【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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PS4壊れた。
悲C。


第21幕:破滅のタワーを駆け上がれ

 

〜三人称視点.

「……そろそろ動き出すとしよう。」

 

パンドラタワー最上層、漆黒の空間にて。

ボーマンはゆっくりと玉座を離れ、その瞳に冷たい支配の光を宿らせた。

 

その様子を見た風と雷は、互いに視線を交わし、静かに頷く。

 

「人間どもは、我が統べる──すべてはこの手に。」

「ボーマン様の仰せの通りに……」「仰せの通りに。」

二人は無言で跪き、プロスチームガンへと邪眼を装填する。

その動作すらも、儀式のように無駄がなく、冷徹だった。

 

‥………………

 

その頃、パンドラタワー外縁・海岸沿い。

 

風に混じる潮の匂いと、微かに鉄錆の臭いが漂う。

「……あの中、なんだな。ラール?」

玄鳥の問いに、ラールは真剣な顔で頷いた。

「はい、親分。あの裂け目から……ダトマスが何体も現れました。」

彼が指さす先、パンドラタワーの壁の一部が不自然に開き、大量のダトマスが無音のまま行進していた。

「……ビンゴ!」

玄鳥はすぐに判断し、仲間に手で合図を送る。

一行は崖を降り、壁際の奇襲ルートに突入。

迫り来るダトマスを蹴散らしつつ、タワー内へと駆け込む。

 

 

塔の内部は異様な静寂に満ちていた。

冷たい金属の壁が延々と続き、照明の代わりに邪眼由来の光が天井を脈打っていた。

階段を駆け上がろうとしたその瞬間──

「……おっと、行かせませんよ。」

背後に、聞き慣れた声が響いた。

そこに立っていたのは、フレアブロスとアクアブロス。

そしてその背後には、数十体のダトマス兵がライフルを構えて並んでいた。

 

「気づかねぇと思ったか?ハッ、間抜けがよ。ここがどこか、わかってんのか?」

アクアブロスが侮蔑の笑みを浮かべる。

「……囲まれたな。正面突破も、難しいか……」

玄鳥が構えを取るが、その横で、ラールがふいに一歩前へ出た。

 

「……親分。」

ラールは静かに邪眼を取り出し、装着。

その瞬間、彼の体は光と共に重装アーマーを纏い、重々しい音を立てて歩を進めた。

 

「……ラール?」

ラールは、ファングの手を取り、ドッグタグを握らせた。

「今のうちに行ってください。」

 

その言葉に、ファングは瞬時に察した。

彼の目に、言葉にならない想いが灯る。

「ラール……お前……」

「今まで……ありがとうございました…!」

無言でタグを受け取ったファングは、一瞬だけ目を伏せ──

「……行くぞ。」

 

振り返らず、階段を駆け上がる。

玄鳥、十夜、マルク、燕──仲間たちも続く。

誰一人として、ラールを振り返らなかった。

 

「…ふっ…一人で立ち向かうつもりですか?」

「ああそうさ。信じてるからな!」

そう言って、ラールはフレアブロスたちに立ち向かって行った。

 

‥………………

 

 

階段を駆け上がっていた玄鳥たち。

だが、その疾走は突如として阻まれた。

 

「うおっ!?」

 

突如として両側の壁がせり出し、通路が狭まり始める。

伏龍は咄嗟に飛び退き、狭間に挟まれそうになった仲間を引っ張り出す。

「罠か!? どこまで仕組まれてやがる!」

次の瞬間、今度は床が崩れ、燕が虚空に足を取られる。

 

「──っ、燕!!」

 

玄鳥がすかさず手を伸ばし、間一髪で腕を掴む。

燕を引き上げると、彼女は荒い息を吐きながら頷いた。

 

辺りを見回すと、全方位、無機質で黒光りするコンクリートの壁に囲まれた空間。

どの道も見分けがつかず、まるで巨大な動的迷宮のようだった。

「こりゃあ……思った以上に厄介だな。」

伏龍が天井を見上げながら吐き捨てる。

「玲瓏の言った通りかもな。タワー内部、構造が複雑に“動的に”変化してやがる。」

十夜がマップ端末を起動するが、電波は途切れ、構造表示も歪んでいる。

「GPSもダメか。こりゃ感覚と勘で進むしかねぇな……!」

緊張の中、全員が周囲を警戒しつつ、慎重に歩を進める──

 

──その時だった。

 

「……っ!? なんだ、この音は──!」

背後から、乾いたエンジン音と金属の唸りが響く。

振り返ると、数台のバイクに乗った戦闘型ダトマス兵が現れ、

前傾姿勢でライフルを構えて急接近してきた。

 

さらに、その奥からは──

複数のダトマスが合体し、砲塔を備えた重装甲兵器型の巨大ダトマスが姿を現す。

 

「チッ……そう簡単に通してくれるわけがねぇか!」

 

ファングが低く唸ると、通路が再び変形。

突然、床が傾き、巨大な滑り台のように下方向へと変化していく。

「おいおい、今度は地形も乗り物前提かよ!」

滑りながらバランスを取りつつ、伏龍が怒鳴る。

 

──が、そこで一瞬の機転が走った。

 

「向こうがバイクなんて、ズリぃだろ……ならよ──」

 

足元のバイクにまたがったダトマスを、

膝蹴りで吹き飛ばし、そのまま強奪した。

 

「俺たちも使ってやるよ!」

 

エンジンを起動させた伏龍が滑り台を爆走する。

 

「……うらやましいわね!」

 

燕も反応し、別のダトマスに踵落としで衝撃を与え、バイクを奪取。

颯爽と滑走しながら玄鳥たちに並走した。

 

玄鳥はルミナフォンのアプリをタップし、バイクを召喚。

音もなく滑るように地面に着地し、全力で滑り坂を駆け上がる。

 

マルク、ファング、十夜たちもバイクを強奪あるいは自前で対応し、各々の手段で滑走を開始した。

「このまま……最上階まで突っ切るぞ!!」

 

‥………………

 

「ここが最深部か?」

玄鳥たちはバイクを降り、周囲を警戒する。空間全体が静まり返り、まるで息を潜める獣のような重圧が漂っていた。

しかし──

 

地鳴りと共に、足元の床が変形を始めた。無数のキューブ型ブロックがせり上がり、空間を構成し直してゆく。そしてその中心に──

「……!」

フレアブロスとアクアブロスが姿を現す。

「やはり来ましたね。迷路を抜けるとは、褒めてあげましょう。」

「ふっふっふ……言ったでしょう?我々はこの塔の構造を知り尽くしていると。」

挑発的な笑みを浮かべる二人。その瞬間、ファングの目が鋭くなる。

「……ラールは、どうした。」

その問いに、フレアブロスは冷酷な笑みを浮かべ、手にした物を放り投げた。

 

──それは、ラールの鎧の破片だった。

 

金属音を立てて、ファングの足元に転がる。

「哀れなものだぜ。命を投げ出してまで時間稼ぎ? ──滑稽だなぁ!?」

アクアブロスが鼻で笑い、フレアブロスが続ける。

 

「お前たちが余計なことをしなければ、あのスクラップも“死なず”に済んだでしょうに。」

「…………っ!」

 

その瞬間、ファングの背後から雷元素が爆ぜる。火花が散り、床が焦げ付く。

 

彼は、震える手で三人分のドッグタグを握り締めた。

強く、深く、祈るように──そして、その想いを燃やすように。

 

「……先に行ってくれ。」

「──え……だが、それじゃあ……」

玄鳥が振り返るも、ファングは顔を上げてはっきりと告げた。

 

「ここは俺にやらせてくれ。」

 

その瞳には、強い光が宿っていた。迷いは、ない。

 

「……分かった。」

玄鳥は黙って頷き、ファングの肩を力強く叩く。

「……頼む。」

 

その一言だけを残し、玄鳥たちは最深部へと走り出していった。

「へっ……雑魚の始末くらい、任せとけよ。」

 

ファングがアクアブロスを睨みつける。

「──兄貴、例の作戦は任せた。こいつはここで終わらせる。」

「……ふん。」

 

フレアブロスは嘲笑を残し、邪眼をアクアブロスに手渡して変身を解除。

風の姿へと戻り、そのまま最深部への通路へと姿を消す。

 

「“重装”──」

 

アクアブロスが低く呟き、光と雷の力が収束。

邪眼が起動し、炎と水の鎧が交わりデュアブロスに変身した。

 

「……さて、お前には地獄を見せてやるよ。」

 

ファングは、静かに目を閉じた。

 

ラール…ニーラー…ピーラー。

 

守るために命を懸けた者たちの魂が、今この手にある。

 

「……絶対に許さねぇ!!!」

ファングの咆哮が塔内に響き渡る。雷が荒れ狂い、拳に宿る。

 

彼は、駆け出した。

魂を燃やし、全力で、正面から……デュアブロスに挑んだ。





ついに第二部も終盤。

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