【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

24 / 58

はい。


第19幕:パンドラタワーが立ち上がる

 

玄鳥は即座に邪眼を手に取り、結晶部を慎重に操作する。

通常は時計回りに回転していた二色の結晶を紫雷に逆回転させる。静かながらも鋭い振動音が耳に響く。

 

「──よし……いくぞ!」

 

再び神の目の下部に邪眼を装着する。その瞬間、彼の全身を包むエネルギーの性質が一変した。

風が渦を巻きながら彼の周囲を包み込み、雷と共に螺旋状のアーマーが形成されていく。

鋼鉄の装甲には流線型の風の紋様が刻まれ、背面には小型ブースターと可動式ウイングユニットが展開された。

 

「──重装!!」

アーマー装着完了と共に、全身から一気に蒸気と雷光が吹き上がる。先程までとは違う、圧倒的な気迫が玄鳥の周囲を支配した。

「……はっ……さっきとは、全然違う力が……湧いてくる!」

それを見たデュアブロスは僅かに眉をひそめるが、すぐに嘲笑を浮かべた。

「どうせ、また見掛け倒しでしょうッ!!」

デュアブロスが突進。蒸気を噴き上げながら巨大な拳を振り上げた。

しかし──玄鳥は微動だにせず、それを真正面から両手で受け止めた。

 

「……はあっ!!」

反撃の構えから、風を纏った右拳をデュアブロスの腹部へと叩き込む。

風圧の爆裂音と共に、デュアブロスの巨体が大きく仰け反る。

 

「すっごい……!」燕が呟く。

「燕は下がってて! ここからは──俺がやる!」玄鳥は即座にストライクバスターを召喚。今度は射撃モードに変形させ、素早く照準を合わせる。

 

「──そらぁっ!!」

高速連射がデュアブロスに浴びせられる。雷と風が混ざり合った弾丸が、次々と装甲に食い込んでいく。

「ぐっ……!」

「逃がさねぇぞ!」

再度接近した玄鳥は勢いよく飛び蹴りを叩き込み、距離ゼロからの至近射撃を敢行。エネルギーが直接貫通するかのように敵を吹き飛ばす。

 

「──これで終わりだ!!」

 

トリガーを連続で引き込むと、銃口から巨大なエネルギーが収束し始める。雷と風の融合ビームがうねりを上げて収束していく。

 

極太の蒼雷ビームが一直線にデュアブロスを貫き、吹き飛ばしながら火花と蒸気の爆発を巻き起こした。

断末魔の叫びを上げながら、デュアブロスは変身を解除し、その場に転げ落ちた。

「ぐおおおおっ!!」

巨大な衝撃波が収まり、辺りには静寂が戻った。

 

………………………………

 

デュアブロスはうずくまり、苦しげに息を吐きながらも、不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。

 

「ぐっ…流石にやりますね…」

「観念しろ。もう終わりだ!」

玄鳥が一歩前に出る。

 

「終わり?……ふふ、それはどうでしょうか。」

そう言って、デュアブロスは自身の装甲をパージし、変身を解除する。元の姿に戻った彼は、血の混じった笑みを浮かべて呟いた。

「……ボーマンが、ついに動いたそうですね。」

「チッ……あのカス、ようやく尻を上げやがったか。」

雷が奥歯を噛みしめながら言い捨てる。

 

その瞬間──

 

大地が大きく揺れ始めた。フォンテーヌ全体を揺らすほどの激しい振動。

「な、なんだ!?」

マルクがよろめきながら周囲を見渡す。

 

「この規模……随分遠い位置からだな。」

玄鳥たちが踏みとどまる間に、風と雷が、不敵な笑みを浮かべてそれぞれのブロスチームガンを取り出す。

「ふふ……じゃあな。」

「精々楽しませてください。」

 

煙幕が辺りに撒き散らされ、視界が遮られる。双子はその隙に撤退していった。

 

「クソッ、逃げたか……!」

マルクが舌打ちする。

 

だが、今はそれよりも優先すべきことがあった。

 

「……仕方ない。今は振動の発生源に向かうぞ!」

玄鳥は決意のこもった声で言い、仲間たちに手を振る。

 

………………

〜玄鳥視点.

 

ブロー地区に辿り着いた俺たちは、視線の先に異様なものを見た。

 

──来歆山の横。

突如として、海から伸び上がる“巨大な壁”が隆起を始める。

「……な、なんだあれ……」

 

ゴゴゴゴゴッ……ッ!!!

 

地鳴りと共に壁は繋がり始め、やがて巨大な塔へと変貌した。

その高さは異常だった。見上げても頂上が霞んで見えず、空を突き破るかのようにそびえ立っている。

 

「…でけぇ…」

ファングが呟く。マルクも口を開けて黙り込んでいた。

 

だがその時──

 

空中に巨大なモニターが複数浮かび上がった。

そこに映し出されたのはボーマンだった。

 

 

『全人類に告ぐ。』

 

『我が名は──ボーマン。この世界の“新たな調律者”にして、“唯一の支配者”である。』

 

その声は、世界中に共鳴するように響き渡る。

 

『地殻変動によって解かれしこの《パンドラタワー》……』

 

『今より、ここを我の玉座とし、世界に“真なる秩序”をもたらす。』

 

『我に屈すること。それが人類の義務である。従わぬ者には、破壊と粛清を与えるだろう。』

 

『──精々、楽しみに“支配される”がいい。』

 

パチッ──。

 

無機質な音を最後に、映像は消えた。

 

──空気が止まった。

 

 

「……これは……」

燕の顔がこわばる。

「……まずいことになったわね……」

 

俺は彼女の肩に手を置いて、言った。

「大丈夫。絶対に、なんとかしてみせる。」

パンドラタワーを、再び見上げる。

 

無限に続くようなその塔は、まるで人類への“挑戦”そのものだった。

 





第二部も終盤です。

次の連載

  • 続編
  • リメイク
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。