かの黄金は裁定の王者 作:クソメガネ
『つまり、ミヤビさんもこの状況に巻き込まれた、と言うわけですか?』
「そう言うことだね。私としても何が何だか……しょーじきロールできなくなるくらいには混乱してるよ今」
『ふむ。ナザリック近くにいたなら、もしかしたらウチのNPCのセバスと合流できるかもしれません。探せますか?』
「うん、やってもいいなら探知はするよ。しっかし、NPCが命を得たみたいに自立行動を始めた、か。益々もって現実離れしてるわね」
『あっはは……それではセバスを呼び戻しますので探してみてください』
兎も角そちらの方向へヴィマーナを走らせる。おお、ゲームと同じで思考による誘導可能かこれ。月の光を反射してキラキラ光る我ながら趣味の悪い船ではあるが、悪いものではないよ。
しばらく船を走らせて、反応の近く。慣性飛行に変えて浮遊しつつあたりを旋回して見渡せば、ナザリックが近くにあるのもわかった。そして、こちらを見上げる初老を超えたガタイのいい執事風のイケオジが見える。
「ふっ……不思議か? 己より高みより見下げられるのは」
「ええ、その高さに飛翔するには私でも骨が折れます。あなた様がゴールドミヤビ様で御座いましょうか?」
「違いない。貴様がセバスだな?」
「左様でございます、ナザリックが9階層。‘プレアデス’をまとめておりますセバス、と申します」
あっこの人
「貴様、人ではないな? 似せているだけで擬態していると言うべきか」
「それが、モモンガ様の仰っていた神眼の力でございましょうか?」
「ふん、なるほどな。安い挑発に乗らんのは良い心がけだ」
試すような真似をして申し訳ないなーと思いつつ、私はヴィマーナから跳び降りる。ヴィマーナは蔵の中に収納されて黄金の粒子になって消え失せる。
地上50mほどの高さだが、慣性を殺しながら魔力放出でゆったりと降りる。
「して、
「その点はご安心ください、モモンガ様より「生半可なバッドステータスは受けない」と聞き及んでありますので」
敵対行動しても逆にやられるだけだから手を出すなって命令されてるんだろうなぁ……私、強いし。
と言うわけで、セバスの先導の道中でナザリックに配置されている魔物たちはわたしに襲いかかるような真似はしなかった。自分にとってはありがたいし、ナザリックを荒らしに来たつもりはないので敵対行動を取られるのはちょっとショックだし。
「おお、この星空は……ブルー・プラネット氏が作り込んだと自慢していた物か」
「至高の方々をご存じなのですか?」
「ああ。
懐かしい記憶が蘇る……基本的に私はナザリックに侵入したことがない。するつもりそのものがなかったし、地上のどこかでペアハンをするくらいはいくらでもしてたが。なんせ、わたしは
なので普通にパーティを組めるのは悪役ギルドの面々だったわけで。ナザリックのみんなとはフレンド登録は済ませてあったのである。まぁ、だからと言って配置されてるここのシモベたちを倒すのは敵対行動になるからここに迷い込んでも逃げるにとどめることにしたわけだ。
シャルティアとの鬼ごっこは心臓に悪かったのはいい思い出である。
案内された闘技場には階層守護者たちがずらっと並んでいた。全員レベル100の強者と見て違いないだろう。
「帰ったか、セバス。そして、ようこそゴールドミヤビ。歓迎会の会場に誘えなかったのは申し訳ないな」
「フン、この
壇上に登っているのは上位者としての立ち振る舞いを頑張ってるのが見え見えのモモンガ氏。ここはあえて同格が現れたと見せる。こうすれば魔王ロールが楽になるんじゃないかな?
「紹介しよう。この度、この異常事態に巻き込まれた同志であるゴールドミヤビだ。私と同格の力を……それ以上の力を持っている」
「褒めるな、モモンガよ。武器の類は
手前の方でこちらを射殺さんと睨む女悪魔のNPCに向けてそう言い含めつつ。
「勘違いするな、雑種。
「……モモンガ様に対しての口の聞き方、万死に値する!」
「落ち着けアルベド。ミヤビとはそのような関係ではない」
静止するモモンガ。なるほど、かなり慕われているようだしここは謝罪はしないで、褒めることにしよう。
「モモンガ様……」
「モモンガよ。良い、いや。ここのシモベが持っているのは素晴らしい忠道だな」
『何をしているんだモモンガ君! 絶望のオーラ納めないとダメでしょう!?』
『いや、そんなこと言ったってこの体になっちゃったらオートで発動しちゃったんですよ!?』
モモンガ氏の垂れ流してる‘絶望のオーラ’を中和するように魔力を放出する。ズン、と重々しい魔力がこの場を満たし、絶望のオーラと反発しあって空間が軋む。
ふーむ、なるほど。相反する魔力が反応するとこうなるのか。
なんとかコツを教えて絶望のオーラが消えたら魔力の放出を止める。要は意識が大事っぽいんだよね。
『ありがとうございます……なるほど、意識すれば垂れ流しは防げると』
『守護者たちのHPちょっとずつ削れていってたし、危なかったな。自己再生するとはいえ、可哀想だし』
「ふ、なるほどな。モモンガよ、貴様もなかなか試したがりと言うところか?」
「なんのことだ?」
「こ奴らがどれほどの理不尽を受けようと貴様に訴えることをしない忠義に
「かまわん、好きにしろ」
私の蔵ことワールドアイテムの‘
私自身の処理能力に依存するが宝物庫に蓄えたアイテムを射出して相手にダメージを与えられるアイテムで遠距離戦ともなれば敵はないと言えるくらいの威力を誇る。
展開可能な砲門はざっと1000。1人で1500人くらいは余裕で捌ける。
「これは神の酒だ。貴様らで飲むと良い。
「神の……ありがたく頂戴いたします、ミヤビ様」
「して、ミヤビそしてセバス。お前たちはこの世界で何を見た?」
アルベドにソーマを下賜しつつ、ここで私の合流した役割と言うかすり合わせたことをモモンガ氏と演劇を交える。
「この世界の情報を短時間だが集めてみた。まずこの辺りは5キロ四方全てが草原だ。ナザリックが元々あった沼地とは悉く地形が変わってある」
「それが本当なら、ナザリックは剥き出しである、と? 同じものを見たかセバス」
「はい、ミヤビ様のお言葉は真実です。遠い地平の彼方も草原でしたので」
『やっぱりヴィマーナってずるいですよー! 爆撃してるだけで勝てるじゃないですかあんなの!』
『だまらっしゃい! まともに君たちの相手したら負けるわ!』
「なんなら、この辺は魔物の1匹も存在しておらん。同じく、人間の集落もなく、だ」
思案する仕草のモモンガ氏。まぁ、脳内で伝言ゲームみたいに次のセリフ教え合ってるから演劇なんだけどね?
「そうか。ミヤビよ、ナザリックに手を貸してくれぬか?」
「そうだな。
「決まりだ、守護者たちよ。この決定に意義があるものはいるか? ミヤビはユグドラシルが黎明より私の友人の一人だ。彼女を無碍にするのはナザリックにとっても多大な損失を生みかねない」
「「「「「「滅相もございません!」」」」」」
わたしからも頭を下げて。感謝の意を示そう
「ふ、転がり込むような真似をしてすまんな。何、
こうしてなんとか住む場所を確保できそうだなーと思いながら見渡して。モモンガ氏の指示に従い動くことになったNPCたちが張り切って仕事に向かう前に。彼が私の手を取り転移した。
「マジでしたね……なんなんですかあの忠誠心」
「君の対応が神ってただけでしょきっと。にしてもごめんね気を使わせちゃって」
「いえいえ、気にしないでください!」
ロイヤルスイートと呼ばれるナザリックの9階層に案内され、わたしは個室を与えられた。モモンガ氏はしばらく検証を重ねてみるとのことだったし……私はNPCたちと交流することにするのだった。
──
to be continued .