まだ平和。
第24幕:ひとときの日常
〜玄鳥視点.
「…………」
うつらうつらと、俺は縁側で日差しに溶けかけていた。
春の光は穏やかで、風も優しくて、昼下がりにはちょうど良すぎる。
──そんな中。
「つーばーめーっ!」
藍硯の元気な声が響く。
「ぉわっ!……ああ、藍硯か……」
「起きた〜? ねぇねぇ、何してるの?」
「……日向ぼっこ。してた。」
「えっいいな! 私もやる〜!」
藍硯が無邪気に笑って、俺の隣にドカッと座り込む。
少し場所が狭くなったけど、まあ、これはこれで悪くない。
「……そうだ。手紙が届いたんだよ。」
「え、誰から?」
「フリーナ。」
俺はポケットから、薄桃色の封筒を取り出す。中には丁寧な筆致で書かれた手紙。藍硯が食い入るように覗き込む。
⸻
『久しぶり。あの戦いから1週間だね。元気かい?
今は僕はいつも通り平凡な毎日を過ごしているよ。
次会う時は戦い以外がいいね。
それじゃあまたね。
フリーナより』
⸻
「……なんだかんだで元気そうだね!」
「うん、全く。“いつも通り”って書いてあるのが一番安心するな。」
俺はふっと笑った。なんだか肩の力が抜けたような気がした。
「ねぇ、そういえば蛍は?姿見てないけど。」
「旅人ならナタに行ったって。兄貴を探しに、次の目的地らしいよ。」
「そっかぁ〜……やっぱり強いな、蛍ちゃん。」
「……ああ。いずれ、俺たちも行くかもしれないな。」
「え?なんで?呼ばれてないじゃん。」
「なんとなく!」
「なんとなくかー!」
藍硯はケタケタと笑いながら立ち上がる。
「ねぇ玄鳥、璃月港、行こうよ!何か美味しいもんあるかも!」
「……どうせまた食べ物目当てか。」
「ちがーう!今日は“なんとなく”で行くの!」
「……お前、俺の台詞パクったろ。」
「えっへへ〜♪」
俺たちはのんびりと縁側を後にし、璃月港に向かって歩き出した。
………………………………
〜ファング視点.
「…………よし。」
スメールシティ近くの静かな森。鳥のさえずりと風の音しか聞こえないこの場所に、俺は墓を建てていた。
質素な木の十字。加工も粗く、彫刻もない。ただ、そこに想いを刻むための墓標だ。
「お前ら……ようやく終わったよ。色々とな。」
声が震えないように、息を吐いた。
──もう遺体はない。粉々になった機械の残骸すら、風と共に消えていた。
だからせめて、形だけでも。
俺は三人分のドッグタグを手に取り、丁寧に木の墓へとかけた。
「…………」
手を合わせて黙祷する。
──静寂。
だが、その中に僅かな気配があった。
振り返ると、ニィロウが花束を抱えて、そっとこちらに歩いてきていた。
「……わざわざ、買ってきてくれたのか?」
「うん。」
ニィロウは言葉少なに頷き、墓の前に花束を置く。淡いオレンジの花弁が風に揺れた。
彼女も静かに手を合わせ、目を閉じる。
しばらく無言が続いた後、俺はポツリと、呟くように口を開いた。
「……なぁ、ニィロウ。アイツら……幸せだったと思うか?」
「え……?」
「俺なんかに着いてきちまったから、あいつらは死んだ……そんな気がしてな。」
風が木々を揺らす音に、俺の声が混じる。
「全部、俺の責任だったんじゃねぇかって。……今もずっと、頭から離れねぇ。」
ニィロウは少しだけ沈黙し、それから、優しい声で言った。
「……ううん。きっと、ファングに着いて行けて、幸せだったと思うよ。」
「…………」
「だって、今こうしてここに立って、彼らのことを思ってる。そのファングがいたから、あの人たちは最後まで戦えた。……笑って、走って、命を燃やせたんだと思う。」
「………………」
「それに……その時のファングも、幸せだったでしょ?」
俺は、墓にかけたドッグタグを見つめる。
「……ああ。」
やっと、それだけが返せた。
ニィロウは何も言わず、そっと隣に立ってくれていた。沈みゆく夕陽が、木々の合間から差し込み、墓と花束を照らしていた。
──静かで確かな、追悼の時間だった。
なんか思ったよりしんみりした感じになっちった…
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