この作品、今日で1周年を迎えました。
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〜三人称視点.
「オラっ!」「うらぁ!」「せやっ!」
広がる平原の中、玄鳥、玲瓏、そして伏龍の三人が、武器を手にヒルチャールの群れを次々と薙ぎ倒していた。迫力ある攻撃の応酬に、戦場は瞬く間に彼らのペースに染まっていく。
一方その様子を、少し離れた場所で宵宮と十夜が体育座りのまま見守っていた。
「……なんか、出番ねぇな。」
「せやな……あの二人、ずいぶん派手にやるわ。」
そう呟きつつも、二人は状況を見て立ち上がり、それぞれの支援行動に移る。十夜は素早く陣を展開し、草の刃を飛ばして敵を牽制。宵宮は鋭い矢を次々と放ち、確実にヒルチャールを仕留めていった。
「二人とも、ありがとう!」
「ふん。」
「お、サンキュー♪」
玄鳥が軽く手を挙げると、十夜も頷き、再び戦場へと駆け出した。
「……さて、もう一踏ん張りだ。」
そう言って彼もまた、ヒルチャールたちの中へと飛び込んでいった。
数分後──戦いを終えた五人は、のんびりと歩きながら、稲妻からの脱出方法について話し合っていた。
「とはいえ、結局は船を待つしかないんだけどな。」
「じゃあ早く乗ればいいじゃん!そしたら楽だぜ?」
伏龍が気楽に言うが、十夜は浮かない表情を浮かべる。
「……船が来るまで、明日までかかる。それまでは冒険者協会の依頼をこなすしかないんだ。」
「はあ〜、なんだよもう〜。」
伏龍は不満げにため息をつくが、玲瓏と玄鳥は納得しており、文句も言わずに静かにしていた。
そのとき、伏龍がふと何かを見つけたように目を細めた。
「……おっ?」
目を輝かせながら、彼はその場を離れ、近くの岩陰へと駆け出していく。
「あれ、仙人はどこ行った?」
「どっか行ったんだろ。探してくる。」
玲瓏が稲妻のような閃光を散らしながら、その後を追う。
「……なんか不安だな。二人は先に戻ってて。俺、様子見てくるわ!」
そう言い残し、玄鳥もすぐさま駆け出していった。
残された十夜と宵宮。十夜は肩をすくめて一言。
「ま、そこまで言うんなら仕方ないか。」
そう呟き、彼もゆっくりと帰路に就いた。
一方そのころ、伏龍は近くの洞窟へと入り込んでいた。薄暗い空間の奥で、光を放つ宝石が彼の目を引く。
「おっ、発見!これ、甘雨ちゃんにあげたら喜ぶだろうなぁ!」
そこへ、後から玲瓏の声が響く。
「おい、仙人。」
「ん? おお、玲瓏か。見てみろよ。これ、めっちゃ高値で売れそうだぜ?」
「……そうなのか?」
「ああ、これを売ればガッポガッポよ。」
伏龍は目を輝かせながら、宝石を指先でひょいと掲げた。
「……言ってなかったけど、お前って、あんまり仙人っぽくないよな。」
玲瓏が半ば呆れたように呟く。
「“半仙”って言ってるけど、実際は龍と人のハーフだからな。ルールとか堅苦しいの、性に合わないんだよ。」
「分かる。」
玲瓏はうんうんと、やけに力強く頷いた。
すると、洞窟の奥から誰かの声が響いた。
「おーい!」
玄鳥が息を切らしながら駆け寄ってきた
〜玄鳥視点.
俺は洞窟の入り口から奥へと走り、伏龍と玲瓏の姿を見つけると、思わず声を張り上げた。
「お、小僧。どうした、そんなに息上がって。」
伏龍がいつもの調子で振り返る。
「急にいなくなるから……心配で……」
言いながらも、自分でもちょっと大げさだったかなと、照れくさくなる。
「ふーん。それより見てみろ、小僧。この石、売れば大金持ちだぜ?」
伏龍は宝石を掲げてニヤリと笑う。
「それよりも……早く帰ろ? 二人とも、ちょっと呆れてたっぽいし。」
「……うーん……まあ、そろそろ戻るとするか。」
伏龍が腰を上げ、洞窟の出口に向かって歩き始めた……そのときだった。
グラグラグラ……
「……ん?」
玲瓏が眉をひそめた直後、地面がわずかに揺れた。
「……地震?」
彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに、洞窟の入り口付近で轟音が鳴り響いた。
岩壁が崩れ、あっという間に出口を塞ぐ。
「……うそぉ!?」
伏龍が目を見開き、叫んだ。
俺と玲瓏は慌てて崩れた瓦礫へと駆け寄り、必死に手でどかそうとする。
「ん〜〜っ!」
「ぐっ……んん……くそっ、駄目だな。」
全力で押しても、岩はびくともしない。人力でどうこうできるレベルじゃなかった。
「……なら、こいつでどうだ!」
俺は手を前に突き出し、炎を練り上げて拳に宿す。そのまま熱線を放ち、瓦礫に叩きつけた。だが──
岩はじわじわと赤く染まっていくものの、溶けるには至らなかった。
「駄目かぁ……くそ……あっちっ。」
腕に少し火が移って、焦げた匂いが立ちのぼる。だけど、今はそんなの気にしてる場合じゃない。俺はあたりを見渡して、他の出口がないかを探した。
──と、そのとき、視線の先に崖が見えた。
崖の下を覗き込むと、奥に別の通路らしきものがある。
「おーい! 2人とも、こっち!」
俺は二人を手招きして、崖下を指さす。
「おお、あったな。別の道か。」
「だが……この崖を真っ直ぐ下るのは危ないな。あっちから行った方がよさそうだ。」
玲瓏が横を見やると、木の板が連なって作られた小道が崖の傍に続いていた。少し不安定そうだが、他に選択肢はなさそうだった。
「行ってみるか。」
「うん。気をつけて行こう。」
そうして俺たちは、崖沿いに続く木板の道を慎重に進みはじめた。板はところどころ古びていて、きしむ音が不安を煽る。
「風の翼さえあればなぁ……」
「モンドに行って、免許取らないとな。」
伏龍と玲瓏が他愛もない話をしながら歩いていたので、俺も少し気を緩めて口を開く。
「俺はバイクの免許持っ(ry」
「で、玄鳥。さっきの火傷は大丈夫なのか?」
……話を切り替えられた。ま、まあいいけど。
「うん。別に大したことないよ。ちょっと熱いくらいで……」
「ほんとか? ちょっと見せてみろ。」
伏龍が俺の手を取って、風元素を軽く送り込んでくる。傷に当たる風が、ほんの少しだけ涼しい。
「これで、ちょっとはマシだろ。」
「……ありがと。」
「べーっつに。」
素っ気ない返事だけど、なんか意外と優しい。少しだけ嬉しくなった。
そのとき玲瓏が、ふと周囲を見渡して呟いた。
「しかし、この洞窟……随分と整備されてるな。」
「宝盗団かファデュイの仕業じゃねえか? あいつら、妙な技術だけは持ってるからな。」
「ま、どうでもいいさ。とにかく出るぞ。璃月が俺たちを待ってる〜!」
伏龍は明るく声を上げながら、木板の道を進んでいった。
⸻
しばらく歩くと、前方に広がる空洞に出た。何やら人の声がする。
俺たちはとっさに壁際に身を寄せ、そっと覗き込む。空洞の中央で、数人の男たちがツルハシを使って壁を掘っていた。
「はぁ……ここらは夜行石ばっかで全然掘れねぇなぁ。」
「そうだな。夜行石なんか売っても、大した金になんねぇからな……」
それを聞いた伏龍が、なんとも言えない顔で懐から夜行石を取り出す。さっきまで「大金持ちだぜ!」と言っていた石だ。
見ると……確かにただの、鈍く光る石にしか見えなかった。
「なんだよ〜! 大金になると思ったのに!!」
伏龍が思いきり叫んでしまった。
「……むっ!? 誰だ!?」
宝盗団のひとりが反応し、こちらに視線を向ける。
「バレちゃった……」
「何やってんだ、バカ!」
玲瓏が伏龍の頭をピシャリと叩く。伏龍は「いてっ」と言いながらも、どこか間抜けな顔をしていた。
俺は急いで剣を構え、敵の接近に備える。
〜三人称視点.
「行こう!」
玄鳥が叫ぶと同時に飛び出した。
「……仕方ない。」
玲瓏は軽くため息を吐きつつも、その背中を追う。
「ちぇっ、憂さ晴らしに倒してやるよ!」
伏龍はできたタンコブをブチッとちぎって放り投げ、弓を構えながら走り出した。
「かかれッ!」
宝盗団たちも一斉に武器を構えて襲いかかってくる。
激突の瞬間、戦場は混沌とした空気に包まれた。
「こ、こいつらなんなんだ!? クソつえぇぞ!」
宝盗団の一人が叫ぶ。
「これが俺たちの──コンビネーションってやつさ!」
伏龍がドヤ顔で言うが──
「嘘つけ。」
「嘘つかないで。」
玲瓏と玄鳥の冷ややかなツッコミが同時に飛ぶ。
「……はい……」
伏龍は苦笑いしつつも、横から飛びかかってきた敵を弓で殴って叩き伏せ、身をひねるようにして矢を数本放った。
「よし。」
的確な一撃が敵を地に落とす。
だが──
「こいつら……おい! ダイナマイト持ってこい!」
宝盗団の一人が怒鳴ると、どこからかゴロゴロと音を立てて、大きな爆薬樽が運ばれてくる。
「まずい……! こんなとこで爆発したら、みんな巻き添えになる!」
玄鳥は咄嗟に周囲を見渡し、脱出の糸口を探す。そして即座に作戦を思いついた。
「伏龍! 風でアイツらを拘束できないか!?」
伏龍は一瞬だけ考え込むような顔をし、ニヤリと笑った。
「……なんか考えてんだな? しゃあ、乗ってやるよ!」
「玲瓏も、いいよね!」
「……あ、ああ!」
玲瓏も気圧されたように頷き、雷の気配をその身に纏いはじめた。
「よし!行くぞ!」
玄鳥が叫ぶと同時に、溜め込んだ炎を一気に放出する。
火の奔流が壁を焼き、岩を溶かし──やがて、崩れた向こうから太陽の光が差し込んできた。
「……はぁ、はぁ……よし……」
玄鳥は荒い息をつきながらも、ふらつく体をどうにか支えて立ち上がる。
「へっ、やれるなら最初からやれっての!」
伏龍はそう言いつつ、風元素で宝盗団を吹き飛ばし、次々と気絶させていく。
「任せろ。」
玲瓏は雷を束ねて縄を形成し、倒れた宝盗団たちを鮮やかに拘束した。そして、そのまま開かれた脱出口へと進んでいく。
「さあ、俺たちも出るぜ。肩、貸してやるよ。」
「……ありがと……」
伏龍に支えられながら、玄鳥もなんとか光の先へと歩き出した。
数時間後……
「無事で良かったぜ。まさか宝盗団の奴らまで捕まえるとはな。」
夕暮れ、連行されていく宝盗団たちを見送りながら、十夜は玄鳥に話しかけた。
「そんなに珍しいことだった?」
「いや、夜行石の採掘場をまるごと占領されてたからな。あいつら、厄介なんだよ。マジで助かった。」
「そっか……でも、俺は当然のことをしただけさ。」
玄鳥はどこか照れくさそうに、それでも穏やかに笑って答えた。
「とはいえ、全員助けるのは簡単じゃなかっただろ。」
「……そうでもないよ。」
玄鳥の表情が少しだけ曇る。
「……俺はただ、もう誰かが死ぬのは見たくないだけなんだ。」
その言葉に、十夜は一瞬だけ言葉を飲み込んだ。そして、静かにうなずいた。
「……そうか。」
しばしの沈黙のあと、十夜は手を叩いて話題を切り替えた。
「さて、そろそろ夕飯の時間だ。今日は俺ん家で飯だぞ! みんな、たらふく食ってけ!」
「おっ! ごちになるぜー!」
「ごち。」
玲瓏と伏龍が嬉しそうに返事する。
「おっと、その前に……」
伏龍がふと立ち止まり、玄鳥のほうへと近づいた。
「玄鳥だったな? ……まあ、なんだ、小僧って呼ぶのもアレだし、これからは名前で呼ぶことにするよ。いいか?」
「えっ? う、うん……別に、いいけど……」
玄鳥が戸惑いながら答えると、伏龍はどこか照れくさそうな笑顔を浮かべ、そのまま玲瓏のほうへ駆けていった。
玄鳥はその背中を見送りながら、小さく呟いた。
「……あの人達も、案外……いい人かもな……」
風が静かに吹き、木々の葉が夕陽の中で揺れていた。
あと1話だけ続くんじゃ。
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