【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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この作品、今日で1周年を迎えました。

これからも応援よろしくお願いします。


第11幕:仙人と青年と少年

 

〜三人称視点.

 

「オラっ!」「うらぁ!」「せやっ!」

 

広がる平原の中、玄鳥、玲瓏、そして伏龍の三人が、武器を手にヒルチャールの群れを次々と薙ぎ倒していた。迫力ある攻撃の応酬に、戦場は瞬く間に彼らのペースに染まっていく。

 

一方その様子を、少し離れた場所で宵宮と十夜が体育座りのまま見守っていた。

 

「……なんか、出番ねぇな。」

「せやな……あの二人、ずいぶん派手にやるわ。」

そう呟きつつも、二人は状況を見て立ち上がり、それぞれの支援行動に移る。十夜は素早く陣を展開し、草の刃を飛ばして敵を牽制。宵宮は鋭い矢を次々と放ち、確実にヒルチャールを仕留めていった。

「二人とも、ありがとう!」

「ふん。」

「お、サンキュー♪」

玄鳥が軽く手を挙げると、十夜も頷き、再び戦場へと駆け出した。

「……さて、もう一踏ん張りだ。」

そう言って彼もまた、ヒルチャールたちの中へと飛び込んでいった。

 

数分後──戦いを終えた五人は、のんびりと歩きながら、稲妻からの脱出方法について話し合っていた。

 

「とはいえ、結局は船を待つしかないんだけどな。」

「じゃあ早く乗ればいいじゃん!そしたら楽だぜ?」

伏龍が気楽に言うが、十夜は浮かない表情を浮かべる。

「……船が来るまで、明日までかかる。それまでは冒険者協会の依頼をこなすしかないんだ。」

「はあ〜、なんだよもう〜。」

 

伏龍は不満げにため息をつくが、玲瓏と玄鳥は納得しており、文句も言わずに静かにしていた。

そのとき、伏龍がふと何かを見つけたように目を細めた。

 

「……おっ?」

 

目を輝かせながら、彼はその場を離れ、近くの岩陰へと駆け出していく。

 

「あれ、仙人はどこ行った?」

「どっか行ったんだろ。探してくる。」

玲瓏が稲妻のような閃光を散らしながら、その後を追う。

 

「……なんか不安だな。二人は先に戻ってて。俺、様子見てくるわ!」

 

そう言い残し、玄鳥もすぐさま駆け出していった。

残された十夜と宵宮。十夜は肩をすくめて一言。

 

「ま、そこまで言うんなら仕方ないか。」

 

そう呟き、彼もゆっくりと帰路に就いた。

一方そのころ、伏龍は近くの洞窟へと入り込んでいた。薄暗い空間の奥で、光を放つ宝石が彼の目を引く。

「おっ、発見!これ、甘雨ちゃんにあげたら喜ぶだろうなぁ!」

そこへ、後から玲瓏の声が響く。

 

「おい、仙人。」

「ん? おお、玲瓏か。見てみろよ。これ、めっちゃ高値で売れそうだぜ?」

「……そうなのか?」

「ああ、これを売ればガッポガッポよ。」

伏龍は目を輝かせながら、宝石を指先でひょいと掲げた。

「……言ってなかったけど、お前って、あんまり仙人っぽくないよな。」

玲瓏が半ば呆れたように呟く。

「“半仙”って言ってるけど、実際は龍と人のハーフだからな。ルールとか堅苦しいの、性に合わないんだよ。」

「分かる。」

 

玲瓏はうんうんと、やけに力強く頷いた。

 

すると、洞窟の奥から誰かの声が響いた。

「おーい!」

玄鳥が息を切らしながら駆け寄ってきた

 

〜玄鳥視点.

 

俺は洞窟の入り口から奥へと走り、伏龍と玲瓏の姿を見つけると、思わず声を張り上げた。

 

「お、小僧。どうした、そんなに息上がって。」

伏龍がいつもの調子で振り返る。

「急にいなくなるから……心配で……」

言いながらも、自分でもちょっと大げさだったかなと、照れくさくなる。

「ふーん。それより見てみろ、小僧。この石、売れば大金持ちだぜ?」

伏龍は宝石を掲げてニヤリと笑う。

「それよりも……早く帰ろ? 二人とも、ちょっと呆れてたっぽいし。」

「……うーん……まあ、そろそろ戻るとするか。」

伏龍が腰を上げ、洞窟の出口に向かって歩き始めた……そのときだった。

 

グラグラグラ……

 

「……ん?」

玲瓏が眉をひそめた直後、地面がわずかに揺れた。

「……地震?」

彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに、洞窟の入り口付近で轟音が鳴り響いた。

岩壁が崩れ、あっという間に出口を塞ぐ。

 

「……うそぉ!?」

伏龍が目を見開き、叫んだ。

俺と玲瓏は慌てて崩れた瓦礫へと駆け寄り、必死に手でどかそうとする。

「ん〜〜っ!」

「ぐっ……んん……くそっ、駄目だな。」

 

全力で押しても、岩はびくともしない。人力でどうこうできるレベルじゃなかった。

「……なら、こいつでどうだ!」

俺は手を前に突き出し、炎を練り上げて拳に宿す。そのまま熱線を放ち、瓦礫に叩きつけた。だが──

岩はじわじわと赤く染まっていくものの、溶けるには至らなかった。

「駄目かぁ……くそ……あっちっ。」

 

腕に少し火が移って、焦げた匂いが立ちのぼる。だけど、今はそんなの気にしてる場合じゃない。俺はあたりを見渡して、他の出口がないかを探した。

 

──と、そのとき、視線の先に崖が見えた。

 

崖の下を覗き込むと、奥に別の通路らしきものがある。

「おーい! 2人とも、こっち!」

俺は二人を手招きして、崖下を指さす。

「おお、あったな。別の道か。」

「だが……この崖を真っ直ぐ下るのは危ないな。あっちから行った方がよさそうだ。」

玲瓏が横を見やると、木の板が連なって作られた小道が崖の傍に続いていた。少し不安定そうだが、他に選択肢はなさそうだった。

 

「行ってみるか。」

「うん。気をつけて行こう。」

そうして俺たちは、崖沿いに続く木板の道を慎重に進みはじめた。板はところどころ古びていて、きしむ音が不安を煽る。

「風の翼さえあればなぁ……」

「モンドに行って、免許取らないとな。」

伏龍と玲瓏が他愛もない話をしながら歩いていたので、俺も少し気を緩めて口を開く。

「俺はバイクの免許持っ(ry」

「で、玄鳥。さっきの火傷は大丈夫なのか?」

……話を切り替えられた。ま、まあいいけど。

「うん。別に大したことないよ。ちょっと熱いくらいで……」

「ほんとか? ちょっと見せてみろ。」

 

伏龍が俺の手を取って、風元素を軽く送り込んでくる。傷に当たる風が、ほんの少しだけ涼しい。

 

「これで、ちょっとはマシだろ。」

「……ありがと。」

「べーっつに。」

素っ気ない返事だけど、なんか意外と優しい。少しだけ嬉しくなった。

そのとき玲瓏が、ふと周囲を見渡して呟いた。

「しかし、この洞窟……随分と整備されてるな。」

「宝盗団かファデュイの仕業じゃねえか? あいつら、妙な技術だけは持ってるからな。」

「ま、どうでもいいさ。とにかく出るぞ。璃月が俺たちを待ってる〜!」

伏龍は明るく声を上げながら、木板の道を進んでいった。

 

 

しばらく歩くと、前方に広がる空洞に出た。何やら人の声がする。

俺たちはとっさに壁際に身を寄せ、そっと覗き込む。空洞の中央で、数人の男たちがツルハシを使って壁を掘っていた。

 

「はぁ……ここらは夜行石ばっかで全然掘れねぇなぁ。」

「そうだな。夜行石なんか売っても、大した金になんねぇからな……」

 

それを聞いた伏龍が、なんとも言えない顔で懐から夜行石を取り出す。さっきまで「大金持ちだぜ!」と言っていた石だ。

見ると……確かにただの、鈍く光る石にしか見えなかった。

「なんだよ〜! 大金になると思ったのに!!」

伏龍が思いきり叫んでしまった。

 

「……むっ!? 誰だ!?」

 

宝盗団のひとりが反応し、こちらに視線を向ける。

 

「バレちゃった……」

「何やってんだ、バカ!」

玲瓏が伏龍の頭をピシャリと叩く。伏龍は「いてっ」と言いながらも、どこか間抜けな顔をしていた。

俺は急いで剣を構え、敵の接近に備える。

 

〜三人称視点.

 

「行こう!」

玄鳥が叫ぶと同時に飛び出した。

 

「……仕方ない。」

玲瓏は軽くため息を吐きつつも、その背中を追う。

「ちぇっ、憂さ晴らしに倒してやるよ!」

伏龍はできたタンコブをブチッとちぎって放り投げ、弓を構えながら走り出した。

「かかれッ!」

宝盗団たちも一斉に武器を構えて襲いかかってくる。

激突の瞬間、戦場は混沌とした空気に包まれた。

「こ、こいつらなんなんだ!? クソつえぇぞ!」

宝盗団の一人が叫ぶ。

「これが俺たちの──コンビネーションってやつさ!」

伏龍がドヤ顔で言うが──

「嘘つけ。」

「嘘つかないで。」

玲瓏と玄鳥の冷ややかなツッコミが同時に飛ぶ。

「……はい……」

伏龍は苦笑いしつつも、横から飛びかかってきた敵を弓で殴って叩き伏せ、身をひねるようにして矢を数本放った。

「よし。」

的確な一撃が敵を地に落とす。

 

だが──

「こいつら……おい! ダイナマイト持ってこい!」

宝盗団の一人が怒鳴ると、どこからかゴロゴロと音を立てて、大きな爆薬樽が運ばれてくる。

「まずい……! こんなとこで爆発したら、みんな巻き添えになる!」

玄鳥は咄嗟に周囲を見渡し、脱出の糸口を探す。そして即座に作戦を思いついた。

「伏龍! 風でアイツらを拘束できないか!?」

伏龍は一瞬だけ考え込むような顔をし、ニヤリと笑った。

「……なんか考えてんだな? しゃあ、乗ってやるよ!」

「玲瓏も、いいよね!」

「……あ、ああ!」

玲瓏も気圧されたように頷き、雷の気配をその身に纏いはじめた。

 

「よし!行くぞ!」

玄鳥が叫ぶと同時に、溜め込んだ炎を一気に放出する。

火の奔流が壁を焼き、岩を溶かし──やがて、崩れた向こうから太陽の光が差し込んできた。

「……はぁ、はぁ……よし……」

玄鳥は荒い息をつきながらも、ふらつく体をどうにか支えて立ち上がる。

「へっ、やれるなら最初からやれっての!」

伏龍はそう言いつつ、風元素で宝盗団を吹き飛ばし、次々と気絶させていく。

「任せろ。」

玲瓏は雷を束ねて縄を形成し、倒れた宝盗団たちを鮮やかに拘束した。そして、そのまま開かれた脱出口へと進んでいく。

「さあ、俺たちも出るぜ。肩、貸してやるよ。」

「……ありがと……」

伏龍に支えられながら、玄鳥もなんとか光の先へと歩き出した。

 

数時間後……

 

「無事で良かったぜ。まさか宝盗団の奴らまで捕まえるとはな。」

夕暮れ、連行されていく宝盗団たちを見送りながら、十夜は玄鳥に話しかけた。

「そんなに珍しいことだった?」

「いや、夜行石の採掘場をまるごと占領されてたからな。あいつら、厄介なんだよ。マジで助かった。」

「そっか……でも、俺は当然のことをしただけさ。」

玄鳥はどこか照れくさそうに、それでも穏やかに笑って答えた。

「とはいえ、全員助けるのは簡単じゃなかっただろ。」

「……そうでもないよ。」

玄鳥の表情が少しだけ曇る。

「……俺はただ、もう誰かが死ぬのは見たくないだけなんだ。」

その言葉に、十夜は一瞬だけ言葉を飲み込んだ。そして、静かにうなずいた。

「……そうか。」

しばしの沈黙のあと、十夜は手を叩いて話題を切り替えた。

「さて、そろそろ夕飯の時間だ。今日は俺ん家で飯だぞ! みんな、たらふく食ってけ!」

「おっ! ごちになるぜー!」

「ごち。」

玲瓏と伏龍が嬉しそうに返事する。

 

「おっと、その前に……」

伏龍がふと立ち止まり、玄鳥のほうへと近づいた。

「玄鳥だったな? ……まあ、なんだ、小僧って呼ぶのもアレだし、これからは名前で呼ぶことにするよ。いいか?」

「えっ? う、うん……別に、いいけど……」

玄鳥が戸惑いながら答えると、伏龍はどこか照れくさそうな笑顔を浮かべ、そのまま玲瓏のほうへ駆けていった。

玄鳥はその背中を見送りながら、小さく呟いた。

 

「……あの人達も、案外……いい人かもな……」

風が静かに吹き、木々の葉が夕陽の中で揺れていた。




あと1話だけ続くんじゃ。

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