクションを取ること。これに尽きる。
では、この世界でハーフエルフという存在はどういった存在なのであろうか。
今までに出てきた情報からの推察は不可能だろう。となると、やはり頼りになるのは前世で蓄えたオタ知識。
んじゃ、早速いってみよう。正解は~、コレだっ!
『ハーフエルフとはすニャわち!
『まあっ、にゃんてことを言うのでございますにゃ悪魔ちゃん! わたくしたちはそんにゃ低俗なこと、いたしませんにゃ』
そう、ハーフエルフと言ったら差別に迫害。ファンタジーのお約束でファイナルアンサー。
対し、俺が取るべきリアクションは加担と理解の両方。一人二役だから可能なよくばりセットだ。これで差別をしている村人側にも立てるし、ラーナたんを庇おうとしている側にも立てる。ふっ、勝ったな。
「「「…………」」」
って、あれ? ラーナたんを除いてなんでノーリアクションなの……あ、この反応知ってるよ。アニメの話だと思って意気揚々と場に割り込んだら、陽キャ用ドラマの話だった時の『うわぁ、なに言ってんだコイツ……』って思われてる時と同じ目だぁ~(トラウマ)
……ぐすん。だ、だいじょうぶ、まだ挽回できる。次行くぞ、次ィ!
『さ、さっきのは冗談ニャ! え~っとだニャン……あ! ウニャー、銀……金髪のハーフエルフが出たニャー! お助けニャー!』
『わたくしたちは善良にゃ黒猫と天使でございますにゃん。悪魔ちゃんを生贄に捧げますのでお助けを『ニ゙ャッ!?』……くすっ♪』
ハーフエルフという存在が悪い意味で有名な作品といったらリゼ◯だべ。まあ、あっちは銀髪なんだけど。
リ◯゙ロ内では迫害対象であるとともに、恐怖や畏怖の対象であったのがハーフエルフだ。前者がハズレだった以上、後者が正解でファイナルアンサー。ふっ、フィフティ・フィフティに勝ったな。
「なあオイ、アイツ」
「ええ。ですが、知らないなどありえるのでしょうか?」
クロコちゃん知ってるよ。サッカーワールドカップの日本戦翌日に『へ~、今W杯やってるんスね~』ってガチで言った時の、『こいつマジか……』って変人を見るような目だーあはは。
マジかよまたハズレだよ。次こそ当てないと客人から不審者に逆戻りじゃね? そんなんイヤじゃぁぁ!
クソ、もうオタ知識に頼るのはヤメだ。
気になっているところはある。実は2回目のリアクション時よりも1回目の方が皆の戸惑いが大きかったのだ。それに加え、その時にラーナたんがぼそっと呟いていた『…………無価値?』という疑問の声。
以上のことから導き出される正解はコレだ!
『キーシッシッシ♡ 見事に引っかかったニャね、このざこざこ民ども! オイラたちがそこのツインテの真の価値に気づいてニャいとでも本気で思ってたのかニャン!』
「っ! そう、よね……やっぱり」
「クロコちゃん……ラーナちゃん……」
よし、正解引いたぁ! ただ結果的に、正解を知っていながらふざけて人心を弄んだ害悪野郎みたいになっちゃったけどな! そんな評価、悪魔ちゃんしか得しないじゃないか……。
ま、まあいいや。どのみち俺の好感度が地に落ちるのは避けられなかったんだ。いいタイミングだし、ラーナたんについてきた真の目的も果たしてしまおう。
俺は今からラーナたんとクーニュさんを────“俺様専用の奴隷” に堕とす!