【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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ファング君の部下が死んで曇るファング君。

でもあと二人居るからまだ曇らせられるよ。やったね。


第16幕:侵略者にして支配者

 

〜三人称視点.

ファングは無言のまま、街灯の根元にそっと花束を置いた。

街の騒がしさから取り残されたような、静寂の一角。

その空間に、彼の低く押し殺した声が落ちた。

「……馬鹿野郎……先に逝きやがって……」

風が吹く。揺れる花の香りとともに、ファングは深いため息をつき、そっと手を合わせた。

やがて、その隣にもうひとつの花束が置かれる。

玄鳥だった。彼も静かに手を合わせ、祈るように目を閉じる。

「……優しいんだな。まだ、会って間もないのに」

ファングが呟くと、玄鳥は少しだけ顔を上げて、穏やかな声で応えた。

「そんなことないよ。…人を想うのに、時間なんて関係ない」

しばし沈黙が流れたのち、ファングが口を開いた。

「……なあ。アンタは、アイツをどうにかするつもりなんだろ?」

玄鳥はゆっくりと頷いた。

「……ああ。これ以上、無意味な犠牲を増やしたくないから」

ファングは立ち上がり、拳を強く握りしめた。

「……だったら、俺たちも協力させてくれ。

敵討ちだとか復讐だとか、言われたら否定はできねぇ。

でも――あいつの尊厳を、笑いものにした奴らを……俺は、許せねぇんだ」

その目に宿ったのは怒りではなく、誇りと覚悟だった。

玄鳥は黙ってファングに手を差し出した。

「……分かった。一緒に戦おう」

ファングはその手を力強く握り返した。

無言の誓いが、二人の間で確かに結ばれた。

 

………………………………

 

「というわけで、今日からよろしく頼む」

 

ファングは荷物を肩から降ろすと、洞天の一角に置きながらそう言った。

洞窟のような空間に、彼の声が軽く反響する。

 

「おいおい、玄鳥。お前、洞天通行証を渡したのかよ?」

 

呆れたような声で伏龍が言うと、玄鳥は肩をすくめながら応えた。

「俺たちも、渡されたじゃないか。彼にも必要だろ」

「……はぁ~……また印刷かよ。これで洞天に居るのは13人ってことか。はぁ~……」

伏龍は深いため息をつき、手元の端末を弄りながらぼやいた。

「ん?13人……?あと一人って誰だ?」

玄鳥が眉をひそめて尋ねると、伏龍は指を立てながら答える。

「ほら、あのオレンジ髪の女の子。自分も通行証欲しいって言うから、くれてやったんだよ」

「……ニィロウもか……」

ファングが小さく呟いた、そのタイミングで、玄関から賑やかな足音が響いた。

「おはよ~!」

元気な声と共に現れたのは胡桃だった。その後ろにはニィロウの姿も見える。

「ん? あ、玄鳥にファングくんも。もしかして通行証渡したの?」

「うん。彼が“共に戦いたい”って言ってくれてな」

「そっか、嬉しいなぁ! じゃあ改めて――」

胡桃がにこりと笑うと、ファングも軽く頭を下げた。

「ああ、よろしく頼む。俺も、覚悟は決めてきた」

その言葉に、場の空気が少し引き締まる。

それでも、彼らの間に流れる空気は温かかった。新たな仲間を迎える、確かな歓迎の気配がそこにはあった。

 

数分後――

玄鳥たちは洞天を出て、スメールの奥地を進んでいた。

木々の生い茂る緑を抜けると、遠くに人工的な建造物の影が見えてくる。

「……フォンテーヌ、か」

ファングが小さく呟く。

「何か、用があるのか?」

問いかける玄鳥に、ファングは頷きながら答えた。

「蛍から聞いた。少し前に、あそこに機械兵が出現したらしい」

話しながら、二人はエレベーターに乗り込む。緩やかな振動と共に上昇を始める。

「そんな旅人が、今どこに?」

「見張ってるってさ。抜かりないよな、あの子は」

「……用意周到、か。さすが旅人だな」

エレベーターが目的のフロアに到達した瞬間、扉が開くや否や、彼らは駆け出した。

 

リフトを飛び降り、ベリル地区に着地した一行。

金属音を伴って、重厚な足音が響く。

「……見えた!」

玄鳥の声と共に、遠くに迫るダトマスの軍勢が視界に入った。

「……おっと、やって来たようですね」

涼しい顔でフレアブロスが姿を現す。

「おっせぇよ、まったく」

隣でアクアブロスがあくび混じりに呟いた。

「見つけたぜ……! 今度は前のようにはいかない!」

ファングが歯を食いしばりながら叫ぶと、ブロス兄弟はダトマスの部隊を前に進ませ、自らが戦闘態勢に入った。

「行くぞ!」

玲瓏が鋭く声を上げ、剣を抜いて駆け出す。

玄鳥たちもそれに続き、銃撃の雨をかいくぐりながら前線へと躍り出た。

「うらぁッ!」

「遅いですね」

フレアブロスが冷笑を浮かべつつ、手にした銃から連射を浴びせてくる。

「くっ……!」

玄鳥が身を翻して弾をかわすが、射線は彼を追い詰めるように続く。

「……いい加減、邪魔ですよ」

苛立ったように息を吐いたフレアブロスは、狙いを玄鳥に定める。

 

その瞬間――

 

ヒュン、と空を裂く音。氷の刃が一直線にフレアブロスへと飛来した。

「……!?」

「な、なんだ!?」

咄嗟に後退するブロス兄弟。

玄鳥たちがその攻撃の出処を振り返ると、街角の高台に一人の少年が立っていた。

 

冷たい眼差し、研ぎ澄まされた剣の構え――

その身に氷の元素を纏い、彼は静かに一歩、前へと踏み出す。

 

………………

「…貴様……! 何者ですか!? 私の“虐殺”の邪魔を……!」

フレアブロスが苛立ちを隠さず叫ぶ。

「とうっ!」

少年は軽やかに宙を舞い、地面に静かに着地した。

右肩に剣を担ぎながら、一瞥をフレアブロスに投げる。

「お前らが、最近噂の“侵略者”ってやつか? いいぜ。僕が相手になってやる」

そのまま少年は剣を両手に構えた。構えは低く、隙がない。

「ええい、鬱陶しい……! ダトマス、出ろ!」

フレアブロスの指示で、ダトマス兵がぞろぞろと前に進み出る――が、

 

「……遅い」

 

少年が囁いた瞬間、無数の氷弾が空を切り、ダトマス兵たちを一瞬で凍結・粉砕する。

圧倒的な速度と精度、そして冷気が戦場を一変させた。

「なっ……何だと!?」

驚愕に目を見開くフレアブロス。

「ふっ……おい、お前は“玄鳥”って言うんだな? 旅人から話は聞いてる」

少年が玄鳥の方に顔を向ける。

「……俺のことを?」

「ああ。僕はマルク。共に戦おう」

「――ああ。行こう!」

玄鳥は即座に応じ、炎の剣を片手に形成し、両手に剣を構えた。

その瞳に迷いはなかった。

マルクは逆手に持った剣に力を込める。刀身が氷塊に包まれ、再構成されていく。

同時に、彼の顔のタトゥーの色が赤から黄色へと変化した――元素力の共鳴だ。

「しゃあっ!」

「チッ……邪魔者が、増えやがって!」

フレアブロスが怒声を上げ、銃のトリガーを2度引く。

雷を纏ったホーミングレーザーが蛇のように追尾してくる。

玄鳥とマルクはそれを瞬時に回避し、間合いを詰める。

 

「くらえッ!」

 

二人の連携による斬撃がフレアブロスに直撃。

炸裂する風と氷の衝撃。フレアブロスは吹き飛び、地面に叩きつけられた。

「ぐ……ぅぅぅゔッ……!」

苦悶の呻きを上げながら、フレアブロスの仮面が砕け、変身が解除される。

素顔を晒した男は、よろよろと立ち上がった。

 

「おい! 風のクソ兄貴! 何やられてんだよ、役立たずが!」

「黙りなさい、雷ッ!! ……このような屈辱……許せん……!」

フレアブロスの風とアクアブロスの雷の二人は怒りの気配を全身に纏う。

「よし、トドメだ!」

伏龍が前に出て、弓を引こうとした――その瞬間だった。 

 

『――下がれ、愚民ども。』

 

空間を震わせるような、反響する声が戦場を包んだ。

場の空気が、一瞬で変わる。

玄鳥たちが警戒しながら周囲を見渡すと――

風と雷の背後から、一人の男がゆっくりと歩いてくる。

眩い装飾を身にまとい、滑るような足取りで姿を現したその男は、まるで舞台に現れた役者のように場の視線を一身に集めた。

 

「ボーマン様……!」

「ようやくお出ましか……」

 

風と雷――フレアブロスとアクアブロスが、まるで主の帰還を待ち望んでいたかのように膝を折り、恭しく頭を下げる。

アクアブロスが唇に不気味な笑みを浮かべながら、風と共に一歩退いてその男――ボーマンの背後に控える。

男は一瞬足を止めると、右手を軽く持ち上げ、指先を空に向けた。

次の瞬間、空間が微かに歪み、風が止まり、周囲に張り詰めた“沈黙”が訪れる。

そして――

 

『我が名はボーマン。』

 

『この世界の支配者にして、調律者。あらゆる混沌を整理し支配する者だ。』

 

その言葉に、玄鳥たちの背筋が無意識に凍りつく。

「……調律者、だと?」

ファングが小さく呟く。だが、声はかすれていた。

圧倒的な威圧感が、言葉の全てを押し潰しそうだった。

 

ボーマンは口元だけで笑みを浮かべると、ゆっくりと手を降ろし、前を見据えていた。





第二部のラスボス出ました。強そう。

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