はい。
玄鳥は即座に邪眼を手に取り、結晶部を慎重に操作する。
通常は時計回りに回転していた二色の結晶を紫雷に逆回転させる。静かながらも鋭い振動音が耳に響く。
「──よし……いくぞ!」
再び神の目の下部に邪眼を装着する。その瞬間、彼の全身を包むエネルギーの性質が一変した。
風が渦を巻きながら彼の周囲を包み込み、雷と共に螺旋状のアーマーが形成されていく。
鋼鉄の装甲には流線型の風の紋様が刻まれ、背面には小型ブースターと可動式ウイングユニットが展開された。
「──重装!!」
アーマー装着完了と共に、全身から一気に蒸気と雷光が吹き上がる。先程までとは違う、圧倒的な気迫が玄鳥の周囲を支配した。
「……はっ……さっきとは、全然違う力が……湧いてくる!」
それを見たデュアブロスは僅かに眉をひそめるが、すぐに嘲笑を浮かべた。
「どうせ、また見掛け倒しでしょうッ!!」
デュアブロスが突進。蒸気を噴き上げながら巨大な拳を振り上げた。
しかし──玄鳥は微動だにせず、それを真正面から両手で受け止めた。
「……はあっ!!」
反撃の構えから、風を纏った右拳をデュアブロスの腹部へと叩き込む。
風圧の爆裂音と共に、デュアブロスの巨体が大きく仰け反る。
「すっごい……!」燕が呟く。
「燕は下がってて! ここからは──俺がやる!」玄鳥は即座にストライクバスターを召喚。今度は射撃モードに変形させ、素早く照準を合わせる。
「──そらぁっ!!」
高速連射がデュアブロスに浴びせられる。雷と風が混ざり合った弾丸が、次々と装甲に食い込んでいく。
「ぐっ……!」
「逃がさねぇぞ!」
再度接近した玄鳥は勢いよく飛び蹴りを叩き込み、距離ゼロからの至近射撃を敢行。エネルギーが直接貫通するかのように敵を吹き飛ばす。
「──これで終わりだ!!」
トリガーを連続で引き込むと、銃口から巨大なエネルギーが収束し始める。雷と風の融合ビームがうねりを上げて収束していく。
極太の蒼雷ビームが一直線にデュアブロスを貫き、吹き飛ばしながら火花と蒸気の爆発を巻き起こした。
断末魔の叫びを上げながら、デュアブロスは変身を解除し、その場に転げ落ちた。
「ぐおおおおっ!!」
巨大な衝撃波が収まり、辺りには静寂が戻った。
………………………………
デュアブロスはうずくまり、苦しげに息を吐きながらも、不敵な笑みを浮かべて立ち上がる。
「ぐっ…流石にやりますね…」
「観念しろ。もう終わりだ!」
玄鳥が一歩前に出る。
「終わり?……ふふ、それはどうでしょうか。」
そう言って、デュアブロスは自身の装甲をパージし、変身を解除する。元の姿に戻った彼は、血の混じった笑みを浮かべて呟いた。
「……ボーマンが、ついに動いたそうですね。」
「チッ……あのカス、ようやく尻を上げやがったか。」
雷が奥歯を噛みしめながら言い捨てる。
その瞬間──
大地が大きく揺れ始めた。フォンテーヌ全体を揺らすほどの激しい振動。
「な、なんだ!?」
マルクがよろめきながら周囲を見渡す。
「この規模……随分遠い位置からだな。」
玄鳥たちが踏みとどまる間に、風と雷が、不敵な笑みを浮かべてそれぞれのブロスチームガンを取り出す。
「ふふ……じゃあな。」
「精々楽しませてください。」
煙幕が辺りに撒き散らされ、視界が遮られる。双子はその隙に撤退していった。
「クソッ、逃げたか……!」
マルクが舌打ちする。
だが、今はそれよりも優先すべきことがあった。
「……仕方ない。今は振動の発生源に向かうぞ!」
玄鳥は決意のこもった声で言い、仲間たちに手を振る。
………………
〜玄鳥視点.
ブロー地区に辿り着いた俺たちは、視線の先に異様なものを見た。
──来歆山の横。
突如として、海から伸び上がる“巨大な壁”が隆起を始める。
「……な、なんだあれ……」
ゴゴゴゴゴッ……ッ!!!
地鳴りと共に壁は繋がり始め、やがて巨大な塔へと変貌した。
その高さは異常だった。見上げても頂上が霞んで見えず、空を突き破るかのようにそびえ立っている。
「…でけぇ…」
ファングが呟く。マルクも口を開けて黙り込んでいた。
だがその時──
空中に巨大なモニターが複数浮かび上がった。
そこに映し出されたのはボーマンだった。
⸻
『全人類に告ぐ。』
『我が名は──ボーマン。この世界の“新たな調律者”にして、“唯一の支配者”である。』
その声は、世界中に共鳴するように響き渡る。
『地殻変動によって解かれしこの《パンドラタワー》……』
『今より、ここを我の玉座とし、世界に“真なる秩序”をもたらす。』
『我に屈すること。それが人類の義務である。従わぬ者には、破壊と粛清を与えるだろう。』
『──精々、楽しみに“支配される”がいい。』
パチッ──。
無機質な音を最後に、映像は消えた。
──空気が止まった。
「……これは……」
燕の顔がこわばる。
「……まずいことになったわね……」
俺は彼女の肩に手を置いて、言った。
「大丈夫。絶対に、なんとかしてみせる。」
パンドラタワーを、再び見上げる。
無限に続くようなその塔は、まるで人類への“挑戦”そのものだった。
第二部も終盤です。
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