かの黄金は裁定の王者 作:クソメガネ
こちらの世界に来て2日目。モモンガ氏は現在色々な検証と実験のため私が何もすることがないことを嘆いていたら階層守護者との親睦を深めることを提案された。まずは、力の差をわかってもらうべく模擬戦闘をしてみたが……
アルベドはタンク、コキュートスはタンク兼アタッカー。デミウルゴスが指揮系のデバッファーでアウラとマーレは遊撃と支援。そしてナザリック最強のアタッカーがシャルティアである。編成のバランスもいいし最強の戦力NPCであることに違いはない。
「ぜあぁっ!」
「ふっ、ヌルい。
かってぇぇぇ!? 何これ、防御系スキル全振りしてるわけ!?
「その程度の威力、私には効きぃぃっ、ませんわぁぁぁっ!!」
「クハッ、無闇に頑強な奴だっ!」
吹っ飛ばされたはずのアルベドが構え直して再び突っ込んでくるのが見えたので、こちらは相手の土俵に態々上がっているが、余裕を持って迎撃を撃つ。
「さて、どこまで持ち堪えるか、見ものだ」
「っそれは……!」
攻撃スキルの使用禁止と言う縛りの1対1のPvP形式での戦闘は久しぶりだが、時止めとか言う無法がまかり通るからね、ユグドラシル時代は。
それを破る方法も兼ね備えてはいるが、そこまで行くと殺し合いに発展するのだが。まあ今回は模擬戦、守護者統括としての力を見せてくれと頼んだ結果。アルベドがそれならと提案してきたわけで……木剣、木槌、木槍を計15本ほどを射出する。
「どれ、雑種よ。面白おかしく踊ってみせろ、
「飽きる前に叩き伏せて差し上げます!」
ハルバードをひと薙ぎで10本は蹴散らされ、蔵に叩き返されたが残りの5本は直撃寸前に、伸び切った腕を優れた膂力で強引に引き戻し、得物を回転させることで弾き飛ばして見せる。
が、それはブラフで背後から回収されて再装填された武具が次々と360°から襲いかかるが己を中心に半球体の物理的な結界じみた密度のハルバード捌きで弾き、叩き、払い。クリアランスも惚れ惚れとする素晴らしさを魅せてくれる。
「はぁ、はぁ……波状攻撃ですか。しかし、その程度では」
「そうだな。雑種を殺さぬよう手加減するのは実に面倒だ」
砲門の展開を消して腕組み。‘雑種’呼びにアルベドはコメカミに青筋を立てているが、これは私なりの「下げてから持ち上げる」ための言葉なのだ。弾き返された木剣を蔵から出して掴み。双剣の構えで構えた。アルベドのビルド的にここまで優秀ならばナザリックが今後崩されることはない。
「貴様は頑強だな。‘アルベド’よ。ナザリックの守護者統括としての実力は伊達ではない……認めよう、
「……っ!」
虚を突く様に踏み込み、剣を掲げるように振り下ろす。もちろんアルベドも応じるようにハルバードを捌く。木剣を叩きつけてそのまま押し込み、死角から突き上げるように左手の木剣を叩き込むが身を逸らしてそれを避けられた。
「こっ、のぉっ!」
「フハハハ! 淑女の振る舞いを忘れたか、アルベドよ!」
アルベドは足癖悪く膝を打ち上げる。押し込む必要がなくなり、自由になった右肘でその一撃を受けると、身が痺れるように衝撃が駆け巡る。そのまま後ろに跳びながら構え直した。
「
「っ、くぅっ!」
砲門を開き、射出される木の武器。当たれば相応にダメージはなくとも、不快感は受けるのかもしれないが。ハルバードで薙いで踏み込まんと私に迫るのは良い判断だが……悪手だ。
「よい判断、とだけ言っておこう。だが、アーチャーは近接戦も嗜むぞ?」
「なっ!?」
‘課金スキル’のビルドチェンジでメイン職を‘スナイパーから’‘ワールドチャンピオン’クラスに交換。そしてスキル‘魔力放出’でMPを犠牲にしてカッ飛びながら懐に潜り込み、首元を挟むように寸止め……実際の剣技で存在しない我流の動きではある。
「実戦であればこのまま首を刎ねているが、此度は遊びだ。己が反応できぬ速度で動かれるのはどのような気分だ?」
「お見事です……お見それ致しました」
「賛辞もできるのであらば上出来だ。これからも武を磨き、研鑽を怠るな……尤も、
この子達は、守護者たちは力を信奉としている。絶対強者である主人のモモンガ氏を慈悲深きお方と敬愛し、畏怖している。
分かっているのだろう、プレイヤーとNPCとしての自分たちとの格の違いを。
「
「……っ!! ハッ、これまでの無礼重ねてお詫び申し上げます、ミヤビ様ッ!」
「良い、貴様にも期待しよう。そして言い切ってやろう……ナザリックは永劫、安泰だと、な」
六階層の闘技場での戦いは心躍った。観客席にいたデミウルゴスは値踏みするように私を観察していたが、それを見咎めるほど私は狭量ではない。
そう言い残し、私は身を翻し、闘技場を後にするのだった。
■◇■◇■◇■
「アルベド、ご苦労だったね」
「……完膚無きまでに叩き伏せられたわ」
ミヤビの去った闘技場には階層守護者たちが残っていた。あの激戦を見届け、かの黄金の姫への所感。アルベドからしての第一印象は泥棒猫ではあった。
しかし、一度武器を交えればそのような気を感じれず、また高潔な精神の持ち主であるとわかった。
「アノ御方ハ武人トシテノ誇リヲ、我々ニ伝エタカッタノダロウ。見事ナ闘イダッタ」
「ああ、あの力は認めざるを得ない。それにしても、美しい戦い方だったね」
「起き攻め、と称するのがいいんでありんしょうか? 純粋なアタッカーというより小賢しい戦い方……いいえ、アレは本気ではないってお話でありんしたな」
「多分実戦だと手加減抜きで1000の砲門を開く……たっち・みー様がそんな話をしてたよ?」
「それが本当ならお姉ちゃん……ミヤビ様ってとても強いんじゃ……」
アウラの語った1000の砲門。そして、セバスの話が正しいならば飛行する船を有しているミヤビならば……上空に陣取り。あの攻撃を繰り返すだけで生半可な者ではたちまち蹂躙されると言う示し合わせとなる。
「つまり、ミヤビ様の本気は引き出せていないのでしょうか……」
「アルベドがあそこまで食らいついていて、それを児戯と称されたのは地に降りて戦う時は威光を示される時のみ! 見目麗しい黄金の君……手篭めにしようと目論んだモノは黄金の雨に晒される、と詩的表現がお似合いな御方でありんす」
「敵に回して、我々では勝てないという事だね。そんな方が味方をしてくださると……ふむ、それとなくご世継ぎの件も解決しそうだ」
ミヤビの知らないところで深読み。好意的なのはモモンガへの好意の裏返しとデミウルゴスは睨んでいた。見当違いであれど、その話を聞いてアルベドとシャルティアは色めき立つ。
「いい加減に、決着をつけましょうかシャルティア」
「そうでありんすなぁ……第二妃の位を!」
「ちょっと、みっともないからやめなって2人とも!?」
魔力というかオーラというか。昂ぶり、噴出する何故か可視化してるようなそれから目を逸らすように男性陣は修羅場、鉄火場から離れる。
「マーレはどう見る?」
「ミヤビ様をですか? そうですね……傲慢に振る舞うことを許されたお方ですか?」
「あのお方はおそらく世界に散らばる多くの宝を手中に納められているはずだ。その力を使いこなせるほどの頭脳もまた有している」
コキュートスはまた「アァ、爺デスゾ、爺トオヨビ」とトリップしているのでデミウルゴスはガン無視してマーレに言葉を振った。
「さて、私は失礼するよアウラ。2人のことは任せたよ」
「うぇ!? デミウルゴス、またアタシにおしつけるの!?」
アウラの抗議を聞き流し、デミウルゴスは闘技場を後にした。その頭脳の隅で、かの黄金の姫をどう扱うか……計画の中に入れ込むかを検討し続けていた。
──
to be continued .