〜玄鳥視点.
「なにィ、支配者だとォ……?」
伏龍が目を見開いて呻くように呟いたかと思うと、反射的に弓を引き、矢を疾風のごとくボーマンへと放つ。
しかしその刹那、ボーマンの前にダトマスが立ちふさがり、鋼の盾のように矢を受け止めた。
「我に向けて矢を放つとは……恥を知れ、貴様ァァ!!」
怒号が轟く。まるで雷鳴が落ちたかのような凄みに、空気が震える。
ボーマンはそのまま癇癪を起こしたように激昂した。
「ええいッ、奴らを叩き潰せ!何としてもだッ!」
声を荒げながら、彼は両脇に控えていた風と雷へと命じる。
少し呆れたような顔で、風と雷は顔を見合わせ、そして頷いた。
「……我を侮辱した罪、万死に値する。二度と口を慎まぬことだな」
ボーマンは静かに言い残すと、その場から姿を消した。空間が歪み、残響だけが残る。
「……あー……退屈ですね…雷、あとは頼みますよ。」
風が片手をひらひらと振りながら言う。明らかに面倒くさそうな口調だった。
「……仕方ねぇな。邪眼、借りるぞ」
「どうぞ。」
風は邪魔くさそうに、懐から邪眼を取り出して雷に渡した。
それを最後に、彼は風のように姿を煙と化して消えた。
「へっ!一人なら余裕だぜ!」
雷が不敵に笑うと、伏龍と玲瓏も即座に構えを取る。
「よし……!」
雷は自らの邪眼と風から借りた邪眼を交互に装填し始めた。
「ん?」
その動きに気づいた玲瓏が目を細める。
「……重装!」
雷の身体を中心に重厚な装甲が組み上がっていく。
アクアブロスとフレアブロス──二つの異なるアーマーが同時に形成され、融合していった。
その異様な光景に、伏龍は唖然とした表情を浮かべる。
「合体……しちゃったよ……」
蒼と紅の光をまとった戦士が、その場に静かに降り立つ。
「――デュアブロス、参上」
「うっそぉ〜ん……」
玲瓏が掠れた声で呟いた。その口調には驚きと、諦念と、若干の絶望が滲んでいた。
………………
〜三人称視点.
「親分!行こうッ!ニーラーの仇を討たなきゃ……!」
叫びながら、ピーラーは躊躇なく邪眼を装着した。
光と共にアーマーが形成され、その身体を覆う。
怒りと使命感に突き動かされるように、彼はデュアブロスへと真っ直ぐに突撃していった。
「ほう……また来やがったか。よく懲りねぇなァ!」
デュアブロスが嘲るように唇を吊り上げたかと思うと、直後、凄まじい勢いで拳を繰り出す。
一発──そして次々に繰り返される連打。
「貧弱!」「貧弱!!」「貧弱!!!」
怒涛のラッシュがピーラーの身体を襲い、その防御を容赦なく打ち崩していく。
そして、止めとばかりに銃型デバイス『ブロスチームガン』を構え、弾丸を装填。
「さっさと沈めェッ!」
閃光と共に放たれた銃撃がピーラーの胸を撃ち抜き、爆風が彼の身体を吹き飛ばした。
「ぐわぁぁぁぁッ!!」
重力に逆らうこともできず、ピーラーの身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。そしてそのまま、ファングの足元へと倒れ込む。
「…お、親分…」
重力に逆らうこともできず、ピーラーの身体は宙を舞い、地面に叩きつけられた。そしてそのまま、ファングの足元へと倒れ込む。
ファングが駆け寄る。だが、ピーラーの体は既に粒子のように崩れかけていた。
彼の存在そのものが、今まさに失われようとしている。
「……お、おい、しっかりしろ……!」
かすれた声で呼びかけながら、ピーラーは震える手でドッグタグを差し出した。
ファングはそれを無言で受け取る。手が、微かに震えていた。
「ニーラーの……仇を討とうとしたのに……俺、ちょっと足りなかったな……」
「親分……俺、先に行ってますから……後は任せます……」
薄れゆく意識の中で、微かに笑ったようにも見えた。
次の瞬間、ピーラーの身体は光の粒となって、静かに消えていった。
沈黙が降りる。
ファングの手の中には、ピーラーが遺したドッグタグがただ一つ、冷たく残っていた。
「う、嘘……っ!デュアブロス……強すぎる……!」
蛍は顔をしかめ、血の気の引いた手で汗を拭う。
一歩踏み出すたびに、地鳴りのような衝撃が響く。仲間たちは次々に押し込まれ、各地でダトマスの部隊と交戦していた。
「……っ……このままじゃ全滅する……!逃げるしかない!」
蛍は瞬時に決断し、振り向いて叫んだ。
「燕!封剣を貸してっ!」
「えっ!? い、今!? わ、わかった……!」
戸惑いながらも、燕は封剣を取り出し、震える手で差し出す。
蛍はその封剣に手をかざし、瞬間、黄金の光が迸った。剣は吸収され、蛍の身体に融合する。
蛍の全身が淡い黄金の光を放ち、風元素が仲間たちを包み込む。
巻き起こる疾風と共に、彼女は全員をその場に引き寄せた。
「行くよッ!」
瞬間、雷が奔り、空間が弾けた。蛍は風と雷の力を組み合わせて転移術式を強制展開。仲間たちは閃光と共に、その場から一斉に消えた。
「……チッ……逃げやがったか」
デュアブロスは唇を歪め、イラついた様子で近くのダトマス兵を無造作に蹴り飛ばす。
「使えねぇ連中だ……」
苛立ちを隠すことなく呟き、辺りに殺気を滲ませながら、地を睨みつけた。
………………………………
フォンテーヌ廷にたどり着いた瞬間、蛍の身体から封剣が抜け落ちるように現れ、彼女はその場に膝をついて崩れ落ちた。
「……はぁ……っ、はぁ……っ、負担が……」
肩で息をしながら、蛍は顔を伏せる。額から汗が滴り、全身から力が抜けていくのが分かった。
「……全員満身創痍か……」
玲瓏が膝をつき、呟く。服には傷と焦げ跡、血の滲み。立っているのがやっとの状態だった。
「チッ……クソッ、最悪の展開だぜ!」
伏龍も壁にもたれかかるようにして座り込み、拳を固く握りしめる。その眼差しには悔しさが滲んでいた。
そんな疲弊した一行の元に、足音が近づいてくる。柔らかく、しかし確かな足取りだった。
「……あの、大丈夫かい……?」
静かにかけられたその声に、伏龍が顔を上げた。
視線の先には、一人の少女が立っていた。
水のように澄んだ瞳と、柔らかな気配をまとった存在。
「……誰だ、お前は?」
問いかけに、少女は微笑を浮かべて名乗った。
「僕はフリーナ。このフォンテーヌの……元水神だよ」
フリーナかわいい!
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