かの黄金は裁定の王者   作:クソメガネ

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頁3 黄金の英雄姫

「つまり、息抜きのために外に行ったんだね。どうだったよ、あの大パノラマ」

「最高でしたよ。その、手に納めたいってデミウルゴスに言ったら興が乗っちゃって……」

「え、なんか言ったの?」

 

 模擬戦から二日経ち、異世界生活四日目。モモンガ氏と共に‘遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)’の初期設定にアレコレ意見を出し合いながらトライしていた時にそんな話を聞いた。

 

「世界征服も面白いかな、なんて」

「うわー、子供っぽいなそれは」

「やめてください!? 僕だってそんな事言いたいわけじゃなかったんですから!?」

「いやまぁ……嫌な予感しかしないよ? デミウルゴスならもう動き出してるかもしれないし」

 

 まぁ、この世界の人間相手にどこまでユグドラシルのポップモンスターが立ち向かえるか分からんからまずは要検証だろうけどさ。

 

「お、それ動かせてない?」

「よっしゃ!」

 

 イカつい死の支配者(オーバーロード)がガッツポーズをしてるのを見ると和むなぁ……ギャップ萌えか? 

 

「おめでとう、モモンガ氏」

「ありがとうございます、ミヤビさん」

 

 私が拍手で素直に祝福しつつ、モモンガ氏はそれにお礼を言う。現状、彼が砕けた話し方がしたいと言うので魔王ロールは一旦停止。私も慢心王……的な喋りをやめてお互いに素の姿で今の実証を楽しんでいた。

 

「人を探してみましょうか」

 

 モモンガ氏が操作して、集落をすぐに発見できた。しかし、その集落の様子がおかしいな……っ! 

 

「祭りでもしてるんですかね?」

「いいや、これは……襲われているよ」

「なんですって!? 拡大します!」

 

 鏡の視界拡大して至近にすると、プレートアーマーを纏った騎士っぽい奴らが村民を追い回しているのが見えた。

 

「ちっ……どうする、モモンガ氏」

「どうするって……見捨てましょう。僕たちには関係はないし、他の集落だってあるはず……っ!」

 

 鏡が映した男が「逃げろ」と言っていた、年端も行かない幼子の手を引く少女が見えた……私は思わず拳を握り込む。

 

「誰かが困っていたら、助けるのは当たり前、じゃないかね?」

「……それは、たっちさんの……そう、ですね──セバス!」

 

 ドアの外で待機していたセバスが呼ばれ、恭しく礼をする。

 

「なんで御座いましょうか、モモンガ様」

「しばらく、ミヤビと出かける。あとでアルベドにも完全武装で来るように伝えてくれ」

「それだけでは足りまい、客将ながら命令を出す。ナザリックの警戒レベルを引き上げつつ、この村に透明化に長けたシモベ幾人か送り込むのだ。要は後詰、だな」

「畏まりました、モモンガ様、ミヤビ様……お気を付けてお出かけください」

「モモンガよ、(オレ)は先に行く」

 

 座標は覚えたし、私は魔法を発動する。

 

「わかった、抜かるなよ?」

「ふん、誰に言っている?」

 

 魔法行使は私にも出来る。スキルで魔法詠唱者(スペルキャスター)のビルドに切り替えて上位転移(グレーター・テレポーテーション)を発動させた私はその場から消えて……森の中に立っていた。背後には背を斬られた金髪の少女が蹲りながら胸に抱えた妹を守っている。

 ‘上位物理無効化Ⅲ︎’の効果により、相手の攻撃は私に通用もしない。

 

「なんだこいつ!? 攻撃が当たらないぞ!?」

「どこから出た!?」

 

 外野の雑種共の攻撃、振るわれる剣は不可視の防御幕で弾きながら騎士どもを観察する。

 

「麗しいな、雑種よ。その心意気、天晴れだ! しばし、そこで妹を守っておけ」

「えっ……」

 

 背中にいる少女たちにこれ以上の狼藉を許さんと仁王立ちする私の前にいるのは完全武装の騎士2人だ。

 

「なんで攻撃が通らないんだよテメェ……あん? 結構な上玉じゃねえか!」

「げへへ、いい体つきしてるじゃねえか!」

「我が玉体、貴様等下賤なるものが直視して良いモノではない。控えよ、下郎ども」

 

 不快だ。故に刈るとしよう……さて、軽く見たがレベル1桁くらいだな……雑魚も雑魚。蟻以下と称するべきか? 

 

「いや、下等な獣以下の獣欲を滾らせる物ども。下賤なるものに失礼か……疾く死ね!」

 

 砲門を開き、空に波紋が展開される。およそ10門だ。武器はコモンでいいだろうと選定して、射出する。何か発言を許すつもりはなかったから、地に武具が突き立つ音がしたのを背に小娘どもに向き直る。

 

「して、貴様等。ここで見たことは他言無用と誓え。さすれば、命は取らん」

 

 背後で開くゲート。そして、現れるのは……死の支配者。少女たちが悲鳴をあげるが、彼女たちの視線を遮るように前に出る。

 

「こ奴らは大したレベルではない。結果として大した存在どもではないだろう」

「それはそうか、良い事を聞いたな。中位アンデット作成、死の騎士(デスナイト)

 

 モモンガ氏がスキルを発動させたのを眺めていると。黒々と、ドロドロと粘着質に見えるオーラの塊が死んでいた騎士に乗り移り。

 死の騎士が作り上げられていく……うわー、グロいなこれ。発動した君がドン引きしてるんじゃないよモモンガ氏。

 とは言え、死の騎士はどんな攻撃を受けてもHP1で踏ん張れるタンクのアンデットだ。肉壁としてはかなり優秀だ。

 

「死の騎士よ、この村を襲っている騎士共を殺せ!」

「グルァァァッ!」

「え?」

「ん?」

 

 雄叫びを上げた死の騎士が村向けて走って行ったのだが……肉壁として使うつもりが命じられた事を優先して走って行ったのだろうか? 

 

「なんともまぁ、仕事熱心な死の騎士……だな」

「あ、ああ……いや、命じたのは確かに私だが」

 

 そして、背後に新たな気配。漆黒のフルプレートアーマーに身を包んだアルベドだった。

 

「装備に手間取り、遅れて申し訳ありません」

「いいや、いいタイミングだアルベド」

「手間をかけた。先に出たが、雑魚だ。正直お前を呼ぶ必要があったかどうか……」

 

 私とモモンガ氏でアルベドに労いの言葉をかけつつ、彼女を一歩ほど下がらせる。その足元にいた姉妹に私は話しかけた。

 

「怪我の具合を見せよ。案ずるな、(オレ)はレンジャーだ」

「は、はい」

 

 姉であろう少女の背中には傷があり、剣で浅く袈裟斬りされたのだろう。傷の浅さからなぶり殺しにするつもりだったのだろう……趣味の悪い奴らだ。

 

「アルベドよ、そこに転がっている鎧を着た連中が目標だ。彼女たちはまぁ、ついでに助ければいいだろう」

「畏まりました」

「傷の具合はどうだ、ミヤビ」

「軽い傷だ。なぶるつもりで浅く斬ったのだろうよ」

 

 手癖の悪さにしかめ面をしてる私に少女たちが怯えた気がした。ふぅ、と息を吐いて気を落ち着かせて。

 

「傷薬をくれてやろう。受け取るがいい」

「あの、これって血では……」

「む。確かに赤いな。騙されたと思って飲んでみよ」

 

 そう言ってから私は先に行くとモモンガ氏に伝えて、‘飛行(フライ)’で飛び立つ。上空から死の騎士の暴れっぷりを眺めていると……隣にモモンガ氏が……っぷ!? 

 

「おい、くっクハハハハっ! 嫉妬マスク、はないだろう! 仮面アイテムは他になかったのか、モモンガよ!? あっははははっ!」

「仕方ないだろう。手持ちにこれしかないのだ!」

「ならばこれを身につけておけ。(オレ)の腹筋が保たん!」

 

 とりあえず、道化の仮面を手渡す。嫉妬マスクとは言うなればソロ狩り専門のプレイヤーがクリスマスに一定時間ログインするとアイテムストレージに強制的にお届けされる呪われたアイテムだ。

 クリぼっちに嫉妬で狂った顔を見せないように、と運営からの気の利いたブラックジョークアイテムとして有名だ。

 

「ぬう、それとミヤビよ。私はアインズと名乗ることにする」

「ん? そうか。(オレ)もそう呼ぶ方が都合が合わせられそうだな?」

「ああ、頼む」

 

 なお、不思議そうにしていたアルベドに嫉妬マスクについてを教えてやると。なんとも言えない顔でモモンガ氏を眺めて慰めていた。

 

「アインズ様、大丈夫です。私はどこにも行きませんから」

「アルベド、大丈夫だ。私もどこかに行く気はない」

 

 死の騎士の蹂躙劇も見飽きたし、モモンガ氏改めてアインズに提案するか。

 

「塵芥の死など如何でも良いが、お前の名を知らしめるならば1匹、2匹残すべきではないか?」

「それもそうだな。死の騎士よ! そこまでだ!」

 

 通る声でそう言い放ち、場を鎮静化した。指示に従って死の騎士は停止した。さて、どう動くかな? 声が上空から聞こえたこともアリ、その場にいた全員がこちらを向く。

 飛行を解除して悠々と私たちが降り立ち、アインズがその場を仕切る様に自己紹介を始めたのをあくびをかみ殺しながら、死の騎士に背中を預けつつ眺める。しかし、流石営業職だ……淀みなく演説(プレゼン)を進めていく。

 

「騎士共は逃げ出したか、つまらん」

 

 アインズと村人たちのやりとりを、それを聞き届けて私も出る。威風堂々とな! 

 

「お、おお……」

「あんな美しい方がいらっしゃるとは……!?」

 

 あれ? なんかみんな拝むように頭を垂れてるんだけど……? 

 

「「「「あぁ、女神様!」」」」

「え?」

「は?」

 

 思わず沈黙。そして、落ち着いた私は……

 

「た、戯け共! (オレ)は女神などではない!」

 

 設定的には不老だけどさ。設定的には!! 

 

 縁起物みたいに扱われる私をどこか微笑ましいものを見るまだ眺める外野の二人の生暖かい視線がひじょーに居心地が悪かった、としておこう。

 

 ──

 

 to be continued .

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